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愛欲人形
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「はあっはあっ、イクよユズキ」
僕は、ユズキの中で快楽に見悶える。
「ユズキ、今日も良かったよ」
そう言って、僕は彼女の髪を撫でた。
僕と彼女は、一年の仲になる。
出会いのきっかけは、インターネットだった。興味本位で見た、ラブドールのサイトを見たところ、そこにユズキがいたのだ。僕は続々購入を決めた。安い買い物ではないが、恋人もいなければ、趣味もない、無駄に貯めた金だけはある僕には、有意義な買い物だ。僕は彼女が来てから毎晩のように求めた。彼女は最高の人形だった。人形だったのだ。
「私も気持ち良かったわ。」
僕は、空耳かと思った。まさかな、そんなことはない。
「疲れてるのかな、僕・・」
射精の脱力感からかと、僕は思った。
「ケンジ、疲れてるなら休んだら?」
今度は、はっきり聞こえた。
「おいおい、嘘だよな・・」
「嘘じゃあないわよ」
ユズキの顔を恐る恐るみる。
「私、あなたのために生き始めたのよ。」
こうして、僕とユズキの新たな生活が始まった。
彼女が、生き始めたことで、僕の生活に潤いが出来た。部屋に愛するモノがいるのは、それだけで心が休まる。
「ケンジ、ご飯出来たわよ。」
夫婦と言うのは、こういうことなんだろう。無縁だと思っていた、僕には新鮮なものだった。ユズキはただ、笑って座っていた。
僕達は、二人でテレビを見て、二人でお風呂に入り、二人で同じ布団に入り、二人で愛を育んだ。
ユズキの声が、僕にしか聞こえない幻聴かと思っていたが、ユズキが大きな声で喘いだ時に、隣から壁を叩かれた。僕は、安心感からか、少し笑った。
彼女は妄想の産物ではない、現実なのだ。僕は、幸せをただ噛み締める。こんな日々がずっしり続けば良かった。僕は続ける気だった。
「ねぇ、ケンジ。私達、結婚式をあげましょう。」
ユズキは、僕に呟いた。テレビで見た、結婚式に感化されたみたいだ。
「良いけども、多分、式場の人は驚くだろうね。」
「人形だから?」
僕はゆっくりと頷く。ユズキは、少し悲しそうな顔をする。
「あなたと私は、同じ形をしているのに、一緒ではないのね。」
「うん、けども、生きるってそういうものだよ。」
「生きるのは、辛いのね。」
僕達は、また、肌を重ねる。ユズキの肌がいつもより冷たく感じた。
目を覚ますと、僕の首にユズキの手がかかっていた。彼女の顔に、悲しみが見える。
「ごめんなさい。私は、もう耐えられない。」
彼女の言葉を聞いて、僕はユズキの頭をそっと撫でた。
「大丈夫、わかってるよ。」
「気味が悪いなあ。」
刑事は頭を抱えて呟いた。アパートの大家から、最近、上の階の部屋の物音が聞こえなくなったらしい。不審に思ったので、通報したとのことだ。
大家は、ボケているのか部屋の住民が、男か女かわからないとのことだ。鍵を開けて中にはいると、部屋には2体の人形が重なりあっているだけだった。
まさか、こいつらが生活していたのか?なんて、子供だましの創造を大家に話す訳にはいかない。
「だけど、もしそうならば・・」
部屋の外で、なにかを言いかけそうになったが、口を閉ざした。多分、この部屋の中身と、言いかけたことは同じものだろう。ならば、俺がすることは、同じことだ。
俺は、部屋の扉を閉めた。
「これからも、ずっと一緒だよ。」
僕は、ユズキの中で快楽に見悶える。
「ユズキ、今日も良かったよ」
そう言って、僕は彼女の髪を撫でた。
僕と彼女は、一年の仲になる。
出会いのきっかけは、インターネットだった。興味本位で見た、ラブドールのサイトを見たところ、そこにユズキがいたのだ。僕は続々購入を決めた。安い買い物ではないが、恋人もいなければ、趣味もない、無駄に貯めた金だけはある僕には、有意義な買い物だ。僕は彼女が来てから毎晩のように求めた。彼女は最高の人形だった。人形だったのだ。
「私も気持ち良かったわ。」
僕は、空耳かと思った。まさかな、そんなことはない。
「疲れてるのかな、僕・・」
射精の脱力感からかと、僕は思った。
「ケンジ、疲れてるなら休んだら?」
今度は、はっきり聞こえた。
「おいおい、嘘だよな・・」
「嘘じゃあないわよ」
ユズキの顔を恐る恐るみる。
「私、あなたのために生き始めたのよ。」
こうして、僕とユズキの新たな生活が始まった。
彼女が、生き始めたことで、僕の生活に潤いが出来た。部屋に愛するモノがいるのは、それだけで心が休まる。
「ケンジ、ご飯出来たわよ。」
夫婦と言うのは、こういうことなんだろう。無縁だと思っていた、僕には新鮮なものだった。ユズキはただ、笑って座っていた。
僕達は、二人でテレビを見て、二人でお風呂に入り、二人で同じ布団に入り、二人で愛を育んだ。
ユズキの声が、僕にしか聞こえない幻聴かと思っていたが、ユズキが大きな声で喘いだ時に、隣から壁を叩かれた。僕は、安心感からか、少し笑った。
彼女は妄想の産物ではない、現実なのだ。僕は、幸せをただ噛み締める。こんな日々がずっしり続けば良かった。僕は続ける気だった。
「ねぇ、ケンジ。私達、結婚式をあげましょう。」
ユズキは、僕に呟いた。テレビで見た、結婚式に感化されたみたいだ。
「良いけども、多分、式場の人は驚くだろうね。」
「人形だから?」
僕はゆっくりと頷く。ユズキは、少し悲しそうな顔をする。
「あなたと私は、同じ形をしているのに、一緒ではないのね。」
「うん、けども、生きるってそういうものだよ。」
「生きるのは、辛いのね。」
僕達は、また、肌を重ねる。ユズキの肌がいつもより冷たく感じた。
目を覚ますと、僕の首にユズキの手がかかっていた。彼女の顔に、悲しみが見える。
「ごめんなさい。私は、もう耐えられない。」
彼女の言葉を聞いて、僕はユズキの頭をそっと撫でた。
「大丈夫、わかってるよ。」
「気味が悪いなあ。」
刑事は頭を抱えて呟いた。アパートの大家から、最近、上の階の部屋の物音が聞こえなくなったらしい。不審に思ったので、通報したとのことだ。
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まさか、こいつらが生活していたのか?なんて、子供だましの創造を大家に話す訳にはいかない。
「だけど、もしそうならば・・」
部屋の外で、なにかを言いかけそうになったが、口を閉ざした。多分、この部屋の中身と、言いかけたことは同じものだろう。ならば、俺がすることは、同じことだ。
俺は、部屋の扉を閉めた。
「これからも、ずっと一緒だよ。」
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