【完結】もう一度君に蒼空を見せたい〜奴隷オークションで高額な処女地下オメガを買ってしまったので借金返済に追われています〜

分かたれた道

124．正吾の安否（オメガ視点）

＜蒼空視点＞

　2025年12月、モールス経営陣に対する刑事訴訟と人権弁護士団による民事訴訟でモールスへの解体命令及び損害賠償命令が出た。被害に遭った地下オメガは生死を問わず一人あたり5千万円の賠償金が出る事が決定したとニュースが流れた。

　生死を問わずとした事で、今から被害者を始末したところで、モールス側に殆ど利は無い。

　蒼空は、シェルター暮らしで身の安全が確保されているうちにと、今まで頑なにしていなかった被害者名簿に名を連ねる事とした。
　このお金を使って、正吾の借金を返そうと思ったのである。

　多分正吾は仕事を失ってまたお金に困っているだろうから今すぐ安心させてあげたい。どうしても正吾に連絡を取って、5千万円の目処がたったと伝えたいと蒼空はシェルター職員に無茶を言った。

　当然シェルター職員は蒼空が被害者であるという状況を知っていたので、それは蒼空くんのお金だから、加害者に渡す必要は全く無いんだと最初は頑なに拒否していた。

　そこで蒼空は正吾が睡眠時間を削って身を粉にして働いて、蒼空だけに食事を食べさせてくれていたエピソードなど数々のエピソードを話した。その人は良い人だからシェルターの職員をしているタイプの人だったから、涙もろい彼の同情を買う事が出来た。蒼空の必死の訴えで気が変わったシェルター職員は、秘密ですよと代理で正吾に連絡を取ってくれる事になった。

　シェルター職員は正吾の家を訪ねたが、正吾は不在だった。蒼空の事で連絡がしたいと置手紙をして帰ったが、一週間待っても記載した電話番号に電話がかかってくることは無かった。

　その頃には正吾は佐々木の家にほぼすべての荷物を運び入れて寝泊まりしており、全く自宅に帰っていなかったのである。


　シェルター職員は、時間や曜日を変えて何度か正吾の家を訪ねたが、正吾はその度に不在だった。

　ポストには郵便物も溜まっており、正吾が家に帰っていない事は明らかだった。


　シェルター職員から正吾が恐らく暫く家に帰っていない事を聞いた蒼空は、正吾の身に何かあったんじゃないかと怖くなった。
　正吾さんは自分から自首していたから、もしかしたら裏切者とみなされて、モールスに消されてしまったのかもしれない。


　どうしよう！僕のせいだ！正吾さんは僕を自由にするために危ない橋を渡ったんだ！と蒼空は気が気でなかった。


　接触禁止を言い渡されている蒼空が警察に駆け込んで、迂闊に警察を刺激する訳にはいかない。正吾さんは執行猶予中の身だし、うっかり何かが見つかってしまって、その拍子に執行猶予が取り消されてしまったら大変だ。

　さぁ、どうしよう。そうだ！こういう時はテレビドラマではいつも興信所に駆け込んでいた！と蒼空は急いで興信所に駆け込んだ。


　蒼空はただ、賠償金が入るからそれをローンの返済に回せるから安心してねと善意で正吾に伝えようと思っただけなのに。ただ正吾の身の安全を危惧して生存確認がしたかっただけなのに。

　藪を突いてしまったが為に、予期せぬ大蛇を呼び寄せてしまった。