【完結】アーティ~太陽の様な笑顔を守りたい~

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オラネコBL編

4.救いの手

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 おかしいな。俺は地図の通りに歩いているはずなのに、ホテルらしき看板が無いぞ。

 早くしないと暗くなってきてしまう。こんな街灯も無さそうな妖しげな雰囲気の街で、夜に迷子になるなんて冗談じゃない。
 誰かに聞こうと思っても、俺は英語があんまり話せない。クイ語なんてもっての他だ。

 焦る俺に、声を掛けてきた人が居た。

「お兄さん、ニホンジン?」


 お!日本語話せる人発見!!良かった。これでホテルの場所が聞ける。

 振り返ると、そこには可愛らしい顔立ちの青年が居た。外国人で年齢が解りにくいが、多分…青年…だよな?
 身長が高めで、165cmはあるだろうか。俺にとっては充分小柄だが、クイ人の中では高い部類だろう。

 良かった!救いの女神だ!と思って、俺は彼に地図を見せた。

「あぁ!そうなんだ!君、ごめん!今迷子になっていて…。
 このホテル、どこにあるか解る?」


「あぁ、駅から来たの?ずいぶん通り過ぎちゃったんだね。」


「え?そうなのか?ごめん。今この地図の中だと何処に居るのか教えてくれないか?」


「う~ん。
 ねぇお兄さん、僕を買ってくれたら、ホテルまで案内してあげるよ?」


「え??」


「ん??バンポクに一人って、そういう事でしょ?
 こんなスラム街の連れ込み宿まで予約しちゃってさ。

 もし今夜の相手がまだ決まってないんなら、僕を買ってよ。
 そしたらホテルまで連れて行ってあげる。」


 ここはいわゆるスラム街だったのか…。そうか…、
 いかにもヤク中みたいな奴、酒瓶を抱きしめて地面に寝てる奴、浮浪者、ストリートチルドレン。鼻が曲がる様な匂いに、ゴミが散乱し、何の液体なのか解らないがベトベトに汚れている地面。虫やドブネズミどころか野犬だって闊歩している。

 そうだよな。スラム街ってそういう所だよな。でも、実際に目にするとこんなに酷いところだったなんて思っていなかった。しかも、思っていたよりも人がびっしりと座っている。
 こんなに汚いのに、こんなにたくさん人が居るの?いや逆か…人がいっぱいいるからこそ汚いのか。


 俺は迷った。確かに、もう一秒たりともこの地獄の釜の中の様な場所には居たくない。でも、こんなタイに着いて早々、誰かを買おうとは思っていなかった。まだ俺の繊細な童貞ハーツに見切りをつける準備が出来ていない。

 最初は健全に観光して、夜はゴーゴーバーに行って、ちょっと耐性をつけて。
 次の夜はゲイバーに行って、またちょっと耐性をつけて。
 それを2日間繰り返して充分に耐性がついたなと思ったら…。
 最終夜に、もしこれならイケるぞ!と決心がつけば、あわよくばちょっと大人の階段を登ってみようかな。それくらいの認識だった。


「あの…じゃあ、さ。二千円あげるから、道案内だけお願いできない?」

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