283 / 329
寛解
203.探さないでください
しおりを挟む
蒼空が乗っているタクシーを追いかけたかったが、もしそうする事で更に蒼空を追い詰めてしまったらと考えると、足が動かなかった。もしかしたら、蒼空は俺が追いかけて来るのを待っている可能性もあるかもしれない。でももしそうなら、タクシーには乗らずに走り続けるはずだ。俺が追いかけてきて、蒼空を捕らえて抱きしめるのを待つために。
タクシーに飛び乗って、しかも運転手さんにすぐに出して貰って逃げたという事は、今は本当に俺から離れたいという事に他ならないのではないだろうか。でも、万が一蒼空が待っていたら?
もしそうならば、もっと蒼空を傷つけてしまう。
そう思い立って、俺は車に飛び乗ると蒼空が乗ったタクシーを必死で追いかけたが、残念ながら途中で見失ってしまった。
車から降りて、呆然と立ち尽くす。そこに届いた、蒼空からのメッセージ。
「しばらく家出します。探さないでください」
探さないでください……。探さないでください……。心の中で、蒼空の声となって木霊した。
これは、相当傷つけてしまったのではないだろうか。
蒼空がプロポーズ待ちをしてくれている事は、いくらポンコツな俺だって解っていた。蒼空のあの幸せそうな瞳を、俺が曇らせてしまったなんて…。
俺も、この旅行でプロポーズするつもりだったんだ。実際に旅行に出るまでは。
でも、しかし、蒼空のこれからの長い長い人生の本当の笑顔を守る為には、このままではいけないんだ。
俺はちゃんと、蒼空のご両親に認めて貰わなくてはならない。
そうしなければ、この先には進めない。
蒼空は、ご両親の所に戻っているのだろうか。それとも、あの幼馴染の所だろうか。
一先ず蒼空がどこに居るのか、安全なのかだけでも確認しなくては。
もし万が一、あれだけ綺麗な蒼空が、傷心を隠さず涙も隠さずに、一人でうろうろと街を彷徨っていたら…と考えただけで寿命が縮む。
俺は、恥を忍み、まずは蒼空の幼馴染に連絡してみることにした。
『お前マジで何したんだよ!蒼空泣いてたぞ。
とにかく、蒼空は俺のとこで預かるから。絶対に来るなよ。
蒼空の気が済むまでは絶対に還さないからな。』
電話が繋がった途端に響く大声。
良かった。幼馴染の所にいるならば、少なくとも安全ではあるだろう。
いや…彼がアルファである事を考えると全く良くは無いのだが、あのベータの男にぞっこんみたいだし、害は…害は…ないはずだ。多分。
いや。出来る限り急ごう。万が一蒼空が彼の家でまた何か変なことを覚えて帰って来たら、大変だから。
前回吹き込まれて帰って来たコトは、あれはあれで凄く良かったのだが、俺以外のアルファのアドバイスを受けたものだと考えるだけでムカついて、つい蒼空を可愛がり過ぎてしまった。
あの時の蒼空は…。って今は妄想している場合では無かったな。
俺は、出来る限り迅速に、今俺がすべきことをするまでだ。
俺はさっそくご両親に、お会いしてお話ししたい旨をお伝えした。
きっと先方も、このままではいけないと思っていたのだろう。明日すぐに時間を頂けることになった。
そして俺は、また蒼空のお母様が好きなどら焼きという唯一の防具を携え、一張羅のスーツに身を包み、ご実家の前に立った。
俺の最強の武器は、蒼空に対する誠実さと愛の深さとそれを貫く覚悟だ。むしろ、今の俺にはそれしかない。だが結婚する上ではそれが一番大切だと俺は思っている。蒼空のご両親もきっと解ってくれるはずだ。
行くぞ!土下座でもなんでもして、蒼空との結婚を、俺の事を、蒼空のご両親に認めて貰わなければ。
そうでなければ先に進めない。頑張れ!俺!!
タクシーに飛び乗って、しかも運転手さんにすぐに出して貰って逃げたという事は、今は本当に俺から離れたいという事に他ならないのではないだろうか。でも、万が一蒼空が待っていたら?
もしそうならば、もっと蒼空を傷つけてしまう。
そう思い立って、俺は車に飛び乗ると蒼空が乗ったタクシーを必死で追いかけたが、残念ながら途中で見失ってしまった。
車から降りて、呆然と立ち尽くす。そこに届いた、蒼空からのメッセージ。
「しばらく家出します。探さないでください」
探さないでください……。探さないでください……。心の中で、蒼空の声となって木霊した。
これは、相当傷つけてしまったのではないだろうか。
蒼空がプロポーズ待ちをしてくれている事は、いくらポンコツな俺だって解っていた。蒼空のあの幸せそうな瞳を、俺が曇らせてしまったなんて…。
俺も、この旅行でプロポーズするつもりだったんだ。実際に旅行に出るまでは。
でも、しかし、蒼空のこれからの長い長い人生の本当の笑顔を守る為には、このままではいけないんだ。
俺はちゃんと、蒼空のご両親に認めて貰わなくてはならない。
そうしなければ、この先には進めない。
蒼空は、ご両親の所に戻っているのだろうか。それとも、あの幼馴染の所だろうか。
一先ず蒼空がどこに居るのか、安全なのかだけでも確認しなくては。
もし万が一、あれだけ綺麗な蒼空が、傷心を隠さず涙も隠さずに、一人でうろうろと街を彷徨っていたら…と考えただけで寿命が縮む。
俺は、恥を忍み、まずは蒼空の幼馴染に連絡してみることにした。
『お前マジで何したんだよ!蒼空泣いてたぞ。
とにかく、蒼空は俺のとこで預かるから。絶対に来るなよ。
蒼空の気が済むまでは絶対に還さないからな。』
電話が繋がった途端に響く大声。
良かった。幼馴染の所にいるならば、少なくとも安全ではあるだろう。
いや…彼がアルファである事を考えると全く良くは無いのだが、あのベータの男にぞっこんみたいだし、害は…害は…ないはずだ。多分。
いや。出来る限り急ごう。万が一蒼空が彼の家でまた何か変なことを覚えて帰って来たら、大変だから。
前回吹き込まれて帰って来たコトは、あれはあれで凄く良かったのだが、俺以外のアルファのアドバイスを受けたものだと考えるだけでムカついて、つい蒼空を可愛がり過ぎてしまった。
あの時の蒼空は…。って今は妄想している場合では無かったな。
俺は、出来る限り迅速に、今俺がすべきことをするまでだ。
俺はさっそくご両親に、お会いしてお話ししたい旨をお伝えした。
きっと先方も、このままではいけないと思っていたのだろう。明日すぐに時間を頂けることになった。
そして俺は、また蒼空のお母様が好きなどら焼きという唯一の防具を携え、一張羅のスーツに身を包み、ご実家の前に立った。
俺の最強の武器は、蒼空に対する誠実さと愛の深さとそれを貫く覚悟だ。むしろ、今の俺にはそれしかない。だが結婚する上ではそれが一番大切だと俺は思っている。蒼空のご両親もきっと解ってくれるはずだ。
行くぞ!土下座でもなんでもして、蒼空との結婚を、俺の事を、蒼空のご両親に認めて貰わなければ。
そうでなければ先に進めない。頑張れ!俺!!
0
お気に入りに追加
205
あなたにおすすめの小説

孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
【完結】あなたの恋人(Ω)になれますか?〜後天性オメガの僕〜
MEIKO
BL
この世界には3つの性がある。アルファ、ベータ、オメガ。その中でもオメガは希少な存在で。そのオメガで更に希少なのは┉僕、後天性オメガだ。ある瞬間、僕は恋をした!その人はアルファでオメガに対して強い拒否感を抱いている┉そんな人だった。もちろん僕をあなたの恋人(Ω)になんてしてくれませんよね?
前作「あなたの妻(Ω)辞めます!」スピンオフ作品です。こちら単独でも内容的には大丈夫です。でも両方読む方がより楽しんでいただけると思いますので、未読の方はそちらも読んでいただけると嬉しいです!
後天性オメガの平凡受け✕心に傷ありアルファの恋愛
※独自のオメガバース設定有り
ふれて、とける。
花波橘果(はななみきっか)
BL
わけありイケメンバーテンダー×接触恐怖症の公務員。居場所探し系です。
【あらすじ】
軽い接触恐怖症がある比野和希(ひびのかずき)は、ある日、不良少年に襲われて倒れていたところを、通りかかったバーテンダー沢村慎一(さわむらしんいち)に助けられる。彼の店に連れていかれ、出された酒に酔って眠り込んでしまったことから、和希と慎一との間に不思議な縁が生まれ……。
慎一になら触られても怖くない。酒でもなんでも、少しずつ慣れていけばいいのだと言われ、ゆっくりと距離を縮めてゆく二人。
小さな縁をきっかけに、自分の居場所に出会うお話です。
ふしだらオメガ王子の嫁入り
金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか?
お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。
【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。
さよならの向こう側
よんど
BL
''Ωのまま死ぬくらいなら自由に生きようと思った''
僕の人生が変わったのは高校生の時。
たまたまαと密室で二人きりになり、自分の予期せぬ発情に当てられた相手がうなじを噛んだのが事の始まりだった。相手はクラスメイトで特に話した事もない顔の整った寡黙な青年だった。
時は流れて大学生になったが、僕達は相も変わらず一緒にいた。番になった際に特に解消する理由がなかった為放置していたが、ある日自身が病に掛かってしまい事は一変する。
死のカウントダウンを知らされ、どうせ死ぬならΩである事に縛られず自由に生きたいと思うようになり、ようやくこのタイミングで番の解消を提案するが...
運命で結ばれた訳じゃない二人が、不器用ながらに関係を重ねて少しずつ寄り添っていく溺愛ラブストーリー。
(※) 過激表現のある章に付けています。
*** 攻め視点
※当作品がフィクションである事を理解して頂いた上で何でもOKな方のみ拝読お願いします。
※2026年春庭にて本編の書き下ろし番外編を無配で配る予定です。BOOTHで販売(予定)の際にも付けます。
扉絵
YOHJI@yohji_fanart様

【完結】可愛いあの子は番にされて、もうオレの手は届かない
天田れおぽん
BL
劣性アルファであるオズワルドは、劣性オメガの幼馴染リアンを伴侶に娶りたいと考えていた。
ある日、仕えている王太子から名前も知らないオメガのうなじを噛んだと告白される。
運命の番と王太子の言う相手が落としていったという髪飾りに、オズワルドは見覚えがあった――――
※他サイトにも掲載中
★⌒*+*⌒★ ☆宣伝☆ ★⌒*+*⌒★
「婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!」
が、レジーナブックスさまより発売中です。
どうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m

白い部屋で愛を囁いて
氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。
シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。
※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる