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発情期の失敗
65.闇医者グッジョブ
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「今回は、発情期が辛くてアルファを求めて外に出たがって檻に体当たりした打撲傷。
それからごみを見るとここ3日位殆ど食べていないようですから、急激な栄養失調による衰弱と水分不足による脱水症状ですね。
これだけ身体が辛い状況で発情期が抑えられないと更に体力を消耗するので、一時的に強い発情抑制剤を処方しておきますね。このペン型注射を毎日太ももに打ってください。
仕事が忙しくてもちゃんと毎日顔を見てあげて下さいよ。ましてや発情期に放置するなんて、あなたは鬼ですか。
二度目やったら、あなたは地下オメガを飼育するにふさわしくないと判断して、強制的に連れ帰りますからね。
いいですね。」
「はい。肝に銘じます。
大変申し訳ございませんでした。」
正吾は、ただただ心を込めて頭を下げるしかなかった。
ここで言い訳を言うのは噓っぽくなり、心証が悪くなる可能性がある。得策ではないと経験上知っている。
「まぁ、あなたも少し体調が悪い様だ。風邪ですか?」
さすが医者だ。見た目でわかるらしい。
「はい。そうなんです。実は二日ほど風邪で寝込んでいまして、うつしてはいけないと思って、完全に治るまで地下に下りるのを遠慮していたんです。
内線は毎日掛けていたのですが、まさか発情期だとは知らなくて。次からはかならず遠くからでも顔をみる様にします。
この度は大変申し訳ございませんでした。」
「良いでしょう。この子はまだ来たばかりの様ですからね。
発情期が来た事を飼い主に知られるのを隠していたのでしょう。
最初の発情期にはよくある事です。想像はつきますよ。
今後は地下での鎖も徹底してくださいね。
今回は私の心の中だけに留めて、罰金もやめておきましょう。
あなたは珍しく、なかなか人の心がある飼い主の様ですから。」
「っ!恩に着ます。実は返済に回すお金も足り無くて夜も必死にアルバイトをしているんです。
罰金が無いのは本当に助かります!
今日から、いや今から首輪に鎖をつけます。」
「ええ。このオメガは外に出たい様ですからね。脱走防止にぜひそうしてください。
万が一逃げ出したら、あなたもこの子も、無事では済まない。
解りますね。」
「はい。肝に銘じます。本日は本当にありがとうございました。」
闇医者は、俺が蒼空くんに鎖を付けるのを見届けて、栄養と水分補給の点滴が終わると帰っていった。
闇医者を見送って地下室に戻ってきた正吾は、自分のふがいなさに拳を握りしめた。
本当に、危うく死なせてしまうところだった。そして、危うく自分の唯一を連れていかれてしまうところだった。
お金を稼がなくては。少なくとも、罰金を取られてもオメガを連れて行かれないだけの金額を稼いで、貯金しておかなくては。
---------------------------
※地下オークションの組織は、正吾の買い物を全て見張っています。
何故なら、逃げ出そうとするならば航空券や逃亡に必要なグッズを。オメガを外に出そうとするならば、地下では必要が無い様な上着や靴を買うだろうし、今回の様に長い鎖を買ったのは、地下以外で使う事を想定している――つまり、地上に地下オメガを出しているという典型例として把握しているので、エマゾンで長い鎖を買った時から、地下オークションの組織では、正吾が地下オメガを地上の家で過ごさせている事を把握しており、見張りも派遣されていました。
しかし、正吾はカーテンなども完全に塞いでいて、尚且つカーテンも分厚い一級遮光カーテンだった。窓とカーテンの隙間などから見えたオメガを写真に撮って報告するはずが、見張りもなかなかオメガを地上に出しているという証拠を見つけることが出来ずにいました。
今回闇医者が、地下での鎖不使用を報告せず、オメガは外に出ようと檻に体当たりまでしていたという事を報告することで、購入した鎖は地上に出す為ではなく、きっと地下で使用する為に買ったんだという結論となり、限りなく黒に近くて怪しいけれども、正吾は処罰を逃れたという形になりました。
闇医者はきっと派遣先でとんでもない状態になっている地下オメガを多数目撃していて、さすがに良心が痛んでいたのでしょう。正吾の誠実さに絆されてくれて良かった。
今回は完全に闇医者グッジョブでした。
それからごみを見るとここ3日位殆ど食べていないようですから、急激な栄養失調による衰弱と水分不足による脱水症状ですね。
これだけ身体が辛い状況で発情期が抑えられないと更に体力を消耗するので、一時的に強い発情抑制剤を処方しておきますね。このペン型注射を毎日太ももに打ってください。
仕事が忙しくてもちゃんと毎日顔を見てあげて下さいよ。ましてや発情期に放置するなんて、あなたは鬼ですか。
二度目やったら、あなたは地下オメガを飼育するにふさわしくないと判断して、強制的に連れ帰りますからね。
いいですね。」
「はい。肝に銘じます。
大変申し訳ございませんでした。」
正吾は、ただただ心を込めて頭を下げるしかなかった。
ここで言い訳を言うのは噓っぽくなり、心証が悪くなる可能性がある。得策ではないと経験上知っている。
「まぁ、あなたも少し体調が悪い様だ。風邪ですか?」
さすが医者だ。見た目でわかるらしい。
「はい。そうなんです。実は二日ほど風邪で寝込んでいまして、うつしてはいけないと思って、完全に治るまで地下に下りるのを遠慮していたんです。
内線は毎日掛けていたのですが、まさか発情期だとは知らなくて。次からはかならず遠くからでも顔をみる様にします。
この度は大変申し訳ございませんでした。」
「良いでしょう。この子はまだ来たばかりの様ですからね。
発情期が来た事を飼い主に知られるのを隠していたのでしょう。
最初の発情期にはよくある事です。想像はつきますよ。
今後は地下での鎖も徹底してくださいね。
今回は私の心の中だけに留めて、罰金もやめておきましょう。
あなたは珍しく、なかなか人の心がある飼い主の様ですから。」
「っ!恩に着ます。実は返済に回すお金も足り無くて夜も必死にアルバイトをしているんです。
罰金が無いのは本当に助かります!
今日から、いや今から首輪に鎖をつけます。」
「ええ。このオメガは外に出たい様ですからね。脱走防止にぜひそうしてください。
万が一逃げ出したら、あなたもこの子も、無事では済まない。
解りますね。」
「はい。肝に銘じます。本日は本当にありがとうございました。」
闇医者は、俺が蒼空くんに鎖を付けるのを見届けて、栄養と水分補給の点滴が終わると帰っていった。
闇医者を見送って地下室に戻ってきた正吾は、自分のふがいなさに拳を握りしめた。
本当に、危うく死なせてしまうところだった。そして、危うく自分の唯一を連れていかれてしまうところだった。
お金を稼がなくては。少なくとも、罰金を取られてもオメガを連れて行かれないだけの金額を稼いで、貯金しておかなくては。
---------------------------
※地下オークションの組織は、正吾の買い物を全て見張っています。
何故なら、逃げ出そうとするならば航空券や逃亡に必要なグッズを。オメガを外に出そうとするならば、地下では必要が無い様な上着や靴を買うだろうし、今回の様に長い鎖を買ったのは、地下以外で使う事を想定している――つまり、地上に地下オメガを出しているという典型例として把握しているので、エマゾンで長い鎖を買った時から、地下オークションの組織では、正吾が地下オメガを地上の家で過ごさせている事を把握しており、見張りも派遣されていました。
しかし、正吾はカーテンなども完全に塞いでいて、尚且つカーテンも分厚い一級遮光カーテンだった。窓とカーテンの隙間などから見えたオメガを写真に撮って報告するはずが、見張りもなかなかオメガを地上に出しているという証拠を見つけることが出来ずにいました。
今回闇医者が、地下での鎖不使用を報告せず、オメガは外に出ようと檻に体当たりまでしていたという事を報告することで、購入した鎖は地上に出す為ではなく、きっと地下で使用する為に買ったんだという結論となり、限りなく黒に近くて怪しいけれども、正吾は処罰を逃れたという形になりました。
闇医者はきっと派遣先でとんでもない状態になっている地下オメガを多数目撃していて、さすがに良心が痛んでいたのでしょう。正吾の誠実さに絆されてくれて良かった。
今回は完全に闇医者グッジョブでした。
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