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王都街道編 4・5日目
2-4-8 黒王狼?薫の棒術?
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ハティの可愛い挑発に黒王狼が答えて俺の前に姿を現した。
『呼んだのはお前か? 大したものだ……我が一族をたった1日で壊滅するとは』
おお! やっぱ喋るんだ! これ、念話だな? 人とは声帯が違うんだから当然か。
「白王狼たちは人族が危険だと分かってるから、人は襲わないそうだぞ?」
『あいつらは腰抜け揃いなんだよ!』
「でもお前のその判断で、黒狼は全滅だ。リーダーとして失格だろ?」
『人を恐れて何が魔獣だ!』
「あはは、それもそうだな。で、どうする?」
『どうすると言われても、幾らなんでもその赤子と勝負はな……』
ハティの挑戦を受ける気できたは良いが、ハティを見て戦意が失せたようだ。未熟児で生まれたハティは、普通の生まれたばかりの子狼より未だ小さいのだ。王種の黒王狼からすれば、『幾らなんでもそりゃないでしょ?』ってな気分だろう。
「お前が引いてくれるなら、俺たちは追ったりしないがどうだ?」
『我を見逃すというのか? 我は人族の敵、その白狼の天敵だぞ?』
「今回襲われたから撃退したが、俺たちに敵対しないなら殺す気はないよ。お前の毛皮や牙や魔石が高額で売れるけど、人語を話せてちゃんと会話できるほどの知性があるお前を、金の為に殺すのは忍びない。今後人を殺すなとも言わないし、白狼たちと敵対するなとかも言わない。ただこの場を引いてくれればいい」
『配下を全滅されておいて、仲間の仇も討たず自分だけ生き残れと?』
俺は【無詠唱】で上級魔法の【ファイアガスピア】を周りに100個浮かべた。無駄な魔力消費だが、正々堂々ハティの挑戦を受けてやって来たこの黒王狼を殺したくはなかったのだ。卑怯な手段を考えたり、集団で甚振るような佐竹や教頭たちよりずっと好感が持てる。
「どうしても自殺がしたいというなら殺してやるが、どうする?」
『クハハッ! それほどの力量差を見せられて、挑むほど我は馬鹿ではないわ! それでは本当に自殺ではないか! 何だそれは! バカげた魔力だ……襲った我が災害に遭ったようなものじゃないか!』
「災害って! お前本当に殺すのは惜しいな……マジで引いてくれないか?」
『分かった、素直に負けを認めて引き下がる……と言うより、見逃してもらって感謝する。仲間はまた時間とともに勝手に増えるからな……ところでその子狼、お前の従魔にしたのか?』
「ああ、もう直ぐお前と同じ王種になるぞ」
『はぁ!? そんな赤子がか? それにしても、我ら狼は余程の事がないかぎり人の従魔などにはならないのに、いくら赤子でも情けない奴だ!』
「この仔は、その余程の事態だったんだ。へその緒が首に3重に巻きついていて、満足に栄養がいかなくて超未熟児で生まれたんだが、母親の乳を探す事すらできないほど衰弱していて、群れから置いて行かれたんだよ。偶々俺が通りかかったんだが、この寒空の下だ……後数時間で死ぬだろうと思い従魔契約で魔力を与えて命を繋いだんだよ」
『そういう事か……乳を吸わなきゃ、置いて行かれるのは当然だ。我らの仲間なら、哀れなのでその場で殺してやるのが情けだ。放置して、死ぬまで苦しめる必要はないだろう?』
「そうだな、それも一つの愛情の形だと思う。白狼も俺が近寄ったので、殺さずに置いて行ったのかもしれないけどな」
『白狼共は人族のお前に、従魔契約という少ない可能性に掛けたというのか?』
「分からないけどな。結果的にはこうして元気に生きているんだ。俺はこいつと出会えて、凄く良かったと思ってる」
「ミャン!」
ハティも俺の発言に喜んだのか、尻尾を振りまくっている。可愛い奴だ。
『その仔が良いなら、問題なかろう……我はこのまま退散していいのか?』
「ちょっと待って小鳥遊君!? まさか本当にその馬みたいデッカイ凶暴な狼を見逃しちゃうの? 後々何人も人が食べられちゃうわよ!?」
「大影先輩、それは当たり前の事でしょ? こいつが面白半分で人を殺す奴なら見逃しませんが、腹を減らして食料確保の為に狩りを行っていただけですよ? 経験値の為だけに、巣ごと全滅させる俺たちよりかずっとこの世界に優しい存在です」
『お前、人族のくせに変わった思考をしているな? 我らからすればお前の言うように、人族こそ最悪の生物だよ……我は常にお前たち人間に狙われている。我の牙と毛皮が欲しいそうで、定期的にやってくるぞ。食うためではなく、敷物にするそうだ……』
「小鳥遊君、あなたやっぱり変わってるわ……もういいわ、好きにして頂戴」
「黒王狼、引き下がってくれる礼にこれを持ってってくれ」
俺はインベントリから、オスの牛を出した。
『ラッシュ・バッファローではないか! 良くそんなモノ狩れたな!? 奴らはどっちかが全滅するまで追ってくるから我らでもなかなか手出しできんのに……ゴクッ……それ、本当にくれるのか?』
あらあら、黒狼さん……涎が垂れてますよ? 尻尾もゆっくりだが振られている……分かりやす!
「嫌じゃなければ、受け取ってくれ」
『オーク程度の魔獣なら『哀れみなどいらぬ!』とかいうところだが……こいつは旨いんだ! 恥を忍んででも貰っていくぞ!』
あはは、益々こいつが気に入った。
「ああ、遠慮なく持ってってくれ」
驚いたことに【亜空間倉庫】にあのでかい牛を放り込んでしまった。
「お前倉庫持ちか? しかもあのデカいのが入るんだな」
『凄いだろ? まだ入るぞ! おかげで群れからも絶大な尊敬をされていたんだがな……』
「全滅させたことに対しては、謝罪はしないぞ」
『当然だ! 襲ったのはこっちだ、返り討ちにあったからといって、お前が謝る事はない。我が恨んでもお前も文句は言えんがな』
「そりゃそうだ。いくらそっちが攻めてきたといっても、全滅させられたら恨んで当然だ」
『やっぱりお前は変わってるな……恨む気になれん。牛は貰っていくぞ、仲間を全滅させておいて手ぶらで帰ったら、メス共に俺が喰われかねん。新婚の奴もいたから、あのメスには怒って噛まれるだろうな……帰りたくないな』
「なんだ、仲間がまだいるのか? 何頭いるんだ?」
メスと年寄りと子供だそうだが、結構いたので牛をもう3頭出してやる。
『うっ……残念だが全部で3頭しか入らないみたいだ。でも良いのか? こいつの肉や皮は売ると良い金になるらしいぞ?』
「無くなったら、また狩るから良いよ」
「ん! 龍馬! この子飼いたい!」
「なっ!? 雅ちゃん!?」
『へっ!? この子供、今なんて言った?』
「ん! 黒くて大きくてカッコいい! 龍馬、この子飼いたい!」
「却下だ!」
『我をこの子って……大丈夫かこの子供?』
「お前より強いぞ。あまり子ども扱いすると怖いぞ」
『そんな訳なかろう?』
子ども扱いされた雅はちょっとお怒りだ。俺の与えた二刀を抜きさり、こう言った。
「ん! 私に負けたら従魔になれ!」
『な! なんだその武器! 危険な感じがビンビンするぞ! しかも急にその子の気が鋭くなった! 冗談抜きで我より強いかも……信じられん』
「雅! こいつはダメだ! ハティが大きくなったら妊娠させられちゃう!」
「「「そっちかよ!」」」
『そんな赤子がどうやって妊娠するのだ! だが、従魔は我も勘弁してほしい! 家に帰ると腹を空かせた妻と子供が待っているんだ』
「ん、そんなありきたりな事言って! でも、面白い! 益々欲しい!」
「雅、我が儘言うな……当人が拒否してるんだ。諦めろ」
「ん、私の従魔になるのどうしても嫌?」
『我は、人の下に付く気は更々ない。我は王だぞ、黒狼の頂点だ。諦めろ……』
「ん、解った……仕方ない、諦める」
黒王狼は、周りを見渡して一瞬フィリアを見てビクッとなってから別れを告げてきた。
『我はもう行く。なんだこの集団は……ヤバそうな奴が他にもゴロゴロ居るではないか。今度から一度我が先に偵察したほうが良さそうだな……良い勉強になった。では、さらばだ……』
一瞬で姿が見えなくなった。王狼は桁違いの脚力のようだ。
「ん、やっぱあれ良い……乗ったら速くて楽しそう」
「確かに馬のようにでっかくて、凄く速そうだ。あれに乗ったらカッコいいだろうな……」
「ん、絶対皆が羨むほど良いのに……」
「諦めろ、ハティが大きくなったら、乗せてもらったらいいだろ? ハティの方が白くて可愛く育つぞ。なぁ、ハティ?」
「ん、ハティちゃん、大きくなったら私を乗せて走ってくれる?」
「ミャン!」
雅はハティのお気に入りだからな。嫌とは言わないだろう。
黒狼を全て回収し、通常の野営隊形に戻る。風呂も開放し、軽く夜食を出してやる。
「皆、武器の使い勝手はどうでした?」
「刀は最高だったぞ! スパスパ切れる! ミスリルのように欠ける事さえなかった」
「ガントレットも問題ない。あの針、中々いい。頭を一刺しで瞬殺だった。人が相手なら心臓も狙えるけど、問題は俺が人を刺せるかどうかだな」
「籠手の強度も問題ないね。何度も噛ませたが、傷すら付いていなかったよ」
「皆、気に入ってくれたようで良かったです。薫ちゃんはどうだった?」
「はい、以前ので慣れていたので、少し違和感がありましたが良い感じなのですぐ慣れると思います。只、穂先を飛ばした後の戦闘がちょっとなんか難しいというか……多分【槍術】と【棒術】の違い? だと思うんです」
「ああ、そうか。飛ばした後は刃先が無いので技術的に【棒術】になるんだね? 俺のミスだ。穂先の10秒間の待機時間はどんな感じかな?」
「基本逃げた相手にしか使わないので、問題ないです。とっておき感があっていいですね。逃げた相手に後ろからバシュッって! それに、この棒がとても硬いので、私の【身体強化】MAXと【腕力強化】MAX状態で殴っただけでも、一撃死でしたよ。刃先にそれほど拘らなくても敵は倒せそうです」
槍術と棒術はある程度の基本動作は似た部分があるので、刃先がなくても十分戦えていたのだ。
だが基本的に刃の部分メインで戦闘する【槍術】の技術と、棒全体で殴って倒す【棒術】では全く別物なのだ。
ログハウスで薫を呼び出して【カスタマイズ】で【棒術】の技術を、槍と同じレベルの【棒王】Lv10まで上げてやった。
各技術系は完全獲得するにはまだ先が長い。
【剣術】→【剣聖】→【剣王】→【剣鬼】→【剣神】とあるのだ。
【棒術】→【棒聖】→【棒王】→【棒鬼】→【棒神】と同じく続く。
でも、薫の方が桜より強くなっちゃったかもしれないのは、内緒にしておこう。
『呼んだのはお前か? 大したものだ……我が一族をたった1日で壊滅するとは』
おお! やっぱ喋るんだ! これ、念話だな? 人とは声帯が違うんだから当然か。
「白王狼たちは人族が危険だと分かってるから、人は襲わないそうだぞ?」
『あいつらは腰抜け揃いなんだよ!』
「でもお前のその判断で、黒狼は全滅だ。リーダーとして失格だろ?」
『人を恐れて何が魔獣だ!』
「あはは、それもそうだな。で、どうする?」
『どうすると言われても、幾らなんでもその赤子と勝負はな……』
ハティの挑戦を受ける気できたは良いが、ハティを見て戦意が失せたようだ。未熟児で生まれたハティは、普通の生まれたばかりの子狼より未だ小さいのだ。王種の黒王狼からすれば、『幾らなんでもそりゃないでしょ?』ってな気分だろう。
「お前が引いてくれるなら、俺たちは追ったりしないがどうだ?」
『我を見逃すというのか? 我は人族の敵、その白狼の天敵だぞ?』
「今回襲われたから撃退したが、俺たちに敵対しないなら殺す気はないよ。お前の毛皮や牙や魔石が高額で売れるけど、人語を話せてちゃんと会話できるほどの知性があるお前を、金の為に殺すのは忍びない。今後人を殺すなとも言わないし、白狼たちと敵対するなとかも言わない。ただこの場を引いてくれればいい」
『配下を全滅されておいて、仲間の仇も討たず自分だけ生き残れと?』
俺は【無詠唱】で上級魔法の【ファイアガスピア】を周りに100個浮かべた。無駄な魔力消費だが、正々堂々ハティの挑戦を受けてやって来たこの黒王狼を殺したくはなかったのだ。卑怯な手段を考えたり、集団で甚振るような佐竹や教頭たちよりずっと好感が持てる。
「どうしても自殺がしたいというなら殺してやるが、どうする?」
『クハハッ! それほどの力量差を見せられて、挑むほど我は馬鹿ではないわ! それでは本当に自殺ではないか! 何だそれは! バカげた魔力だ……襲った我が災害に遭ったようなものじゃないか!』
「災害って! お前本当に殺すのは惜しいな……マジで引いてくれないか?」
『分かった、素直に負けを認めて引き下がる……と言うより、見逃してもらって感謝する。仲間はまた時間とともに勝手に増えるからな……ところでその子狼、お前の従魔にしたのか?』
「ああ、もう直ぐお前と同じ王種になるぞ」
『はぁ!? そんな赤子がか? それにしても、我ら狼は余程の事がないかぎり人の従魔などにはならないのに、いくら赤子でも情けない奴だ!』
「この仔は、その余程の事態だったんだ。へその緒が首に3重に巻きついていて、満足に栄養がいかなくて超未熟児で生まれたんだが、母親の乳を探す事すらできないほど衰弱していて、群れから置いて行かれたんだよ。偶々俺が通りかかったんだが、この寒空の下だ……後数時間で死ぬだろうと思い従魔契約で魔力を与えて命を繋いだんだよ」
『そういう事か……乳を吸わなきゃ、置いて行かれるのは当然だ。我らの仲間なら、哀れなのでその場で殺してやるのが情けだ。放置して、死ぬまで苦しめる必要はないだろう?』
「そうだな、それも一つの愛情の形だと思う。白狼も俺が近寄ったので、殺さずに置いて行ったのかもしれないけどな」
『白狼共は人族のお前に、従魔契約という少ない可能性に掛けたというのか?』
「分からないけどな。結果的にはこうして元気に生きているんだ。俺はこいつと出会えて、凄く良かったと思ってる」
「ミャン!」
ハティも俺の発言に喜んだのか、尻尾を振りまくっている。可愛い奴だ。
『その仔が良いなら、問題なかろう……我はこのまま退散していいのか?』
「ちょっと待って小鳥遊君!? まさか本当にその馬みたいデッカイ凶暴な狼を見逃しちゃうの? 後々何人も人が食べられちゃうわよ!?」
「大影先輩、それは当たり前の事でしょ? こいつが面白半分で人を殺す奴なら見逃しませんが、腹を減らして食料確保の為に狩りを行っていただけですよ? 経験値の為だけに、巣ごと全滅させる俺たちよりかずっとこの世界に優しい存在です」
『お前、人族のくせに変わった思考をしているな? 我らからすればお前の言うように、人族こそ最悪の生物だよ……我は常にお前たち人間に狙われている。我の牙と毛皮が欲しいそうで、定期的にやってくるぞ。食うためではなく、敷物にするそうだ……』
「小鳥遊君、あなたやっぱり変わってるわ……もういいわ、好きにして頂戴」
「黒王狼、引き下がってくれる礼にこれを持ってってくれ」
俺はインベントリから、オスの牛を出した。
『ラッシュ・バッファローではないか! 良くそんなモノ狩れたな!? 奴らはどっちかが全滅するまで追ってくるから我らでもなかなか手出しできんのに……ゴクッ……それ、本当にくれるのか?』
あらあら、黒狼さん……涎が垂れてますよ? 尻尾もゆっくりだが振られている……分かりやす!
「嫌じゃなければ、受け取ってくれ」
『オーク程度の魔獣なら『哀れみなどいらぬ!』とかいうところだが……こいつは旨いんだ! 恥を忍んででも貰っていくぞ!』
あはは、益々こいつが気に入った。
「ああ、遠慮なく持ってってくれ」
驚いたことに【亜空間倉庫】にあのでかい牛を放り込んでしまった。
「お前倉庫持ちか? しかもあのデカいのが入るんだな」
『凄いだろ? まだ入るぞ! おかげで群れからも絶大な尊敬をされていたんだがな……』
「全滅させたことに対しては、謝罪はしないぞ」
『当然だ! 襲ったのはこっちだ、返り討ちにあったからといって、お前が謝る事はない。我が恨んでもお前も文句は言えんがな』
「そりゃそうだ。いくらそっちが攻めてきたといっても、全滅させられたら恨んで当然だ」
『やっぱりお前は変わってるな……恨む気になれん。牛は貰っていくぞ、仲間を全滅させておいて手ぶらで帰ったら、メス共に俺が喰われかねん。新婚の奴もいたから、あのメスには怒って噛まれるだろうな……帰りたくないな』
「なんだ、仲間がまだいるのか? 何頭いるんだ?」
メスと年寄りと子供だそうだが、結構いたので牛をもう3頭出してやる。
『うっ……残念だが全部で3頭しか入らないみたいだ。でも良いのか? こいつの肉や皮は売ると良い金になるらしいぞ?』
「無くなったら、また狩るから良いよ」
「ん! 龍馬! この子飼いたい!」
「なっ!? 雅ちゃん!?」
『へっ!? この子供、今なんて言った?』
「ん! 黒くて大きくてカッコいい! 龍馬、この子飼いたい!」
「却下だ!」
『我をこの子って……大丈夫かこの子供?』
「お前より強いぞ。あまり子ども扱いすると怖いぞ」
『そんな訳なかろう?』
子ども扱いされた雅はちょっとお怒りだ。俺の与えた二刀を抜きさり、こう言った。
「ん! 私に負けたら従魔になれ!」
『な! なんだその武器! 危険な感じがビンビンするぞ! しかも急にその子の気が鋭くなった! 冗談抜きで我より強いかも……信じられん』
「雅! こいつはダメだ! ハティが大きくなったら妊娠させられちゃう!」
「「「そっちかよ!」」」
『そんな赤子がどうやって妊娠するのだ! だが、従魔は我も勘弁してほしい! 家に帰ると腹を空かせた妻と子供が待っているんだ』
「ん、そんなありきたりな事言って! でも、面白い! 益々欲しい!」
「雅、我が儘言うな……当人が拒否してるんだ。諦めろ」
「ん、私の従魔になるのどうしても嫌?」
『我は、人の下に付く気は更々ない。我は王だぞ、黒狼の頂点だ。諦めろ……』
「ん、解った……仕方ない、諦める」
黒王狼は、周りを見渡して一瞬フィリアを見てビクッとなってから別れを告げてきた。
『我はもう行く。なんだこの集団は……ヤバそうな奴が他にもゴロゴロ居るではないか。今度から一度我が先に偵察したほうが良さそうだな……良い勉強になった。では、さらばだ……』
一瞬で姿が見えなくなった。王狼は桁違いの脚力のようだ。
「ん、やっぱあれ良い……乗ったら速くて楽しそう」
「確かに馬のようにでっかくて、凄く速そうだ。あれに乗ったらカッコいいだろうな……」
「ん、絶対皆が羨むほど良いのに……」
「諦めろ、ハティが大きくなったら、乗せてもらったらいいだろ? ハティの方が白くて可愛く育つぞ。なぁ、ハティ?」
「ん、ハティちゃん、大きくなったら私を乗せて走ってくれる?」
「ミャン!」
雅はハティのお気に入りだからな。嫌とは言わないだろう。
黒狼を全て回収し、通常の野営隊形に戻る。風呂も開放し、軽く夜食を出してやる。
「皆、武器の使い勝手はどうでした?」
「刀は最高だったぞ! スパスパ切れる! ミスリルのように欠ける事さえなかった」
「ガントレットも問題ない。あの針、中々いい。頭を一刺しで瞬殺だった。人が相手なら心臓も狙えるけど、問題は俺が人を刺せるかどうかだな」
「籠手の強度も問題ないね。何度も噛ませたが、傷すら付いていなかったよ」
「皆、気に入ってくれたようで良かったです。薫ちゃんはどうだった?」
「はい、以前ので慣れていたので、少し違和感がありましたが良い感じなのですぐ慣れると思います。只、穂先を飛ばした後の戦闘がちょっとなんか難しいというか……多分【槍術】と【棒術】の違い? だと思うんです」
「ああ、そうか。飛ばした後は刃先が無いので技術的に【棒術】になるんだね? 俺のミスだ。穂先の10秒間の待機時間はどんな感じかな?」
「基本逃げた相手にしか使わないので、問題ないです。とっておき感があっていいですね。逃げた相手に後ろからバシュッって! それに、この棒がとても硬いので、私の【身体強化】MAXと【腕力強化】MAX状態で殴っただけでも、一撃死でしたよ。刃先にそれほど拘らなくても敵は倒せそうです」
槍術と棒術はある程度の基本動作は似た部分があるので、刃先がなくても十分戦えていたのだ。
だが基本的に刃の部分メインで戦闘する【槍術】の技術と、棒全体で殴って倒す【棒術】では全く別物なのだ。
ログハウスで薫を呼び出して【カスタマイズ】で【棒術】の技術を、槍と同じレベルの【棒王】Lv10まで上げてやった。
各技術系は完全獲得するにはまだ先が長い。
【剣術】→【剣聖】→【剣王】→【剣鬼】→【剣神】とあるのだ。
【棒術】→【棒聖】→【棒王】→【棒鬼】→【棒神】と同じく続く。
でも、薫の方が桜より強くなっちゃったかもしれないのは、内緒にしておこう。
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