【完結】もう一度君に蒼空を見せたい〜奴隷オークションで高額な処女地下オメガを買ってしまったので借金返済に追われています〜

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蒼空の日々

162.悲劇のヒロイン(オメガ視点)

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 ※親世代の話が長くなってしまいましたね…。この物語で哲也が果たす役割が大きすぎて、もはやどっちが主人公なんだか解らなくなってきましたが、最後ちゃんと交差しますので、今度は蒼空のお話をよろしくお願いいたします。

 時は遡って、哲也が死ぬ一ヶ月前。
 2026年2月。正吾と佐々木の熱愛報道が出た時に戻ります。

 蒼空視点です。――――――――――――――――――

 父は学生のうちは沢山遊びなさいと、大学生になっても僕に御曹司として会社仕事をさせたりはしなかった。
 人生で初めてする会社の仕事にもやっと慣れてきて、僕は極めて平穏に暮らしていた。

 なのに、正吾さんと佐々木さんの熱愛報道が出てから、僕の周りも騒がしくなった。

 どうやら僕は悲劇のヒロインらしい。


 世の中の認識はこうだ:
 まっさらで世間知らずな箱入り社長令息のオメガの僕は、借金のカタに地下オークションで売られ、そんな所に来る様な極悪アルファに買われた。
 極悪アルファはベータ家庭出身で良い血筋の高貴なオメガには、本来ならば触れる事も出来ない立場だ。男は優しくするふりをして、手に入れた極上のオメガを騙し、夜毎嬲って日頃の鬱憤を晴らした。

 僕は他に大人のアルファの男を知らなかったから、ふとした時にちょっと優しくされただけで、自己防衛本能で犯罪者に惚れ込んでしまった。しかも、発情期を利用されて意図せずツガイにまでなってしまった。

 番になってしまったら、オメガはツガイのアルファだけを求める。

 それなのに、当の極悪犯罪者のアルファは会社で高貴な出身のエリートオメガを落とすのに忙しい。毎晩デートで遅くなったりしていてなかなか家に帰ってこないから、僕は毎日地下で寂しい思いをしていた。

 極悪アルファは本当はその高貴なエリートオメガが本命で、玉の輿に乗って、エリートオメガのヒモになって毎日遊び暮らしたいと思っていたらしい。
 僕はその間の繋ぎというか、ただの性欲処理の道具で、今はその恋が実ったから僕は邪魔になったらしい。

 それで、邪魔者の僕をオメガシェルターに放り込んで、慰謝料も生活費も払わずに後は自分で働いて勝手に生きていってね!と言って、どうせ執行猶予になるのが解っていたから、僕を綺麗に捨てる為の口実作りとして自首して反省したふりをしたらしい。

 今は二人で仲良く同棲していて、もうすぐ結婚するらしい。

 しかも、週刊誌に二人の関係がバレたから、もう隠す必要は無いと二人は開き直って、林の中の愛の巣に引っ込んで今は二人だけの世界を満喫中らしい。



 う~んなんかさぁ、その当たらずも遠からずというか、強く否定するにもなんか否定しきれないというか…。
 もうとにかくやんなっちゃうよね。


 僕は正吾さんの事信じてるよ?でも、あれだけ言ったのに佐々木さんと同棲してるし?二人で仲良くクリスマスに出かけてる写真まで載っちゃってたし?しかも僕と暮らしていた家に佐々木さんを連れ込んで一緒に住んでるみたいだし? 

 なんか話の筋が通っちゃってる気がするのがいけ好かない。とにかく癪に障る。なんかムカつく。そんな気持ちだ。


 悲しいとかより怒りの方が強い。僕より16歳も年上で大人なのに、何やってくれちゃってるの?って感じ。
 人に誤解されるような事するなよって感じ。

 別に強がりなんかじゃないもんねーーだ。


 そんなわけで悲劇のヒロインになってしまったらしい僕だが、週刊誌の一回目の報道の時は会社中から同情の視線を浴びるだけで済んだ。それでも居た堪れない事には違いないが、別に実害は無かった。

 でも、林の中の家への二人の逃避行が取り上げられた二回目の報道から、皆んな週刊誌の報道の方を信じ始めた。僕は露骨に慰められ始めた。しかも上司がお見合い写真持ってきたり、同僚が合コンとか組んでくれる様になって、ちょっと。いやかなり有難迷惑だった。

 それって、君たちは完全に二人が出来てるって思ってるってことでしょ?
 僕達を見くびらないでよね。僕たちの繋がりは本物なんだから。別にあんたたちが心配してくれる必要なんて、全く無いんだからさ。


 でも、僕は正吾さんを信じてるから大丈夫です!なんて言ったら、もっと同情的な視線になって、挙げ句の果てにはストックホルム症候群の治療、ちゃんと病院行ってる?とか聞いてくる。


 だから僕はストックホルム症候群じゃないんだってば。警察の人の考え過ぎなんだってば。皆んな信じてくれないんだ。

 僕の心の中にある正吾さんへの純粋な思慕を。僕たちが積み重ねてきた愛に溢れた穏やかな日々を、皆んな解ってくれないんだ。

 それが酷く悲しい。
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