116 / 184
王都街道編 4・5日目
2-4-8 黒王狼?薫の棒術?
しおりを挟む
ハティの可愛い挑発に黒王狼が答えて俺の前に姿を現した。
『呼んだのはお前か? 大したものだ……我が一族をたった1日で壊滅するとは』
おお! やっぱ喋るんだ! これ、念話だな? 人とは声帯が違うんだから当然か。
「白王狼たちは人族が危険だと分かってるから、人は襲わないそうだぞ?」
『あいつらは腰抜け揃いなんだよ!』
「でもお前のその判断で、黒狼は全滅だ。リーダーとして失格だろ?」
『人を恐れて何が魔獣だ!』
「あはは、それもそうだな。で、どうする?」
『どうすると言われても、幾らなんでもその赤子と勝負はな……』
ハティの挑戦を受ける気できたは良いが、ハティを見て戦意が失せたようだ。未熟児で生まれたハティは、普通の生まれたばかりの子狼より未だ小さいのだ。王種の黒王狼からすれば、『幾らなんでもそりゃないでしょ?』ってな気分だろう。
「お前が引いてくれるなら、俺たちは追ったりしないがどうだ?」
『我を見逃すというのか? 我は人族の敵、その白狼の天敵だぞ?』
「今回襲われたから撃退したが、俺たちに敵対しないなら殺す気はないよ。お前の毛皮や牙や魔石が高額で売れるけど、人語を話せてちゃんと会話できるほどの知性があるお前を、金の為に殺すのは忍びない。今後人を殺すなとも言わないし、白狼たちと敵対するなとかも言わない。ただこの場を引いてくれればいい」
『配下を全滅されておいて、仲間の仇も討たず自分だけ生き残れと?』
俺は【無詠唱】で上級魔法の【ファイアガスピア】を周りに100個浮かべた。無駄な魔力消費だが、正々堂々ハティの挑戦を受けてやって来たこの黒王狼を殺したくはなかったのだ。卑怯な手段を考えたり、集団で甚振るような佐竹や教頭たちよりずっと好感が持てる。
「どうしても自殺がしたいというなら殺してやるが、どうする?」
『クハハッ! それほどの力量差を見せられて、挑むほど我は馬鹿ではないわ! それでは本当に自殺ではないか! 何だそれは! バカげた魔力だ……襲った我が災害に遭ったようなものじゃないか!』
「災害って! お前本当に殺すのは惜しいな……マジで引いてくれないか?」
『分かった、素直に負けを認めて引き下がる……と言うより、見逃してもらって感謝する。仲間はまた時間とともに勝手に増えるからな……ところでその子狼、お前の従魔にしたのか?』
「ああ、もう直ぐお前と同じ王種になるぞ」
『はぁ!? そんな赤子がか? それにしても、我ら狼は余程の事がないかぎり人の従魔などにはならないのに、いくら赤子でも情けない奴だ!』
「この仔は、その余程の事態だったんだ。へその緒が首に3重に巻きついていて、満足に栄養がいかなくて超未熟児で生まれたんだが、母親の乳を探す事すらできないほど衰弱していて、群れから置いて行かれたんだよ。偶々俺が通りかかったんだが、この寒空の下だ……後数時間で死ぬだろうと思い従魔契約で魔力を与えて命を繋いだんだよ」
『そういう事か……乳を吸わなきゃ、置いて行かれるのは当然だ。我らの仲間なら、哀れなのでその場で殺してやるのが情けだ。放置して、死ぬまで苦しめる必要はないだろう?』
「そうだな、それも一つの愛情の形だと思う。白狼も俺が近寄ったので、殺さずに置いて行ったのかもしれないけどな」
『白狼共は人族のお前に、従魔契約という少ない可能性に掛けたというのか?』
「分からないけどな。結果的にはこうして元気に生きているんだ。俺はこいつと出会えて、凄く良かったと思ってる」
「ミャン!」
ハティも俺の発言に喜んだのか、尻尾を振りまくっている。可愛い奴だ。
『その仔が良いなら、問題なかろう……我はこのまま退散していいのか?』
「ちょっと待って小鳥遊君!? まさか本当にその馬みたいデッカイ凶暴な狼を見逃しちゃうの? 後々何人も人が食べられちゃうわよ!?」
「大影先輩、それは当たり前の事でしょ? こいつが面白半分で人を殺す奴なら見逃しませんが、腹を減らして食料確保の為に狩りを行っていただけですよ? 経験値の為だけに、巣ごと全滅させる俺たちよりかずっとこの世界に優しい存在です」
『お前、人族のくせに変わった思考をしているな? 我らからすればお前の言うように、人族こそ最悪の生物だよ……我は常にお前たち人間に狙われている。我の牙と毛皮が欲しいそうで、定期的にやってくるぞ。食うためではなく、敷物にするそうだ……』
「小鳥遊君、あなたやっぱり変わってるわ……もういいわ、好きにして頂戴」
「黒王狼、引き下がってくれる礼にこれを持ってってくれ」
俺はインベントリから、オスの牛を出した。
『ラッシュ・バッファローではないか! 良くそんなモノ狩れたな!? 奴らはどっちかが全滅するまで追ってくるから我らでもなかなか手出しできんのに……ゴクッ……それ、本当にくれるのか?』
あらあら、黒狼さん……涎が垂れてますよ? 尻尾もゆっくりだが振られている……分かりやす!
「嫌じゃなければ、受け取ってくれ」
『オーク程度の魔獣なら『哀れみなどいらぬ!』とかいうところだが……こいつは旨いんだ! 恥を忍んででも貰っていくぞ!』
あはは、益々こいつが気に入った。
「ああ、遠慮なく持ってってくれ」
驚いたことに【亜空間倉庫】にあのでかい牛を放り込んでしまった。
「お前倉庫持ちか? しかもあのデカいのが入るんだな」
『凄いだろ? まだ入るぞ! おかげで群れからも絶大な尊敬をされていたんだがな……』
「全滅させたことに対しては、謝罪はしないぞ」
『当然だ! 襲ったのはこっちだ、返り討ちにあったからといって、お前が謝る事はない。我が恨んでもお前も文句は言えんがな』
「そりゃそうだ。いくらそっちが攻めてきたといっても、全滅させられたら恨んで当然だ」
『やっぱりお前は変わってるな……恨む気になれん。牛は貰っていくぞ、仲間を全滅させておいて手ぶらで帰ったら、メス共に俺が喰われかねん。新婚の奴もいたから、あのメスには怒って噛まれるだろうな……帰りたくないな』
「なんだ、仲間がまだいるのか? 何頭いるんだ?」
メスと年寄りと子供だそうだが、結構いたので牛をもう3頭出してやる。
『うっ……残念だが全部で3頭しか入らないみたいだ。でも良いのか? こいつの肉や皮は売ると良い金になるらしいぞ?』
「無くなったら、また狩るから良いよ」
「ん! 龍馬! この子飼いたい!」
「なっ!? 雅ちゃん!?」
『へっ!? この子供、今なんて言った?』
「ん! 黒くて大きくてカッコいい! 龍馬、この子飼いたい!」
「却下だ!」
『我をこの子って……大丈夫かこの子供?』
「お前より強いぞ。あまり子ども扱いすると怖いぞ」
『そんな訳なかろう?』
子ども扱いされた雅はちょっとお怒りだ。俺の与えた二刀を抜きさり、こう言った。
「ん! 私に負けたら従魔になれ!」
『な! なんだその武器! 危険な感じがビンビンするぞ! しかも急にその子の気が鋭くなった! 冗談抜きで我より強いかも……信じられん』
「雅! こいつはダメだ! ハティが大きくなったら妊娠させられちゃう!」
「「「そっちかよ!」」」
『そんな赤子がどうやって妊娠するのだ! だが、従魔は我も勘弁してほしい! 家に帰ると腹を空かせた妻と子供が待っているんだ』
「ん、そんなありきたりな事言って! でも、面白い! 益々欲しい!」
「雅、我が儘言うな……当人が拒否してるんだ。諦めろ」
「ん、私の従魔になるのどうしても嫌?」
『我は、人の下に付く気は更々ない。我は王だぞ、黒狼の頂点だ。諦めろ……』
「ん、解った……仕方ない、諦める」
黒王狼は、周りを見渡して一瞬フィリアを見てビクッとなってから別れを告げてきた。
『我はもう行く。なんだこの集団は……ヤバそうな奴が他にもゴロゴロ居るではないか。今度から一度我が先に偵察したほうが良さそうだな……良い勉強になった。では、さらばだ……』
一瞬で姿が見えなくなった。王狼は桁違いの脚力のようだ。
「ん、やっぱあれ良い……乗ったら速くて楽しそう」
「確かに馬のようにでっかくて、凄く速そうだ。あれに乗ったらカッコいいだろうな……」
「ん、絶対皆が羨むほど良いのに……」
「諦めろ、ハティが大きくなったら、乗せてもらったらいいだろ? ハティの方が白くて可愛く育つぞ。なぁ、ハティ?」
「ん、ハティちゃん、大きくなったら私を乗せて走ってくれる?」
「ミャン!」
雅はハティのお気に入りだからな。嫌とは言わないだろう。
黒狼を全て回収し、通常の野営隊形に戻る。風呂も開放し、軽く夜食を出してやる。
「皆、武器の使い勝手はどうでした?」
「刀は最高だったぞ! スパスパ切れる! ミスリルのように欠ける事さえなかった」
「ガントレットも問題ない。あの針、中々いい。頭を一刺しで瞬殺だった。人が相手なら心臓も狙えるけど、問題は俺が人を刺せるかどうかだな」
「籠手の強度も問題ないね。何度も噛ませたが、傷すら付いていなかったよ」
「皆、気に入ってくれたようで良かったです。薫ちゃんはどうだった?」
「はい、以前ので慣れていたので、少し違和感がありましたが良い感じなのですぐ慣れると思います。只、穂先を飛ばした後の戦闘がちょっとなんか難しいというか……多分【槍術】と【棒術】の違い? だと思うんです」
「ああ、そうか。飛ばした後は刃先が無いので技術的に【棒術】になるんだね? 俺のミスだ。穂先の10秒間の待機時間はどんな感じかな?」
「基本逃げた相手にしか使わないので、問題ないです。とっておき感があっていいですね。逃げた相手に後ろからバシュッって! それに、この棒がとても硬いので、私の【身体強化】MAXと【腕力強化】MAX状態で殴っただけでも、一撃死でしたよ。刃先にそれほど拘らなくても敵は倒せそうです」
槍術と棒術はある程度の基本動作は似た部分があるので、刃先がなくても十分戦えていたのだ。
だが基本的に刃の部分メインで戦闘する【槍術】の技術と、棒全体で殴って倒す【棒術】では全く別物なのだ。
ログハウスで薫を呼び出して【カスタマイズ】で【棒術】の技術を、槍と同じレベルの【棒王】Lv10まで上げてやった。
各技術系は完全獲得するにはまだ先が長い。
【剣術】→【剣聖】→【剣王】→【剣鬼】→【剣神】とあるのだ。
【棒術】→【棒聖】→【棒王】→【棒鬼】→【棒神】と同じく続く。
でも、薫の方が桜より強くなっちゃったかもしれないのは、内緒にしておこう。
『呼んだのはお前か? 大したものだ……我が一族をたった1日で壊滅するとは』
おお! やっぱ喋るんだ! これ、念話だな? 人とは声帯が違うんだから当然か。
「白王狼たちは人族が危険だと分かってるから、人は襲わないそうだぞ?」
『あいつらは腰抜け揃いなんだよ!』
「でもお前のその判断で、黒狼は全滅だ。リーダーとして失格だろ?」
『人を恐れて何が魔獣だ!』
「あはは、それもそうだな。で、どうする?」
『どうすると言われても、幾らなんでもその赤子と勝負はな……』
ハティの挑戦を受ける気できたは良いが、ハティを見て戦意が失せたようだ。未熟児で生まれたハティは、普通の生まれたばかりの子狼より未だ小さいのだ。王種の黒王狼からすれば、『幾らなんでもそりゃないでしょ?』ってな気分だろう。
「お前が引いてくれるなら、俺たちは追ったりしないがどうだ?」
『我を見逃すというのか? 我は人族の敵、その白狼の天敵だぞ?』
「今回襲われたから撃退したが、俺たちに敵対しないなら殺す気はないよ。お前の毛皮や牙や魔石が高額で売れるけど、人語を話せてちゃんと会話できるほどの知性があるお前を、金の為に殺すのは忍びない。今後人を殺すなとも言わないし、白狼たちと敵対するなとかも言わない。ただこの場を引いてくれればいい」
『配下を全滅されておいて、仲間の仇も討たず自分だけ生き残れと?』
俺は【無詠唱】で上級魔法の【ファイアガスピア】を周りに100個浮かべた。無駄な魔力消費だが、正々堂々ハティの挑戦を受けてやって来たこの黒王狼を殺したくはなかったのだ。卑怯な手段を考えたり、集団で甚振るような佐竹や教頭たちよりずっと好感が持てる。
「どうしても自殺がしたいというなら殺してやるが、どうする?」
『クハハッ! それほどの力量差を見せられて、挑むほど我は馬鹿ではないわ! それでは本当に自殺ではないか! 何だそれは! バカげた魔力だ……襲った我が災害に遭ったようなものじゃないか!』
「災害って! お前本当に殺すのは惜しいな……マジで引いてくれないか?」
『分かった、素直に負けを認めて引き下がる……と言うより、見逃してもらって感謝する。仲間はまた時間とともに勝手に増えるからな……ところでその子狼、お前の従魔にしたのか?』
「ああ、もう直ぐお前と同じ王種になるぞ」
『はぁ!? そんな赤子がか? それにしても、我ら狼は余程の事がないかぎり人の従魔などにはならないのに、いくら赤子でも情けない奴だ!』
「この仔は、その余程の事態だったんだ。へその緒が首に3重に巻きついていて、満足に栄養がいかなくて超未熟児で生まれたんだが、母親の乳を探す事すらできないほど衰弱していて、群れから置いて行かれたんだよ。偶々俺が通りかかったんだが、この寒空の下だ……後数時間で死ぬだろうと思い従魔契約で魔力を与えて命を繋いだんだよ」
『そういう事か……乳を吸わなきゃ、置いて行かれるのは当然だ。我らの仲間なら、哀れなのでその場で殺してやるのが情けだ。放置して、死ぬまで苦しめる必要はないだろう?』
「そうだな、それも一つの愛情の形だと思う。白狼も俺が近寄ったので、殺さずに置いて行ったのかもしれないけどな」
『白狼共は人族のお前に、従魔契約という少ない可能性に掛けたというのか?』
「分からないけどな。結果的にはこうして元気に生きているんだ。俺はこいつと出会えて、凄く良かったと思ってる」
「ミャン!」
ハティも俺の発言に喜んだのか、尻尾を振りまくっている。可愛い奴だ。
『その仔が良いなら、問題なかろう……我はこのまま退散していいのか?』
「ちょっと待って小鳥遊君!? まさか本当にその馬みたいデッカイ凶暴な狼を見逃しちゃうの? 後々何人も人が食べられちゃうわよ!?」
「大影先輩、それは当たり前の事でしょ? こいつが面白半分で人を殺す奴なら見逃しませんが、腹を減らして食料確保の為に狩りを行っていただけですよ? 経験値の為だけに、巣ごと全滅させる俺たちよりかずっとこの世界に優しい存在です」
『お前、人族のくせに変わった思考をしているな? 我らからすればお前の言うように、人族こそ最悪の生物だよ……我は常にお前たち人間に狙われている。我の牙と毛皮が欲しいそうで、定期的にやってくるぞ。食うためではなく、敷物にするそうだ……』
「小鳥遊君、あなたやっぱり変わってるわ……もういいわ、好きにして頂戴」
「黒王狼、引き下がってくれる礼にこれを持ってってくれ」
俺はインベントリから、オスの牛を出した。
『ラッシュ・バッファローではないか! 良くそんなモノ狩れたな!? 奴らはどっちかが全滅するまで追ってくるから我らでもなかなか手出しできんのに……ゴクッ……それ、本当にくれるのか?』
あらあら、黒狼さん……涎が垂れてますよ? 尻尾もゆっくりだが振られている……分かりやす!
「嫌じゃなければ、受け取ってくれ」
『オーク程度の魔獣なら『哀れみなどいらぬ!』とかいうところだが……こいつは旨いんだ! 恥を忍んででも貰っていくぞ!』
あはは、益々こいつが気に入った。
「ああ、遠慮なく持ってってくれ」
驚いたことに【亜空間倉庫】にあのでかい牛を放り込んでしまった。
「お前倉庫持ちか? しかもあのデカいのが入るんだな」
『凄いだろ? まだ入るぞ! おかげで群れからも絶大な尊敬をされていたんだがな……』
「全滅させたことに対しては、謝罪はしないぞ」
『当然だ! 襲ったのはこっちだ、返り討ちにあったからといって、お前が謝る事はない。我が恨んでもお前も文句は言えんがな』
「そりゃそうだ。いくらそっちが攻めてきたといっても、全滅させられたら恨んで当然だ」
『やっぱりお前は変わってるな……恨む気になれん。牛は貰っていくぞ、仲間を全滅させておいて手ぶらで帰ったら、メス共に俺が喰われかねん。新婚の奴もいたから、あのメスには怒って噛まれるだろうな……帰りたくないな』
「なんだ、仲間がまだいるのか? 何頭いるんだ?」
メスと年寄りと子供だそうだが、結構いたので牛をもう3頭出してやる。
『うっ……残念だが全部で3頭しか入らないみたいだ。でも良いのか? こいつの肉や皮は売ると良い金になるらしいぞ?』
「無くなったら、また狩るから良いよ」
「ん! 龍馬! この子飼いたい!」
「なっ!? 雅ちゃん!?」
『へっ!? この子供、今なんて言った?』
「ん! 黒くて大きくてカッコいい! 龍馬、この子飼いたい!」
「却下だ!」
『我をこの子って……大丈夫かこの子供?』
「お前より強いぞ。あまり子ども扱いすると怖いぞ」
『そんな訳なかろう?』
子ども扱いされた雅はちょっとお怒りだ。俺の与えた二刀を抜きさり、こう言った。
「ん! 私に負けたら従魔になれ!」
『な! なんだその武器! 危険な感じがビンビンするぞ! しかも急にその子の気が鋭くなった! 冗談抜きで我より強いかも……信じられん』
「雅! こいつはダメだ! ハティが大きくなったら妊娠させられちゃう!」
「「「そっちかよ!」」」
『そんな赤子がどうやって妊娠するのだ! だが、従魔は我も勘弁してほしい! 家に帰ると腹を空かせた妻と子供が待っているんだ』
「ん、そんなありきたりな事言って! でも、面白い! 益々欲しい!」
「雅、我が儘言うな……当人が拒否してるんだ。諦めろ」
「ん、私の従魔になるのどうしても嫌?」
『我は、人の下に付く気は更々ない。我は王だぞ、黒狼の頂点だ。諦めろ……』
「ん、解った……仕方ない、諦める」
黒王狼は、周りを見渡して一瞬フィリアを見てビクッとなってから別れを告げてきた。
『我はもう行く。なんだこの集団は……ヤバそうな奴が他にもゴロゴロ居るではないか。今度から一度我が先に偵察したほうが良さそうだな……良い勉強になった。では、さらばだ……』
一瞬で姿が見えなくなった。王狼は桁違いの脚力のようだ。
「ん、やっぱあれ良い……乗ったら速くて楽しそう」
「確かに馬のようにでっかくて、凄く速そうだ。あれに乗ったらカッコいいだろうな……」
「ん、絶対皆が羨むほど良いのに……」
「諦めろ、ハティが大きくなったら、乗せてもらったらいいだろ? ハティの方が白くて可愛く育つぞ。なぁ、ハティ?」
「ん、ハティちゃん、大きくなったら私を乗せて走ってくれる?」
「ミャン!」
雅はハティのお気に入りだからな。嫌とは言わないだろう。
黒狼を全て回収し、通常の野営隊形に戻る。風呂も開放し、軽く夜食を出してやる。
「皆、武器の使い勝手はどうでした?」
「刀は最高だったぞ! スパスパ切れる! ミスリルのように欠ける事さえなかった」
「ガントレットも問題ない。あの針、中々いい。頭を一刺しで瞬殺だった。人が相手なら心臓も狙えるけど、問題は俺が人を刺せるかどうかだな」
「籠手の強度も問題ないね。何度も噛ませたが、傷すら付いていなかったよ」
「皆、気に入ってくれたようで良かったです。薫ちゃんはどうだった?」
「はい、以前ので慣れていたので、少し違和感がありましたが良い感じなのですぐ慣れると思います。只、穂先を飛ばした後の戦闘がちょっとなんか難しいというか……多分【槍術】と【棒術】の違い? だと思うんです」
「ああ、そうか。飛ばした後は刃先が無いので技術的に【棒術】になるんだね? 俺のミスだ。穂先の10秒間の待機時間はどんな感じかな?」
「基本逃げた相手にしか使わないので、問題ないです。とっておき感があっていいですね。逃げた相手に後ろからバシュッって! それに、この棒がとても硬いので、私の【身体強化】MAXと【腕力強化】MAX状態で殴っただけでも、一撃死でしたよ。刃先にそれほど拘らなくても敵は倒せそうです」
槍術と棒術はある程度の基本動作は似た部分があるので、刃先がなくても十分戦えていたのだ。
だが基本的に刃の部分メインで戦闘する【槍術】の技術と、棒全体で殴って倒す【棒術】では全く別物なのだ。
ログハウスで薫を呼び出して【カスタマイズ】で【棒術】の技術を、槍と同じレベルの【棒王】Lv10まで上げてやった。
各技術系は完全獲得するにはまだ先が長い。
【剣術】→【剣聖】→【剣王】→【剣鬼】→【剣神】とあるのだ。
【棒術】→【棒聖】→【棒王】→【棒鬼】→【棒神】と同じく続く。
でも、薫の方が桜より強くなっちゃったかもしれないのは、内緒にしておこう。
10
お気に入りに追加
8,870
あなたにおすすめの小説

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる