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秘密
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明くる日
「こんにちわ!」の声に振り返ると、彼女が居た。
「おー……」背後からどよめきが起こる。
すると上司の国山が「でかした!昨日の遅刻は帳消しにしてやる」と言って立ち上がり、「どうぞどうぞ、こちらに」と自分の隣へいざなった。
この国山、クニヤマスケベの略で「くにすけ」と部下の間では親しみを込めて呼ばれている。
もちろん、面と向かって呼ぶ奴は居ないが……
しかし、面白くない!!
さくらは、チラリチラリとこちらを気にしてる。
『案外、気があったりして』と良からぬ思いが湧いてきた。
現在、彼女居ない歴5年になる29歳の俺だった。
ふと、隣の奴が「おい、あの男さっきからずっとコッチを睨んでるぞ」と言った。
そちらの方に視線を移すと確かに物凄い形相で睨んでる。
しかし、物凄い色男だ。
芸能人かもしれない?
俺が、そっちの方に気を取られていると……
「あっ、お兄ちゃん」と声がした。
さくらの兄のようだ。
俺は立ち上がり、お兄さんの方に歩いていった。
何か気に触る事が在ったなら、事情を聞こうと思ったからだ。
後ろから走る足音が、俺を追い越していった。
さくらだった。
「お兄ちゃん、ごめんなさい。」とさくらが言うと
「出歩くなと言っておいただろう」と兄はさくらを平手打ちした。
俺は「なにも其処までする事ないだろう!」と間に割り込んだ。
さくらの兄は、しばらく俺の顔を驚いた顔でじっと見つめた。
たしかに、何かに驚いた顔だった。
そうまるで幽霊でも見たかのような顔で……
兄は眼をそらすと「二度と妹に近づくな!」と言い、「帰るぞ」とさくらの手を引いて行った。
さくらは何度も振り返り、俺に謝った。
俺は、大声で「また、遊ぼうな!」って叫ぶのが精一杯だった。
この時、この一部始終を見つめる別の視線がある事に誰も気づかなかった。
そして……さくらの兄の車の中。
「出歩くなと言ったはずだ。」
「……はい。【お父さん】……」
「……しかし、よく似ていたな【70年前】に死んだ、お前の恋人に」
さくらを乗せた黒いメルセデスは暗い森の中に消えていった。
「あ~あ、なんかしらけちまったなぁ、御開きにするか?」国山が言った。
みんな、各々片づけを始めた。
俺は、なんとなく居た堪れなくなり「あのぉ……みんなごめんな!」と謝ってみた。
「いいよ別にお前が悪いわけじゃなし」と国山が言った。
家賃4万のぼろアパートに付く頃には、夕焼け空にカラスが鳴いていた。
階段を登ると、後ろから急に呼び止められた。
「チョットいいですか?」とその男が言い、胸から警察手帳を出して見せた。
「私こういう者です。」男はさらに名詞を出して渡してきた。
「はなぞの……警部補……刑事さんですか?」
「そうです、あの兄弟とは、どの様な関係ですか?」
「兄弟って?さくらさんの事ですか?」
「そうです。」
俺は、昨日有った事を包み隠さず話した。
「そうですか、じゃぁ特に深い関係って訳でもないと言うことですね?」
「分かりました、じゃぁ何か在ったら連絡ください。」
花園刑事は、カツンカツンと階段を降りていった。
俺は、アパートの鍵を首を傾げながら開け部屋に入った。
「なんだろう?まさか、犯罪者??」「そんな風には見えなかったけど……」
「黒いベンツ乗ってたし、組関係の人かな?」
などと独り言を言いながら……最後に「もう一度会えるかなぁ」と呟いた。
数日後。
携帯が鳴った。
「はい、ジョーです。」
「……さくらです。」
『うぉ、やった』
「この前は、ごめんなさい、お兄ちゃんが失礼な事して。」
「いや、いいんだよ、無理に誘ったのは俺なんだし。」
「……これから、会えない?」
「これからって、もう夜遅いけど、また怖い御兄さんに叱られるんじゃない?」
「大丈夫、お兄ちゃん今日は帰らないから……よかったら、うちに来て。」
『ドキッ』
「家の人は、大丈夫なの?」
「私、お兄ちゃんと二人暮しだから……今は一人ぼっちなの。」
『ドキッ』
心臓の音が、電話の向うに聴こえてしまうんじゃないかって位高鳴った。
俺は、ごくりと唾を飲み込むと「……じゃぁ……いいいっ行っちゃおっかな~」
「ありがとう、待ってる。ガチャ」
あっ切るの早!
……待てよ、あの森にこの夜中に行くの……ゾッとしねぇなぁ……正直、チビリそう……若干後悔した……。
だけど!!もしかしたら!もしかしちゃうかも!!!!!
うふふふふふふふふ……
物凄くイヤらしい妄想が刑事に会った事も忘れ、恐怖にも打ち勝つのであった。
俺は、はやる気持ちを抑えつつ、ワゴンRを飛ばした。
正確には、気持ちは急いでるけど、車がポンコツでスピードが出なかった。
森の入口まできた……
「うわぁこんな暗かったっけ?」
前に来たのは、5年前。
バンドのメンバーと胆試しに来たんだった。
例の幽霊屋敷は、一家惨殺があったと言う噂があり、皆で冷やかしに行く筈が、ベースの奴が急に怖がり出して引き返して来たんだっけ。
普段「霊感」が有るって言ってたから、皆怖く成っちゃって……
アイツは「ここは、本当にヤバい」なんて言ってたっけ……
当時の事を思い出したら、急に怖く成ってきた……
「でも待ってるし、きっと裸エプロンで」どこまでスケベなのか?
ジョーは、意を決して森に入って行った。
道は、所々に古ぼけた街灯がポツリポツリ有るだけで本当に暗かった。
ヘッドライトに写る範囲の視界しかなく、道幅も狭く、カーブの連続で、ただでさえ遅いワゴンRは、徐行と呼べるスピードしか出す事が出来なかった。
「あれ?こんなに遠かったかな?」
ふと、何かが横切った。
「ぎゃー!」不覚にも悲鳴を上げた。
「なんだよもう!」
「びっくりさせやがって!」
鼓動が鳴り止まない。
そうこうしているまに、幽霊屋敷の窓の明かりが見えてきた。
「こんにちわ!」の声に振り返ると、彼女が居た。
「おー……」背後からどよめきが起こる。
すると上司の国山が「でかした!昨日の遅刻は帳消しにしてやる」と言って立ち上がり、「どうぞどうぞ、こちらに」と自分の隣へいざなった。
この国山、クニヤマスケベの略で「くにすけ」と部下の間では親しみを込めて呼ばれている。
もちろん、面と向かって呼ぶ奴は居ないが……
しかし、面白くない!!
さくらは、チラリチラリとこちらを気にしてる。
『案外、気があったりして』と良からぬ思いが湧いてきた。
現在、彼女居ない歴5年になる29歳の俺だった。
ふと、隣の奴が「おい、あの男さっきからずっとコッチを睨んでるぞ」と言った。
そちらの方に視線を移すと確かに物凄い形相で睨んでる。
しかし、物凄い色男だ。
芸能人かもしれない?
俺が、そっちの方に気を取られていると……
「あっ、お兄ちゃん」と声がした。
さくらの兄のようだ。
俺は立ち上がり、お兄さんの方に歩いていった。
何か気に触る事が在ったなら、事情を聞こうと思ったからだ。
後ろから走る足音が、俺を追い越していった。
さくらだった。
「お兄ちゃん、ごめんなさい。」とさくらが言うと
「出歩くなと言っておいただろう」と兄はさくらを平手打ちした。
俺は「なにも其処までする事ないだろう!」と間に割り込んだ。
さくらの兄は、しばらく俺の顔を驚いた顔でじっと見つめた。
たしかに、何かに驚いた顔だった。
そうまるで幽霊でも見たかのような顔で……
兄は眼をそらすと「二度と妹に近づくな!」と言い、「帰るぞ」とさくらの手を引いて行った。
さくらは何度も振り返り、俺に謝った。
俺は、大声で「また、遊ぼうな!」って叫ぶのが精一杯だった。
この時、この一部始終を見つめる別の視線がある事に誰も気づかなかった。
そして……さくらの兄の車の中。
「出歩くなと言ったはずだ。」
「……はい。【お父さん】……」
「……しかし、よく似ていたな【70年前】に死んだ、お前の恋人に」
さくらを乗せた黒いメルセデスは暗い森の中に消えていった。
「あ~あ、なんかしらけちまったなぁ、御開きにするか?」国山が言った。
みんな、各々片づけを始めた。
俺は、なんとなく居た堪れなくなり「あのぉ……みんなごめんな!」と謝ってみた。
「いいよ別にお前が悪いわけじゃなし」と国山が言った。
家賃4万のぼろアパートに付く頃には、夕焼け空にカラスが鳴いていた。
階段を登ると、後ろから急に呼び止められた。
「チョットいいですか?」とその男が言い、胸から警察手帳を出して見せた。
「私こういう者です。」男はさらに名詞を出して渡してきた。
「はなぞの……警部補……刑事さんですか?」
「そうです、あの兄弟とは、どの様な関係ですか?」
「兄弟って?さくらさんの事ですか?」
「そうです。」
俺は、昨日有った事を包み隠さず話した。
「そうですか、じゃぁ特に深い関係って訳でもないと言うことですね?」
「分かりました、じゃぁ何か在ったら連絡ください。」
花園刑事は、カツンカツンと階段を降りていった。
俺は、アパートの鍵を首を傾げながら開け部屋に入った。
「なんだろう?まさか、犯罪者??」「そんな風には見えなかったけど……」
「黒いベンツ乗ってたし、組関係の人かな?」
などと独り言を言いながら……最後に「もう一度会えるかなぁ」と呟いた。
数日後。
携帯が鳴った。
「はい、ジョーです。」
「……さくらです。」
『うぉ、やった』
「この前は、ごめんなさい、お兄ちゃんが失礼な事して。」
「いや、いいんだよ、無理に誘ったのは俺なんだし。」
「……これから、会えない?」
「これからって、もう夜遅いけど、また怖い御兄さんに叱られるんじゃない?」
「大丈夫、お兄ちゃん今日は帰らないから……よかったら、うちに来て。」
『ドキッ』
「家の人は、大丈夫なの?」
「私、お兄ちゃんと二人暮しだから……今は一人ぼっちなの。」
『ドキッ』
心臓の音が、電話の向うに聴こえてしまうんじゃないかって位高鳴った。
俺は、ごくりと唾を飲み込むと「……じゃぁ……いいいっ行っちゃおっかな~」
「ありがとう、待ってる。ガチャ」
あっ切るの早!
……待てよ、あの森にこの夜中に行くの……ゾッとしねぇなぁ……正直、チビリそう……若干後悔した……。
だけど!!もしかしたら!もしかしちゃうかも!!!!!
うふふふふふふふふ……
物凄くイヤらしい妄想が刑事に会った事も忘れ、恐怖にも打ち勝つのであった。
俺は、はやる気持ちを抑えつつ、ワゴンRを飛ばした。
正確には、気持ちは急いでるけど、車がポンコツでスピードが出なかった。
森の入口まできた……
「うわぁこんな暗かったっけ?」
前に来たのは、5年前。
バンドのメンバーと胆試しに来たんだった。
例の幽霊屋敷は、一家惨殺があったと言う噂があり、皆で冷やかしに行く筈が、ベースの奴が急に怖がり出して引き返して来たんだっけ。
普段「霊感」が有るって言ってたから、皆怖く成っちゃって……
アイツは「ここは、本当にヤバい」なんて言ってたっけ……
当時の事を思い出したら、急に怖く成ってきた……
「でも待ってるし、きっと裸エプロンで」どこまでスケベなのか?
ジョーは、意を決して森に入って行った。
道は、所々に古ぼけた街灯がポツリポツリ有るだけで本当に暗かった。
ヘッドライトに写る範囲の視界しかなく、道幅も狭く、カーブの連続で、ただでさえ遅いワゴンRは、徐行と呼べるスピードしか出す事が出来なかった。
「あれ?こんなに遠かったかな?」
ふと、何かが横切った。
「ぎゃー!」不覚にも悲鳴を上げた。
「なんだよもう!」
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鼓動が鳴り止まない。
そうこうしているまに、幽霊屋敷の窓の明かりが見えてきた。
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