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学園ロワイヤル編 2日目
1-2-2 受入可能?大群襲来?
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現在隣の部屋で待機中なのだが、あらためて見たフィリアは人間になったというのに神秘さは全く損なわれていない。リアル妖精という言葉がぴったりだ。見た目こそ10歳程度だが、将来美人さんになるのは間違いない。
腰まで伸びた細くて真っ直ぐなライトブルーの美しい髪に、愛らしい整った顔立ち、色白でついつい触りたくなるようなほっぺをしているのだ。
さっきの件もあるし、ちゃんと言っとかないとまずいかな。
「フィリアに今後この世界で一緒に生きていく為に、約束してほしい事がある」
「改まってなんじゃ?」
「今後他の者にはフィリアが女神だという事は内緒にする。フィリアの謝りたいという気持ちも解るけど、言ったからといってどうなるわけでもないんだし、謝って許しを請う行為は、フィリアの自己満足行為にしかならない」
「しかしじゃな……妾のせいで苦境にたたされておるのに、知らぬ存ぜぬはできぬじゃろ?」
「皆に女神だと言って、沙希ちゃんのように張り手1発で済めばいいが、殺しに来たら無抵抗で殺されるのかい?」
「死にたくはないが、それも致し方なかろう」
「それは自殺とどう違うんだ? 俺はフィリアを守ると決めたから、相手がフィリアに害すると判った時点で戦うよ? 殺すのも躊躇はしない……その覚悟はもうできているけど、殺さなくても良い人間を殺すのは俺も嫌なんだけど、その辺も考えてくれている?」
「妾は其方にそのような事をしてほしいとは思っておらぬ。自ら死にたいわけでもない。只どうなるか分からないのは事実じゃが、ただ黙って見ていてほしい」
「そんなの無理に決まってるだろ。俺にとってフィリアは大事な存在だけど、襲ってきた奴らはもうただの敵だ。フィリアを害するのなら殺すよ。これは俺の意思であってフィリアがどう思おうと知った事じゃない。守りたいから守るんだ、守られるのが迷惑だとか、フィリアの感情なんかはっきり言ってどうでもいい」
「兄様が言い出したら何を言ってもダメですよ。私たちに散々迷惑をかけているのです。これ以上迷惑を掛けたくないなら素直に兄様の指示に従ってください」
「ん、女神だと自ら公表するのは只の迷惑行為!」
「私もそう思います。言って何か解決できるのですか? 沙希ちゃんのように元の世界に帰してと泣かれた場合に帰せるのですか? 野球部のマネージャーなら彼氏を生き返らせてくれと言いますよ? あなたに、できるのですか?」
「……すまぬの、今の妾には何ひとつできぬ」
「何もできないのに女神だと公表して、その都度私たちや龍馬先輩に迷惑をかけるつもりなのですか?」
流石のフィリアも皆から責められてぐうの音も出ないようだ。
「フィリア、解っただろ? お前がやる謝罪行為は、只、愚かなだけだ。誰も救われない……むしろこっちの世界に巻き込まれた者たちの感情を逆撫でする行為なんだよ。フィリアの自虐行為で満足するのはフィリアだけだ。沙希ちゃんだって、可哀想に……優しい娘だから殴ったことを一生後悔するかもしれない」
「妾の自己満足と申すのか……」
「兄様の言うとおりです。何もできないのであれば、黙ってあなたにできる事を探すんですね」
『……おはようございますマスター。緊急報告です。オークどもが動き出しました。500体以上の大部隊です。今回、上位種も沢山います』
『おはよう、ナビー。情報ありがとう……今の俺で凌げそうか?』
『……余裕でしょう。ですが油断はなさらないように。それにしてもフィリア様が下界に落とされるとは、創主様はいったい何をお考えなのでしょうね?』
『フィリアは、ナビーの生みの親みたいなモノだから、何かあったらよろしく頼むな』
『……はい。勿論サポートいたします』
「龍馬君、皆で話し合ったわ」
いいタイミングで桜が呼びに来た。
「桜、先に俺の方からだ。すぐに500体以上のオークの大部隊が攻めてくるようだ。各方面に至急連絡を入れてあげてほしい。今回、上位種もかなりの数が混ざっているようだ。どうも昨晩の夜襲組を壊滅させたので、オーク側も本腰を入れてきたみたいだな。連絡網を急いで回してあげてくれ。まだ7時前だし下手したら呑気に寝てるやつらもいるかもしれない」
「解った! それから女神様は仲間に受け入れると全員一致で決まったわ。こっちに来て頂戴」
茶同室に戻り慌ただしく全員で事に当たる。
「とりあえずレイドPTを組むので受諾してくれ。それから、フィリアを受け入れてくれてありがとう」
「全部の拠点に連絡を入れたけど、女子寮が不安がってたわ。前回の30体ぐらいのを相手にしただけでも結構ギリギリだったみたいだし、どうしたら良いと思う?」
「今回は数が多いから、こっちにもかなり来るんじゃないか? 他に気を回す余裕はないと思うぞ? 初日にも同じ規模で攻めてきてたけど、オーク的には獲物が多かったから気配のないこの棟にはあまり来なかったようだけど、今日は数百体がこっちにも来るぞ」
「そうね。人の心配してる場合じゃないか……」
「武器を配るけど、近くに予備を置くようにする。切れ味が必ず鈍るから、随時交換するように。それとA班・B班で時々疲れが来る前にスイッチするからそのつもりで。MPは極力温存で頼む。廊下に弓と矢を置いておくので、レベルが上がったら誰か率先して【弓術】を獲得してほしい」
「龍馬先輩! 私、弓覚えたいです」
「優ちゃんか……優ちゃんは、支援系ヒーラーだけど。シールドがあるから現状ヒールはあまり使ってないしね。うん、レベルが上がったら優ちゃんは弓のレベルを上げようか」
「はい!」
「じゃあ、優ちゃんは【弓術】の熟練度がレベル3になるまでは矢がもったいないから後方で待機ね。レベルが3になったら廊下から外のオークを減らしてくれるかな? 矢尻が競技用だから遠いと刺さらないので、近くのだけで頼む。頭も多分刺さらないと思うがよろしく頼む」
「解りました」
すぐに1番オークの巣に近い格技場が戦闘に入った。
「格技場の戦闘が始まったみたいだね。位置的にあそこが1番の激戦区になりそうだけど大丈夫かな……もうすぐこっちにもやってくるけど最初は前回同様A班がメインで戦闘をするね。シールドを張るけど、桜は回避を忘れずに、こないだぐらい躱せれば早々シールドが剥げる事はないから頑張って」
「うん、周りを見て回避を心掛けるようにするね」
「後、フィリア。まず1匹オークを捕らえるのでとりあえずレベルアップしてもらう。その後レイドPTに誘うのでそれまでは部屋の中に居てくれ。レベル0だと、投石ですら危険だからね」
「了解じゃ。じゃが其方のシールドがあれば心配無いと思うのじゃがのぅ……」
「念のためだ!」
この別館の戦闘が始まって1時間が過ぎた。
俺のレベルもその間に3つ上がっている。
C班の非戦闘員がレベル6になった時点でレイドパーティーから外した。
戦闘をするA・B班のレベル上げが優先の為だ。
「龍馬君! 高畑先生から連絡があって、MPが完全に切れてもう持たないそうなの! 何とかならないかな?」
「美弥ちゃん先生、後5分凌いでくれって言ってくれ。目の前の10体を屠ったら救援に行くと伝えてくれ」
「いいの? じゃあ、伝えるね! でもかなりの数に囲まれてるそうなので気を付けてね」
「美弥ちゃん先生にリーダーを移すので、俺が戻るまで指揮をお願い! 桜・菜奈・雅・フィリア・未来・沙織で救援に行く。向こうに着いたら未来と沙織で女子寮組の回復をしてあげてくれ。桜は全方位に注意がいるようになるので、ここ以上に周りの状況を見るようにな。菜奈、今回【多重詠唱】10連まで解禁にする。MPに注意して蹴散らせ」
「解った! いいのですね?」
「女子寮前までだぞ、中のやつには教えないからな」
「うん、頑張るね」
「よし、そいつを倒したら女子寮まで一気に駆け抜けるぞ! 途中で遭う雑魚は無視していい! 走れば付いてくるだろうが、向こうについてから纏めて倒せばいいからな。待機組にも一度全員にリバフしておくので、俺たちが戻るまでは上手く回避してシールドをもたせるように。強そうな上位種とかがきてヤバそうならすぐに美弥ちゃんは連絡してくるんだぞ!」
「皆、気を付けてね! こっちは皆で抑えるから安心して」
レイドPTから抜け、再度PTを組み直し、女子寮が瓦解する前にと急いで向かった。
途中で10体ずつで移動しているオークに2回遭遇したが、中級の【ウィンダラカッター】1発で全て首を落としていった。
俺の体の周りには20個の目視できるほど濃密な空気の塊が衛星周回している。
敵を見かけたら即発動で首が飛ぶのだ。後ろで雅と桜が騒いでいるが説明は後だ。
女子寮のA棟に来たのだが……。
「兄様凄い数が居ますね……」
「龍馬君、指示頂戴!」
「菜奈は弓を持った奴を先に仕留めていってくれ。桜と雅はこっちに向かってくる奴を順次撃破。フィリアと沙織ちゃんは攻撃魔法でそのアシスト。未来ちゃんは後で女子寮の回復の為に待機でMP温存だ。俺は雑魚を減らしながらあの2回りほどデカい上位種の相手をする」
「「「了解!」」」
今、レベルが上がって例の白黒世界なのだが、俺は3人の美少女と1人の美幼女に質問攻めでタジタジになっている。
「龍馬君さっきのあれ何よ!」
「龍馬先輩、魔法が2個のリング状に20個回ってますよね? どうしてですか? 私はできないですよ?」
「菜奈も10個回ってました! 私もそんな魔法知りません? どうやって獲得するのですか? しかも【無詠唱】でしたよね?」
「ん! かっこいい! けど理解不能、説明して!」
桜、沙織、未来、雅の順の発言だが、詰め寄って今にも胸ぐらを掴んで『吐け!』とか言いながら揺すられそうな雰囲気だ。
「俺のオリジナル魔法なんだけど、悪いけど皆に説明する気はない」
「菜奈ちゃんも使ってるって事は、教えてもらえれば習得できるって事よね?」
「教えて習得できるものもあるが、連弾魔法については教えられるものじゃないので聞かれても答えられない」
「菜奈ちゃんも知っているのでしょ? 教えてよ、凄く気になるじゃない!」
「30分しか時間が無いんだぞ! フィリアはレベル10に今回なったのだろ? ファーストジョブ、何にするんだ?」
「妾はこの世界では水を司る女神じゃった。当然水に関する魔法は得意じゃ、攻撃に回るなら魔術師が良いじゃろうし、回復職に就くなら回復師か治癒師が良いじゃろう」
「フィリアはどうしたい?」
「妾は癒しの女神とも言われておったが、すでに回復職はおるようじゃし、其方の【マジックシールド】が優秀過ぎて、そもそも回復なぞ要らぬでな。攻撃魔法を率先して獲得しようと思う。なのでファーストジョブは魔術師を選択しようかの」
「菜奈が火と雷なら妾は水と風が良いじゃろうな。土も便利じゃが3系統を同時に伸ばすと上級を覚えるのが遅くなるでの」
「私の時は何もアドバイスくれなかったのに、ずいぶん親切なのね」
【無詠唱】での【多重詠唱】を教えないのが気に入らないのか、桜がやたらと絡んでくる。
「桜、皆にも言っておくが、お前たちの事は死線を一緒にくぐって、ある程度は信用はしているけど、全てを委ねられるほどの信頼関係はまだないと思っている。雅はMMOで4カ月ほどの付き合いがあるし、未来ちゃんは菜奈と同部屋という事でちょくちょく話に出てきたので、2人に関しては皆以上に信頼できるけど、それ以外は昨日初めて知り合った娘ばかりだ。何から何まで心の内や手の内まで教えろと言われても、はっきり言って迷惑だ」
「困った奴じゃのう。折角桜は其方の事を信頼しておるのに、なぜ自分から拒絶するような事を言うのじゃ? やはりあの井口とかいう女子の事が蟠っておるのかのう?」
「そうですよ兄様、皆、兄様の事を信頼して付いていこうとしているのですよ? 信頼を拒絶するのはダメです」
「ん! 信頼はお金で買えないもの! それを自分から拒否るのは勿体無い!」
「MMO経験者にするアドバイスはない。前にも言ったけどスキル獲得は今後の人生を左右する事だ。そこに俺の意見を入れて後悔されたくないからね。ちゃんと自分で決めてほしい」
「ちょっとショックだけどもういいわよ。でも信用できると思った時にちゃんと説明してよね」
「分かった。俺の性格なのであまり気にしないでほしい……」
「気にするなって言っても気になるわよ。だって、ある意味お前の事信用できないって言われてるんだもの、ちょっとカチンときてもしょうがないんじゃないかな?」
桜の言い分が正しいので何も言い返せなかったが、俺の性格なのでしょうがない。
各自スキルを割り振り、残りのオークを殲滅するべく現実世界に戻るのであった。
腰まで伸びた細くて真っ直ぐなライトブルーの美しい髪に、愛らしい整った顔立ち、色白でついつい触りたくなるようなほっぺをしているのだ。
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「しかしじゃな……妾のせいで苦境にたたされておるのに、知らぬ存ぜぬはできぬじゃろ?」
「皆に女神だと言って、沙希ちゃんのように張り手1発で済めばいいが、殺しに来たら無抵抗で殺されるのかい?」
「死にたくはないが、それも致し方なかろう」
「それは自殺とどう違うんだ? 俺はフィリアを守ると決めたから、相手がフィリアに害すると判った時点で戦うよ? 殺すのも躊躇はしない……その覚悟はもうできているけど、殺さなくても良い人間を殺すのは俺も嫌なんだけど、その辺も考えてくれている?」
「妾は其方にそのような事をしてほしいとは思っておらぬ。自ら死にたいわけでもない。只どうなるか分からないのは事実じゃが、ただ黙って見ていてほしい」
「そんなの無理に決まってるだろ。俺にとってフィリアは大事な存在だけど、襲ってきた奴らはもうただの敵だ。フィリアを害するのなら殺すよ。これは俺の意思であってフィリアがどう思おうと知った事じゃない。守りたいから守るんだ、守られるのが迷惑だとか、フィリアの感情なんかはっきり言ってどうでもいい」
「兄様が言い出したら何を言ってもダメですよ。私たちに散々迷惑をかけているのです。これ以上迷惑を掛けたくないなら素直に兄様の指示に従ってください」
「ん、女神だと自ら公表するのは只の迷惑行為!」
「私もそう思います。言って何か解決できるのですか? 沙希ちゃんのように元の世界に帰してと泣かれた場合に帰せるのですか? 野球部のマネージャーなら彼氏を生き返らせてくれと言いますよ? あなたに、できるのですか?」
「……すまぬの、今の妾には何ひとつできぬ」
「何もできないのに女神だと公表して、その都度私たちや龍馬先輩に迷惑をかけるつもりなのですか?」
流石のフィリアも皆から責められてぐうの音も出ないようだ。
「フィリア、解っただろ? お前がやる謝罪行為は、只、愚かなだけだ。誰も救われない……むしろこっちの世界に巻き込まれた者たちの感情を逆撫でする行為なんだよ。フィリアの自虐行為で満足するのはフィリアだけだ。沙希ちゃんだって、可哀想に……優しい娘だから殴ったことを一生後悔するかもしれない」
「妾の自己満足と申すのか……」
「兄様の言うとおりです。何もできないのであれば、黙ってあなたにできる事を探すんですね」
『……おはようございますマスター。緊急報告です。オークどもが動き出しました。500体以上の大部隊です。今回、上位種も沢山います』
『おはよう、ナビー。情報ありがとう……今の俺で凌げそうか?』
『……余裕でしょう。ですが油断はなさらないように。それにしてもフィリア様が下界に落とされるとは、創主様はいったい何をお考えなのでしょうね?』
『フィリアは、ナビーの生みの親みたいなモノだから、何かあったらよろしく頼むな』
『……はい。勿論サポートいたします』
「龍馬君、皆で話し合ったわ」
いいタイミングで桜が呼びに来た。
「桜、先に俺の方からだ。すぐに500体以上のオークの大部隊が攻めてくるようだ。各方面に至急連絡を入れてあげてほしい。今回、上位種もかなりの数が混ざっているようだ。どうも昨晩の夜襲組を壊滅させたので、オーク側も本腰を入れてきたみたいだな。連絡網を急いで回してあげてくれ。まだ7時前だし下手したら呑気に寝てるやつらもいるかもしれない」
「解った! それから女神様は仲間に受け入れると全員一致で決まったわ。こっちに来て頂戴」
茶同室に戻り慌ただしく全員で事に当たる。
「とりあえずレイドPTを組むので受諾してくれ。それから、フィリアを受け入れてくれてありがとう」
「全部の拠点に連絡を入れたけど、女子寮が不安がってたわ。前回の30体ぐらいのを相手にしただけでも結構ギリギリだったみたいだし、どうしたら良いと思う?」
「今回は数が多いから、こっちにもかなり来るんじゃないか? 他に気を回す余裕はないと思うぞ? 初日にも同じ規模で攻めてきてたけど、オーク的には獲物が多かったから気配のないこの棟にはあまり来なかったようだけど、今日は数百体がこっちにも来るぞ」
「そうね。人の心配してる場合じゃないか……」
「武器を配るけど、近くに予備を置くようにする。切れ味が必ず鈍るから、随時交換するように。それとA班・B班で時々疲れが来る前にスイッチするからそのつもりで。MPは極力温存で頼む。廊下に弓と矢を置いておくので、レベルが上がったら誰か率先して【弓術】を獲得してほしい」
「龍馬先輩! 私、弓覚えたいです」
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「はい!」
「じゃあ、優ちゃんは【弓術】の熟練度がレベル3になるまでは矢がもったいないから後方で待機ね。レベルが3になったら廊下から外のオークを減らしてくれるかな? 矢尻が競技用だから遠いと刺さらないので、近くのだけで頼む。頭も多分刺さらないと思うがよろしく頼む」
「解りました」
すぐに1番オークの巣に近い格技場が戦闘に入った。
「格技場の戦闘が始まったみたいだね。位置的にあそこが1番の激戦区になりそうだけど大丈夫かな……もうすぐこっちにもやってくるけど最初は前回同様A班がメインで戦闘をするね。シールドを張るけど、桜は回避を忘れずに、こないだぐらい躱せれば早々シールドが剥げる事はないから頑張って」
「うん、周りを見て回避を心掛けるようにするね」
「後、フィリア。まず1匹オークを捕らえるのでとりあえずレベルアップしてもらう。その後レイドPTに誘うのでそれまでは部屋の中に居てくれ。レベル0だと、投石ですら危険だからね」
「了解じゃ。じゃが其方のシールドがあれば心配無いと思うのじゃがのぅ……」
「念のためだ!」
この別館の戦闘が始まって1時間が過ぎた。
俺のレベルもその間に3つ上がっている。
C班の非戦闘員がレベル6になった時点でレイドパーティーから外した。
戦闘をするA・B班のレベル上げが優先の為だ。
「龍馬君! 高畑先生から連絡があって、MPが完全に切れてもう持たないそうなの! 何とかならないかな?」
「美弥ちゃん先生、後5分凌いでくれって言ってくれ。目の前の10体を屠ったら救援に行くと伝えてくれ」
「いいの? じゃあ、伝えるね! でもかなりの数に囲まれてるそうなので気を付けてね」
「美弥ちゃん先生にリーダーを移すので、俺が戻るまで指揮をお願い! 桜・菜奈・雅・フィリア・未来・沙織で救援に行く。向こうに着いたら未来と沙織で女子寮組の回復をしてあげてくれ。桜は全方位に注意がいるようになるので、ここ以上に周りの状況を見るようにな。菜奈、今回【多重詠唱】10連まで解禁にする。MPに注意して蹴散らせ」
「解った! いいのですね?」
「女子寮前までだぞ、中のやつには教えないからな」
「うん、頑張るね」
「よし、そいつを倒したら女子寮まで一気に駆け抜けるぞ! 途中で遭う雑魚は無視していい! 走れば付いてくるだろうが、向こうについてから纏めて倒せばいいからな。待機組にも一度全員にリバフしておくので、俺たちが戻るまでは上手く回避してシールドをもたせるように。強そうな上位種とかがきてヤバそうならすぐに美弥ちゃんは連絡してくるんだぞ!」
「皆、気を付けてね! こっちは皆で抑えるから安心して」
レイドPTから抜け、再度PTを組み直し、女子寮が瓦解する前にと急いで向かった。
途中で10体ずつで移動しているオークに2回遭遇したが、中級の【ウィンダラカッター】1発で全て首を落としていった。
俺の体の周りには20個の目視できるほど濃密な空気の塊が衛星周回している。
敵を見かけたら即発動で首が飛ぶのだ。後ろで雅と桜が騒いでいるが説明は後だ。
女子寮のA棟に来たのだが……。
「兄様凄い数が居ますね……」
「龍馬君、指示頂戴!」
「菜奈は弓を持った奴を先に仕留めていってくれ。桜と雅はこっちに向かってくる奴を順次撃破。フィリアと沙織ちゃんは攻撃魔法でそのアシスト。未来ちゃんは後で女子寮の回復の為に待機でMP温存だ。俺は雑魚を減らしながらあの2回りほどデカい上位種の相手をする」
「「「了解!」」」
今、レベルが上がって例の白黒世界なのだが、俺は3人の美少女と1人の美幼女に質問攻めでタジタジになっている。
「龍馬君さっきのあれ何よ!」
「龍馬先輩、魔法が2個のリング状に20個回ってますよね? どうしてですか? 私はできないですよ?」
「菜奈も10個回ってました! 私もそんな魔法知りません? どうやって獲得するのですか? しかも【無詠唱】でしたよね?」
「ん! かっこいい! けど理解不能、説明して!」
桜、沙織、未来、雅の順の発言だが、詰め寄って今にも胸ぐらを掴んで『吐け!』とか言いながら揺すられそうな雰囲気だ。
「俺のオリジナル魔法なんだけど、悪いけど皆に説明する気はない」
「菜奈ちゃんも使ってるって事は、教えてもらえれば習得できるって事よね?」
「教えて習得できるものもあるが、連弾魔法については教えられるものじゃないので聞かれても答えられない」
「菜奈ちゃんも知っているのでしょ? 教えてよ、凄く気になるじゃない!」
「30分しか時間が無いんだぞ! フィリアはレベル10に今回なったのだろ? ファーストジョブ、何にするんだ?」
「妾はこの世界では水を司る女神じゃった。当然水に関する魔法は得意じゃ、攻撃に回るなら魔術師が良いじゃろうし、回復職に就くなら回復師か治癒師が良いじゃろう」
「フィリアはどうしたい?」
「妾は癒しの女神とも言われておったが、すでに回復職はおるようじゃし、其方の【マジックシールド】が優秀過ぎて、そもそも回復なぞ要らぬでな。攻撃魔法を率先して獲得しようと思う。なのでファーストジョブは魔術師を選択しようかの」
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「私の時は何もアドバイスくれなかったのに、ずいぶん親切なのね」
【無詠唱】での【多重詠唱】を教えないのが気に入らないのか、桜がやたらと絡んでくる。
「桜、皆にも言っておくが、お前たちの事は死線を一緒にくぐって、ある程度は信用はしているけど、全てを委ねられるほどの信頼関係はまだないと思っている。雅はMMOで4カ月ほどの付き合いがあるし、未来ちゃんは菜奈と同部屋という事でちょくちょく話に出てきたので、2人に関しては皆以上に信頼できるけど、それ以外は昨日初めて知り合った娘ばかりだ。何から何まで心の内や手の内まで教えろと言われても、はっきり言って迷惑だ」
「困った奴じゃのう。折角桜は其方の事を信頼しておるのに、なぜ自分から拒絶するような事を言うのじゃ? やはりあの井口とかいう女子の事が蟠っておるのかのう?」
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「ん! 信頼はお金で買えないもの! それを自分から拒否るのは勿体無い!」
「MMO経験者にするアドバイスはない。前にも言ったけどスキル獲得は今後の人生を左右する事だ。そこに俺の意見を入れて後悔されたくないからね。ちゃんと自分で決めてほしい」
「ちょっとショックだけどもういいわよ。でも信用できると思った時にちゃんと説明してよね」
「分かった。俺の性格なのであまり気にしないでほしい……」
「気にするなって言っても気になるわよ。だって、ある意味お前の事信用できないって言われてるんだもの、ちょっとカチンときてもしょうがないんじゃないかな?」
桜の言い分が正しいので何も言い返せなかったが、俺の性格なのでしょうがない。
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大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。
が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。
それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。
漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。
生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。
タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。
*カクヨム先行公開
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