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その後の二人
190.ドキドキご実家訪問
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翌日。その日は、蒼空の発情期が終わって初の日曜日だった。俺には蒼空のご両親に会うという一大イベントが控えていた。
どうやら蒼空は一週間に一回は実家に帰ると、ご両親に約束してきてしまったらしい。
ちょっとそれは多くないかな…俺たち二人だけの時間が…。と思わなくも無かったが、蒼空のご両親だってとてつもない修羅場を潜り抜けて来たに違いない。
その苦労を想えば、どちらかというと加害者側である俺が、柏木家の家族団らんに異議を唱える事はできなかった。
「僕の母さんは、ちょっと過保護だから、もしかしたら最初は正吾さんにキツく当たるかもしれないけど、絶対すぐに正吾さんが良い人だって解ってくれると思うから、きっと大丈夫だよ。でも、多分最初だけは…ごめんね。」
と蒼空が言ってくれているが、そりゃあそうだろう。俺は蒼空を金で買ったアルファだ。
地下オメガという憂き目に遭って、きっとご苦労されたであろう蒼空のお義母様が、俺を歓迎してくれるわけもない。
今日蒼空の母から向けられるであろう非難の目を思うと、気が重かった。
なんとか昼前には起きてきた、まだ若干気だるげな蒼空を車の助手席に乗せる。
俺の車のカーナビに、初めて蒼空のご実家の住所が登録された。これから毎週末行く場所だ。お気に入りに登録した。
道中、運転する俺の心臓は口から出そうだった。かつて、どんなに大事な商談でも、ここまで緊張した事は無いだろう。
カチカチで様子がおかしい俺に気が付き、「正吾さん、くれぐれも安全運転でお願いしますね。」と蒼空が心配して声を掛けて来る位だから、余程の様子だったのだろう。
やがて辿り着いた高級住宅地の一角に、その綺麗な庭に囲まれた豪奢なお宅はあった。
さすが元柏木商事の創業者一族だなぁ…。その邸宅の佇まいを見ただけで、ベータ家庭出身の俺とは根本的に育ちが違うんだと、足を踏み入れるのを尻込みしてしまう。
とても奥様だけで維持が出来るお宅じゃない。きっとお手伝いさんや執事がいらっしゃるんだろう。まずいな。使用人にお土産を買っていくという事を思いつきもしなかったから、何も買ってきていない。抜かってしまった。
「蒼空、今気が付いたんだけど、使用人へのお土産を買ってきた方が良かったんじゃないかな。今からでも、どこか近場で買えないだろうか。」
俺は緊張した面持ちで蒼空に尋ねた。
「え?使用人…う~ん。うちの古参の使用人じゃなくて、今通いで来ているのは宮藤家の使用人だし…う~ん。必要かなぁ。」
「宮藤家?」
「うん。父さんのお友達なんだ。」
「それは逆にもっと必要なんじゃないかな。直前の時間変更で、せっかくご用意して頂いていた昼食の予定がズレてしまったし。俺今からちょっとひとっ走りして…。」
俺は蒼空がお昼ご飯に呼ばれている事を知らなかったから、昨日は無理をさせてしまった。もし知っていたら、こんな失態は犯さなかったのに。
俺はそう言いながら車に乗り込もうとしたが、それは蒼空に止められた。
「いやいいよ。お昼に行くって言って、もう午後になっちゃってるし。それよりも、もっと待たせちゃった方が母さん怒るかもだし、とりあえず行こうか。」
「え…。う…うん。」
こんな事なら、昨夜蒼空を虐めすぎなけりゃ良かった。でも、理由をつけて出来る限り長く蒼空のナカに包まれていたかった。そうすれば、今日を想う緊張を、束の間でも忘れられたから。
俺は胃が痛くなりながらも、蒼空に続いて玄関ポーチをくぐった。
どうやら蒼空は一週間に一回は実家に帰ると、ご両親に約束してきてしまったらしい。
ちょっとそれは多くないかな…俺たち二人だけの時間が…。と思わなくも無かったが、蒼空のご両親だってとてつもない修羅場を潜り抜けて来たに違いない。
その苦労を想えば、どちらかというと加害者側である俺が、柏木家の家族団らんに異議を唱える事はできなかった。
「僕の母さんは、ちょっと過保護だから、もしかしたら最初は正吾さんにキツく当たるかもしれないけど、絶対すぐに正吾さんが良い人だって解ってくれると思うから、きっと大丈夫だよ。でも、多分最初だけは…ごめんね。」
と蒼空が言ってくれているが、そりゃあそうだろう。俺は蒼空を金で買ったアルファだ。
地下オメガという憂き目に遭って、きっとご苦労されたであろう蒼空のお義母様が、俺を歓迎してくれるわけもない。
今日蒼空の母から向けられるであろう非難の目を思うと、気が重かった。
なんとか昼前には起きてきた、まだ若干気だるげな蒼空を車の助手席に乗せる。
俺の車のカーナビに、初めて蒼空のご実家の住所が登録された。これから毎週末行く場所だ。お気に入りに登録した。
道中、運転する俺の心臓は口から出そうだった。かつて、どんなに大事な商談でも、ここまで緊張した事は無いだろう。
カチカチで様子がおかしい俺に気が付き、「正吾さん、くれぐれも安全運転でお願いしますね。」と蒼空が心配して声を掛けて来る位だから、余程の様子だったのだろう。
やがて辿り着いた高級住宅地の一角に、その綺麗な庭に囲まれた豪奢なお宅はあった。
さすが元柏木商事の創業者一族だなぁ…。その邸宅の佇まいを見ただけで、ベータ家庭出身の俺とは根本的に育ちが違うんだと、足を踏み入れるのを尻込みしてしまう。
とても奥様だけで維持が出来るお宅じゃない。きっとお手伝いさんや執事がいらっしゃるんだろう。まずいな。使用人にお土産を買っていくという事を思いつきもしなかったから、何も買ってきていない。抜かってしまった。
「蒼空、今気が付いたんだけど、使用人へのお土産を買ってきた方が良かったんじゃないかな。今からでも、どこか近場で買えないだろうか。」
俺は緊張した面持ちで蒼空に尋ねた。
「え?使用人…う~ん。うちの古参の使用人じゃなくて、今通いで来ているのは宮藤家の使用人だし…う~ん。必要かなぁ。」
「宮藤家?」
「うん。父さんのお友達なんだ。」
「それは逆にもっと必要なんじゃないかな。直前の時間変更で、せっかくご用意して頂いていた昼食の予定がズレてしまったし。俺今からちょっとひとっ走りして…。」
俺は蒼空がお昼ご飯に呼ばれている事を知らなかったから、昨日は無理をさせてしまった。もし知っていたら、こんな失態は犯さなかったのに。
俺はそう言いながら車に乗り込もうとしたが、それは蒼空に止められた。
「いやいいよ。お昼に行くって言って、もう午後になっちゃってるし。それよりも、もっと待たせちゃった方が母さん怒るかもだし、とりあえず行こうか。」
「え…。う…うん。」
こんな事なら、昨夜蒼空を虐めすぎなけりゃ良かった。でも、理由をつけて出来る限り長く蒼空のナカに包まれていたかった。そうすれば、今日を想う緊張を、束の間でも忘れられたから。
俺は胃が痛くなりながらも、蒼空に続いて玄関ポーチをくぐった。
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