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分かたれた道
127.逃避行
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当の佐々木は、
「いやぁ~退去勧告は予想外だったね…。
同居人の届け出を出し忘れた俺のリスク管理が出来てなかっただけだからさ、気にしないでよ。」
なんて言いながら苦笑いするだけで、俺を責めてもくれない。
もしお前のせいでと言われれば平謝り出来て少しは罪悪感が薄れるかもしれないのに、逆に佐々木に対する申し訳なさだけが募っていく。
同居人が増えることに対して家主に申告していなかった規約違反は確かだから、佐々木は仕方なく一月以内の退去に応じる事になった。
佐々木は地方の出身だから、東京に身寄りも居ない。記者やパパラッチに追われているこの状態でホテルに泊まっても迷惑になる。
行く当てもないし、今は不動産屋さんに行って新しい家を探せる状況でもないから、とりあえず次の家が見つかるまではと佐々木は俺の家に引っ越すことになった。
蒼空との愛の巣に他のオメガを入れる事は蒼空が嫌がるかもしれないと思ったが、背に腹は代えられなかった。
人目が付かない夜に、大手ではない時間の融通が利く零細の引っ越し業者を見つけて、俺たちは夜逃げ同然に引っ越した。
同然ではないか。それは正しく夜逃げだった。
そんなわけで、今は俺と蒼空の愛の巣だった雑木林の中のぼろい一軒家に、佐々木のピカピカな高級車が停まっている。場違い感が半端ない。
今度は俺のボロ家の前に取材陣が詰めているが、ここは隣家まで500メートルはある。家の前も袋小路の私道で、通行の邪魔になる事もない。決して誰かの迷惑にはならないだろう。
俺は自分が地下で寝泊まりし、佐々木に上物の部分を使ってもらっている。
蒼空との夫婦の寝室に、何故か違うオメガが居る状況は不思議だった。
得も言われぬ罪悪感だ。
俺は決して不貞は働いていない。
だというのに他のオメガを蒼空との愛の巣に連れ込んで、夫婦の寝室にまで入れてしまっているこの状況では、この身の潔白を全く証明できない。
俺の家に二人で逃避行してきたというこの状況は、俺たちの間に何かあるという事を決定づけている様に見えるらしい。
取材陣もこんな一般人なんて追ってないでそろそろ飽きてくれればいいのに、今度はこの家の写真付きでますます週刊誌を賑わせている様だ。
頼むから早く飽きてくれ。
でも、そんな中で困った事が起きた。それは、佐々木の発情期だった。
俺と佐々木が同居を始めたのは去年の11月の佐々木の発情期明けだったらしい。
うん。言われてみればなんか甘い香りが佐々木の布団や部屋からするなと思ってたよ。
その香りが俺と佐々木の間に何かあったんじゃないかと更に勘違いする一因になったんだった。
なるほど。発情期明けだったのか。
だから、ちょうどあれから3ヶ月。
俺の家に二人で夜逃げした後に、佐々木は発情期になってしまった。
しかも、佐々木は普段飲んでいる発情期用の抑制剤を、引っ越しのごたごたで“無くしてしまった”らしい。なんてことだ!
俺は佐々木に蒼空用の発情抑制剤を渡して、出来る限り傍に近づかない様にして、地下に籠る事にした。
万が一にも何か間違いが起きない様に、念のため自分も抑制剤を多めに飲んである。
「いやぁ~退去勧告は予想外だったね…。
同居人の届け出を出し忘れた俺のリスク管理が出来てなかっただけだからさ、気にしないでよ。」
なんて言いながら苦笑いするだけで、俺を責めてもくれない。
もしお前のせいでと言われれば平謝り出来て少しは罪悪感が薄れるかもしれないのに、逆に佐々木に対する申し訳なさだけが募っていく。
同居人が増えることに対して家主に申告していなかった規約違反は確かだから、佐々木は仕方なく一月以内の退去に応じる事になった。
佐々木は地方の出身だから、東京に身寄りも居ない。記者やパパラッチに追われているこの状態でホテルに泊まっても迷惑になる。
行く当てもないし、今は不動産屋さんに行って新しい家を探せる状況でもないから、とりあえず次の家が見つかるまではと佐々木は俺の家に引っ越すことになった。
蒼空との愛の巣に他のオメガを入れる事は蒼空が嫌がるかもしれないと思ったが、背に腹は代えられなかった。
人目が付かない夜に、大手ではない時間の融通が利く零細の引っ越し業者を見つけて、俺たちは夜逃げ同然に引っ越した。
同然ではないか。それは正しく夜逃げだった。
そんなわけで、今は俺と蒼空の愛の巣だった雑木林の中のぼろい一軒家に、佐々木のピカピカな高級車が停まっている。場違い感が半端ない。
今度は俺のボロ家の前に取材陣が詰めているが、ここは隣家まで500メートルはある。家の前も袋小路の私道で、通行の邪魔になる事もない。決して誰かの迷惑にはならないだろう。
俺は自分が地下で寝泊まりし、佐々木に上物の部分を使ってもらっている。
蒼空との夫婦の寝室に、何故か違うオメガが居る状況は不思議だった。
得も言われぬ罪悪感だ。
俺は決して不貞は働いていない。
だというのに他のオメガを蒼空との愛の巣に連れ込んで、夫婦の寝室にまで入れてしまっているこの状況では、この身の潔白を全く証明できない。
俺の家に二人で逃避行してきたというこの状況は、俺たちの間に何かあるという事を決定づけている様に見えるらしい。
取材陣もこんな一般人なんて追ってないでそろそろ飽きてくれればいいのに、今度はこの家の写真付きでますます週刊誌を賑わせている様だ。
頼むから早く飽きてくれ。
でも、そんな中で困った事が起きた。それは、佐々木の発情期だった。
俺と佐々木が同居を始めたのは去年の11月の佐々木の発情期明けだったらしい。
うん。言われてみればなんか甘い香りが佐々木の布団や部屋からするなと思ってたよ。
その香りが俺と佐々木の間に何かあったんじゃないかと更に勘違いする一因になったんだった。
なるほど。発情期明けだったのか。
だから、ちょうどあれから3ヶ月。
俺の家に二人で夜逃げした後に、佐々木は発情期になってしまった。
しかも、佐々木は普段飲んでいる発情期用の抑制剤を、引っ越しのごたごたで“無くしてしまった”らしい。なんてことだ!
俺は佐々木に蒼空用の発情抑制剤を渡して、出来る限り傍に近づかない様にして、地下に籠る事にした。
万が一にも何か間違いが起きない様に、念のため自分も抑制剤を多めに飲んである。
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