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五章
屋上作戦会議ー1
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屋上に出ると、既に幻がいつもの場所でタバコを吸っていた。
転落防止の柵に寄りかかり、目は遠くを見ている。その顔からは何を考えているのかはわからない。
「幻」
屋上に出るためのドアをきちんと閉め、部外者が入って来られないようにした後、私は幻に声をかけた。
「下で何があった?」
幻はまだ遠くを見たまま、私に尋ねる。
「クラスの女子と話してた。私のこと、心配してる人なんていたんだね」
話しながら、また声が震えだす。
「クラスの?」
そこでようやく幻は私を見た。
「クラスの誰だ?」
「えっと…肩のあたりで髪を二つに結んでる、文学少女っぽい口下手の子」
クラスで目立つタイプでもないので、話したことはおろか、クラスメイトのはずだが、記憶にも残っていない。
「橘花か…。いつも他人の影に隠れてるような奴だが、そういえば、人一倍真面目だったな…」
幻は流石に担任だ。影の薄いクラスメイトのこともしっかり覚えている。
私は幻の隣に寄りかかり、先程の会話を思い出す。
何かあったら私を頼って、彼女はそう言った。
…もし、もし、幻と出会う前に彼女に出会っていたら私は。
「何を考えてる?」
私の思考は幻に邪魔された。
「何も。橘花さんって良い人だなと思って…」
「ああ…そうだな」
幻が私を見て、何か言いにくそうな顔をした。珍しい。元々、幻は顔に感情を出すことは少ない。それも、困ったような顔をすることは。
「幻?何かあるの?」
正面から聞くと、幻は目を逸らした。
「…いや。例え、俺と契約しなかったとしても、お前はきっと他の悪魔と契約してたよ」
一瞬、何を言われたのかわからなかった。
「…どうして、そんなこと…まるで、幻以外と契約してたらもっと酷いことになるって知ってたみたい。…何か知ってるの?」
その問いに、幻は私に背を向けた。そしてあからさまに話を変える。
「んじゃ、さっさと作戦会議始めようぜ。これからどうする?」
私はその幻の態度に引っかかりながらも、その場で問い詰めることは諦めた。これ以上は何を聞いてもはぐらかされるだけだろう。
転落防止の柵に寄りかかり、目は遠くを見ている。その顔からは何を考えているのかはわからない。
「幻」
屋上に出るためのドアをきちんと閉め、部外者が入って来られないようにした後、私は幻に声をかけた。
「下で何があった?」
幻はまだ遠くを見たまま、私に尋ねる。
「クラスの女子と話してた。私のこと、心配してる人なんていたんだね」
話しながら、また声が震えだす。
「クラスの?」
そこでようやく幻は私を見た。
「クラスの誰だ?」
「えっと…肩のあたりで髪を二つに結んでる、文学少女っぽい口下手の子」
クラスで目立つタイプでもないので、話したことはおろか、クラスメイトのはずだが、記憶にも残っていない。
「橘花か…。いつも他人の影に隠れてるような奴だが、そういえば、人一倍真面目だったな…」
幻は流石に担任だ。影の薄いクラスメイトのこともしっかり覚えている。
私は幻の隣に寄りかかり、先程の会話を思い出す。
何かあったら私を頼って、彼女はそう言った。
…もし、もし、幻と出会う前に彼女に出会っていたら私は。
「何を考えてる?」
私の思考は幻に邪魔された。
「何も。橘花さんって良い人だなと思って…」
「ああ…そうだな」
幻が私を見て、何か言いにくそうな顔をした。珍しい。元々、幻は顔に感情を出すことは少ない。それも、困ったような顔をすることは。
「幻?何かあるの?」
正面から聞くと、幻は目を逸らした。
「…いや。例え、俺と契約しなかったとしても、お前はきっと他の悪魔と契約してたよ」
一瞬、何を言われたのかわからなかった。
「…どうして、そんなこと…まるで、幻以外と契約してたらもっと酷いことになるって知ってたみたい。…何か知ってるの?」
その問いに、幻は私に背を向けた。そしてあからさまに話を変える。
「んじゃ、さっさと作戦会議始めようぜ。これからどうする?」
私はその幻の態度に引っかかりながらも、その場で問い詰めることは諦めた。これ以上は何を聞いてもはぐらかされるだけだろう。
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