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王都バスツアー編

4-6 パックンチョ?焦れて茜がキレた?

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 ナビーがカエルの革が欲しいとの事で、このまま狩りに行く予定だが、茜たちが早く帰って来いと五月蠅いのでメールだけは入れておく。

「ハティ、ワニの頭の上に乗って可愛いポーズだ」

 【インベントリ】から取り出したワニの頭の上にお座りをして首をコテンと横に倒した……可愛過ぎる!
 カメとカニの前に皆を立たせ、静止画保存する。大きさの判断基準にする為だ。

「三田村先輩と磯崎先輩も2人で並んでください。記念撮影です」

 自分から言い出せない引っ込み思案な磯崎さんは嬉しそうだな。ツーショット写真をメールに添付し2人に送ってあげる。大きなお世話かもしれないが、三田村先輩もまんざらでもなさそうなので、奥手な2人を応援したい。


「龍馬、次は何を狩るんだ?」
「え~と……ここから300mほどの所にデスケロッグというヤバいカエルが群れているのでそれを狩ります」

「ん、名前からしてヤバそう」
「龍馬君、大丈夫なの?」

「この世界のネーミングって、人を襲うヤバい奴には『キラー』って付いてる魔獣が多いんだけど、更にヤバい即死級の攻撃をしてくる奴には『デス』っていうのが付いているらしい」

「キラービーとかキラーマンティスとかキラーベアとか言ってたな。で、このカエルは何がヤバいんだ?」
「矢毒ガエルのように皮膚からではなく舌先に毒が有って、その毒が即死級の神経毒らしいのです。少量でさっきのワニ1匹瞬殺できるほどの毒だそうです。細い針に塗ってチクッとやったら心臓が麻痺し即死だそうで、暗殺に心不全を装ってよく使われるみたいですね」

「怖いな……解毒剤とか対処法とか有るのか?」
「対処法は無いですね。強くないので、毒にさえ気を付けておけば楽勝です。後、毒持ちはオスだけで、オス1匹にメスが数匹のコロニーを作るそうです」

「お前みたいな奴だな……十人超えてるからお前の方がカエルより多いか」

 グハッ……三田村先輩の会心の一撃!

「皮肉を言わないで下さいよ……厄介なのが、オスとメスの区別が全くつかないそうで、どっちもカメレオンのように舌を伸ばして捕食しようとしてくるそうです」

「纏めると、即死級の毒持ちはオスのみだが、判別がつかないほどオスとメスが似ていて、どっちも同じように舌を伸ばした攻撃をしてくるんだな? で、毒のまわりが早すぎて、解毒剤を飲んでも先に毒が心臓に達して間に合わないと……」

「ですね。でも、俺の探索魔法だとオスとメスの判定ができるので、先に俺がオスを真っ先に狩っておきます」

「なら残りは毒なしのメスだけか? 魔法とかは使ってこないのか?」
「魔法は基本使ってこないですが、水中に居る時にはテッポウウオのように、顔だけ出して結構な威力の水弾を撃ってくるそうです」

「ん、結局どうやって倒せばいいの?」

『……革が傷むと嫌なので、マスターが狩ってください』
『了解……』

「今回革が目当てなので、傷めないように俺が全部やるよ」

 変に学のある三田村先輩が『冬なのに冬眠しないのか?』とか突っ込んできたが、そんな事俺が知るか!

 MAPを見ながらカエルの生息地の水場に近寄ったのだが、水中から目だけ出して、どこに居るのか分からないレベルで上手く隠れている。

 さて、どうやって倒すかな……【アイスラスピア】で、ちょこっと出している頭に串刺しが良いかな。

『……マスター、水中に入っているので【サンダガスピア】が良いのではないでしょうか? 雷耐性が有るので、直接喰らった奴しかダメージは無いと思いますが、おそらく余波とオスが倒された事で、メスが怒って水中から出て追いかけてくると思います。水中から出たところを物理系の【アイスラスピア】か【ストーンラバレット】か【ストーンラスピア】で頭部を破壊すると良いでしょう』

『試しにその案でやってみるか……』

 MAPではオスが1、メスが8となっている。
 オスの目を狙って上級魔法の【サンダガスピア】を撃ち込んだ。

『ドンッ!!』っという衝突音のような後に、『バリバリバリっ』とその周りに青白いスパーク放電がおきる。 
 カエルは白い腹をプカ~っと浮かせたかと思ったらそのまま【インベントリ】入って消えた……厄介なオスは排除できたようだ。

 即死級の厄介な奴が倒せてホッとしていたのだが、怒り狂ったメスが水中から水弾を撃ちながら陸に上がってきている。周りに魚が浮き上がり、メスにも少しダメージは入っているみたいだが、やっぱカエルの革の魔法耐性は高いみたいだ。ますますカエル革が欲しくなった。

 穂香が前に出て盾で水弾を全部防いでくれるので余裕だな。
 だがその油断が不味かった……急に水中からジャンプして空中に飛び上がったのだが、これまたデカイ!

 体高3mはあるだろう……まるで児雷也が乗っているガマみたいだ。
 皆あまりのデカさに呆けてしまって上に飛び上がったカエルを只見ていた……その一瞬の隙に俺の直ぐ横に居た雅に、まだ空中でいる状態から舌が伸ばされペッチョンされ、そのまま口内に舌を引き戻される。

 陸上に降り立ったカエルの口から、足をばたつかせている雅がいた……腰から上を咥えられてモゴモゴされている。

「雅!! お前何でまた喰われてるんだよ!」

 雅を刺さないよう気を付けて、カエルの目に刀を突き立てた……痛みでカエルの口が開いた瞬間に雅の出ている足を引っ張って口の中から引摺り出した。

「うわっ、クサッ!」

 マジックシールドでダメージが無いのは解っているのだが、喰われたかと思うと焦った。蛇の時よりはまだ落ち着いて対処できたが、仲間が喰われるとか見ていて心臓に悪い。


「お前、この中じゃ一番戦闘は上手いのに油断しすぎだぞ!」
「ん、まさか空中で攻撃してくると思わなかった……くさい……」

「モゴモゴされてたけど、怪我は無いよな?」
「ん、歯も無かったから、口の中でモグモグされただけ……でも、くさい……」

 雅はそういうが【身体強化】がMAX状態じゃない一般人なら全身骨折はしているだろう。蛇の時もそうだったが、小さい雅は狙われやすいのかな? ライオンとかも真っ先に子供を狙うしね。雅を救出していた間は穂香が相手をしてくれていたみたいだ。

 俺も加勢して【ストーンガバレット】で頭部を粉砕して瞬殺した。

「龍馬……お前の魔法ってチート過ぎだろ」
「でもさっきの魔法は既存魔法ですよ? 【多重詠唱】も3つほどなら撃てる者も居るようですし、特別って訳じゃないです」

 【並列思考】と【高速思考】が有るので、俺は100連魔法とか撃てるが、正直に言えば一般人には無理だ。

「そうなのか? 剣士じゃ魔術師に勝てないのかな?」
「普通は詠唱時間が要るので、剣士の方が対人は有利とされていますよ」

「ん、龍馬……帰って、お風呂に入りたい……くさい……」

 沙希に【クリーン】を掛けてもらったようだが、髪に付いた臭いが取れないようだ。心配そうに雅に近寄って行ってたハティだが、生臭い匂いで結局逃げ出した。


『……マスター、カエルの背のネバネバですが、凄く怪我や美容に良いようです』
『そうなのか? まさか……ガマの油とか言うんじゃないよね?』

『…………』
『やっぱそうなのか……でも、生臭いので女子もちょっと使う気にはならないだろ?』

『……ちょっと改善できないかいろいろやってみますね』

 背中のネバネバだが……AVで見たことがあるジェル状のアレみたいだ。
 風俗ネタのお風呂場シーンで体に塗りたくって全身ニュルニュルマッサージをしてくれるあのネバッとした液体だ……桜と美弥ちゃんと未来の3人でこれを使ったマットプレイがしてみたい……でも、臭いのはなぁ~。

 水面に浮いた数匹の大きな魚も確保しておく……おや? この魚……良い物だった!


「欲しい物は大体手に入れたので、また血の匂いで魔獣が襲ってくる前に帰りますか」
「「「は~い」」」


 帰りは転移魔法を使った……雅が早く風呂に入りたいと涙目だったしね。待ち侘びていたのか、転移後に茜と桜がカニを出せと五月蠅い……。

「食材の確認は夜にして、直ぐに出発しよう」

 と言ったのだが……料理部全員から『ふざけんなっ』て視線が―――

「あれ? 後、4時間ほど移動できるから、王都に向かわない?」

「龍馬先輩……バスなら明るいヘッドライトが有るので、別に夜でも移動できますよね?」

「いや、でも優ちゃん……夜は危険なんだよ? 大抵の肉食獣は夜行性なんだよ?」
「知ってますけど、龍馬先輩なら近づく前に魔法でやっつけちゃえますよね?」

「……優ちゃんの本音は?」
「私というより……桜先輩の気持ちを代弁しますね。『異世界の美味しそうな食材が目の前に沢山あるのに、夜まで待てとか酷くない!』とかだと思うのですが……」

「ちょっと優ちゃん、私を利用しないでよ。まぁ正直言うとそうなんだけどね……それに、龍馬君に相談が有るの」

「何だろ?」
「龍馬君が出て行った後、騎士たちの雰囲気がちょっと悪いのよ……例の3人を罵倒している声も時々聞こえるし、今晩はここで滞在しない? 狩ってきた食材で夕飯を御馳走して、こっちは気にしていないので3人を許してやってほしいと上手く伝えられないかな?」

「う~~ん、騎士たちと行動を共にする三田村先輩たちが気まずい思いをするのは本意じゃないけど、窃盗行為については自業自得なので、騎士たちの侮蔑行為に介入する気はないよ」

「龍馬君の言ってる事も正論なんだけど、今回のはちょっとね……勇者一行のモノをくすねようとしたって事で、過剰な虐めに発展しているようなの……」

 セバスが補足で説明してくれるようだ……桜に情報を与えたのもセバスのようだな。

「旦那様、貴族は良く事有るごとにパーティーを開催するのですが、その際食器の盗難は織り込み済みなのです。正式な会食に使われる食器は高額な物を使用しますので、くすねる者も居ませんが、今回のような席の決まっていない立食形式のような場合は、下級貴族の者たちは小遣い稼ぎにくすねたりする事も多いので、安価な食器を使用しています。そのノリで高そうな食器をついくすねたようなのですが、周りの上級貴族出身の騎士からすれば、勇者様の持ち物を盗んだと、本来の罪より過剰に接しているようなのです」

 成程ね……でも犯罪行為には違いない。
 子供がコンビニで物を取ったら、万引きとして親や教師を呼ばれて厳重注意ぐらいで済むが、大人がやると窃盗として警察を呼ばれ、教師や警官、医師や役所勤めなどの場合、最悪新聞やテレビに出てしまう。大騒ぎするような悪質なものじゃないが、安いモノだから許されて良いとは思えない。

「桜は騎士たちの事が心配で、滞在したいの? それとも食材が気になって我慢できないの?」

「カニとスッポンに決まっているでしょ! もう! 良いから早く出しなさいよ!」

 桜に質問したのに焦れた茜がキレた!
 犯罪とは無縁の料理部の娘たちからすれば、今日初めて会った、しかもエッチな視線で不快な思いをさせた窃盗犯の事など知ったこっちゃないそうです……これには桜もちょっと引いてた。

「桜の教育の賜物だね……皆、順調に変態道に迷う事なく邁進中みたいだ」
「私のせいじゃないでしょ……違うよね?」



 皆が怖いので、さっき狩った食材魔獣を出しましたよ……魔獣じゃなく食材魔獣ね……彼女たちはそう言っていますので。

 食材魔獣を出した瞬間一斉に歓声が上がりましたよ……既にどうやって食べようかの会議中です。

 今晩はここで野営になりそうです……皆が食材を検分中にお屋敷が出せる場所を探してきましょうかね。
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