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ティッシュ
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「はあ~腹へった。」
会社の残業をしていて、集中力がなくなると、家の中での素の自分が出てしまうことがある。そんなときに、同僚がいると恥ずかしい。
「先輩、私も手伝い頑張りますから、早く仕事終わらせましょう。」
同僚が異性だと、なお恥ずかしい。
「だって、腹へったんだもの。腹へった。」
「もう、これをあげるから静かにしてください。」
後輩は、チョコレートを渡してきた。
「うーん、チョコって感じじゃないんだよなあ、フルーツ系がいいなあ。」
「いやいや、そんなものないですよ。」
わがままだが、この空腹はしっかりと満たしたい。後輩の女性に嫌な顔をされても、だ。ペットボトルの水を含む後輩を睨みながら、ないものは仕方がないと諦めかけたが、俺の鼻にふわりと柑橘類の香りが届いた。
「お前!!フルーツ系の食い物を持っているなあ‼」
「いやいや、持ってないですよ。」
「嘘つけ、柑橘系の匂いがしたぞ」
「あ、これじゃないですか?」
彼女は、ティッシュの箱を取り出した。なるほど、匂いつきティッシュか。匂いつきティッシュは、小学生の時のあることを思いださせた。
「ね、一枚くれない?」
「いいですけど、まさか、先輩・・」
多分、彼女の想像は当たっているだろう。あのティッシュは、味があるはずだ。私は、彼女のティッシュを口に含む。彼女の視線は気にしなかった、口の中をオレンジの匂いで満たされる。
「先輩、もう一枚どうですか?」
彼女は、意外にもノリノリだった。遠慮せずに、もう一枚いただく。
もう一枚、口に含んだ瞬間意識が遠のいた。
「まさか、ここまで馬鹿とは思いませんでした。」
後輩は、薬品のビンに蓋をすると、先程まで空腹を訴えた男を椅子に縛り付けた。男はティッシュを口に含んだまま眠っていた。
彼女は、複数枚のティッシュを取りだし、仰向けにした彼の口の中に突っ込んでいく。 彼の口から溢れたティッシュが、一輪の百合のように重なりあっていた。
「さようなら、先輩。これで、仕事に集中できます。」
彼女は、ペットボトルの水を彼に注ぐ。紙の百合は、彼の口の中に沈み、彼の気管に蓋をした。
会社の残業をしていて、集中力がなくなると、家の中での素の自分が出てしまうことがある。そんなときに、同僚がいると恥ずかしい。
「先輩、私も手伝い頑張りますから、早く仕事終わらせましょう。」
同僚が異性だと、なお恥ずかしい。
「だって、腹へったんだもの。腹へった。」
「もう、これをあげるから静かにしてください。」
後輩は、チョコレートを渡してきた。
「うーん、チョコって感じじゃないんだよなあ、フルーツ系がいいなあ。」
「いやいや、そんなものないですよ。」
わがままだが、この空腹はしっかりと満たしたい。後輩の女性に嫌な顔をされても、だ。ペットボトルの水を含む後輩を睨みながら、ないものは仕方がないと諦めかけたが、俺の鼻にふわりと柑橘類の香りが届いた。
「お前!!フルーツ系の食い物を持っているなあ‼」
「いやいや、持ってないですよ。」
「嘘つけ、柑橘系の匂いがしたぞ」
「あ、これじゃないですか?」
彼女は、ティッシュの箱を取り出した。なるほど、匂いつきティッシュか。匂いつきティッシュは、小学生の時のあることを思いださせた。
「ね、一枚くれない?」
「いいですけど、まさか、先輩・・」
多分、彼女の想像は当たっているだろう。あのティッシュは、味があるはずだ。私は、彼女のティッシュを口に含む。彼女の視線は気にしなかった、口の中をオレンジの匂いで満たされる。
「先輩、もう一枚どうですか?」
彼女は、意外にもノリノリだった。遠慮せずに、もう一枚いただく。
もう一枚、口に含んだ瞬間意識が遠のいた。
「まさか、ここまで馬鹿とは思いませんでした。」
後輩は、薬品のビンに蓋をすると、先程まで空腹を訴えた男を椅子に縛り付けた。男はティッシュを口に含んだまま眠っていた。
彼女は、複数枚のティッシュを取りだし、仰向けにした彼の口の中に突っ込んでいく。 彼の口から溢れたティッシュが、一輪の百合のように重なりあっていた。
「さようなら、先輩。これで、仕事に集中できます。」
彼女は、ペットボトルの水を彼に注ぐ。紙の百合は、彼の口の中に沈み、彼の気管に蓋をした。
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