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第一章

そして、物語は動き出す

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教室から聞こえてくるのは、女と男の囁き声。明らかに近づいてはいけないタイミングで近づいてしまった。それでも、念のため男が誰か確認するために、教室のドアについた窓からそっと中を覗く。中にいたのは、望月先生ではなかった。というより、あれは人なのか。見た目はいつもの花蔭先生なのに、いつもよりも禍々しい。その唇が目の前の女生徒に触れると、それまでうっとりと花蔭先生を見つめていた女生徒は突然意識を失ったように倒れ込んだ。
「っ!?」
声にならない悲鳴が出てしまった。その前から気が付いていたのか。花蔭先生がゆっくりとこちらを見る。次の瞬間、閉められていたドアが開け放たれ、私の目の前に花蔭先生がいた。
「悪い子だね。覗き見をするなんて。そんな悪い子には、お仕置きしないと」
花蔭先生が私に触れようとした瞬間、花蔭先生が吹き飛んだ。
驚いて立ち尽くす私の前に、見覚えのある背中が立ちはだかる。
「全く。ここまでやれとは言ってないだろ」
明らかに私に向かって言っているが、私は何が起きているのか理解できず、まともに言葉も返せない。
望月先生はそれを特に気にすることもなく、花蔭との距離を詰める。
「お前、コイツのことをわかってて襲おうとしたのか」
花蔭の表情は、望月先生の背に隠れて見えないが、嘲笑うかのような雰囲気を感じ取る。
「そうだよ?げんちゃんのお気に入りなのは知ってた。でも、見られちゃったからね」
「元はと言えば、片っ端から人間を襲うお前が悪いんだろうが」
「そうかな?僕は悪魔としての本能に従っているだけだよ。君がおかしいんじゃない?悪魔のくせに人間を守るなんて」
とても聞いてはいけないことを聞いている気がする。そう思った私は、静かにその場を離れようとした。
「逃がさないよ?」
次の瞬間、私は花蔭先生に囚われ、突如空間にできた穴の中に押し込められた。穴の向こう側に、望月先生の焦った顔が見える。
「じゃあね、げんちゃん。この子はもう、僕のものだ」
そのセリフを最後に、穴は閉じられた。
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