【完結】もう一度君に蒼空を見せたい〜奴隷オークションで高額な処女地下オメガを買ってしまったので借金返済に追われています〜

夜曲

文字の大きさ
上 下
189 / 329
分かたれた道

127.逃避行

しおりを挟む
 当の佐々木は、

「いやぁ~退去勧告は予想外だったね…。
 同居人の届け出を出し忘れた俺のリスク管理が出来てなかっただけだからさ、気にしないでよ。」

 なんて言いながら苦笑いするだけで、俺を責めてもくれない。
 もしお前のせいでと言われれば平謝り出来て少しは罪悪感が薄れるかもしれないのに、逆に佐々木に対する申し訳なさだけが募っていく。


 同居人が増えることに対して家主に申告していなかった規約違反は確かだから、佐々木は仕方なく一月以内の退去に応じる事になった。


 佐々木は地方の出身だから、東京に身寄りも居ない。記者やパパラッチに追われているこの状態でホテルに泊まっても迷惑になる。
 行く当てもないし、今は不動産屋さんに行って新しい家を探せる状況でもないから、とりあえず次の家が見つかるまではと佐々木は俺の家に引っ越すことになった。


 蒼空との愛の巣に他のオメガを入れる事は蒼空が嫌がるかもしれないと思ったが、背に腹は代えられなかった。

 人目が付かない夜に、大手ではない時間の融通が利く零細の引っ越し業者を見つけて、俺たちは夜逃げ同然に引っ越した。
 同然ではないか。それは正しく夜逃げだった。


 そんなわけで、今は俺と蒼空の愛の巣だった雑木林の中のぼろい一軒家に、佐々木のピカピカな高級車が停まっている。場違い感が半端ない。


 今度は俺のボロ家の前に取材陣が詰めているが、ここは隣家まで500メートルはある。家の前も袋小路の私道で、通行の邪魔になる事もない。決して誰かの迷惑にはならないだろう。


 俺は自分が地下で寝泊まりし、佐々木に上物うわものの部分を使ってもらっている。
 蒼空との夫婦の寝室に、何故か違うオメガが居る状況は不思議だった。
 得も言われぬ罪悪感だ。


 俺は決して不貞は働いていない。
 だというのに他のオメガを蒼空との愛の巣に連れ込んで、夫婦の寝室にまで入れてしまっているこの状況では、この身の潔白を全く証明できない。


 俺の家に二人で逃避行してきたというこの状況は、俺たちの間に何かあるという事を決定づけている様に見えるらしい。
 取材陣もこんな一般人なんて追ってないでそろそろ飽きてくれればいいのに、今度はこの家の写真付きでますます週刊誌を賑わせている様だ。

 頼むから早く飽きてくれ。


 でも、そんな中で困った事が起きた。それは、佐々木の発情期だった。

 俺と佐々木が同居を始めたのは去年の11月の佐々木の発情期明けだったらしい。


 うん。言われてみればなんか甘い香りが佐々木の布団や部屋からするなと思ってたよ。
 その香りが俺と佐々木の間に何かあったんじゃないかと更に勘違いする一因になったんだった。
 なるほど。発情期明けだったのか。


 だから、ちょうどあれから3ヶ月。
 俺の家に二人で夜逃げした後に、佐々木は発情期になってしまった。


 しかも、佐々木は普段飲んでいる発情期用の抑制剤を、引っ越しのごたごたで“無くしてしまった”らしい。なんてことだ!


 俺は佐々木に蒼空用の発情抑制剤を渡して、出来る限り傍に近づかない様にして、地下に籠る事にした。
 万が一にも何か間違いが起きない様に、念のため自分も抑制剤を多めに飲んである。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

【完結】あなたの恋人(Ω)になれますか?〜後天性オメガの僕〜

MEIKO
BL
この世界には3つの性がある。アルファ、ベータ、オメガ。その中でもオメガは希少な存在で。そのオメガで更に希少なのは┉僕、後天性オメガだ。ある瞬間、僕は恋をした!その人はアルファでオメガに対して強い拒否感を抱いている┉そんな人だった。もちろん僕をあなたの恋人(Ω)になんてしてくれませんよね? 前作「あなたの妻(Ω)辞めます!」スピンオフ作品です。こちら単独でも内容的には大丈夫です。でも両方読む方がより楽しんでいただけると思いますので、未読の方はそちらも読んでいただけると嬉しいです! 後天性オメガの平凡受け✕心に傷ありアルファの恋愛 ※独自のオメガバース設定有り

ふれて、とける。

花波橘果(はななみきっか)
BL
わけありイケメンバーテンダー×接触恐怖症の公務員。居場所探し系です。 【あらすじ】  軽い接触恐怖症がある比野和希(ひびのかずき)は、ある日、不良少年に襲われて倒れていたところを、通りかかったバーテンダー沢村慎一(さわむらしんいち)に助けられる。彼の店に連れていかれ、出された酒に酔って眠り込んでしまったことから、和希と慎一との間に不思議な縁が生まれ……。  慎一になら触られても怖くない。酒でもなんでも、少しずつ慣れていけばいいのだと言われ、ゆっくりと距離を縮めてゆく二人。  小さな縁をきっかけに、自分の居場所に出会うお話です。

ふしだらオメガ王子の嫁入り

金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか? お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

さよならの向こう側

よんど
BL
''Ωのまま死ぬくらいなら自由に生きようと思った'' 僕の人生が変わったのは高校生の時。 たまたまαと密室で二人きりになり、自分の予期せぬ発情に当てられた相手がうなじを噛んだのが事の始まりだった。相手はクラスメイトで特に話した事もない顔の整った寡黙な青年だった。 時は流れて大学生になったが、僕達は相も変わらず一緒にいた。番になった際に特に解消する理由がなかった為放置していたが、ある日自身が病に掛かってしまい事は一変する。 死のカウントダウンを知らされ、どうせ死ぬならΩである事に縛られず自由に生きたいと思うようになり、ようやくこのタイミングで番の解消を提案するが... 運命で結ばれた訳じゃない二人が、不器用ながらに関係を重ねて少しずつ寄り添っていく溺愛ラブストーリー。 (※) 過激表現のある章に付けています。 *** 攻め視点 ※当作品がフィクションである事を理解して頂いた上で何でもOKな方のみ拝読お願いします。 ※2026年春庭にて本編の書き下ろし番外編を無配で配る予定です。BOOTHで販売(予定)の際にも付けます。 扉絵  YOHJI@yohji_fanart様

【完結】可愛いあの子は番にされて、もうオレの手は届かない

天田れおぽん
BL
劣性アルファであるオズワルドは、劣性オメガの幼馴染リアンを伴侶に娶りたいと考えていた。 ある日、仕えている王太子から名前も知らないオメガのうなじを噛んだと告白される。 運命の番と王太子の言う相手が落としていったという髪飾りに、オズワルドは見覚えがあった―――― ※他サイトにも掲載中 ★⌒*+*⌒★ ☆宣伝☆ ★⌒*+*⌒★  「婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!」  が、レジーナブックスさまより発売中です。  どうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m

白い部屋で愛を囁いて

氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。 シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。 ※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

処理中です...