女神様から同情された結果こうなった

回復師

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王都バスツアー編

4-5 ハティ【バブルボム】を獲得する?穂香の槍の改良案?

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 カメ1匹とカニ6匹がジリジリとワニを食べようと寄ってきている。

 カメは体高2m、横幅3m、体長5mほどの大物だ。

 【詳細鑑識】で調べてみた。

 バイトタートル……ステータスは大したことないけど防御力がやたらと高いな。血はお酒に垂らして飲むと臭みもなく滋養強壮や精力増強になる。肝臓や心臓は新鮮なら刺身も美味しい。肉はコラーゲンたっぷりでぷるぷるして鍋にすると美味しい……ってまんまスッポンじゃないか!

 動きはミドリガメやウミガメなんかより速く、甲羅とかは超堅くて中々ダメージが通らないみたいだ。
 ミスリルより硬く、オリハルコンよりは柔らかいそうだが、アダマンタイトと同じような性質が有り、魔力伝導性が無いのが特徴だ。『魔力伝導性が無い=魔法耐性が高い』となるので、手足を引っ込めて動かなくなった時は普通の冒険者なら対処法もなく諦めるそうだ。

 狩るのに成功しても、硬すぎて解体作業が困難なために、肉は諦めて後日甲羅を回収にくるそうだ。
 持って帰るにも大きすぎて【亜空間倉庫】1枠分の容量5tを超えてしまい、持ち帰れないそうで、見つけてもあまり手出ししないで放置される生物だそうだ。対処の困難なカメ自体より卵の方が喜ばれるようだね。

 後日倒した後に人を集め再度訪れ甲羅が運良く残ってた場合、この硬い甲羅は加工して盾にするらしい。只、アダマンタイトと同じ特性が有るので重い……なので、力の強い巨人族やドワーフ、パワーファイター系の獣人が好んで使うそうだ。

 俺なら重力魔法の付与で穂香の盾のように軽くできるけど、付与魔法の使い手は殆んどいないそうで、なんか勿体ない。


 カニはどうかな。

 シザークラブ……食用で美味と表記された。特にシオマネキのような右手だけデカくなっているハサミの部分が美味しいらしい。こいつは体高は2mぐらいだが、足を入れると8mほどにもなる。水系の魔獣で、特殊魔法として【バブルボム】という【アクアボール】に似た魔法を飛ばしてくる。


 こいつらのお目当てはワニのようだから、【インベントリ】に収納してしまう。捕食対象を失った奴らは対象を俺たちに切り替え襲ってくる。

「カメは俺とハティで対処します」

「龍馬! 俺はどうすればいい!」
「あのカメ、回転しながら空を飛んで、2足歩行で放射能ブレスを吐くので危険です」

「「「嘘! ガメラみたい!」」」
「ごめん……嘘です」

「「「…………」」」

 うけると思ったのに……でっかい危険そうな相手を前に冗談は駄目だったようだ。
 沙希ちゃんそんな冷めた目で見ないで!

「友美と三田村先輩は、カニの相手をしてください……でも、硬いので防御だけして時間稼ぎだけで良いです」
「雅と薫は、ハサミに注意して、突き刺した刀や槍に【サンダラボール】を落として内部からダメージを与えるんだ。【バブルボム】っていう泡爆弾を飛ばしてくるから注意するんだぞ」

「ん、解った」
「了解しました」

「磯崎さんは穂香の後ろで待機、穂香は磯崎さんを守ってやって。沙希は穂香の側で薫が槍を刺した所に【サンダラボール】を落としてあげて」

「「解りました」」

 俺と雅の刀には【接触切断】という付与が掛かっているので、硬さは関係ない。
 薫の槍の刃も同じ付与を与えている。

 薫の槍ももう少し改造しようかな……いくら切れる刀や槍でもこう大きいモノが頻繁に出てきたら、物理では限界があると実感させられる……やっぱ魔法を組み込むか。


 俺の方はカメが頭を引っ込めた瞬間、その硬い頭に刀をすっと刺し入れて【サンダラボール】を刀の刃に落し頭部を内部から焼切り、瞬殺した。


 カニ3匹が周りに【バブルボム】を撒き散らしたのだが、雅の魔刀【魔食夜叉】と【魔切般若】で破壊していく。【アクアボール】と違う大きな点は、【バブルボム】は設置型の魔法で、任意の場所に飛ばして当てたり、狙った場所に滞在して行動を制限したりできる優れモノだった。


『……あ! マスター、カニを倒したハティが【バブルボム】を獲得したようです』
『俺の【殺傷強奪】で奪ったのか? 俺も覚えたのかな? あれ? 無いよ?』

『……どうやら水系魔獣特有のユニークスキルのようですね。気に入ったのなら似たようなモノをオリジナルで創ってはどうです?』

『う~~ん。いや、それほど使い道は無いな……この刀で瞬殺できるのに、【バブルボム】を設置して罠に掛かるのを待つ必要性を感じない。ハティが覚えたのなら、サポート的にハティが使ってくれればいい』



『ドーン!!』

 何事かと思ったのだが、盾で泡を弾いた穂香が吹っ飛んでいた……ウソッ! 何この威力! 穂香のHPが間接ダメージでほんの少し減っている……あの泡、ワニの尻尾攻撃以上の威力があるのか? 慌てて【マジックシールド】のリバフを入れる。沙希が【アクアヒール】で減ったHPを回復してくれていた。

「穂香大丈夫か!? 磯崎さんは? 大丈夫ですか?」

「びっくりしました! まだ腕が痺れています。磯崎さん? 怪我してないですか?」
「ええ、私は大丈夫です……」

 磯崎さんにダメージは無かったようだが、あまりの威力にビビっているみたいだ。それにしても穂香の奴……ワニの時もそうだが、あの衝撃でも盾を手放していない。三田村先輩もそうだったが、自分の得物を手放すことは死に直結する……解っていても実際できるかというと難しい。その為に皆、予備の武器を所持するのだが……穂香は大した胆力だ。

「龍馬先輩! さっきの喰らっても傷1つ無いですよ! この盾やはり凄いです!」
「いや……平気で魔獣に向かっていく穂香の方が凄いと思うんだけど……」

 俺、あんなおっかないワニやサーベルタイガーには近寄りたくない。あんな目に遭ったのに、この娘は盾の傷の心配してるよ……。

「でも、龍馬先輩もさっきは凶悪そうなカメさんに近寄ってましたよね?」
「あはは、そうだね……確かにウミガメとかより悪そうな顔してるね」

 カメは魔獣じゃないから、それほど凶悪じゃないって知ってたからね。スッポンだから下手に近寄り過ぎたらパクッとやられちゃうけど、知ってれば油断しないしね。 



 ほどなくカニも倒し終える……。


「龍馬! やっぱ俺もその魔刀が欲しい! この刀も刃こぼれ1つしてなくて凄い刀なのは解る! でも、その娘がカニの硬い甲羅をバターみたいに簡単に刺し貫くのを見たら、そっちが欲しい! 可愛い娘だけに凄い武器をあげてズルい!」

「またですか……そのマジックポーチだけでもどれだけの価値があるのか解っていますか? 三田村先輩の生涯収入超えてるかもしれないのですよ? その上まだクレクレと言うのですか? 見合った対価はあるのです? タカるようならもう簡易ハウスもあげませんよ?」

 何か言いたそうにしていた友美がグッと堪えた……おそらく彼女もクレクレ病発症患者だ。今回の動きを見る限り、レベルをもう少し上げたら2人にも魔刀を造ってやってもいいかもしれない。

「ウッ……今は何もない……いずれ必ず対価は払う……」
「空手形を何処の誰が受けるんですか……剣術に関してはそれなりに強いかもですが、レベルも状況判断も全然ダメな三田村先輩に、雅の刀はまだ早いです。もっと実力を付けてから言ってください」

「もっと強くなったら、俺にも打ってくれるのか?」
「そうですね……種族レベルが50以上に成ったら創ってあげます。でも、無茶して死んだら意味が無いのですから、まずはちゃんとした仲間を集める事ですね」

「あの、私が回復担当として仲間になるのは駄目でしょうか?」
「磯崎さんが、俺のパーティーに入ってくれるのか? それは有難いけど……良いのか?」

 なんだこの甘い雰囲気は……目の前で人にやられるとちょっとムカつくな。


「磯崎さんは、三田村先輩以上に経験を積む必要がありますね。さっき穂香がダメージを負ったのに、守られていたあなたじゃなく、うちのヒーラーの沙希が即座に回復したでしょう? 磯崎さんもヒーラーならパーティー内のダメージ確認は即座にできないとダメですよ? 回復担当がダメだとパーティーから死人がでます。回復職はヘイトも稼ぎやすいので、その管理法も覚えないとダメです。無駄に回復しまくってたら、魔獣に真っ先に狙われて殺されちゃいますので気を付けてくださいね」

「おい龍馬! あんま脅すような事言うなよ!」
「それほど大事な職って事です。三田村先輩がリーダーになるのならそういう事も覚える必要があるのですよ?」

「いや……俺はパーティーリーダーには向いてないって、お前の仲間の優って娘に言われた……」
「別にリーダーは信頼さえあれば誰でも良いのですよ。戦闘時の指示出しに自信がないなら、それは他の上手い人に頼めばいいのです。パーティーを纏めるのがリーダーで、戦闘の指示出しとはまた違う資質が要ります。信頼とかカリスマ性とかいうモノですかね。指示だしはヒーラーがやるパーティーが多いのですよ? 最後尾で守られているので全体が良く見えますし、攻撃に参加しないでMP温存が原則なので、じっくり観察し、的確な指示が一番できるポジションです」

「成程……あの……刀はともかく、簡易ハウスはくれるんだよな? その為に俺2ポイント使ったからな?」
「…………ええ、簡易ハウスは提供しますよ。でも、何でも対価無しにクレクレと言うのは勘弁ですよ。別にお金や物じゃなくても良いのです。今回のような吸血蝶のような情報でも有益ですからね」

「ああ、解った。家とこのマジックポーチが有れば、大抵の事は乗り切れそうだ」



 カニとカメも【インベントリ】に入れてやっと洞窟の内部に入った。繭は天井に沢山張り付いていた……いったい何個あるんだろう。下の方の繭は壊されている……どうやら下の方の繭は魔獣に喰われたようだ。

 試しに1個ナイフでそっと剥がして中身を割って覗いてみる……ピンク色の芋虫が一匹入っていた。
 この繭の中で春まで冬眠して、吸血蝶になるのか。

 【インベントリ】に入れようとしたのだが入らない……。

『……マスター、小さくても魔獣なので生き物判定されているようです』

 生物は入れられないんだったな。

『これ1個1個剥がして殺すの大変だな……この数を全部殺しちゃマズイよな?』

『……問題ありません。ここの洞窟も数ある生息地の1つです。全部狩ったとしても生態系に何ら影響はないです』

 という事なので、1個試しに【アイスラボール】を撃ってみる。何の検証かというと、【自動拾得】でちゃんと繭ごと獲れるのかの検証だ。欲しいのは繭の方なのに、中の死んだ芋虫だけ【インベントリ】に保管されても意味がない。

 うん。大丈夫のようだ……【自動拾得】は素材も含まれているからね。

 確認ができたので皆と洞窟を出て、禁呪魔法の【寒冷地獄】を5個放り込んだ。

 うわ~、3258個の繭が手に入った。こんな大量殺戮良いのかなって思ったのだが……。

『……マスター、蚕で着物を一反織るのに何匹必要かご存知ですか?』
『いや……そんなの知ってる奴、関係者しかいないだろ?』

『……着物一着に、2500匹から3000匹の蚕が必要だそうです』 
『そんなに要るのか!? 着物が高いのも納得だ……じゃあ、これだけあっても数着分とかしか無いのか?』

『……1個の繭の大きさと、糸の量が30倍以上あるので、これだけあれば十分です』
『そうか、じゃあもう帰るな……沙希と雅が料理部に連絡したみたいで、早く帰ってきてカニ見せろって、桜と茜からメールがきてる』


『……困った人たちですね……あ! 近くにカエルがいます! このカエルの革が欲しいです! とても弾力があって伸びる良質な革が取れます。マスターが今穿いてるパンツの素材がそのカエルのモノです。お肉も美味しいそうですよ』

『まぁ、次来るとなったら何時になるか分かんないし、狩っておくか……』



 俺が今穿いてるパンツの素材がそのカエルの革製らしい。柔軟で良く伸び、見た目は革って感じなのに、着心地は革っぽくなくて体に馴染む良い品で結構気に入っている。是非狩っておきたい素材だ。
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