【完結】もう一度君に蒼空を見せたい〜奴隷オークションで高額な処女地下オメガを買ってしまったので借金返済に追われています〜

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発情期の失敗

63.僕、嫌われちゃった?(オメガ視点)

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<蒼空視点>

 正吾さんはここ2日間はとうとう地下に全く顔を見せなくなってしまった。僕が2日程正吾さんとの食事をやんわり拒否し、恒例となっていた地下での入浴も添い寝も阻止したから、きっと怒ってしまったんだ。


 一応一日に一回は内線で不足しているものは無いか聞いてくれるから、決して僕の事を忘れている訳ではないと思う。
 でも、家を空けるときはいつも用意してくれていたお惣菜も、朝晩の正吾さんの手料理も全く届けてくれなくなった。


 地下には大量に保存食があるから、食料は大丈夫だ。
 長期保存のお惣菜パウチも冷凍食品もあるし、炊飯器もあるからご飯も自分で炊けるし、まだまだ全然余裕がある。

 でも、いつでも僕の事を考えてくれていた正吾さんが、全く来てくれないと言うのはとても不安になるし、寂しく感じる。


 正吾さんとまともに会えた最後の日にほっぺにチュウしてしまったことで刺激されたのか、その夜に来てしまった発情期。今回いつもより遅れてきた発情期のホルモンバランスの変化も相まって、寂しくて寂しくて、僕はもう正吾さんに嫌われてしまったのではないかと、ここのところ毎日泣き暮らしている。

 でも発情期の猛烈な性欲は、会えない正吾さんを想って、僕の意思に反して自慰をさせる。
 

 クローゼットの奥に隠していた抑制剤はもちろん飲んでいる。
 それでもいつもより自慰の手が止まらないのは、きっと同じ家に大好きなアルファが居ると、身体が知っているからだ。
 なのに、僕はその大好きなアルファに会う事も、その匂いを嗅ぐことも出来ない。


 よく考えたら、この地下室には正吾さんの物が何もないのだ。

 お風呂に入るときに脱ぐ正吾さんの服やバスタオルは、いつも翌朝かその夜のうちに、僕の洗濯物と一緒に正吾さんが上に持って行ってしまう。だから、この地下室には、どんなに探しても僕の好きなアルファの香りがどこにもないのだ。

 前に正吾さんが地下のベッドで寝たのは発情期が始まる2日前だった。
 だから、発情期初日は薄いながらもまだ正吾さんのフェロモンの香りがして、なんとかなった。

 でも、一日また一日と経って、発情期だと悟られない様に僕が正吾さんが地下で食事も入浴も取らない様に誘導したら、正吾さんがパッタリと来なくなってしまったから、正吾さんの香りがするものがこの地下に全くなくなってしまったのだ。

 ベッドももう僕の性液の匂いしかしない。正吾さんの香りが欲しい。恋しい。


 この階段の上、出口になっているクローゼットの中には、正吾さんの服が沢山しまってあるのを僕は嫌という程知っている。毎回地上に出るときに通っている道だもの。

 あの服の林に身を投げ込みたい。
 洗う頻度が少ないから、電車の暖房の中で出る汗の香りとフェロモンが存分にしみ込んでいる、正吾さんのコートに包まれたい。
 黒から藍色、グレーの綺麗なグラデーションとなって沢山掛かっている正吾さんのスーツの上着に顔を埋めて、思いっきり正吾さんの香りを吸い込みたい。

 あのウッディムスクの香りが恋しい、欲しい、狂おしい程欲しい!
 巣作りした事なんてもちろんないけれど、僕は正吾さんの香りに満ちた巣が欲しかった。あぁ、巣が作りたい!


 なのに、なのに、この鉄の檻が僕を阻むんだ。
 今なら火事場の馬鹿力で、あの重い蓋だって開けられる気がするのに。

 だってこの階段を上って蓋を押し開ければ、その先には楽園があるんだ。正吾さんのフェロモンに満ちた楽園が。

 そこにたどり着くためなら、僕、例え身体中が血だらけになっても檻に体当たりして、どんなに重い蓋でも精いっぱい頑張って押し上げられる気がするんだ。
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