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四章
保健室の先生ー1
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保健室に向かう道すがら、これからのことを話し合う。
「1時間目はそのまま休んどけ。クラスメイトに理由は話すぞ?」
私は頷く。
「妹のことは誤魔化しておいて。あくまでも家庭で何かあったとだけ」
幻は肩を竦めた。
「わかった。俺が言わなくても、すぐに広まると思うが?」
「大丈夫。他の先生たちはもう話を知ってるはず。妹が何かしようとしてもそう簡単に私に近付くことはできなくなった。話を広めるにしても、先生が私側に付いている以上、妹が思っているように事は進まない」
私は口の端だけで笑うとすぐに真顔に戻る。
「それより、証拠はちゃんと取っておいてくださいね、先生」
保健室が見えたあたりで、私は先生と話すときのいつもの私の話し方に戻した。
歩き方もあからさまに遅く、体調が悪く見えるように変える。
そのまま何事もなかったような顔をして保健室に入る。
保健室の先生にはたまに世話になっている。私は家のせいもあり、頻繁に体調を崩すのだが、その度に幻の世話になっていた。何故か、幻は保健室に行きたがらない。余程保健室の先生に会いたくないのだろうか。
今日もまた、私の後に保健室に入ってきた幻は、保健室の先生に向かって私の背後から睨みを利かせている。いつも穏やかな幻から、殺気を感じた。
「…体調が悪いらしい。見てやってくれ。…妙なことはするなよ?」
そう言い捨てて出て行った。
驚いて振り返ると、保健室のドアがピシャリと音を立てて閉められた。
そういえば、我が校の保健室には男の先生がいる。サポートとして女の先生もいるが、これは少し珍しいのかもしれない。幻としては、他の男に私のことを頼むのは本意ではない、ということなのだろうか。
「とんでもない奴を侍らせてるねえ、シオンちゃん」
突然、それこそとんでもない発言が飛んできて、またしても驚く。
「は、はべ?違います。望月先生は私の担任で…」
「それは表向きの話でしょ?安心して?俺人間じゃないから」
とんでも発言に次ぐとんでも発言。私は口を開けたまま身動き取れずにいた。
「いや~、初心者契約者は何度見ても面白いねえ。慣れると、俺くらい気配で気が付けるようになるんだけどねえ。契約して1年目ぐらいだと気が付けないんだよねえ」
今、理解した。幻が微妙な顔をしていたのはこういうことだったのだ。幻は最初から知っていたのだ。この人の正体を。
「1時間目はそのまま休んどけ。クラスメイトに理由は話すぞ?」
私は頷く。
「妹のことは誤魔化しておいて。あくまでも家庭で何かあったとだけ」
幻は肩を竦めた。
「わかった。俺が言わなくても、すぐに広まると思うが?」
「大丈夫。他の先生たちはもう話を知ってるはず。妹が何かしようとしてもそう簡単に私に近付くことはできなくなった。話を広めるにしても、先生が私側に付いている以上、妹が思っているように事は進まない」
私は口の端だけで笑うとすぐに真顔に戻る。
「それより、証拠はちゃんと取っておいてくださいね、先生」
保健室が見えたあたりで、私は先生と話すときのいつもの私の話し方に戻した。
歩き方もあからさまに遅く、体調が悪く見えるように変える。
そのまま何事もなかったような顔をして保健室に入る。
保健室の先生にはたまに世話になっている。私は家のせいもあり、頻繁に体調を崩すのだが、その度に幻の世話になっていた。何故か、幻は保健室に行きたがらない。余程保健室の先生に会いたくないのだろうか。
今日もまた、私の後に保健室に入ってきた幻は、保健室の先生に向かって私の背後から睨みを利かせている。いつも穏やかな幻から、殺気を感じた。
「…体調が悪いらしい。見てやってくれ。…妙なことはするなよ?」
そう言い捨てて出て行った。
驚いて振り返ると、保健室のドアがピシャリと音を立てて閉められた。
そういえば、我が校の保健室には男の先生がいる。サポートとして女の先生もいるが、これは少し珍しいのかもしれない。幻としては、他の男に私のことを頼むのは本意ではない、ということなのだろうか。
「とんでもない奴を侍らせてるねえ、シオンちゃん」
突然、それこそとんでもない発言が飛んできて、またしても驚く。
「は、はべ?違います。望月先生は私の担任で…」
「それは表向きの話でしょ?安心して?俺人間じゃないから」
とんでも発言に次ぐとんでも発言。私は口を開けたまま身動き取れずにいた。
「いや~、初心者契約者は何度見ても面白いねえ。慣れると、俺くらい気配で気が付けるようになるんだけどねえ。契約して1年目ぐらいだと気が付けないんだよねえ」
今、理解した。幻が微妙な顔をしていたのはこういうことだったのだ。幻は最初から知っていたのだ。この人の正体を。
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