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プロポーズってどうやるんだろう?
ボクはなぜか今までずっと、自分はプロポーズをされる側だと思っていたから、実は
プロポーズの言葉を考えた事はない。
とりあえず、ライランド様に好きだよって自分の言葉で、全力で伝えればいいかな。
「ライランド様!ボクは初めて貴方に会った時から、貴方のその瞬発力としなやかな筋肉がカッコいいと思っていました!
もし死ぬなら、海に落とされるよりも、貴方に噛み殺されたいなって、思いました」
ライランド様が顔を覆った。恥ずかしいのだろうか。
「初めてライランド様に押し倒された時、そのまるで馬のような滑らかな肌と、牛のような逞しい前足がすごくカッコいいと思いました!」
ライランド様が唖然とした顔でボクを見ている。あれ?草食動物に喩えられるのは嫌なのかな。もしかして褒めているのが伝わってない?
「ボク、ずっと肉食獣人は怖いなと思って今まで生きてきたんです。だから、ボクを肉食獣人から守ってくれる逞しい牛獣人に憧れがあって……だからその、牛に喩えたのは褒めてるつもりです!
まさか、肉食獣人の事を好きになる日がくるなんて、夢にも思いませんでした」
やっとライランド様の顔に少し表情が戻った。良かった。伝わったか?
「それはつまり……。俺の理解違いでなければ……もしかしてだが、俺のことを好きだと、言っているのか?」
「はい!ライランド様の事が好きです!
一生大切にすると誓います!だから、ボクのお嫁さんになって下さい!」
ライランド様はポカンと口を開けて一瞬呆けた後、すぐに顔を引き締めた。
「先に言われてしまったな。本当は二人きりになった時に改めて俺の口から言いたかったのに。
俺の方こそ、メリノが好きだよ。
玉座の間で言った事は全て俺の本当の気持ちだ。今も首に掛けてくれているこれも、本当に生まれた時に作られるたった一つの愛の証なんだ。絶対に、他の人に靡いたりはしないから、安心してほしい。
メリノ、心から愛してる。これから一生、よろしくたのむ」
良かった!ボク、ライランド様と両想いだったみたい!
あれは戦争に行く前の世迷言でも、戦争を回避するための言葉の絢でもなかったんだね!全部本当だったんだ!
しかも、ボクが王太子であると解る前から、ライランド様はボクの事を好きになってくれていたんだ!そのままのボクを見ていてくれたんだ!凄く嬉しい!!
ボクは自分がパミールだという事を頭では理解したけれど、それでも自分の名前はメリノだと思っている。だって、30年以上使って来た名前だもの。そんなに簡単には切り替えられない。
だから、他でもないライランド様が、ボクの人生で一番沢山の時間を共に過ごす人が、ボクの事をメリノと呼んでくれるのは凄く嬉しい。
ライランド様は、ボクの手の甲にキスをすると、そのままボクを引き寄せて、久しぶりにぎゅっと抱きしめてくれた。
本当はそのまま一緒に寝たかったんだけど、残念ながら同衾は結婚までおあずけ。ボクは後ろ髪引かれながらも仕方なく、自分の部屋に戻った。
王太子宣誓式兼婚約発表まであと1月強。ボク達の結婚式まであと4ヶ月。本当に待ち遠しいなぁ。
翌日、ボクを守っていた近衛が、屈強な牛獣人から、何故かロムニー率いる狼獣人になったのは、また別のお話。
でもライランド様はちゃんと配慮してくれた様で、人間の血が濃い、見た目がほぼ人族の人を選んでくれたから、怖くはないのだけれども。
ボクにとっては壁みたいな牛獣人に守って貰うの、なんだか王族っぽくてカッコよくて、結構気に入っていただけに、少し残念。
そして、ライランド様の牛獣人を見る目が凍える程冷たくなってしまい、ここでも氷の貴公子の名が囁かれる様になるのも、またもう少し後のお話。
@@@@
時は過ぎ、ボクは求められている最低限の勉強をなんとかこなし、いよいよ明日が王太子宣誓式兼婚約発表の日となっていた。
しかしここに来て、重大事件が発生している。なんと、ライランド様の弟君が、大軍を率いて船でこちらに近づいているそうなのだ。
先触れを送っても、返ってくるのはライランド様に会って直接話すという伝言のみ。
そんな不穏な状況なのに、ライランド様はなんと、弟君に一人で会いに行くと言っているのだから、ボクはたまったものじゃない。
だって、向こうはズワルト王からライランド様討伐の命を受けているのだ。愛しい妻をそんな危ないところにみすみす一人で行かせるなんて、出来っこない。
ボクは心配で心配で……。でも流石に王太子のボクがそんな危険な場所に同行する訳にもいかず、人知れず究極の選択を迫られていた。
そう、もう絶対にしないと決めた、羊形態になって、通りすがりの羊のふりをするか否かを。
正直に言おう。今まで忘れようとしていたが、ボクが羊形態になると毎回何かしらが起こる。
流石に誘拐されたりはここ最近ほどには多くないけれど、それでも子供の頃から何かしらはあった。
むしろ、ボクが幼い頃大陸で迷子になったのも、もしかしたらボクが勝手に羊形態になって遊びに行ってしまったからなんじゃないかと踏んでいるくらいには、色々あった。
まぁ、その頃の記憶は一切ないから断定はできないけれど。
でも、もしここでライランド様を一人で行かせて、万が一何かあれば、ボクは一生後悔する気がする。
そうだ、何を恐れる事がある。そもそもボクは羊になって、戦場まで追いかけて来ていたのではないか。
実際には戦争ごっこをしていただけだったけれども、前線に行く決意は3ヶ月前にとっくにしてたんだった。王太子になったくらいで、何を恐れる事がある。
大事なのは、ライランド様だ。
ボクは、決意を固めた。
ボクはなぜか今までずっと、自分はプロポーズをされる側だと思っていたから、実は
プロポーズの言葉を考えた事はない。
とりあえず、ライランド様に好きだよって自分の言葉で、全力で伝えればいいかな。
「ライランド様!ボクは初めて貴方に会った時から、貴方のその瞬発力としなやかな筋肉がカッコいいと思っていました!
もし死ぬなら、海に落とされるよりも、貴方に噛み殺されたいなって、思いました」
ライランド様が顔を覆った。恥ずかしいのだろうか。
「初めてライランド様に押し倒された時、そのまるで馬のような滑らかな肌と、牛のような逞しい前足がすごくカッコいいと思いました!」
ライランド様が唖然とした顔でボクを見ている。あれ?草食動物に喩えられるのは嫌なのかな。もしかして褒めているのが伝わってない?
「ボク、ずっと肉食獣人は怖いなと思って今まで生きてきたんです。だから、ボクを肉食獣人から守ってくれる逞しい牛獣人に憧れがあって……だからその、牛に喩えたのは褒めてるつもりです!
まさか、肉食獣人の事を好きになる日がくるなんて、夢にも思いませんでした」
やっとライランド様の顔に少し表情が戻った。良かった。伝わったか?
「それはつまり……。俺の理解違いでなければ……もしかしてだが、俺のことを好きだと、言っているのか?」
「はい!ライランド様の事が好きです!
一生大切にすると誓います!だから、ボクのお嫁さんになって下さい!」
ライランド様はポカンと口を開けて一瞬呆けた後、すぐに顔を引き締めた。
「先に言われてしまったな。本当は二人きりになった時に改めて俺の口から言いたかったのに。
俺の方こそ、メリノが好きだよ。
玉座の間で言った事は全て俺の本当の気持ちだ。今も首に掛けてくれているこれも、本当に生まれた時に作られるたった一つの愛の証なんだ。絶対に、他の人に靡いたりはしないから、安心してほしい。
メリノ、心から愛してる。これから一生、よろしくたのむ」
良かった!ボク、ライランド様と両想いだったみたい!
あれは戦争に行く前の世迷言でも、戦争を回避するための言葉の絢でもなかったんだね!全部本当だったんだ!
しかも、ボクが王太子であると解る前から、ライランド様はボクの事を好きになってくれていたんだ!そのままのボクを見ていてくれたんだ!凄く嬉しい!!
ボクは自分がパミールだという事を頭では理解したけれど、それでも自分の名前はメリノだと思っている。だって、30年以上使って来た名前だもの。そんなに簡単には切り替えられない。
だから、他でもないライランド様が、ボクの人生で一番沢山の時間を共に過ごす人が、ボクの事をメリノと呼んでくれるのは凄く嬉しい。
ライランド様は、ボクの手の甲にキスをすると、そのままボクを引き寄せて、久しぶりにぎゅっと抱きしめてくれた。
本当はそのまま一緒に寝たかったんだけど、残念ながら同衾は結婚までおあずけ。ボクは後ろ髪引かれながらも仕方なく、自分の部屋に戻った。
王太子宣誓式兼婚約発表まであと1月強。ボク達の結婚式まであと4ヶ月。本当に待ち遠しいなぁ。
翌日、ボクを守っていた近衛が、屈強な牛獣人から、何故かロムニー率いる狼獣人になったのは、また別のお話。
でもライランド様はちゃんと配慮してくれた様で、人間の血が濃い、見た目がほぼ人族の人を選んでくれたから、怖くはないのだけれども。
ボクにとっては壁みたいな牛獣人に守って貰うの、なんだか王族っぽくてカッコよくて、結構気に入っていただけに、少し残念。
そして、ライランド様の牛獣人を見る目が凍える程冷たくなってしまい、ここでも氷の貴公子の名が囁かれる様になるのも、またもう少し後のお話。
@@@@
時は過ぎ、ボクは求められている最低限の勉強をなんとかこなし、いよいよ明日が王太子宣誓式兼婚約発表の日となっていた。
しかしここに来て、重大事件が発生している。なんと、ライランド様の弟君が、大軍を率いて船でこちらに近づいているそうなのだ。
先触れを送っても、返ってくるのはライランド様に会って直接話すという伝言のみ。
そんな不穏な状況なのに、ライランド様はなんと、弟君に一人で会いに行くと言っているのだから、ボクはたまったものじゃない。
だって、向こうはズワルト王からライランド様討伐の命を受けているのだ。愛しい妻をそんな危ないところにみすみす一人で行かせるなんて、出来っこない。
ボクは心配で心配で……。でも流石に王太子のボクがそんな危険な場所に同行する訳にもいかず、人知れず究極の選択を迫られていた。
そう、もう絶対にしないと決めた、羊形態になって、通りすがりの羊のふりをするか否かを。
正直に言おう。今まで忘れようとしていたが、ボクが羊形態になると毎回何かしらが起こる。
流石に誘拐されたりはここ最近ほどには多くないけれど、それでも子供の頃から何かしらはあった。
むしろ、ボクが幼い頃大陸で迷子になったのも、もしかしたらボクが勝手に羊形態になって遊びに行ってしまったからなんじゃないかと踏んでいるくらいには、色々あった。
まぁ、その頃の記憶は一切ないから断定はできないけれど。
でも、もしここでライランド様を一人で行かせて、万が一何かあれば、ボクは一生後悔する気がする。
そうだ、何を恐れる事がある。そもそもボクは羊になって、戦場まで追いかけて来ていたのではないか。
実際には戦争ごっこをしていただけだったけれども、前線に行く決意は3ヶ月前にとっくにしてたんだった。王太子になったくらいで、何を恐れる事がある。
大事なのは、ライランド様だ。
ボクは、決意を固めた。
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