蛇の狂人図鑑

ハライツキ

文字の大きさ
上 下
14 / 39

ダイエット after

しおりを挟む
  「すいません、私、あなたにサプリメントを送った会社の人間なんですが、もう飲んでしまわれましたか?」
  スーツ姿の男は、ペコペコしながら、彼女に話しかけた。
「飲んだわよ。あんたのところのサプリメント良いわね、おかげでスッキリしたわ。」
  男の顔は青ざめる。
「飲んでしまいましたか。いやあ、あのサプリメントには、問題がありまして。」
  男の言葉に、女はドキッとした。確かに、これだけの効果があるものだ、何かがあるに違いない。
  「なんなのよ・・何があるのよ。」
  「カプセルの中に、異物が混入してまして、それが・・虫の卵なんですよ・・」
   その言葉に、彼女の胃がざわめく。そういえば、オペラ歌手が寄生虫を飲んでダイエットをしたというエピソードがあった。もしそうならば、彼女は心臓をぎゅうっと捕まれた気がした。
  「どうすんのよ‼あたしの中に虫だなんて‼」
  「本当に申し訳ありません。ですけども、これさえ飲めば大丈夫です。サプリメントの効果打ち消せて、虫も体からだせます。」
   そういうと、彼は錠剤のビンを取り出した。
  「サプリメントの効果を消す?」
   彼女は、眉をひそめた。もし、ここでサプリメントの効果が消えれば、彼女は元の自分になる。それの方が恐ろしく感じた。
   (せっかくのチャンスを、ここでなくすわけにはいかないわ)
   彼女は、セールスマンから薬を受けとる。
  「わかったわ、これ飲むわ。それとこの事は、黙っといてあげる。」
  「ありがとうございます‼ありがとうございます。本当に申し訳ありません。また、謝罪の品を持って伺わせていただきます。」
   男は、頭を下げながら帰っていった。彼女は部屋に入ると、ビンをゴミ箱に捨てた。サプリメントの効果がなくなるくらいなら、体に虫を飼っていた方が良いと考えた。
  















  「今日は、誘ってくれてありがとう。」
  「いえいえ、どういたしまして。」
   スーツの男が来てから、数日経って彼女は、レストランで彼との食事を楽しんでいた。普段、来ないような場所に気圧される。一つ気になったのは、胃に少し痛みがあったことだ。最近、食べ過ぎたぐらいにしか、彼女は思っていなかった。
 「お酒は、飲まないんですか?」
   彼女に、男は問いかけた。
 「あんまり強くないの。」
   男は、寂しそうな顔をした。
  「だけども、今日は一杯位飲もうかな。酔ったら責任とってね。」
   彼女はそういうと、彼と同じワインを口に運んだ。
 「飲む姿も、キレイですね。」
 「ありがとう。」
   二人の視線が交差する。


   その瞬間だった。彼女は胃に激痛が走る。胃を中から食い破るような感覚が、脳に伝わっできた。彼女の体は激痛のため、テーブルにうなだれた。  
   「だ、大丈夫ですか?」
   「がっ・・はっ・・・・がっ・・」
   彼女のうめき声が店内に響き渡る。彼女は胃の痛みと、腹から這い上がるものに恐怖を感じた。 
  「うげええ・・あがが・・」
   彼女の口から、血と一匹の虫が吐き出された。テーブルは、紅に染まる。  
  「うわああ、なんだ。虫があ、血があ!!」
   その様子を見ていた、周りの客達は一斉に逃げ出す。もちろん、同席していた彼も。
   彼女の口からは、虫が何匹も這い出していた。彼女は、うめきをあげながら、虫を吐き出す。痛みで意識が飛びそうなのか、白目がちになりながら痙攣していた。皿には、虫と血と吐瀉物が盛り付けられた。 
  「ああああ・・・・うげぇぇ・・がああ・・・・苦しいよおっ・・がっ・・」
   のたうちまわりながら、床に倒れる。テーブルの上のものが、床を汚していく。床の上の彼女は、大きな痛みから逃れたいがために、自殺しようと首もとにナイフを突き刺す。食用のナイフでは、首の皮膚を傷つけるだけだ。そこの血を目指し虫は、彼女の体を這う。そして、彼女の体を貪りはじめる。
   彼女はもう意識がない。体からは、皮膚を食い破り、新たな虫が溢れてきていた。血のシミが床を侵食していく。


  ブチュッ・・グチャッ・・キーキー



   騒動後にそこにあったのは、多数の蟲と、血に濡れた人のかたちをした肉塊だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【短編】怖い話のけいじばん【体験談】

松本うみ(意味怖ちゃん)
ホラー
1分で読める、様々な怖い体験談が書き込まれていく掲示板です。全て1話で完結するように書き込むので、どこから読み始めても大丈夫。 スキマ時間にも読める、シンプルなプチホラーとしてどうぞ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

廻界書店

杜鵑花
ホラー
 書店の店長である鈴々木杜庵が奇妙な出来事に遭う物語です。

処理中です...