【完結】もう一度君に蒼空を見せたい〜奴隷オークションで高額な処女地下オメガを買ってしまったので借金返済に追われています〜

新しい命

101．地下オメガの懐妊

　地下オークションにとって、地下オメガの存在の秘匿は、最重要事項だ。

　オークション規定では地下オメガの飼育場所における同居人の存在を認めていない。

　一方で、子どもは一人居るだけで大量の物資を必要とする。
　子供が生まれてしまえば、アルファが一人で住んでいるはずの家に連日連夜子供用品が届いたり、おむつが届いたりと怪しい事この上ない。ミルクの空き缶や使用済みオムツのゴミが出るのもどう考えてもおかしいだろう。


　また、子供を地下だけで育てるという事は理論上はやって出来なくはない。が、子供の物心がつかないうちは時間を持て余してしまってストレスで泣きわめいてしまい、地下オメガの精神状態が更に悪くなるだけで実質不可能だろう。
　長時間日光に当たらなければ母子共にセロトニン不足になり、慢性的にストレスやイライラ感、うつ症状や不眠といった症状が出易くなるからだ。


　地下オメガ側も産後の精神状態が良くない中で、やれ夜泣き対応やら授乳だミルクだおむつ替えやらで、子供の世話に忙殺される。その上更に子供が同じ空間に存在している状況、もっと言えば子供が見ている目の前で、本来の地下オメガの役割も果たさなければならない。それは精神的にも難しいだろう。


　心中という悲しい結果を生まない為にも、地下オメガは妊娠したら基本的には堕胎する事。
　万が一堕胎しない場合には、産まれた子供を記入式オークションに必ず出品する事が義務付けられていた。飼い主がどうしてもその子を育てたいならば、また自分が落札すればよい。


　地下オメガは戸籍が無いため、通常の病院では出産が出来ない。
　地下室での出産も出来なくはないが万が一の際の救命設備が整っていない為、安全ではないだろう。

　飼い主の意向によるが、その多くはモールスの息がかかった地下オメガの出産だけを扱う超小規模産院での匿名出産となる。

　表向きは経済状況により子供が育てられない人、妊娠を親や周囲に秘密にしたい未成年やレイプ被害などでの意図せぬ妊娠などの困難を抱える母子を助けるために匿名出産を扱うＮＰＯ法人だ。

　困難を抱える母子の支援の為に長期の入院を推奨しており、もし飼い主が子供を手放すことを考えているのであれば、大体は第二の性の判断がつく一ヶ月後ごろに退院となる。性別が解っていた方が子供がアルファだった時の出品価格が上がる。それに、出産したばかりのオメガは地下オメガとしては“使えない”から、託児所宜しく地下オメガをどこかに預けておいた方が何かと面倒がないからだ。


　退院時、産まれた子供は水面下で行われた記入式オークションの落札先にそのまま養子に行くことになるか、匿名のままのオメガがそのまま“連れ帰る”かの二択となる。