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王都街道編 4・5日目
2-4-6 エリアシールド?黒狼逃走?
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夕刻4時頃、黒狼が後10kmに迫ってきた。そろそろ迎え撃った方が良いだろう。
皆を集めて、最終確認を行う。
「黒狼達が10km圏内に入りました。俺たちの足跡や匂いが色濃く残ってるので、追尾速度がかなり上がっています。後30分もあればここに到達するでしょう。襲撃組は既にレイドPTを組んでいます。居残り組も3班に分かれてレイドパーティーを組んでください。狼の来ている方向が風下になるので、おそらくそのまま真っ直ぐ攻めてくると思います。全部は殲滅できないと思うので、俺たちが抜かれた時は美弥ちゃん先生の指示に従って戦闘班は行動してください」
居残り組の戦闘班のパーティーリーダーに指名したのだが、特に嫌がる素振りもなく美弥ちゃんは引き受けてくれた。
非戦闘班のリーダーは高畑先生と、皆がリーダーに選んだ大影先輩だ。
2年生なのに、何気に大影先輩は皆から人望があるようだ。
美弥ちゃん先生にも、軽く挨拶をしてもらい、パーティー内の士気を高めてもらおう。
「先生、ハティちゃんは可愛いけど、狼とかおっかいないのは苦手なの。でも敵が来たらすぐ分かっちゃう探索魔法があるので、頑張って指示するからよろしくね♪」
士気なんか全く上がらなかった……むしろ先生の愛らしさに皆が和んでしまった。
あまりにも心配なので、やっぱり結界で守る事にする。
【魔法創造】
1、【エリアシールド】
2、・発動地点を中心に、半径10~100mの範囲防御結界を張る
・ダメージ吸収量はレベルに比例する
・結界内の出入りは、パーティーメンバーは自由に出入りできる
・パーティー以外の者は出る事はできるが、一度出たら中には入れない
3、イメージ
4、【魔法創造】発動
よし、できたがダメージ吸収、幾つあるんだ?
『……マスター、レベル10で10000ですね。【マジックシールド】と同等です。思っていたより凄くはないですね……ダメージ吸収1万程度ですと、大規模結界としては少ないです。スタンピードなどの大量魔獣が相手ではあっという間に壊れちゃいます。それと10m範囲を広げるごとにMP消費50ですね。あまり広範囲だとMPが枯渇しますので注意してください』
『分かった。でも今回ぐらいの規模なら、そうそう壊れないだろ?』
『……10頭ぐらいがきても、余裕ですね』
美弥ちゃんを呼んで、一度パーティーを解散してもらい、さっき創った【エリアシールド】をコピーしてレベル10にしておく。
「龍馬君、これ範囲結界?」
「そうです。【マジックシールド】と同じくらいしかダメージ吸収量がないので、【オートリバフ】設定で、20%を切ったらリバフするように設定しておいてください。それと、10mごとにMP消費量が増えるので、今回皆を半径20m内に集まって座らせておいてください」
「解りました」
美弥ちゃんにコピーできたので、再度レイドパーティを組み直す。
「小鳥遊君、狼の規模ってどのくらいなの?」
「あれ? まだ言ってなかったかな?」
「ごめん、忘れちゃった……」
「大影先輩、責めてるんじゃないです。俺も言ったかどうか忘れてるぐらいだし、むしろいい質問です」
「そう? それなら良かったわ」
「えーと、あら? どうやら、周囲の仲間を遠吠えしながら集めて来たみたいで、47頭に増えていますね」
「そんなに居るの? 大丈夫なの?」
「危険だという事は最初に皆に言ってますよね? 死んでも文句言わないっていうから、皆を連れてきているのです。本当なら安全な体育館のシェルターで待っていてほしかったのに……」
「分かってるわよ……でも皆あそこでいるのが不安だったの。あなたみたいに強ければ何とも思わないんだろうけど、またオークが来るとか、教員棟の男子がいつ暴走するかとか考えたら、とてもあそこには居られなかったのよ。それなら、危険なのを承知であなたたちに付いて行った方がずっと気分的に落ち着くと思ったの」
「あ~ね……納得です。戦闘班全員で頑張って守りますので、あまり心配は要りません。約束事さえ守ってくれたら、死人は出ないと思います」
「約束事? どんな事?」
「今からこの場に防御結界を張りますので、全員その中に入って座ってください」
「結界が張れるの!? 凄いじゃない! なら安全だね?」
「過信はダメです。ダメージ吸収量を超えたら壊れるんですから、結界を守る必要があるのです」
「それはそうね……森里先生たちが守ってくれるんだよね?」
「ええ。そうですが、結界内から一度出てしまうと、もう中には入れませんので決して出ないようにしてください」
「約束事ってその事?」
「そうです。出てから入れてとか騒がれても、他の者を危険に晒すだけですので、約束を破って出ちゃった人はもう観念して騒がないで狼に喰われちゃってください」
「結界の外には狼が居るのに誰も出ないわよ」
「そうだと良いのですが……人は恐怖に駆られると何をしでかすか解りませんからね。これだけの人数です、バカが1人2人居てもおかしくないでしょ?」
「なんで私を見ながら言うのよ! もう、逆らったりしないから、いい加減許してよ!」
柴崎先輩を見ながら言ったのを気付かれたようだ。皆を集めて【エリアシールド】発動する。
透明だが若干虹色に輝いて、シャボン玉の中に居るような感じだ。これならちゃんと結界の張ってある範囲が分かるので、知らない間に出てしまってたとかはないだろう。
「美弥ちゃん、俺の張ったシールドの中に、美弥ちゃんのシールドを張ってくれる?俺のは21mで張ったから、先生は20mでお願い」
「そか……2重だと2万耐えられるんだね? 流石龍馬君、頭いいね」
さて、こちらからも攻めに行きますかね。襲撃組は料理部のA班主体だ。
俺・美咲先輩・フィリア・雅・菜奈・桜・穂香・未来・薫だ。今回本人のたっての希望で薫ちゃんを連れてきた。どうも穂香と雅とで、連携攻撃の練習をしていたようで、それを試したいそうなのだ。
「穂香・薫の2人で組んで攻撃、雅が2人のサポート、その3人の回復を未来よろしく」
「「「了解です」」」
「美咲先輩はフィリアと組んで自由に鬼無双してくれればいいです。フィリアは先輩の回復よろしく」
「うむ、了解じゃ。じゃがダメージなんかこぬと思うがの? 今回もシールドは使わぬのか?」
「牛より危険がないので、使わないよ。噛まれたら超痛いから、噛まれないようにね」
「今回菜奈は様子を見ながら遊撃手として行動してくれ。桜は菜奈と組んで守ってやってほしい」
「分かりました。兄様はどうなさるのです?」
「俺はハティと組んで、ハティのサポートに徹する」
「兄様、ハティちゃんまだ子供なのに大丈夫なのですか?」
「まだ牙が無いからな……ハティは【マジックシールド】を張っていいぞ。おそらく最優先で狙ってくるから、気を付けるんだぞ。魔法もMPがあるうちはガンガン使っていいが、周りを巻き込まないようにな」
「ミャン!」
足早に黒狼たちの来ている方向に移動する。
「後、500mほどだ! お互いに移動してるのですぐにぶつかるぞ! こっちが風上なので、既に気付かれてるかもしれないが、気にせず進め!」
「「「了解!」」」
すぐに狼の先頭集団とぶつかり、各自戦闘となった!
予想通りハティを見かけたヤツらは、集団でハティ目掛けて攻めてきた。
「ハティ、シールド切らすなよ!」
クソッ! 数の暴力というのは、思ってたより厄介だ。桜と、菜奈が、一度後ろから噛まれて負傷している。
盾持ちの穂香は見事だ。上手く盾でブロックして、盾に仕込んである投げナイフを的確に当てて、戦力を削いでいる。穂香の背を守るように薫が付き、雅が未来に付いているので、この4人はノーダメージだ。盾職特有の挑発スキルを上手く使って、未来に注意が向かないよう調整している。
美咲先輩とフィリアなのだが……無双しすぎでしょ!
あまりに凄すぎて、最初に突っ込んできた7匹を瞬殺した後、狼たちも警戒して近づかないで周囲をぐるぐる回って唸り声をあげているだけの状態になっている。
この狼たち……顔だけ見たら超おっかない!
ハティ、マジ天使だ! あんなだったら、絶対従魔になんかしてやらない!
だって可愛くないもん!
そのハティもかなり苦戦している。なにせ、牙が無いので噛みついても肉が抉り取られる程度で済んでしまう。
ハティも【身体強化】レベル10なので、乳歯でもかなりの強度がある。先が鋭くなっている分、剃刀並みの切れ味はあるようだ。だが、体格差があり過ぎて近距離戦は不利なのだ……現状ハティは魔法攻撃しか有効手段がない。
一度怪我を負って血の匂いがする菜奈と桜が狙われ始めたので【マジックシールド】を張る事にした。
「予想以上に厄介なので、シールドを皆に張った! もうダメージは行かないので、安心して狩ってくれ!」
「「「了解!」」」
皆の顔に安堵の表情が伺えた。やはりシールドがないのは不安みたいだったようだ。
技術力を上げるには、多少のダメージを負った方が向上するのにな―――
痛い思いをすれば、痛いのを避けるために、次回の時どうするか後で考えるものだ。
ずっと無傷で戦闘をしていたら、失敗の反省をする思考の機会が無くなり、進歩も遅くなってしまう。
結構倒したと思うのだが、次から次に後続がやってくる。
『ナビー! 後、何頭残ってる?』
『……後、19頭ですね。もうすぐ群れのリーダーが来ます。王種なのでお気を付けください』
『王種か……分かった』
「もうすぐこの群れのリーダが来る! 上位種の王種なので、雅と美咲先輩以外は近付かないように!」
「ウォーン!」
その時、遠吠えがしたと思ったら、一斉に黒狼どもが退散し始めた。
『ナビー?』
『……逃げましたね……予想外です。全滅するまで、襲ってくると思っていましたのに……』
『うちの本陣に狙いを変えたとかじゃないのか?』
『……うーん。いえ、どうも一時撤退のようです……面倒な事に、夜襲する気のようです。黒いので闇に紛れられたら厄介ですよ』
『あたた……そうきたか。白狼よりバカじゃなかったのか?』
『……黒狼自体はあまり賢くはないのですが、王種はそれなりに知恵があるようですね』
「皆、聞いてくれ…………逃げられちゃった」
「「「エエエッ!?」」」
「しかも、夜襲でまた攻めてくる気らしい……」
「兄様、追うのはダメなのでしょうか?」
「本気で逃げられたら、俺たちより足は速い」
「龍馬が練習と称して遊んでおるからじゃ! 次来たら面倒故【多重詠唱】で一気に殲滅するのじゃぞ!」
「分かったよ……でも実技練習も大事なんだぞ? スキルだけ取っても技術が未熟じゃ、大して役に立たないんだからな?」
「そんな事は、解っておるわ! 妾に説教とか千年早いわ! 愚か者めが!」
フィリアにいらぬ事を言って怒られてしまった。
でも、千年とかリアルすぎて笑っちゃうな、フィリアの中身はババァだしな、ククク。
「其方、今、妾に凄く失礼な思考を持たなかったかの?」
フィリア、神眼使えないのに良く解るね! とりあえず首を振って否定しておこう。
「一旦拠点に帰って報告しよう……野営準備をして、夜襲に備えて待機だね」
ここに居ても仕方がない……拠点に戻って報告だ―――
皆を集めて、最終確認を行う。
「黒狼達が10km圏内に入りました。俺たちの足跡や匂いが色濃く残ってるので、追尾速度がかなり上がっています。後30分もあればここに到達するでしょう。襲撃組は既にレイドPTを組んでいます。居残り組も3班に分かれてレイドパーティーを組んでください。狼の来ている方向が風下になるので、おそらくそのまま真っ直ぐ攻めてくると思います。全部は殲滅できないと思うので、俺たちが抜かれた時は美弥ちゃん先生の指示に従って戦闘班は行動してください」
居残り組の戦闘班のパーティーリーダーに指名したのだが、特に嫌がる素振りもなく美弥ちゃんは引き受けてくれた。
非戦闘班のリーダーは高畑先生と、皆がリーダーに選んだ大影先輩だ。
2年生なのに、何気に大影先輩は皆から人望があるようだ。
美弥ちゃん先生にも、軽く挨拶をしてもらい、パーティー内の士気を高めてもらおう。
「先生、ハティちゃんは可愛いけど、狼とかおっかいないのは苦手なの。でも敵が来たらすぐ分かっちゃう探索魔法があるので、頑張って指示するからよろしくね♪」
士気なんか全く上がらなかった……むしろ先生の愛らしさに皆が和んでしまった。
あまりにも心配なので、やっぱり結界で守る事にする。
【魔法創造】
1、【エリアシールド】
2、・発動地点を中心に、半径10~100mの範囲防御結界を張る
・ダメージ吸収量はレベルに比例する
・結界内の出入りは、パーティーメンバーは自由に出入りできる
・パーティー以外の者は出る事はできるが、一度出たら中には入れない
3、イメージ
4、【魔法創造】発動
よし、できたがダメージ吸収、幾つあるんだ?
『……マスター、レベル10で10000ですね。【マジックシールド】と同等です。思っていたより凄くはないですね……ダメージ吸収1万程度ですと、大規模結界としては少ないです。スタンピードなどの大量魔獣が相手ではあっという間に壊れちゃいます。それと10m範囲を広げるごとにMP消費50ですね。あまり広範囲だとMPが枯渇しますので注意してください』
『分かった。でも今回ぐらいの規模なら、そうそう壊れないだろ?』
『……10頭ぐらいがきても、余裕ですね』
美弥ちゃんを呼んで、一度パーティーを解散してもらい、さっき創った【エリアシールド】をコピーしてレベル10にしておく。
「龍馬君、これ範囲結界?」
「そうです。【マジックシールド】と同じくらいしかダメージ吸収量がないので、【オートリバフ】設定で、20%を切ったらリバフするように設定しておいてください。それと、10mごとにMP消費量が増えるので、今回皆を半径20m内に集まって座らせておいてください」
「解りました」
美弥ちゃんにコピーできたので、再度レイドパーティを組み直す。
「小鳥遊君、狼の規模ってどのくらいなの?」
「あれ? まだ言ってなかったかな?」
「ごめん、忘れちゃった……」
「大影先輩、責めてるんじゃないです。俺も言ったかどうか忘れてるぐらいだし、むしろいい質問です」
「そう? それなら良かったわ」
「えーと、あら? どうやら、周囲の仲間を遠吠えしながら集めて来たみたいで、47頭に増えていますね」
「そんなに居るの? 大丈夫なの?」
「危険だという事は最初に皆に言ってますよね? 死んでも文句言わないっていうから、皆を連れてきているのです。本当なら安全な体育館のシェルターで待っていてほしかったのに……」
「分かってるわよ……でも皆あそこでいるのが不安だったの。あなたみたいに強ければ何とも思わないんだろうけど、またオークが来るとか、教員棟の男子がいつ暴走するかとか考えたら、とてもあそこには居られなかったのよ。それなら、危険なのを承知であなたたちに付いて行った方がずっと気分的に落ち着くと思ったの」
「あ~ね……納得です。戦闘班全員で頑張って守りますので、あまり心配は要りません。約束事さえ守ってくれたら、死人は出ないと思います」
「約束事? どんな事?」
「今からこの場に防御結界を張りますので、全員その中に入って座ってください」
「結界が張れるの!? 凄いじゃない! なら安全だね?」
「過信はダメです。ダメージ吸収量を超えたら壊れるんですから、結界を守る必要があるのです」
「それはそうね……森里先生たちが守ってくれるんだよね?」
「ええ。そうですが、結界内から一度出てしまうと、もう中には入れませんので決して出ないようにしてください」
「約束事ってその事?」
「そうです。出てから入れてとか騒がれても、他の者を危険に晒すだけですので、約束を破って出ちゃった人はもう観念して騒がないで狼に喰われちゃってください」
「結界の外には狼が居るのに誰も出ないわよ」
「そうだと良いのですが……人は恐怖に駆られると何をしでかすか解りませんからね。これだけの人数です、バカが1人2人居てもおかしくないでしょ?」
「なんで私を見ながら言うのよ! もう、逆らったりしないから、いい加減許してよ!」
柴崎先輩を見ながら言ったのを気付かれたようだ。皆を集めて【エリアシールド】発動する。
透明だが若干虹色に輝いて、シャボン玉の中に居るような感じだ。これならちゃんと結界の張ってある範囲が分かるので、知らない間に出てしまってたとかはないだろう。
「美弥ちゃん、俺の張ったシールドの中に、美弥ちゃんのシールドを張ってくれる?俺のは21mで張ったから、先生は20mでお願い」
「そか……2重だと2万耐えられるんだね? 流石龍馬君、頭いいね」
さて、こちらからも攻めに行きますかね。襲撃組は料理部のA班主体だ。
俺・美咲先輩・フィリア・雅・菜奈・桜・穂香・未来・薫だ。今回本人のたっての希望で薫ちゃんを連れてきた。どうも穂香と雅とで、連携攻撃の練習をしていたようで、それを試したいそうなのだ。
「穂香・薫の2人で組んで攻撃、雅が2人のサポート、その3人の回復を未来よろしく」
「「「了解です」」」
「美咲先輩はフィリアと組んで自由に鬼無双してくれればいいです。フィリアは先輩の回復よろしく」
「うむ、了解じゃ。じゃがダメージなんかこぬと思うがの? 今回もシールドは使わぬのか?」
「牛より危険がないので、使わないよ。噛まれたら超痛いから、噛まれないようにね」
「今回菜奈は様子を見ながら遊撃手として行動してくれ。桜は菜奈と組んで守ってやってほしい」
「分かりました。兄様はどうなさるのです?」
「俺はハティと組んで、ハティのサポートに徹する」
「兄様、ハティちゃんまだ子供なのに大丈夫なのですか?」
「まだ牙が無いからな……ハティは【マジックシールド】を張っていいぞ。おそらく最優先で狙ってくるから、気を付けるんだぞ。魔法もMPがあるうちはガンガン使っていいが、周りを巻き込まないようにな」
「ミャン!」
足早に黒狼たちの来ている方向に移動する。
「後、500mほどだ! お互いに移動してるのですぐにぶつかるぞ! こっちが風上なので、既に気付かれてるかもしれないが、気にせず進め!」
「「「了解!」」」
すぐに狼の先頭集団とぶつかり、各自戦闘となった!
予想通りハティを見かけたヤツらは、集団でハティ目掛けて攻めてきた。
「ハティ、シールド切らすなよ!」
クソッ! 数の暴力というのは、思ってたより厄介だ。桜と、菜奈が、一度後ろから噛まれて負傷している。
盾持ちの穂香は見事だ。上手く盾でブロックして、盾に仕込んである投げナイフを的確に当てて、戦力を削いでいる。穂香の背を守るように薫が付き、雅が未来に付いているので、この4人はノーダメージだ。盾職特有の挑発スキルを上手く使って、未来に注意が向かないよう調整している。
美咲先輩とフィリアなのだが……無双しすぎでしょ!
あまりに凄すぎて、最初に突っ込んできた7匹を瞬殺した後、狼たちも警戒して近づかないで周囲をぐるぐる回って唸り声をあげているだけの状態になっている。
この狼たち……顔だけ見たら超おっかない!
ハティ、マジ天使だ! あんなだったら、絶対従魔になんかしてやらない!
だって可愛くないもん!
そのハティもかなり苦戦している。なにせ、牙が無いので噛みついても肉が抉り取られる程度で済んでしまう。
ハティも【身体強化】レベル10なので、乳歯でもかなりの強度がある。先が鋭くなっている分、剃刀並みの切れ味はあるようだ。だが、体格差があり過ぎて近距離戦は不利なのだ……現状ハティは魔法攻撃しか有効手段がない。
一度怪我を負って血の匂いがする菜奈と桜が狙われ始めたので【マジックシールド】を張る事にした。
「予想以上に厄介なので、シールドを皆に張った! もうダメージは行かないので、安心して狩ってくれ!」
「「「了解!」」」
皆の顔に安堵の表情が伺えた。やはりシールドがないのは不安みたいだったようだ。
技術力を上げるには、多少のダメージを負った方が向上するのにな―――
痛い思いをすれば、痛いのを避けるために、次回の時どうするか後で考えるものだ。
ずっと無傷で戦闘をしていたら、失敗の反省をする思考の機会が無くなり、進歩も遅くなってしまう。
結構倒したと思うのだが、次から次に後続がやってくる。
『ナビー! 後、何頭残ってる?』
『……後、19頭ですね。もうすぐ群れのリーダーが来ます。王種なのでお気を付けください』
『王種か……分かった』
「もうすぐこの群れのリーダが来る! 上位種の王種なので、雅と美咲先輩以外は近付かないように!」
「ウォーン!」
その時、遠吠えがしたと思ったら、一斉に黒狼どもが退散し始めた。
『ナビー?』
『……逃げましたね……予想外です。全滅するまで、襲ってくると思っていましたのに……』
『うちの本陣に狙いを変えたとかじゃないのか?』
『……うーん。いえ、どうも一時撤退のようです……面倒な事に、夜襲する気のようです。黒いので闇に紛れられたら厄介ですよ』
『あたた……そうきたか。白狼よりバカじゃなかったのか?』
『……黒狼自体はあまり賢くはないのですが、王種はそれなりに知恵があるようですね』
「皆、聞いてくれ…………逃げられちゃった」
「「「エエエッ!?」」」
「しかも、夜襲でまた攻めてくる気らしい……」
「兄様、追うのはダメなのでしょうか?」
「本気で逃げられたら、俺たちより足は速い」
「龍馬が練習と称して遊んでおるからじゃ! 次来たら面倒故【多重詠唱】で一気に殲滅するのじゃぞ!」
「分かったよ……でも実技練習も大事なんだぞ? スキルだけ取っても技術が未熟じゃ、大して役に立たないんだからな?」
「そんな事は、解っておるわ! 妾に説教とか千年早いわ! 愚か者めが!」
フィリアにいらぬ事を言って怒られてしまった。
でも、千年とかリアルすぎて笑っちゃうな、フィリアの中身はババァだしな、ククク。
「其方、今、妾に凄く失礼な思考を持たなかったかの?」
フィリア、神眼使えないのに良く解るね! とりあえず首を振って否定しておこう。
「一旦拠点に帰って報告しよう……野営準備をして、夜襲に備えて待機だね」
ここに居ても仕方がない……拠点に戻って報告だ―――
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