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学園ロワイヤル編 9・10日目

1-9ー1 出発前の雑務処理?御山デートプラン?

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 夕食後、俺はフィリアを呼んで明日の予定を伝える。

「フィリア、明日は学園の少し北の方にある谷に行って、土を採取してこようと思う」
「土? 土などどうするのじゃ? 畑でも作るのに良い土でもあるのか?」

「ああ、それもいいね。腐葉土も集めておくよ。でも俺の目的の土は鍛冶用の窯に使う耐火用なんだ。ブラックメタルの融解に堪え得るほどの土が欲しいから、ちょっと遠出をしてくるよ」

「鍛冶用の粘土か。ふむ、それでどこまで行くのじゃ?」
「ナビーが言うには、ここから25km先の沢まで行かないといけないらしいけど、1日あればゆっくり往復できると思う」

「了解じゃ。それで何か他に伝えたい事があるのじゃろ?」
「あはは、お見通しか……実は桜の事なんだ。彼女、昨日から排卵周期に入っているようだけど、ちょっと俺から距離を取っている風なんだよね。昨夜ひょっとしたら発情して、来てくれるかもと思っていたのだけど、結局来なかったし」

「桜は16歳故、人並みには性欲が出るはずなんじゃが……我慢しておるのじゃろ」
「で、桜は俺と結婚したいって言っているけど、知り合ってまだ1週間で、今のところ手すら触れ合っていない状態なんだよね。これで好きとか言われても、ちょっと信じられないというか、不安なんだよ」

「なんじゃ、そのような事か。ナビーに聞けば桜の気持ちなど神眼でお見通しじゃろ?」
「ナビーは人の心情は教えてくれないんだよ。まぁ、俺のせいなんだけどね」

『ナビー、どういう事じゃ?』
『……はい。人の心は気分次第でコロコロ変わってしまいます。マスターはフィリア様だけを愛するつもりでいたのに、穂香と出会って、たった一晩で女子のハーレム計画に乗ってしまいました。それほど変わりやすい人の感情をナビーがその時の気持ちを教えて、その時はその気になっていても、朝起きたら冷めていたってなる可能性もあるのです。ナビーがその場の感情を教えるのは危険です。いずれきっとナビーが言ったからと責める時が訪れます。だからナビーはマスターに害が及びそうな時以外は極力教えないと決めました』

「成程のぅ。ふむ、それがよかろう、そもそも神でも安易に人の心を覗くものでもないのじゃ」
「え~! 初日に散々俺の心の中覗いたジャン! 丸裸にされたジャン!」

「其方は妾が出会った初の異世界人故な、どういう思考をするのか興味があったのじゃ。それにあの時は妾は大ポカをした後じゃったしの……」

「まぁ、それはいいんだ。おかげであの時自殺しようとまで考えていた俺のイカれた心はフィリアに救われたんだから。で、明日桜を連れて一緒に土を採りに行こうと思っている。薬草を採ったり、自然薯を採ったりキノコ狩りもしようと思ってる」

「成程、其方らはお山デートに行くのじゃな。それで妾に一応許可を求めておるのだな? 桜次第ではそのまま……ってことか?」

「うん。ダメか?」

「心情としてはダメって言いたいところじゃがの……人を好きになるって事は厄介な事じゃ。菜奈も桜も雅も他の娘たちの事を考えれば、妾の嫉妬や独占欲は多少グッと堪えねばならぬ。あやつらの事も妾は好きじゃからの」

「ありがとう。フィリア……」

 俺は優しい女神様に感極まって抱きしめてキスをした。

「じゃが、桜にアプローチするのは町に行ってからではダメなのか?」
「できれば平原に出る前に桜の気持ちを確かめて、各種スキルをコピーしておいてあげたいんだ。雅には夕飯前に粗方コピーしてあげた。レベルアップ時の増量系パッシブがあるなら最初から欲しかったって拗ねられたけどね。フィリアと菜奈に差がついてしまった事が悔しいみたいだ」

「レベル1の時点から貰った妾と、レベル20を過ぎてから付与してもらうのではかなり差が付くからの……気持ちは解らんでもない。成程の、桜にも早めにあげたいって事じゃな?」

「うん。そういう事……桜の本心が知りたいってのもあるけどね」
「桜が其方を好きって言っているのは本心じゃろ……今更何を言っておる」

「いや……だって手すら触れてないんだよ。ちょっと自信ないんだよ。桜は俺にとっては高嶺の花なんだ……」
「はぁ~、まぁ良い。2人で行ってくると良いじゃろ」


 その日の晩もやはり桜は来なかった……フィリアが言うにはそれなりにきついそうなんだけどな。1ヶ月以内に結婚するという相手が居るのに、なぜ我慢して来ないんだろう? やはりあれから直ぐに気が変わって後悔でもしているのだろうか?

『……マスターは桜に関してはダメダメですね。知り合って間もないのだから仕方ないのかもですが、ヒントは会話の中で有りましたよ』

『え!? そうなの……うーん、分からない』
『……仕方ないですね。桜の為に少しだけ教えてあげましょう。桜は乙女……ロマンチストなのです』

『あ! ひょっとして結婚初夜とか気にするタイプか!? そういえば海辺がどうとか、夜景がどうとか言ってたな……これは手強いな』

『……正解です。思い出になる結婚式当日の結婚初夜には、ちょっと言葉では言えないような、感覚的な感動的なものがあるはずと期待しているのですよ。その期待感で今の性欲を抑え込んでいます』

『なんかハードル高いな……』
『……学園1どころか桜ほどの逸材は探してもいないですからね。それをGETできるチャンスなのです。気合を入れていきましょう。ちなみにお山デートは桜的にナイスプランです。自然薯や松茸などの高級食材の採取は、彼女にとって至福の時になるでしょう。粘土層がある地点まで、ハイキング的になるようなコースを選んで誘導してあげます』

『おお! ナビー頼んだ! あっ、そうだ、良い演出を思いついた!』

 ナビーとああでもない、こうでもないと、桜攻略の為の密談を深夜まで行うのだった。



 朝食後に俺の行動予定を伝え、皆にも仕事を割り振る。

「皆、今日は校舎内の窓ガラスを全部回収してほしい。この世界にもガラスはあるのだけど、不純物を取り除く技術がまだ遅れていて透明なガラスが無いそうなんだ。なのでサッシを回収しようと思う。窓枠のアルミも後々役に立つと思うので窓枠ごと取り外してほしい」

「龍馬君、その窓ガラスなんだけど、オークたちの襲撃時にかなり割られちゃってるけど、残っている分だけでいいのかな?」
「いや、炉で溶かして再利用して使う時には、どのみち割って細かく砕いてから使うんだ。だから怪我しないように割れた破片も回収しておいてもらいたい。上の階から落ちないように、十分気を付けて作業してね。まぁ、4階から落ちたとしても【身体強化】Lv10の皆は怪我しないと思うけど」

「それと、桜は俺と別行動だ」
「え? 2人だけで別行動なの? 何するの?」

「2人でいろいろ採取しながら、25km先の粘土を採りに行く。この粘土で炉を造る予定なんだ」 

 当然のように、ここで割り込んでくる奴が居る。

「兄様、菜奈も一緒に行きたいです」

 だが、昨日のうちにフィリアと雅に対策をお願いしておいた。

「菜奈は今日は妾と雅とで別作業がある」
「ん、菜奈は私たちと一緒」

「でも……桜先輩と兄様が2人きりでデートに行っちゃいます……」
「採取だと言っているだろう……お前はホント困った奴だ。皆を適材適所に割り振って仕事をしてもらっているんだ」

「う~、解りましたよ~」

 半べそだが、フィリアと雅の協力で引き下がってくれた。

「窓は午前中で終わるだろうから、午後からは調理済みの食糧を大量に作ってほしい。フィリア・菜奈・雅の【亜空間倉庫】は時間停止機能まで得ているので、完成品を熱いうちにどんどん収納してくれればいい。スープやご飯、特にオークのステーキは大量にストックしてほしい。オークは中庭で直火焼きが良いかな。焚き火用の枯れ木は穂香と大量に拾ってきてあるから、中庭に出しておくよ」

 それを聞いた茜から待ったがかかった。

「あ、待って。中庭だとお腹を空かせた体育館組が匂いで集まってきそうじゃない?」
「ああ、それもそうか。塩やコショウとか余裕あるのか?」

「ええ、学園の食堂に業務用の未開封のストックが一杯あったので、かなりの量があるわよ?」
「だったら、焼くのを手伝うって条件で食べさせてやってもいい。オーク自体は山のようにあるからね。近辺で木切れ拾いをさせてもいいな。手で抱えられるぐらいの薪を拾ってきたらステーキ1枚食べさせてあげるとかね……その辺は茜に任せるよ」

「分かったわ。非常食ばかりだと流石に可哀想だしね。スープも付けて少し振舞ってあげるので、玉ねぎを10個と卵10個も出しておいて。卵スープにして出してあげるけど良い?」

「うん、いいよ。男子たちは……トラブルになっても嫌だし、まぁいいか」
「そうね。可哀想だけど、何が起こるか分かんないし、トラブルの元は混ぜない方が良いと思う。でも、薪拾いとかなら問題ないかな……」

「龍馬先輩、私たち2人は、また格技場の狩りに呼ばれているんですけど、行っても良いですか?」
「うん。優秀な回復職がいると、死人が出ないからね。付いていってあげて」

「「はーい」」

 優ちゃんとみどりちゃんはレベルアップ組に付いていくようだ。まぁ、格技場の野郎どもに懇願されたんだろうと予想は付くけどね。

「龍馬先輩、私たちも空きがあったらレベルアップに同行したいのですがダメですか?」

 山本愛華ちゃんと中屋亜姫ちゃん、それと沙希ちゃんの3人だ。
 亜姫ちゃんとは例の避妊処置の件以来、時々会話はしているけど、愛華ちゃんとはあまり話したことがない。

「三人とも支援系だけど、急にどうしたの?」
「町に行くまでに【格闘術】のレベルを少し上げておきたいかな~って」

 ああ~そういう事ね。身の危険の回避手段、防衛手段が欲しいのだろう。

「優ちゃんどう? まだパーティーに空きあった?」
「うん、昨日で支援組の方は皆抜けるって言っていたから、増えてなければ後7人ぐらいは大丈夫と思う」

「じゃあ、行っておいで。一応平原でもレイドを組んで経験値は回すつもりだったけど、絶対とは言えないからね。安全マージンのあるここで、レベルはできるだけ上げておくのがベストだね。茜も一緒に行ってきたらどうだ?」

「私はいいわ。お肉を焼かなきゃいけないし、でもどこかで調整してくれれば有難いけどね」
「そうだね、茜はどこかで必ず調整するよ」

 皆に指示を出して、桜と2人で出立した。昨晩ナビーと入念に計画したお山デートだ!


 桜、喜んでくれるといいな……。
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