女神様から同情された結果こうなった

回復師

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学園ロワイヤル編 2日目

1-2-11 調合失敗?狩りのお誘い?

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 試食室から茶道室に移動してくつろいでいると、美弥ちゃん先生が俺の下にやってきた。

「龍馬君、明日の午後に各拠点から各5人ほど出し合って、遺体の埋葬をしないかって連絡網がきたのだけど、どうしたらいいと思う?」

「7人じゃなくてなんで5人なんだろ?」
「1PTの7人だと拠点防衛が厳しい所もあるからじゃないかな? 出せて5人って事じゃない?」

「成程、そうかもしれないね」


 俺は前から気になっていた事を皆に聞いてみた。 

「他の拠点の奴らはどうやってレベルアップしているんだろう? 俺が外に出てる間に一度も出会った事が無いんだけど……誰か知ってる人いる?」

「ハイ! 格技場なら知っています! 何もしなくてもどんどんやってくるから、すべて撃破だそうです」
「あー、あそこはオークのコロニーから続く獣道に1番近いから、必然的に最前線になるよね。いくら柳生先輩が居るとしても、よく初日に持ちこたえたと思うよ。さすが武闘派集団だよね」

「体育館と教員棟は同じ戦術みたいだよ」
「美弥ちゃん先生知ってるの?」

「うん。入り口を少し開いて数体が入ってきたらすぐに閉めて集団で倒すんだって。基本全員でレイドパーティーを組んでいるから突出して高レベルの人は居ないようだけど、10頭くらいならもう余裕だって言ってた。オークが持ってた武器が手に入ったので、近いうちにレイドでの戦闘は止めて、男子数名が物理メインで、女子が回復と生活魔法メインに切り替える予定だって聞いたわ」

「教員棟はレイドを組むには定員オーバーじゃない?」
「戦闘できないって子がやはり数名いるみたいで、その子たちは既に除外されているようね。瀕死のオークに止めは刺させてレベル1は確保済みだそうだから、今後どうするのかはその子次第ってところかしらね」

 人数が増えるとそういう管理が難しい。戦闘はしたくないけど死にたくはない。まさにパラサイトととしか言いようがないけど、気持ちも解らないでもない。安全な日本からいきなりこっちの世界に放り込まれて、さぁ、戦えとか言われてもね……。

 こちらの住人で、そういう人は基本町から出ないで町の中だけで人生が完結するそうだ。
 町の外は危険な場所というのが当たり前なのだ。でも俺たちは近いうちにここを出て、生活できる場所まで移動しなくちゃならない。その時に彼女たちは足手まといにしかならないのは事実だ。

 最低でも【身体強化】Lv3ぐらいにはしておかないと付いてくるのさえ難しいかもしれない。


 男子寮は3人だけが特化してレベルアップしているようだ。それ以外は全員初級回復魔法を取って、打ち止めらしい。聞けばその3人とは、俺を甚振ってた佐竹と、うちのクラスメートの2人だ。

 3人だけで防衛していたのだ、結構レベルも高いと予想できる。
 俺もうかうかしていられない……佐竹とぶつかる前に種族レベル20にしておく必要がある。



「どうする? 明日の遺体整理の参加はした方が良いと思うけど、誰が行く?」

「兄様は行かない方が良いと思います」
「そうね、私もそう思うわ」

「男子寮の奴らか?」

「うん。美弥ちゃん先生、各拠点から誰が来るのか分からないのでしょ?」
「ええ、誰が来るとかまでは報告されてないわね。それに各拠点が参加するともまだ決まってないみたい」

「参加が決定してるのは、教員棟と体育館と女子寮よ。でも言いだしっぺのうちが参加しないのはありえないよね?」

「それもそうだね……美弥ちゃん先生・桜・茜・菜奈・綾ちゃんで行ってくれるか? 俺が行くと一波乱起きそうなので、余計な戦闘は避けたい」

「兄様、この人選はどういう基準ですか?」
「本当は菜奈と綾ちゃんには行ってほしくないんだけどね。同級生や知人の首や手足のない遺体を集めるだけでもトラウマになるかも知れない。でもこの中じゃ上級生でなんとか耐えてくれそうなのは菜奈と綾ちゃんかなって思ってね。ダメそうなら俺が行くから言ってくれ。先生も戦闘のとき中庭で吐いていたから、もしきついならすぐ代わるから言ってほしい」

「先生、頑張ってくるわ。こんな事中学生にさせるような事じゃないもの」

 美弥ちゃん先生は握り拳を固めて、強い意志を見せている。見た目はあれなのに志は立派だ。

「龍馬よ、妾を行かせてくれぬか。せめて供養だけでもしてあげたいのじゃがダメかのう」
「気持ちは解るけど、この子誰? とかになった時、説明に困るから我慢してここに俺といてほしい。薬草採取の時だって、女子寮の者からも結構いろいろ聞かれて大変だっただろ?」

 どの国籍にも属さない、人外的可愛さのフィリアはどこに居ても目立つのだ。
 しかも『のじゃロリ属性』持ちだし……高等部の先輩が多い女子寮組のお姉さまたちが、可愛い幼女を放っておけるはずがなかったのだ。

 ちみっこのフィリアと雅と菜奈は、可愛い猫でもあやすかのように扱われていた。

「フィリアの代わりに菜奈が供養してくるから我慢してね?」

「気を使わせてすまぬな。迷惑かけたいわけじゃないのでの、菜奈に頼むとするかの」
「はい、頼まれました」

「綾ちゃんと桜と茜はいいか?」

「ここは上級生として行くしかないよね。さすがに年下の子に任せられないわ」
「そうね、中学生に行けとか言えないわね」
「料理部現部長として行ってきます」

「3人ともありがとう。でも無理はしなくていいからね。ダメだと思ったらすぐにメールをくれればいい。絡んでくる奴がいても、連絡をくれたらすぐに対処に向かうからね」

 その時桜が眉間にしわを寄せ嫌な顔をした。

「桜? なにか不満か?」
「あ、違うの。朝からメールとかコールがうるさくて、ちょっとイラッとしてるだけ」

「ん? どういう事?」
「ん~、一言で言えば勧誘? 教員棟の教師と体育館の男子生徒、空手部の男子生徒からこっちに来ないかってお誘いね」

「知り合いなのか?」
「教師以外は名前も知らないわ。断りのメールを入れてブラックリストに登録したのだけど、すぐに違う人から掛かってくるのよね」

「モテモテだな……菜奈とか他の人は? 迷惑行為はされてないか?」

「はい! 私もされています!」

 唯一手を挙げたのは美弥ちゃん先生だった。

「え? 美弥ちゃん先生は誰から?」

「なんか失礼だよ龍馬君。先生密かに人気あったんですからね。あ~でもこの人は嫌な教師なの……いつもねっとりした目で私を見ていたの。メールもキモいのよ! 『俺が守ってやるからこっちに来い』とかどこからその自信がくるのやら……」

「ひょっとして高等部の英語教師の大谷先生ですか?」
「ええ、そうよ? ひょっとして桜ちゃんのも?」

「うん。『俺は学生時代空手部だったから強いんだ』『食料は一杯あるよ』とか、とにかくしつこかった。もうブラックリストに登録してるから掛かってこないけど……」

 あいつ、空手とかやってたのか……でも、空手部の顧問じゃないよな。

『……マスター、空手部だったのは事実ですが、人を指導できるレベルではないです。はっきり言ってオークより弱いですね』

 ナビーの推測では、現空手部の生徒の方が遥かに強いそうだ。


「菜奈は意外にモテなかったんだな?」

 俺はからかうように菜奈に言ったのだけど、フィリアがマジで重く返してきた。

「妾が知ってる範囲で言えば、菜奈にコールをしようにも、中等部の男子はもうほとんど生き残っておらぬのじゃ……」

 フィリアの発言で一気に場が重くなってしまった。また下ネタ振りすると怒られそうだし、参ったな。
 そう思っていたらちょうどいいタイミングで女子寮組がやってきた。

 そうだ、回復剤を作るんだったな。
 助かった……コミュ障気味な俺に毎回場をつくろうのは難易度高いので、あとでフィリアは厳重注意だな。

「やばそうな勧誘はちゃんと言ってくれ。全員に回覧を回して一度要注意人物のリストを作っておく。何かあってからじゃ遅いんだ。こういう事は事前に知らせてほしい」

「そうね、ごめんなさい。私事と思って黙っていたけど、次から言うわね」
「ああ、そうしてくれ。日本でも事件がある時には、大抵初期アクションがある場合が多い。その時にちゃんと警察や役所に連絡して回避できている事もよくあるだろ? 黙っているのが1番ダメなんだぞ。こういうストーカーみたいな奴は皆で対処した方が良いからね」

「うん、ありがとう」



 で、肝心の回復剤なのだが……出来るには出来たのだが、俺が【錬金術】を習得していないのでムラが出るようだ。【アルケミークリエイト】【メディスンクリエイト】があるので問題ないかと思ったのだが、やはりちゃんと獲得する必要があるようだ。精度を上げるのに次のレベルアップで獲得することにした。

『……工房のモノは完璧です。ナビー製のモノを使えばよいのに……』
『そうなのだが、他の拠点の者はそっちで自作してほしいからね……毎回俺をあてにされるのは嫌なんだよ』


「女子寮組にせっかく来てもらったのに失敗で申し訳ない。次、レベルアップしたときにでも【錬金術】のレベルを上げておくので、その時もう1回やってみるよ」

「気にしなくていいわよ。上手くいけばこっちも助かるけど過度に期待されても困るでしょ?」

「そう言ってくれると助かる。明日の焼却作業に俺は参加しないけど、何かあったら参加者でお互いにフォローし合ってほしい」

「それはこちらからお願いしたいくらいよ。まだレベルじゃ料理部に全然敵わないしね」

 何個か成功した回復剤や魔力回復剤は女子寮に全て持たせた。
 俺たちのほうは、ナビー製のモノが大量にあるし、オークの襲撃じゃ俺のマジックバリアすら壊すまでにいかないからだ……怪我すること自体あまり考えられない。

 それでも念のために、うちのメンバーには全員に2本ずつ配るけどね。

「あの~龍馬君、近いうちにまた狩りに一緒に行ってほしいのだけどダメかな?」
「岡村先輩たちだけで行けばいいじゃん」

「そうなんだけどね。今日龍馬君と一緒に行ったうちの索敵の子がちょっとビビっちゃったみたいなのよ。なんか予想以上にでっかくって怖かったそうなの。でも今日の夕飯でお鍋にして食べたのだけど、凄く美味しくて、皆にまた食べたいってせがまれちゃったのよね~」

 どうやら牡丹鍋は女子寮でも好評だったようで、今日狩った分は1回で食べきったようだ。きのこもかなり美味しかったので、間をおかないで、またすぐ食べたいのだろう。狩りになったらどうせ俺が1人で狩って、獲物だけ分配になりそうだよな、なんか納得できない。

「また、薬草採取とか木の伐採とか手伝ってくれるなら良いですよ。獲物は俺が狩るので、その間に薬草を大量に確保してほしいです」

「いいけど……薬草はともかく、木なんかどうするの?」

「今すぐは使えないですけど、将来的にいろいろ使う予定ですので確保しておこうと思って。ちょうど裏山が樹齢数百年ものとかがありそうな森ですしね」


 きこりを条件に、2・3日中に狩りをおこなう約束をした。魔法を使えば素人でも大木を切るのもたやすいだろうと思う。俺なら【ウィンダラカッター】を使えば一撃で数本切り倒せる。

 回復剤作製はパッとしない成果で、そのまま今日は解散となった。



 俺は今晩から華道室で寝ることになったのだが、広い教室で1人で寝るのはちょっと寂しいものがあった。
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