女神様から同情された結果こうなった

回復師

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学園ロワイヤル編 2日目

1-2-5 フィリア情報?女子寮の行末?

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 理科室に寄って、いろいろ回収してから拠点に帰った。 

「おかえり、女子寮の方はどうだった?」
「高等部の3年生が1人間に合わなかったけど、全滅は救えた」

 美弥ちゃん先生は1人亡くなったと聞き、複雑な顔をしている。

「美弥ちゃん先生に救援要請が来たからといって、間に合わなかった事を先生が気に病む事はないよ」
「うん、解ってるけどね。やりようによってはその子も死なずに済んだかなって……」

「ひょっとして美弥ちゃん先生も合併推奨派なの?」
「自分たちが大変になるのは分かってるけど……死ななくて良い子が死ぬのは辛いかな」

「今からもう一度皆で話し合おうか?」

 皆を集めて、女子寮との合併について話し合ってもらう。

「今から皆で話し合ってほしい事がある。女子寮がちょっと弱くて壊滅しそうという事で、合併の話が数人から出ている。向こうのリーダーも希望してるみたいだけど、一旦は俺の方から断ってきている。断った理由は、メリットがこっちに全くないからだ。と言うよりデメリットばかりだ……まず弱い奴を庇護しないといけなくなる。食料事情もそうだね。受け入れてしまったら俺たちだけで美味しい物を食べるのに気が引けると思う。向こうは非常食しか持ってないからね。分け与えていたらあっという間に食料も尽きて、同じように携帯食だけになってしまう。そうなると肉体的にも精神的にも辛くなるよね。食糧事情が加わると早急に町を目指さないといけなくなるわけだけど、オークと違って草原の敵はかなり強い魔獣もいるようなんだ。十分な強さがないまま、草原に出るのは危険だよね。その辺はフィリアが詳しいから聞くといい」

「そうじゃな、草原には牛や猪がおっての。とても美味しいそうじゃ」
「何の話をしてるんだよ!」

「最後まで聞かぬか。その猪はこの森にも居て、オークも狙って狩りをするのじゃが、オークが10頭で襲っても返り討ちにして食ってしまうほど狂暴じゃ。今の桜と1:1でいい勝負じゃないかのう。他にもネコ科の魔獣や狼やら、狂暴な牛も居るな」

「強くなった桜でもいい勝負なのか……まだ、今の戦力じゃ不安だな」

「今のA班でなら草原に行けそうじゃが、B班ではまだ厳しいかの。とくに狼は10~50匹ぐらいの群れを作って狩りをする。夜間に襲われたら其方らでは朝まで持たないうちに半分になっておるじゃろうの。街に行くにはさらに草原を抜けた先の森を越えねばならぬ。そこには狼もいるし虫系の魔獣も沢山いる。サーベルタイガーに出会ってしまったら龍馬以外では対処できぬであろうな」

「草原の魔獣が強いという事は、そこに行くのにはそれ以上の強さが要るって事だ。自分たちのレベル上げもまだなのに他を構ってる余裕があるのかって事なんだけど、フィリアの話も参考にして話し合ってほしい。足手まといを承知で受け入れるのか見捨てるのか。受け入れた場合どこまで面倒を見るのかとか、そういう事も話し合ってくれ」

「すまぬが先に聞かせてくれぬか? オークのコロニーに攫われた女子たちを、其方らはもう見捨てる気でおるのかのう? A・B班のレベルがもう少し上がったら助けられると思うのじゃが、その辺はどういう話になっておる?」

「とりあえずは見捨てるという事になっている。助けても食料が足らなくなるからね」

「じゃが、あのコロニーには盗賊団が残したお宝があるゆえ、ここを去る前には持って行った方が良いと思うぞ。街に行ってもお金はいる。この人数で行ったら宿代だけでも相当な額がいるぞ? それならアジトの宝石やらお金を得るために、コロニーは潰して全て持って行った方が良くないかのう? それにキングの肉は王族が賞金を懸けておるほど旨いそうじゃ。クイーンも相当美味しいと言われておる。妾も食べてみたいのう」


「その資金で町に行ったとき、拠点にする家を買ってもいいな」
「それよりお肉よ! そんなに美味しいの? 救出したついでにぜひ欲しいわ」

 あたた……桜が見事にフィリアの策に引っかかってしまった。レア食材で気を引いているが、フィリアの目的は、さらわれた女子の救出が最優先だと思う。

「キングとクイーンの肉は別格だそうじゃ。オークションに掛けられて、100g当たり3000ジェニーもするそうじゃ。ジェニーというのはこの世界の通貨の単位で、価値は1ジェニー1円と思ってくれればいいかの」

「え! 日本のA5和牛の倍ほどしてるじゃない! そんなに美味しいのかな?」
「一度オーク自体を食べてみる必要がありそうね……龍馬君、後で1体私にくれるかしら?」

「茜が捌いてくれるのか? 俺はできないぞ……なんかバラバラ殺人をしてるイメージが」
「ちょっと言わないでよ! なるべく考えないようにしてたのに!」

「悪い! でも捌き方とか知っているのか?」
「兎と猪と鹿と熊は捌いたことあるわ」

「はぁ? 茜……どういう生活してたんだよ」
「桜も居たわよ。その時の料理部の課題が、新鮮な熊の手だったのよ。猟師に3日間付いて回って、その間に狩った兎と熊は捌けるようになったわ。2回目の狩猟課題が新鮮な猪ね、鹿と兎もその時に取れたので捌き方を習ったわ」

「お前たちやっぱおかしいよ。ちょっと頭逝ってると思う。そんなの肉屋で買えよ!」
「何言ってるのよ! 一度冷凍した肉なんてダメに決まってるでしょ! 課題にするなら新鮮な生肉よ!」

 間髪入れずに桜がそうほざいた。

「なんか桜が可哀想な子に見えてきた……」


「盛り上がってるとこ済まぬが、話を続けるぞ。コロニーを落とすにしても早くせねば攫われた女子たちが子を宿してしまうぞ。子を宿した女子はもう助けられぬ……殺すしかないがどうするのじゃ? 其方らにできるかの」

「フィリア、ごめんな。俺、結構おまえの前で無神経な事言ってるけど、無理してないか? きつかったら言ってくれな」

「よいのじゃ、気にするでない。妾ももう神族ではなく人族故な」

「兄様? 何の事です?」

「フィリアはこの世界で水を司る主神の女神だったんだよ。水だから当然崇める種族は人族だけじゃないよな。生き物すべて水は必要だ。当然オークもフィリアを崇めているはずだ。フィリアからすれば俺たちもオークも等しく愛でる者なんだ。俺たちから見れば女を犯して人を食らう害獣だけど、他から客観的に見れば人間の方が凶悪で残虐に見えているかもしれない」

「妾からすればオークも人も大差ないのう。オークが他種族の女を襲うのにもちゃんと理由があるからのう。オークの出産時の雌雄比率が1:10なのじゃ。魔獣は魔素だまりからも増えるが、それは全体の個体数が減った時だけ神のシステムが調整をするのであって、基本、他種族の雌を襲って子を増やさねば繁殖できぬ。繁殖できるようにどんな生物の雌とでも子を残せるようになっておる。じゃがやはり生まれてくる子は1:10でオスばかりじゃ。龍馬は1体2体と言っておるが、あれは人型じゃが獣故1頭2頭じゃ。豚と同じじゃな」

「私たちとオークが同じっていくらなんでも酷くない?」

「なぜじゃ? オークと言えど、やつらも子育てをし、子は大事に育てておる。人間のように親が子に虐待する事もないし、お金が無いからと、自分の娘を娼館に売り払うようなことなどしないぞ。同種で争う事は有っても殺したりはしないし、貶めるような事もせぬ。余程人より慈愛に満ちておるわ。人を襲った時に嗜虐性が高まって狂暴になるのは獣故じゃ。猫種などもそうじゃろ、捕らえた獲物をいたぶって遊ぶ習性がある」

「フィリアは私たちよりオークの味方なの?」
「桜、それは違うよ。フィリアが言っているのは、立場が変われば見かたも変わるって事を言ってるんだよ。俺が心配してるのは女神的な考えだと、この先フィリアもきつくないかなって思ってね」

「龍馬は優しいのう。じゃが心配せぬでよい。元々神々は人間贔屓なのじゃ。妾の姿は人型じゃろ? 神に似せて人は創られたとか言われておるが、あれは逆じゃの? 元々神々に体はない。エネルギー生命体というのが近いのかの。それに妾はもう人族なのじゃ。故にオークは敵じゃ! 捕まって孕まされてはかなわんからのう。即殺じゃ」

「そか、それが聞けて安心した。コロニーにはどのくらいの生き残りが居るんだろう?」

「妾が龍馬の側に転送される前に見た限りでは250人ほどが生きておったが、いつものオークの習性とちと様子が違うようじゃ」

「結構生き残ってるね、でもどう違うんだ?」

「いつもなら子を産めるメスはもっと大事にされる。膣口が裂けて出血したまま放置などせぬ。プリーストが回復して丁重に監禁される。自由は無いが、子を産んで弱るまでは甚振られる事はない。おもちゃにされるのはもう子が産めなくなってからじゃ。じゃが今回は最初からおもちゃにしていたり殴って殺したりしておる。匂いで不適切と判定されたのならともかく、即殺するのはやはりおかしい」

「爆発的に子が増えても自滅するだけだから、何か基準があって間引かれているんじゃないか?」
「フム、そう考えるのが妥当じゃの。1人の女子がオークの子を宿すと2~5頭一度に出産する。今回最終的に100人の女子が残されたとしても3か月後には少なくても300頭の子が生まれる事になる。200人なら600頭じゃ。その子らを養うとなったら、もう近隣の村や町を襲うしかないからのう」


 今回の話し合いは難しい案件だったため、なかなか決まらなかった。

 女子寮の者は今日1日様子を見て、明日レベルアップができてないようなら華道室に一旦避難させ、向こうのメインパーティーがオークに負けないようになるまで保護する事になった。

 その間の食材は一切提供しないそうだ。料理部は食に対しては結構シビアな娘たちだった。

 『働かざる者食うべからず』だそうだ。

 コロニーに捕らえられてる娘たちなのだが、気持ちは全員助けたいそうなのだが、助けた後の案がないのだ。
 一番は食料事情、元々非常食も学園で5日分の物しかないのだ。本来それ以降は国が自衛隊を出して対処するのだから当然だ。だがここには自衛隊がヘリで物資供給とかしてくれない。ある分が無くなった時点で外から供給できなければ餓死が確定する。

 結局どちらにせよ、今はまだ実力的にも厳しいという事でコロニー救出は保留とした。


「大体話は纏まったけど、女子寮組が華道室に来たら行き来ができて、結局グダグダになりそうだよな」

「そうだね、でもある程度の線引きはしましょ。自分たちの首を絞めることになるわ。できれば先輩たちには自分たちで何とかしてもらいたいわよね」

「女子寮って教師以外は全員高等部の人か?」
「2名中等部の3年の子がいるそうよ。女子寮の前で襲われてるところを保護したって言ってたわ」

「どうやら気付いてないようなので言っておくが、コロニーで捕まっている者以外にも生存者はまだいるのじゃぞ?」

「え? フィリア? どういうことだ? 俺のMAPには反応ないぞ?」

「其方の探索魔法は現在1kmまでじゃろ? もっとレベルを上げれば分かるじゃろうが、周辺の森や草原にオークに追われて逃げた者が相当数いるぞ? そちらは女子より男の数が多いが、はたして食料も無い状態で、この寒空の中、薄着のまま何日生き延びられるかが疑問じゃの。どちらにせよあと4日もすれば魔素の影響で動けぬぐらいに弱ってしまう。そうなればオーク以外の獣に襲われるじゃろう」

「う~ん、男は悪いがトラブルの元だ。これも前回の話し合いで決まってたしな」

「確かにこの美人揃いの中に男を招き入れるのはちと危険じゃな……龍馬よ其方も大丈夫かの?」
「俺は大丈夫だぞ。それなりに理性はある」

「この世界の生物は本能に忠実にできておるでの、其方らの世界の肉体より五感が優れておる」
「どういう事です?」

「具体的な事をいった方が解りやすいかの。そうじゃな先生で例えてみるかの。この世界の人間は其方らの世界の人口の1/1000ほどしかまだおらぬ。もっか増やすための段階じゃ。故に本能に忠実に作られておる。先生は生物の最終目的とはなんじゃと思う?」

「種の継続、つまり子孫を残す事でしょうか?」
「そうじゃ。蝉などは土の中で種類にもよるが3~10年も生きて生殖時はたった1月ほどしかない。カゲロウなどは1~3日の間に子を作らないといけないのじゃ。人間は初潮が始まって閉経するまで約40年の時がある。その間に子を成せばよいが、其方らの世界ではどんどん少子化になって子を産まぬまま生涯を終える女子が増えておるようじゃろ? それどころか同性愛とか生物学的におかしな輩まで増えておるそうじゃな?」

「こっちの世界には同性愛とかは無いのでしょうか?」
「全く無いとは言わぬ……。じゃが、生物の最終目的である種の継続を無視した者は、なんらかのペナルティが与えられる。神がちゃんと調整しておるからの。其方らの世界の管理神はちょっと怠けすぎじゃの……」

 同性愛者はあまりいないんだ……ホモは絵的に許せないが、ユリは俺的に有りなんだが、ないのか。桜と未来ちゃんのユリシーンは想像しただけで昇天しそうなんだけどな。

「で、先生の話に戻るのじゃが、こちらの世界では女子は大体23歳までには第一子を産んでしまう。1人子を成せばある程度は治まるのじゃが、女性は排卵前後の数日間は性欲が2~3倍ほど強くなるようにできておる。この世界の人口を増やすための処置じゃな。特に25歳過ぎの処女にはペナルティがある」

「「「え?」」」

「先生は今いくつじゃ? 第一子は産み終えておるのかの? まだ若そうなので大丈夫だとは思うが……」
「美弥ちゃん先生は25歳の独身です。当然子供もいません……間違いなく処女です」

「なんで茜ちゃん、私が処女だって知ってるのよ!」
「フム、可哀想に先生はモテぬのじゃな。25歳で処女だと、ちと排卵周期の時はきついじゃろうの、早めに男を見つけて子を成すのじゃぞ。他の娘も排卵周期には気を付けるのじゃぞ、その頃になると個人香が良い匂いを放って男がそれを嗅ぐと興奮状態になるのでな」

「え!? それ俺ヤバくね?」

 俺【嗅覚強化】とか持ってるのに、超ヤバいじゃん!

「沙織ちゃんちょっと来てくれるか? 確か排卵周期に入るって言ってたよな?」
「嗅いだらすぐ獣のように襲う訳じゃないが、止めておくのじゃ。其方が辛いだけじゃぞ? それとも我慢せずに襲う気か?」

「それ程なのか? 俺はやっぱ華道室で寝た方が良いな」


 フィリアが最後に爆弾発言をブチ込んでくれたおかげで、生存者を見捨てる事に罪悪感を皆が抱いて鬱状態になっていた雰囲気が一変するのだった。
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