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この世の地獄(蒼空の父)
X5.可愛さ余って
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「あーあーそうだよ。もう何とでも言え。
俺は、リスク管理が充分に出来てなくて、自分の偽善の為に家族も何もかも犠牲にしてしまった愚かな男だよ。
俺の家族まるごと養えるお前と違って、目の前の若者一人助けられない無力な男だよ。
俺をけなしてそれで満足か?
お前、俺の事が好きなんじゃないのかよ。」
軽く探ってみる。
「好きだったさ。昔は単純に好きだったよ。
でも、俺だけのものにならないお前を、同じくらい憎んでもいた。
人気オメガ俳優と電撃結婚して、あんな綺麗な息子が出来て。
もともと俺の手が届かない存在だったが、更に届かない所にどんどん行っちまうお前がな。
拗らせてんだよ。こっちは。」
成程。可愛さ余って憎さ百倍という所か。
「拗らせすぎだろうが。
お前にだってお綺麗で優秀な妻子がいるだろうが。
なんで俺の方には居ちゃダメなんだよ。横暴だろうが。」
哲也は何も言わずに微笑んでいる。その何を考えているのか解らない笑顔が怖い。
「なぁ、もし俺がお前の言う事聞いたら、凛空も蒼空も、そして目の前のこの俺の顔をした男も、みんな助けてくれるのか?」
「そうだなぁ~。少なくとも蒼空くんは助けたいとは思っているよ。」
そこに凛空の名前が入っていない所に、この男の本質を感じる。
間違いない。この男は凛空を恨んでいる。
運命のツガイに買われたから幸せ?本当にそんな都合の良い話があるのか?
この男は間違いなく何かを隠している。でもまずは、聞き出し易そうな蒼空の方からだ。
「お前、もしかして蒼空が今どこにいるか知ってんのか?」
「そりゃあね。知りたい?」
「知りたいに決まってんだろ!
頼む、教えてくれ!」
「俺が何を望んでるか、解ってるだろ?それをくれ。」
「俺の身体だなんてキモイ事言うんじゃねーぞ。」
「そのお前の身体なんだなぁ。これが。
出来れば心も欲しいなぁ~。」
その言葉を聞いた瞬間、櫂は目を吊り上げた。
「お前!!!
……。
はぁ~~~。
ほんとに蒼空の居場所知ってんなら好きにしていいぞ。だが心は無理だ。
俺の心は一生凛空だけのもんだ。」
櫂は抗うのをやめた。今は相手に逆らうべきではない。でも、全て相手の思い通りになるのも癪だったから、せめてもの抵抗を示す。
「ふ~ん。じゃあ、凛空さんの居場所は教えてあげない。」
「お前!知ってんのかよ!
さっき探し出す手立てを見つけるとかなんとか言ってただろうが!」
さっきから、怒りが噴き出たり、少し冷静になってそれを宥めたり。と思ったらまた新事実が出てきて、また湧き出してしまった怒りを、これまた宥めだり。自分の情緒をコントロールする事が難しい。
「もちろん。なにせ、凛空さんの運命のツガイに情報を流したのは俺だからね。」
「なんだよ!それ!
お前!ホントなんなんだよ!
俺が欲しいなら直接言えよ!
家族を逃がす為だったら、俺だけ残ってお前のおもちゃになっても良かったのに!
なんなんだよ!くそっ!ホントに…。ホントに…なんで凛空と蒼空を巻き込むんだよ…。」
最後の方は少し涙声だった。
「だからだよ。お前が俺以外の事を大事に思ってるのは癪に障るからだよ。」
「お前っ!哲也、お前!」
櫂は激昂して、力が入らない手で一生懸命に哲也を殴った。
全く手加減はしていないつもりだったが、薬の効果がまだ切れないのか、なかなか哲也に有効打を与えられない。
ネコパンチにしかなっていないのが心底情けない。
俺は、リスク管理が充分に出来てなくて、自分の偽善の為に家族も何もかも犠牲にしてしまった愚かな男だよ。
俺の家族まるごと養えるお前と違って、目の前の若者一人助けられない無力な男だよ。
俺をけなしてそれで満足か?
お前、俺の事が好きなんじゃないのかよ。」
軽く探ってみる。
「好きだったさ。昔は単純に好きだったよ。
でも、俺だけのものにならないお前を、同じくらい憎んでもいた。
人気オメガ俳優と電撃結婚して、あんな綺麗な息子が出来て。
もともと俺の手が届かない存在だったが、更に届かない所にどんどん行っちまうお前がな。
拗らせてんだよ。こっちは。」
成程。可愛さ余って憎さ百倍という所か。
「拗らせすぎだろうが。
お前にだってお綺麗で優秀な妻子がいるだろうが。
なんで俺の方には居ちゃダメなんだよ。横暴だろうが。」
哲也は何も言わずに微笑んでいる。その何を考えているのか解らない笑顔が怖い。
「なぁ、もし俺がお前の言う事聞いたら、凛空も蒼空も、そして目の前のこの俺の顔をした男も、みんな助けてくれるのか?」
「そうだなぁ~。少なくとも蒼空くんは助けたいとは思っているよ。」
そこに凛空の名前が入っていない所に、この男の本質を感じる。
間違いない。この男は凛空を恨んでいる。
運命のツガイに買われたから幸せ?本当にそんな都合の良い話があるのか?
この男は間違いなく何かを隠している。でもまずは、聞き出し易そうな蒼空の方からだ。
「お前、もしかして蒼空が今どこにいるか知ってんのか?」
「そりゃあね。知りたい?」
「知りたいに決まってんだろ!
頼む、教えてくれ!」
「俺が何を望んでるか、解ってるだろ?それをくれ。」
「俺の身体だなんてキモイ事言うんじゃねーぞ。」
「そのお前の身体なんだなぁ。これが。
出来れば心も欲しいなぁ~。」
その言葉を聞いた瞬間、櫂は目を吊り上げた。
「お前!!!
……。
はぁ~~~。
ほんとに蒼空の居場所知ってんなら好きにしていいぞ。だが心は無理だ。
俺の心は一生凛空だけのもんだ。」
櫂は抗うのをやめた。今は相手に逆らうべきではない。でも、全て相手の思い通りになるのも癪だったから、せめてもの抵抗を示す。
「ふ~ん。じゃあ、凛空さんの居場所は教えてあげない。」
「お前!知ってんのかよ!
さっき探し出す手立てを見つけるとかなんとか言ってただろうが!」
さっきから、怒りが噴き出たり、少し冷静になってそれを宥めたり。と思ったらまた新事実が出てきて、また湧き出してしまった怒りを、これまた宥めだり。自分の情緒をコントロールする事が難しい。
「もちろん。なにせ、凛空さんの運命のツガイに情報を流したのは俺だからね。」
「なんだよ!それ!
お前!ホントなんなんだよ!
俺が欲しいなら直接言えよ!
家族を逃がす為だったら、俺だけ残ってお前のおもちゃになっても良かったのに!
なんなんだよ!くそっ!ホントに…。ホントに…なんで凛空と蒼空を巻き込むんだよ…。」
最後の方は少し涙声だった。
「だからだよ。お前が俺以外の事を大事に思ってるのは癪に障るからだよ。」
「お前っ!哲也、お前!」
櫂は激昂して、力が入らない手で一生懸命に哲也を殴った。
全く手加減はしていないつもりだったが、薬の効果がまだ切れないのか、なかなか哲也に有効打を与えられない。
ネコパンチにしかなっていないのが心底情けない。
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