蛇の狂人図鑑

ハライツキ

文字の大きさ
上 下
18 / 39

ブラックコーヒー 3

しおりを挟む
  「ダメだ、寝れない。」
   サラリーマンと老人が出会ってから、四日経っていた。サラリーマンは、あの日から一度も寝ていない。寝ようとして、横になるが体が急に震えて眠れないのだ。アルコールや、運動をためしてみてもダメだった。
  「明日、医者に行ってみるか。」
    暗闇で、ポツリと呟く。こうして彼は五日目の朝を迎えた。
    
   彼の体は、ふらふらと陽炎のように、揺らめいていた。早く病院に行かなければ。その一念が、彼を動かしていた。眠気がないのは辛い。地獄だ。
  「おやおや、また、ふらふら歩いてますねえ。

   サラリーマンは、体を声の方に向ける。そこには、ブラックコーヒーを一緒に飲んだ老人が前と変わらない微笑みを浮かべていた。
  「あ、どうも。」
   サラリーマンは、力ない声を絞り出す。寝ていないため、体の節々が痛い。声を出すだけで胃がきしむ。
  「その分だと寝れてないみたいですね。」
  「えぇ、まあ・・あのおまじないが効き過ぎですよ。」
   サラリーマンは、力なく笑う。老人のおまじないのせいかと思ったこともあったが、そんな簡単に人がここまで寝れなくなるはずがない。
こんな老人に、そんなことできるはずがない。

 「そうですか、そうですか、効きましたか。」
 「ははは・・」
   快活な老人と正反対に、力ない笑いをしていた。もう、老人と話をする気力もなかった。



 「ならば、私の思い通りですね。」
   サラリーマンの靄がかかった頭が、一気にはっきりする。この老人は何を言っているのだろう。靄を吹き飛ばす一言だ。
「それは、どういう・・」
「では、次に行きましょう。」
   サラリーマンは、後ろから黒い布を被せられた。抵抗しようにも、体は疲れて、思うように動けない。体は、徐々に自由が奪われていく。視覚を封じられて車に乗せられた。
   非現実な出来事が続く。恐怖と疲労だけが、今の彼を覆う。だが、それが彼に現実だと伝えていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【短編】怖い話のけいじばん【体験談】

松本うみ(意味怖ちゃん)
ホラー
1分で読める、様々な怖い体験談が書き込まれていく掲示板です。全て1話で完結するように書き込むので、どこから読み始めても大丈夫。 スキマ時間にも読める、シンプルなプチホラーとしてどうぞ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

赤い部屋

山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。 真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。 東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。 そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。 が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。 だが、「呪い」は実在した。 「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。 凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。 そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。 「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか? 誰がこの「呪い」を生み出したのか? そして彼らはなぜ、呪われたのか? 徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。 その先にふたりが見たものは——。

処理中です...