女神様から同情された結果こうなった

回復師

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学園ロワイヤル編 1日目

1-1-24 マネージャー救出?スキル譲渡?

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 グラウンドの隅にある部室棟に向かうと、オーク5体、ゴブリン3体が群れていた。
 そのうちのオーク3体は女の子を弄んでいるようだが、残りは食事中のようだ。

「桜、薫ちゃんは回避を心掛けてオークを攻撃。菜奈は食事中のオークを攻撃。美加ちゃんはゴブリンに攻撃魔法を、沙織ちゃんは様子を見ながら食事中のオークに攻撃魔法。優ちゃんはシールドの無い桜の回復専属でいいので桜のHPだけ注意してあげて。俺は今女の子に乗っかってるオークを生け捕りにするのでそれ以外で宜しく」

「「「了解!」」」

「じゃあ、菜奈の魔法を戦闘開始の合図にする!」

 菜奈のサンダーボールの轟音で戦闘が始まった。
 雑魚相手なのでMPの節約も考えたが、これが初戦闘のB班の娘たちの練習に、あえて魔法も使わせてみることにしたのだ。

 俺はすぐさま【魔糸】を飛ばし、オークを引きずり倒す。【魔枷】も施しエビゾリ状態に縛り上げ、音波遮断を掛けて放置する。この数が相手だと1分で戦闘終了だ。

 薫ちゃんも初戦闘ながら槍で上手く応戦できている。回避もオークの剣での攻撃を槍で上手くいなしていた。
 この娘は大丈夫そうだな……中1なので心配していたが、むしろかなり使える娘だ。

 桜も今回はノーダメージだ。そのせいでヒーラーの優ちゃんのお仕事がなかった。ヒーラーはMP管理とヘイト管理が重要なので、優ちゃんの行動が何も見れなかったのは次回の課題だな。ヒーラーがダメだと全滅もあり得る話なので一度しっかり確認する必要がある。

 魔法使いの方も問題ないみたいでオークを殺すことに忌避感はないようだ。
 むしろ女の子に覆いかぶさって腰を振っているオークや、人を食っているその姿を見た時にショックを受けて、オークに対して強い殺意を持ったようだ。


「美里先輩大丈夫ですか?」
「優ちゃん? 私……勝君が! ああ、勝君!」

 美里先輩と言われたマネージャーは泣き叫んでいるが、その彼らは手足を落とされ食事にされている。

「どうしてもっと早く来てくれなかったのよ!」

 彼女の暴言にカチンときたのだが、先に桜が切れたようだ。
 優ちゃんとの間にさっと割って入り言い放つ。

「優を介して先輩には再三忠告はしましたよね? それを無視しておいて、襲われたからと言って何言いがかりを付けているのです? 普通、助けてもらったのならお礼を言うのが筋じゃないのですか?」

「桜、とりあえず回復を先に掛ける。【アクアヒール】あと毛布だ。裸じゃ寒いだろう。それから1つ質問だ……生きる意志はあるか?」

「龍馬先輩、美里先輩も仲間に入れてあげてください」

「悪いが忠告しても聞かないような人は、俺たちの足手纏いになるだけだ。高等部2年で年上なのも面倒だしな。俺も桜も後からきて先輩面して方針とかに口を出されても嫌だしね」

「違うんです! 美里先輩は理解はしていたんですけど、付き合ってた野球部のキャプテンが男のいるとこは危険だからって……かと言って自分だけ女子寮に行くのも躊躇ったようで、キャプテンが死んでも守るからって引き止めていたみたいなんです!」

「うーん、どっちにしろ男の意見を優先してこうなったわけだろ。彼氏を亡くしているんだからしょうがないとは思うが、今みたいに皆の前でシクシク、メソメソやられるのはいただけない。優ちゃんには悪いが、彼女には女子寮に行ってもらう事にする。あそこなら部屋数もあるし、泣きたければ暫く個室にしてもらって泣けばいい。うちじゃ、大部屋1部屋なので1人で泣く場所もないからね。皆の気が沈むような人を連れていけない」

「でも……」
「いいの優ちゃん、あたってごめんね。それと皆さん、助けてくれてありがとう。正直もうダメかと思ってた。生きているだけでも感謝しなきゃね。勝君、野球部のみんなも私の為にここに残ってくれて、ありがとう……ごめんね……」

「じゃあ、女子寮に行こうか。あそこもまだ戦闘中みたいだけど、大分苦戦しているみたいだ」

 女子寮の周りではオークどもが15体で取り囲んでいる。監獄寮と言われるだけあって中にはそう簡単に入れないようになっている。入口は玄関の1カ所だけだし、非常口もあるが、丈夫なスチール製の扉で鍵がかかっているので開けられない。元々は男子が侵入出来ないようにと柵やセキュリィティーが施されたのだが、今はそれが役に立っている。

「今回オークは全部俺が生け捕りにする。皆はゴブリンだけ倒してもらえるか?」
「うちに持って帰るのね?」

「いや、女子寮のレベルが低いようなので、こっちに回してあげようと思う。うちは後で俺が何とかするよ」


 俺たちを見つけて襲ってくるオークを順次【魔糸】で捕らえて【魔枷】を嵌めて転がしていく。

 5分ほどで捕らえ終え、高畑先生に野球部の娘を引渡す。

「先生この人をお願いします。野球部男子は全滅しました。生き残りはこの娘だけなのですが、彼氏が目の前で殺されて食われたようで、かなり心身的に無理している状態です。そっちのケアと避妊の方もお願いできますか?」

「受け入れはするけど、ヒーラーが少なくて今うちもMP切れで危険な状態なの。怪我人もいるのだけど回復できる状態じゃないのよ。正直来てくれて助かったわ」

「やはりそうでしたか。15体なのに手こずっているようでしたので。こっちであえて捕らえたのですがこのオークは差し上げますのでレベル上げに使ってください。3人ほど戦闘したくない、できないという娘をヒーラーにして、メインPTを先にオークぐらい楽勝で倒せるようにレベルを上げた方が良いですよ」

「その子たちが、あなたたちのメインPT?」

「いえ、どっちかというとサブPTですね。メインとサブの混合PTです。非戦闘員だけ残してメインメンバーだけで来るわけにいかないですからね。参考までのアドバイスですが、メインPTの構成は前衛3・遊撃1・魔法2・回復1が理想ですよ。前衛の中には盾職1を入れ、遊撃は索敵できるようなスキル構成に、魔法も2系統ずつで4系統をカバーできるようにした方が良いです」

「解りました。情報ありがとうね。本当にこのオークは貰っていいのね?」
「ええ、彼女を受け入れてもらう代わりと言っちゃあれですけど。それと怪我人を連れてきてください。MPには余裕があるのでこっちで回復してあげます。そっちは彼女の避妊治療だけお願いしますね」


 女子寮組は6人が怪我をしていたがMP不足で回復できなかったようだ。
 俺がパーティーリーダーになって、さっき捕らえたオークを殺した方がレベル上げするにはいいのだが、経験値増量の事は秘密にしたいのでそのままオークは引渡した。

「ありがとう、助かったわ。彼女の事はこっちで気に掛けるようにするわね」

「怪我人も部位欠損とか無くて良かったですよ。今のレベルじゃ、うちでも治せませんからね。また何かあったら連絡寄こしてください。すぐには駆けつけて来れないかもしれませんが、こうやってうちの方が凌げた後になら来ることはできますので、無理に攻め込まないで時間稼ぎだけでもしていてくれれば良いです」

「ありがとう、でもなるだけ迷惑かけないように拠点は守るつもりよ」
「ええ、そうしてください。早めに遊撃担当に探索スキルを獲得させて、はぐれオークを狩ってレベル上げした方がいいです」



 女子寮のヘルプをした後、周りの徘徊している小規模グループのオークを狩り、B班のレベルが2つ上がったところで拠点に帰る事にする。

「お疲れ様、B班も戦闘は大丈夫そうだったね」
「はい、最初怖かったですが大丈夫みたいです」

「あはは、薫ちゃんはなかなか勇猛だったね。オーク6体は倒したでしょ?」
「はい。オーク6体ゴブリン2体です! 思ったよりやっていけそうですので、メインパーティーの方の参加でもいいですよ」

「そうなるとB班の前衛職が綾ちゃんだけになっちゃうから、もうチョット様子見かな。でも、槍持ちは薫ちゃんだけだし、時々A班で参加してもらう事も出てくるので、気構えはしておいてね」

「龍馬君、私はどうだったかしら?」
「ああ、桜は今回ちゃんと回避できていたね。階段以外でダメージなかったでしょ?」

「うん、階段で1回魔法を受けただけよ」
「魔法は基本回避できないからね。あれは仕方ないよ。雅ぐらいになると魔法も回避するけど、普通は難しいからね」

「雅ちゃんは魔法回避できるんだ……」
「ん、サンダー系以外なら多分躱せる!」

「風系は目視できないのもあるから、油断しちゃダメだぞ」
「ん、解ってる」


「皆起きっぱなしできついだろ。トイレを済ませたら順次寝るように。起床はやはり5時にする。オークの方も夜襲組が帰ってこない、もしくは全滅している事が判ったら、明日は結構な数を向かわせる可能性がある。下手したら総力戦になるかもしれない。寝不足で動けないとかないように気を付けてくれ」

「それは龍馬君にも言える事よね?」

「ああ、俺も寝させてもらう。敵が警戒域に入ったら起きる仕様になっているので、全員で寝てもらって問題ない」

「レベルアップでそういう機能が増えたのかしら?」
「ちょっと違うが、俺がいる限り見張りは必要ないと思ってくれればいい」

 本当の事は言えない……実はナビーが気を利かせて見張っててくれると言ってくれたからなんだよね。


 皆がトイレを済ませ布団に入ったのを見計らい、菜奈を隣の華道室に呼び出した。

「兄様、2人きりになりたいとかどうしたのですか? 嬉しいですけど、今は菜奈と2人きりになるのはあまり良くないですよ? 2人だけで逃げて皆を置いていく相談だと勘違いする人がいるかもしれません」

「そんなアホは放っておく。今から菜奈に俺の秘密を話す。皆には勿論秘密だぞ」

「うん、分かった。どんな秘密? 実家のエッチな本の隠し場所なら知ってるよ? パソコンの隠しフォルダの事も検索済みだよ……」

 とりあえずデコピンでお仕置きしておく。

「んぎゃ! 痛い痛い! 【身体強化】で強化されているんですからもっと手加減してください」

 おでこを摩りながら涙目で訴えてくるが、余計な事をしている菜奈が悪い。

「最初にレベルアップ部屋に行ったとき女神様が居たって言っただろ。その時に女神様に幸が薄いって同情されてね。どうせ最後の仕事になるし、俺に死んでほしくないと言って、特別に勇者と同じようになんでも好きなスキルを1つ授けてくれるという話になったんだよ」

「それが兄様の秘密ですか?」

「ああ、その時いろいろ考えて与えてもらったのが【魔法創造】ってスキルだ。魔法を創る魔法なんだけどね。これが予想以上にチートでね。【経験値増量】とか【無詠唱】とかレベルを無視してどんどん創れちゃうんだよ。現在俺は皆より5倍増しで経験値が入っている。【殺害強奪】ってスキルの影響なんだけど、俺が殺すとAPまで奪えるので熟練レベルもどんどん上げられる」

 ある程度説明すると、絶句していた菜奈が興奮しだす。

「兄様凄いです! やっぱり兄様は最高です!」

「まぁ、落ち着け。凄いのは俺じゃなくて女神様だよ。それで創った中にスキルをコピーして譲渡できるモノができたんだ。菜奈にいくつかコピーしてやろうと思って呼び出したんだよ」

「【魔法創造】とかいうやつ貰えるのですか!」

「制限があって流石にそれは無理だが、他のやつは大抵コピーできる。だがコピーに上限数があって、レアなやつは5人とかしかコピーできない。だから将来の事を考えて他の皆には内緒だし、皆の前で見せちゃダメだぞ」

「他の人を信用してないのですね」

「当たり前じゃないか。菜奈は半年程彼女たちと付き合いがあるから信用しているのだろうけど、俺は今日初めて会った娘たちばかりなんだぞ。いくらお前が大丈夫だといっても、俺からすれば会って数時間で信用できるわけないだろ?」

「ん~、それもそうか。でも兄様、未来や雅なら信用できないかな?」
「あの2人はある程度は信用してるけど、まだ内緒だ。PT飛ばすぞ、【コネクション】この魔法でお前のステータスに直接関与できるようになる。【スキルコピー】じゃあ、コピーするぞ。【インベントリ】【無詠唱】【並列思考】【多重詠唱】【高速思考】【プロテス】【シェル】【マジックシールド】【ホーミング】【魔力感知】【魔力操作】【ボディースキャン】【アクアフロー】【アクアヒール】【周辺探索】【詳細鑑識】【音波遮断】【エアーコンディショナー】【獲得経験値増量】【獲得AP増量】【獲得MP増量】【獲得HP増量】どうだ? コピーできたか?」

「凄いです兄様! うわー何これ、マジチートじゃないですか! 兄様がしれっとしてる理由が解りました。オークなんか余裕じゃないですか?」

「油断はできない。それにコピーできない物もあった。【殺害強奪】【カスタマイズ】【ナビシステム】は流石に無理だったか」

「その3つは凄いんですか?」

「そうだな、俺の持ってるスキルの中でも最強のやつばかりだな。【多重詠唱】とかも凄いけど、後4人までコピーできる。それより【ボディースキャン】と【アクアフロー】の魔法を使って俺をマッサージしてくれないか? かなり疲れが溜まってるようで、凄く怠いんだ。それが解消されるはずなんだけど、やってみてくれ。先にやった方が解り易いかな。菜奈裸になるんだ」

「マッサージですか? って服脱ぐんですか? しかもすっぽんぽん!」

 ほんの少し前まで俺の入浴時に突撃してきてたほどなので、あっさりと全裸になった。

「【ボディースキャン】慣れない魔法で魔素が停滞しているな。今ちょっと体が怠いだろ?」
「はい、いつもと比べたら凄く体が重いです」

 俺は【クリスタルプレート】に表示された人体模型に出ている色を説明しながら。マッサージを行った。

「この黒くなってる部分が魔素が上手く流れてない場所だ。ピンクな場所は軽度の筋肉痛だな。こうやって色のついた場所をクリックすれば異常原因を表記してくれるから、それを解消するイメージを流し込みながらマッサージするんだ。【アクアフロー】フローは手当って意味がある。まず魔力が流れやすくするために心臓に魔力を通す。そして頭、丹田、足の裏の順が理想だ。心臓に魔力を通す時に少し胸を触るが気にするな。治療の為だ」

「去年まで一緒にお風呂に入ってたので今更ですね。でもちょっと胸膨らんできたでしょ? どうです兄様? 魅惑のちっぱいですよ? 今だけのものですよ?」

「ずっとそのままかもしれないだろ。余計な事言うなら止めるぞ。ある程度こうやって魔力の流れを作ったら俯けになってもらって、上から順番に揉み解すようにヒールを練り込むんだ」

「兄様! 気持ちいいです! 何これ! 凄いです! ひゃー♪」
「変な声出すな! ちゃんと覚えて俺にやってくれよな」

 15分ほどで異常個所のあった場所の色が全てなくなり、菜奈のマッサージを終える。

「じゃあ、服着て、俺も頼む」 

「【ボディースキャン】あ! 真っ黒です! 所々黄色があります。背中から腰はほぼピンクですね。筋肉痛と出ています」

「黒い所は魔素が停滞してる所だ。自分では【魔力操作】は上手くなったつもりだったけど、まだ上手く魔力循環ができていないんだな」

「【アクアフロー】じゃあ、やりますね」

「なんだこれ! マジ気持ちいい! 菜奈気持ちいいぞこれ!」

 20分ほどマッサージをしてもらったのだが、今日の疲れが吹っ飛んだ。

「なんか疲れが全部吹っ飛んだ。今日一生懸命動いてた雅もやってあげたいところだけど、今日はもう寝るぞ。それから菜奈、渡したスキルは皆には当分内緒だ。命の危険がある場合だけ許可する」

「分かりました。確かにどれも凄い魔法ですよね。何で私にはくれないの? とかになっても面倒です」

「それ以前に本当に7人のメインパーティーが決まってからの話だ。街に行って魅惑のエルフちゃんがいたら後悔するだろ。なんで適当に皆にコピーしちゃったんだろうって悔やむのは嫌だからな」

「そっちですか! 菜奈の部活の子たちよりエルフの方が気になってたのですね! ちょっと酷いです」
「俺にとっては大事な事だ。それよりそろそろ戻ろうか、皆が心配するといけない」


 菜奈にコピーはしたが使用禁止を言いつけ、皆の下に戻るのだった。
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