【完結】アーティ~太陽の様な笑顔を守りたい~

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オラネコBL編

2.想定外

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 地下鉄の駅に降りてすぐ。
 まだ駅構内だというのに、既に醸し出されているただならぬ雰囲気に、俺は自分が選択を間違えたのだと悟った。

 地下鉄の壁という壁にペンキやスプレーの落書き。
 そして、地面に段ボールを敷いているのはまだ良い方だ。何も敷かずに、半裸でそのまま床に寝そべっている人さえも居る。それも、一人二人じゃない。

 腐臭と饐えた匂いが相まって、空気が淀んだ地下鉄駅構内は、物凄い悪臭がする。


 ヤバいぞ。早くここから抜け出さなくては。

 今考えればまた電車に乗って違う駅に行くという選択肢もあった。でも俺は、ここで次の電車を待つという事すらしたくなくて、とりあえず地上に出てみる事にした。


 良かった。地上は…まぁ何人か寝ているが、さっきよりはマシだった。
 ホテルは…どこだろうか。俺は前もって地図に印をつけている。

 え~っと…駅がここで、この大きな道路がこれだから…こっちの方か。
 当りを付けて歩き出すと、まだ午後三時頃だというのに、なんだか妖しげな雰囲気がする。


 でっぷりと太った白人男性が、若いというよりも幼いクイ人男の子の腰を抱いて歩いている。


 一応俺も成人男性だから、クイの性産業が盛んだというのは知っている。
 旅の恥はかき捨てだし、社会経験としてゴーゴーバーや初ゲイバーを体験してみたいとも思っていた。

 でも、こんな浮浪者が多い町で、よくそんな気分になるな。そういうペアを見るたびについ眉を顰めてしまう。


 ちょっと格差の度合いが俺の想定以上だった。
 まさかこんなに路上生活者が多いなんて、完全に想定外だ。


 良く見れば、汚い顔でボロ布を纏ってしゃがみこんでいる子供達も居る。
 そして悪い事に、彼らは俺に対して思わせぶりな視線を送ってきたりする。

 一人二人なら別に俺の勘違いだろう。
 でもそんな彼らが何か小声で相談したかと思うと、その中の一人が俺に追いすがりながら言うんだ。

「イチマンエン!!ウーバイクァイチェン!!ジュッマンウォン!!」

「ノーサンキュー!ノーサンキュー!!」
 と俺が言いながら逃げるだろ?そうすると、
「ゴセンエン!!サンバイクァイチェン!!ウーマンウォン!!」


 え?さっきの半額になってない?


 ちょっと待てよ。君、まだ小学生くらいだろう?え?もしかして、君たちもそういう職業なのか?
 流石にちょっと…まずいんじゃないか?親はどこなんだよぉ~~。


 俺は必死に走って逃げた。
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