173 / 184
王都バスツアー編
4-1 健康診断?王都街道爆走?
しおりを挟む
チロルを今日一日エリカさんに預けようかと思ったが、ナビーが高確率で持ち帰ったまま返してくれなくなるというので止めておいた。
『……それに中途半端な事をしては今は返って可哀想です。チロルともっと連絡を取り合ったのちに、勇者クランなら安心だと彼女が判断できた後に自由に会わせてあげるのが宜しいでしょう』
娘を取り返したいと思っている間は、会わせてあげた後に引き離すのは返って可哀想だって事か。
チロルとセバス夫妻を脱衣場に呼び出す。実はこの3人以外、既に出払っている。
「3人にこれから俺の健康診断を受けてもらう」
「健康診断でございますか? 我々3人とも健康体だと思いますが?」
「俺のオリジナルスキルに、表面的なモノじゃなく、内部の体にまだ症状が出ていない病気まで判るようなスキルがあるんだ。2人とも健康そうだけど、念のために調べておこうかと思ってね」
「それは有難いですな。お手数をお掛けしますが、よろしくお願いしたします」
「ではチロルから診るので、服を全部脱いで」
「旦那様……服を全部脱ぐのですか?」
「マイヤーはちょっと恥ずかしいかもしれないが、医者だと思って諦めてくれ。セバスも今更嫉妬とかするなよ」
「…………」
「あなた……信じてお任せしましょう」
「うむ……」
「まぁ、先にチロルを診察しながら説明する。それを見た後で、どうしても嫌なら無理にはやらない」
セバス夫婦と話している間に、チロルはすっぽんぽんになっていた。
「ご主人様、ぬぎました~」
「よし、じゃあそのマッサージ台に寝てくれるか? 【ボディースキャン】」
セバスたちにも見えるように【クリスタルプレート】を出して、人型を表示させる。
「この人型がチロルなのだけど、何カ所か色が付いている所が有るよね? そこが体の悪い場所だよ」
「チロル、悪いとこあるの?」
「筋肉疲労と魔素停滞か……うん、病気は無いね。チロルは健康体だ。昨日歩いたので、足と腰にちょっと筋肉疲労が出てるぐらいだよ。この黒い場所は魔力の流れが上手くできてない場所だね。貴族の子だけあって、そこそこ魔力があるのに、上手く使いこなせてないから、ちょっと停滞してしまってるみたいだ」
魔力を流して、上手く流れるよう誘導する。
俯けに寝てもらい、筋肉疲労の箇所と魔素の停滞箇所をマッサージで治療する。
「ふゎ~~、ごしゅじんさま~これ気持ちイイです~♪」
「それほど酷い筋肉痛でもないからね。チロルからすれば只、気持ちが良いだけかもね」
10分ほどで人型のモニターから全て色が消えた。
「次はセバスね」
「ごしゅじんさま、ありがとうです」
チロルは可愛くお礼を言ってくれた。チロルの診察を見たセバスも迷うことなく全裸になっていた。
「旦那様、よろしくお願いいたします」
「おや……老眼……肝機能の低下……慢性の腰痛……ふむ、腰痛持ちだったのか。体を鍛えている人は成りにくいのにな」
「そんなことまで分かるのですか……」
「うん。全部治してやるからね。魔素の停滞があまり無いのは凄いね。流石って感じだ」
「フゲッ! 旦那様! 腰押されると痛いです!」
「痛いって事は、ちょっと予想以上に悪いって事だぞ? 脊柱管狭窄症に成りかけてるのか……【細胞治療】」
「ご主人様……セバス病気なの?」
「うん? 心配しなくても大丈夫だよ。お年寄りが成りやすいけど、治せるからね」
本来、脊柱管狭窄症に一度なったら治療法はない……ブロック注射や筋肉を鍛えて、痛みを和らげるよう筋肉増量をしなさいと医者に言われるだけだ。
「よし、完治。肝機能は若い頃のお酒がたたっているんだね。目も治しておいたよ、どう?」
「おお! 目が若い頃のようにくっきり見えます! それに体をひねっても腰が全く痛くない! 凄い!」
セバスがマッサージ台から降りた頃には、マイヤーが既に裸になって待っていた。
「おまえ……いや、恥ずかしがる方がおかしいな」
「ですね……旦那様、主人を治してくださり感謝いたします。私も診察よろしくお願いします」
「的確に判断できるところはいいね。ここで恥ずかしがって診察を断るのはバカのする事だ。こんなチャンス普通ないからね。じゃあ診るね」
「はい。お願いします」
「マイヤーも老眼が出ているね……軽度の白内障もか……小さい脳腫瘍が有るけど悪性のモノではないね……胃も少し弱っている……少し便秘気味?……後は魔素の停滞が少し有る程度だね」
「旦那様? 妻はどうでしょう? 悪い所が有るのでしょうか?」
脳腫瘍って聞きなれない言葉で不安になったようだ。
「全部治しておくから大丈夫だよ。胃を治したら、ちょっと食欲が増すかもだけど、便秘も改善するので問題ないはずだ」
直ぐに治療を終える。
「あ! 本当に目がくっきり見えます! 最近左目に靄がかかったようになって見にくかったのに……ありがとうございます!」
「どういたしまして。それと、ここからが本題なんだ……」
3人とパーティーを組んで、【コネクト】【カスタマイズ】で3人のステータスに関与する。
セバスとマイヤーの【身体強化】をレベル10にし、チロルはレベル5に引き上げる。そしてセバスの習得していた【剣王】レベル7を【剣鬼】レベル10にする。セバスには【クリーン】と【アクアラヒール】レベル10と【プロテス】【シェル】もコピーする。マイヤーには【クリーン】と【アクアヒール】レベル10までにしておこうかな。メイドと執事なので、【クリーン】はあった方が良いよね。
「「なっ!?」」
「セバス、体を鍛えてそこまで昇華させているあなたには申し訳ないけど……こういうヤバいスキルを俺は持っている。これはクラン内でも秘密にしている事なので、絶対口外しないでほしい」
チロルはよく解ってないようだが、それでいい。下手に周りに喋られても困るしね。チロルはまだ6歳なのであまりレベルを上げ過ぎるのも良くないのでレベル5とした。
「何故全員のステータスを引き上げてあげないのですか? そのほうがクランとしての格も上がるかと思われます」
「引き上げるためには、俺の保有ポイントを消費するんだよ。このポイントは魔獣を倒すことでしか得られないから、人に与える前にまず自分に使って強くならなければならない。おいそれと教えられないんだ。『どうして私は上げてくれないの?』とかクラン内で揉めると面倒だろ? 今もセバスにあげた事をアレクセイが知ったら、自分は信用されてないからだ……とか悪い方に取る可能性もあるんだよ」
「そんな貴重なポイントを我々に使ったのですか! このような貴重なものは勇者様に使うべきです!」
めっちゃ怒られた……言ってる事は理解できる。自分たちに使わないで勇者に使い、世界の危機を救うのが俺の役目だって説教された。
「そう怒らないでよ……セバスに秘密を教え、何故戦力を与えたか……俺たち主戦力の者が留守の間、クランの皆を守ってほしいんだ。俺たちの居た国は平和で、暴力的な事を彼女たちは全く知らない。経験豊富なセバスに彼女たちを守ってほしいんだ。拠点待機組は、俺たち勇者クランの弱点なんだよ。セバスとマイヤーなら貴族の腹黒い部分も知っているだろうから、そういう悪意からも皆を守ってほしいと思っている」
「そういう事ですか……確かに勇者クランを取り込もうとあの手この手でいろんな輩が近づいてくるでしょうな」
「C班は全員上級回復魔法を持ってるけど、チロルや奴隷の娘たちがすり傷を負ったぐらいならマイヤーが治してあげて。止血程度なら初級で間に合うから、その間にうちの誰かを呼べば大抵は大事にならないからね」
「「ご配慮ありがとうございます」」
「ごしゅじんさま、セシルたちもけんこうしんだんしてくれるの?」
他の娘たちも念のために健康診断しておきたいけど、お年頃の娘さんばかりだし、フィリアと菜奈に任せるかな。
「彼女たちはお年頃だしね……服を脱ぐのは恥ずかしがるんじゃないかな?」
「旦那様……お手数でないのであれば、是非診てあげてほしいです。この魔法は恥ずかしいとかそういうレベルのものではありません。わたくしどもの方で説得いたしておきますので、是非診てあげてください」
フィリアたちにお願いすればいいのだけど、少しスケベ心が出てしまった。獣娘たちの尻尾の付け根がどうなってるか見たい! おっぱいも見たい! 特にアルヴィナとルフィーナはかなりのモノをお持ちだ。
「マイヤーに説得は任せるよ……でも、強制はしないでね?」
言ってしまった……バレなければいいか。
「それとこれ……マイヤーに性欲抑止剤、解毒剤、回復剤を渡しておくので、誰か周期に入ったり、怪我や毒なんか受けたら使ってあげて」
各種回復剤と抑止剤の注入タイプと飲むタイプを5本ずつ渡しておく。
「先日、抑止剤の方は美弥奥様から数本お預かりしておりますが、これも預からせていただきますね」
流石美弥ちゃん! 俺、さっきスケベ心を出して抑止剤の事に気付いたのだけど……美弥ちゃん良く周りが見えてるな。
3人を連れて転移魔法でログハウスに移動する。
一緒に行動しようかと思ったが、一仕事あったのを思い出しここで別れた。
俺はそのままここである人を呼び出す。
「小鳥遊君、私に何か用かな?」
「こんにちは。山本先生、今日はお出かけしていないのですね」
「昨日必要な物は買い揃えたので、今日はゆっくりしていました」
俺は山本先生に王都の管理人をお願いした。
「条件は高畑先生と同じです。どうでしょうか?」
「嬉しい! この先、身の振り方をどうしようか迷っていたのです。チートなスキルで冒険者に成るのが一番稼げるとは思うのですが、狼や虎を見てしまったので、ちょっと怖いかなって」
「あ、でも管理人をするならそれなりの戦力は要りますよ。先生自身が強くなる必要はないですけど、盗賊も多いので自衛できるだけの戦力はあった方が良いです」
「冒険者に成りたがってる子たちがいるので、その子たちに王都にきてもらっていいかな?」
「入居の人選もお任せします。造りは商都のモノと一緒で、基本は独身寮です。学園生に拘る必要はないですが、男の侵入は禁止です。トラブルの元ですので、連れ込みや同棲なんかさせないようにお願いします」
「分かりました。私はこの後どうすればいいの?」
「先生の言ってる子たちと後日王都に向かってくれればいいですが、先生1人だけなら、明日一緒に連れて行っても良いですよ」
「私1人なら良いけど、他の子の同伴は駄目って事?」
「ええ、先生1人だけなら余裕がありますが、増えるとちょっと……理由がありまして」
話し合った結果、山本先生だけ先に王都に俺たちと行って、皆を待つ事にするようだ。
「話は変わるけど、昨日色々あったのは聞いてる?」
「ええ、高畑先生から報告はきています……」
「その感じだと知ったこっちゃない!って感じだね?」
「ええ、事前に何度も注意はしていましたからね」
色々あったとは聞いてるが、もう俺には関係のない話だ……ちょっと笑える話もあったけどね。
午後から皆に合流して、いろいろ買い出しをしていたらその日があっという間に終わる。
翌朝、街の外のお屋敷を収納し、貴族街にあるログハウスに転移して正門に向かう。
公爵様や神官長までもが勇者のお見送りに来てくれたからね……黙って行く訳にもいかなかったのだ。
騎士たちに整列され、盛大に見送られる……美咲、ガチガチに緊張してるよ。
商都を出て、2㎞ほど進んだあたりで一度止まる。
「美咲、お疲れ様」
「本当に疲れた……何ですかあのプレッシャー。勇者に期待しすぎです。龍馬君に代わってほしい」
「俺は嫌だよ……さて……全員馬車から出てくれるかな」
「龍馬君、どうするの?」
「監視の目があるみたいだけど……まぁいいや。アレクセイ、馬車から馬を外してくれるか」
「旦那様、歩きですと少し体力的に持たない者が居るのですが……」
「セバス、大丈夫だ、問題ない」
俺はとっておきを【インベントリ】から取り出す。
「「「バス!」」」
学園所有の大型バスだ。
学園には専属の運転手も居て、各部の遠征や応援なんかで時々使われていた。
「王都まで約650kmあるけど、ゆっくり行っても2日で着くよ」
「「「…………」」」
馬車を【インベントリ】に放り込み、5頭の馬に【レビテト】を掛けて宙に浮かせ【魔糸】で繋ぐ。
最初少し暴れたが、足を動かしても空を切るだけなので怪我する事もない。
「さあ、乗った乗った!」
正座席45席、補助座席も含めれば定員55名乗れる。学園組21名、奴隷組12名、バグナーさんにレイラさんパーティー3名、合計37名……余裕だ! 街道の幅も十分有るな……そもそも馬車が大きいのだ。貴族の乗る大型馬車はもっと横に大きいかもしれない。ちなみにこの大型バスは幅2.5m、長さ12mで最大級のモノだ。街道の道幅は4、5mは有るので十分だ。すれ違いに困った時は、こっちは【インベントリ】に入れれば消し去る事ができるので問題ない。
ミッション車なのに運転できるのかって?
人形たちが工房内で練習してくれたので、俺の熟練度も上がっているのだ。
街道を大型バスで爆走した! ヒャッハー状態だ! むっちゃ楽しい!
***************************************************
お読みくださりありがとうございます。
4章突入です。
セバスへのスキルコピーは迷いましたが、忠誠心を上げるのと拠点防衛の要になりそうなので、最低限に与えておきました。意外とセバスに文字数を使ってしまった……おかげで山本先生の話がカットw
後日『色々あった』の部分は何があったのかいずれ話します……皆さまの予想通りですけどね。
バス移動は学園編当初から予定していたものです……美弥ちゃんの車の話がつい先出ししてしまったのですw
おかげでこっちのインパクトが薄くなってしまったので、ちょろっとしか触れませんでした。
『……それに中途半端な事をしては今は返って可哀想です。チロルともっと連絡を取り合ったのちに、勇者クランなら安心だと彼女が判断できた後に自由に会わせてあげるのが宜しいでしょう』
娘を取り返したいと思っている間は、会わせてあげた後に引き離すのは返って可哀想だって事か。
チロルとセバス夫妻を脱衣場に呼び出す。実はこの3人以外、既に出払っている。
「3人にこれから俺の健康診断を受けてもらう」
「健康診断でございますか? 我々3人とも健康体だと思いますが?」
「俺のオリジナルスキルに、表面的なモノじゃなく、内部の体にまだ症状が出ていない病気まで判るようなスキルがあるんだ。2人とも健康そうだけど、念のために調べておこうかと思ってね」
「それは有難いですな。お手数をお掛けしますが、よろしくお願いしたします」
「ではチロルから診るので、服を全部脱いで」
「旦那様……服を全部脱ぐのですか?」
「マイヤーはちょっと恥ずかしいかもしれないが、医者だと思って諦めてくれ。セバスも今更嫉妬とかするなよ」
「…………」
「あなた……信じてお任せしましょう」
「うむ……」
「まぁ、先にチロルを診察しながら説明する。それを見た後で、どうしても嫌なら無理にはやらない」
セバス夫婦と話している間に、チロルはすっぽんぽんになっていた。
「ご主人様、ぬぎました~」
「よし、じゃあそのマッサージ台に寝てくれるか? 【ボディースキャン】」
セバスたちにも見えるように【クリスタルプレート】を出して、人型を表示させる。
「この人型がチロルなのだけど、何カ所か色が付いている所が有るよね? そこが体の悪い場所だよ」
「チロル、悪いとこあるの?」
「筋肉疲労と魔素停滞か……うん、病気は無いね。チロルは健康体だ。昨日歩いたので、足と腰にちょっと筋肉疲労が出てるぐらいだよ。この黒い場所は魔力の流れが上手くできてない場所だね。貴族の子だけあって、そこそこ魔力があるのに、上手く使いこなせてないから、ちょっと停滞してしまってるみたいだ」
魔力を流して、上手く流れるよう誘導する。
俯けに寝てもらい、筋肉疲労の箇所と魔素の停滞箇所をマッサージで治療する。
「ふゎ~~、ごしゅじんさま~これ気持ちイイです~♪」
「それほど酷い筋肉痛でもないからね。チロルからすれば只、気持ちが良いだけかもね」
10分ほどで人型のモニターから全て色が消えた。
「次はセバスね」
「ごしゅじんさま、ありがとうです」
チロルは可愛くお礼を言ってくれた。チロルの診察を見たセバスも迷うことなく全裸になっていた。
「旦那様、よろしくお願いいたします」
「おや……老眼……肝機能の低下……慢性の腰痛……ふむ、腰痛持ちだったのか。体を鍛えている人は成りにくいのにな」
「そんなことまで分かるのですか……」
「うん。全部治してやるからね。魔素の停滞があまり無いのは凄いね。流石って感じだ」
「フゲッ! 旦那様! 腰押されると痛いです!」
「痛いって事は、ちょっと予想以上に悪いって事だぞ? 脊柱管狭窄症に成りかけてるのか……【細胞治療】」
「ご主人様……セバス病気なの?」
「うん? 心配しなくても大丈夫だよ。お年寄りが成りやすいけど、治せるからね」
本来、脊柱管狭窄症に一度なったら治療法はない……ブロック注射や筋肉を鍛えて、痛みを和らげるよう筋肉増量をしなさいと医者に言われるだけだ。
「よし、完治。肝機能は若い頃のお酒がたたっているんだね。目も治しておいたよ、どう?」
「おお! 目が若い頃のようにくっきり見えます! それに体をひねっても腰が全く痛くない! 凄い!」
セバスがマッサージ台から降りた頃には、マイヤーが既に裸になって待っていた。
「おまえ……いや、恥ずかしがる方がおかしいな」
「ですね……旦那様、主人を治してくださり感謝いたします。私も診察よろしくお願いします」
「的確に判断できるところはいいね。ここで恥ずかしがって診察を断るのはバカのする事だ。こんなチャンス普通ないからね。じゃあ診るね」
「はい。お願いします」
「マイヤーも老眼が出ているね……軽度の白内障もか……小さい脳腫瘍が有るけど悪性のモノではないね……胃も少し弱っている……少し便秘気味?……後は魔素の停滞が少し有る程度だね」
「旦那様? 妻はどうでしょう? 悪い所が有るのでしょうか?」
脳腫瘍って聞きなれない言葉で不安になったようだ。
「全部治しておくから大丈夫だよ。胃を治したら、ちょっと食欲が増すかもだけど、便秘も改善するので問題ないはずだ」
直ぐに治療を終える。
「あ! 本当に目がくっきり見えます! 最近左目に靄がかかったようになって見にくかったのに……ありがとうございます!」
「どういたしまして。それと、ここからが本題なんだ……」
3人とパーティーを組んで、【コネクト】【カスタマイズ】で3人のステータスに関与する。
セバスとマイヤーの【身体強化】をレベル10にし、チロルはレベル5に引き上げる。そしてセバスの習得していた【剣王】レベル7を【剣鬼】レベル10にする。セバスには【クリーン】と【アクアラヒール】レベル10と【プロテス】【シェル】もコピーする。マイヤーには【クリーン】と【アクアヒール】レベル10までにしておこうかな。メイドと執事なので、【クリーン】はあった方が良いよね。
「「なっ!?」」
「セバス、体を鍛えてそこまで昇華させているあなたには申し訳ないけど……こういうヤバいスキルを俺は持っている。これはクラン内でも秘密にしている事なので、絶対口外しないでほしい」
チロルはよく解ってないようだが、それでいい。下手に周りに喋られても困るしね。チロルはまだ6歳なのであまりレベルを上げ過ぎるのも良くないのでレベル5とした。
「何故全員のステータスを引き上げてあげないのですか? そのほうがクランとしての格も上がるかと思われます」
「引き上げるためには、俺の保有ポイントを消費するんだよ。このポイントは魔獣を倒すことでしか得られないから、人に与える前にまず自分に使って強くならなければならない。おいそれと教えられないんだ。『どうして私は上げてくれないの?』とかクラン内で揉めると面倒だろ? 今もセバスにあげた事をアレクセイが知ったら、自分は信用されてないからだ……とか悪い方に取る可能性もあるんだよ」
「そんな貴重なポイントを我々に使ったのですか! このような貴重なものは勇者様に使うべきです!」
めっちゃ怒られた……言ってる事は理解できる。自分たちに使わないで勇者に使い、世界の危機を救うのが俺の役目だって説教された。
「そう怒らないでよ……セバスに秘密を教え、何故戦力を与えたか……俺たち主戦力の者が留守の間、クランの皆を守ってほしいんだ。俺たちの居た国は平和で、暴力的な事を彼女たちは全く知らない。経験豊富なセバスに彼女たちを守ってほしいんだ。拠点待機組は、俺たち勇者クランの弱点なんだよ。セバスとマイヤーなら貴族の腹黒い部分も知っているだろうから、そういう悪意からも皆を守ってほしいと思っている」
「そういう事ですか……確かに勇者クランを取り込もうとあの手この手でいろんな輩が近づいてくるでしょうな」
「C班は全員上級回復魔法を持ってるけど、チロルや奴隷の娘たちがすり傷を負ったぐらいならマイヤーが治してあげて。止血程度なら初級で間に合うから、その間にうちの誰かを呼べば大抵は大事にならないからね」
「「ご配慮ありがとうございます」」
「ごしゅじんさま、セシルたちもけんこうしんだんしてくれるの?」
他の娘たちも念のために健康診断しておきたいけど、お年頃の娘さんばかりだし、フィリアと菜奈に任せるかな。
「彼女たちはお年頃だしね……服を脱ぐのは恥ずかしがるんじゃないかな?」
「旦那様……お手数でないのであれば、是非診てあげてほしいです。この魔法は恥ずかしいとかそういうレベルのものではありません。わたくしどもの方で説得いたしておきますので、是非診てあげてください」
フィリアたちにお願いすればいいのだけど、少しスケベ心が出てしまった。獣娘たちの尻尾の付け根がどうなってるか見たい! おっぱいも見たい! 特にアルヴィナとルフィーナはかなりのモノをお持ちだ。
「マイヤーに説得は任せるよ……でも、強制はしないでね?」
言ってしまった……バレなければいいか。
「それとこれ……マイヤーに性欲抑止剤、解毒剤、回復剤を渡しておくので、誰か周期に入ったり、怪我や毒なんか受けたら使ってあげて」
各種回復剤と抑止剤の注入タイプと飲むタイプを5本ずつ渡しておく。
「先日、抑止剤の方は美弥奥様から数本お預かりしておりますが、これも預からせていただきますね」
流石美弥ちゃん! 俺、さっきスケベ心を出して抑止剤の事に気付いたのだけど……美弥ちゃん良く周りが見えてるな。
3人を連れて転移魔法でログハウスに移動する。
一緒に行動しようかと思ったが、一仕事あったのを思い出しここで別れた。
俺はそのままここである人を呼び出す。
「小鳥遊君、私に何か用かな?」
「こんにちは。山本先生、今日はお出かけしていないのですね」
「昨日必要な物は買い揃えたので、今日はゆっくりしていました」
俺は山本先生に王都の管理人をお願いした。
「条件は高畑先生と同じです。どうでしょうか?」
「嬉しい! この先、身の振り方をどうしようか迷っていたのです。チートなスキルで冒険者に成るのが一番稼げるとは思うのですが、狼や虎を見てしまったので、ちょっと怖いかなって」
「あ、でも管理人をするならそれなりの戦力は要りますよ。先生自身が強くなる必要はないですけど、盗賊も多いので自衛できるだけの戦力はあった方が良いです」
「冒険者に成りたがってる子たちがいるので、その子たちに王都にきてもらっていいかな?」
「入居の人選もお任せします。造りは商都のモノと一緒で、基本は独身寮です。学園生に拘る必要はないですが、男の侵入は禁止です。トラブルの元ですので、連れ込みや同棲なんかさせないようにお願いします」
「分かりました。私はこの後どうすればいいの?」
「先生の言ってる子たちと後日王都に向かってくれればいいですが、先生1人だけなら、明日一緒に連れて行っても良いですよ」
「私1人なら良いけど、他の子の同伴は駄目って事?」
「ええ、先生1人だけなら余裕がありますが、増えるとちょっと……理由がありまして」
話し合った結果、山本先生だけ先に王都に俺たちと行って、皆を待つ事にするようだ。
「話は変わるけど、昨日色々あったのは聞いてる?」
「ええ、高畑先生から報告はきています……」
「その感じだと知ったこっちゃない!って感じだね?」
「ええ、事前に何度も注意はしていましたからね」
色々あったとは聞いてるが、もう俺には関係のない話だ……ちょっと笑える話もあったけどね。
午後から皆に合流して、いろいろ買い出しをしていたらその日があっという間に終わる。
翌朝、街の外のお屋敷を収納し、貴族街にあるログハウスに転移して正門に向かう。
公爵様や神官長までもが勇者のお見送りに来てくれたからね……黙って行く訳にもいかなかったのだ。
騎士たちに整列され、盛大に見送られる……美咲、ガチガチに緊張してるよ。
商都を出て、2㎞ほど進んだあたりで一度止まる。
「美咲、お疲れ様」
「本当に疲れた……何ですかあのプレッシャー。勇者に期待しすぎです。龍馬君に代わってほしい」
「俺は嫌だよ……さて……全員馬車から出てくれるかな」
「龍馬君、どうするの?」
「監視の目があるみたいだけど……まぁいいや。アレクセイ、馬車から馬を外してくれるか」
「旦那様、歩きですと少し体力的に持たない者が居るのですが……」
「セバス、大丈夫だ、問題ない」
俺はとっておきを【インベントリ】から取り出す。
「「「バス!」」」
学園所有の大型バスだ。
学園には専属の運転手も居て、各部の遠征や応援なんかで時々使われていた。
「王都まで約650kmあるけど、ゆっくり行っても2日で着くよ」
「「「…………」」」
馬車を【インベントリ】に放り込み、5頭の馬に【レビテト】を掛けて宙に浮かせ【魔糸】で繋ぐ。
最初少し暴れたが、足を動かしても空を切るだけなので怪我する事もない。
「さあ、乗った乗った!」
正座席45席、補助座席も含めれば定員55名乗れる。学園組21名、奴隷組12名、バグナーさんにレイラさんパーティー3名、合計37名……余裕だ! 街道の幅も十分有るな……そもそも馬車が大きいのだ。貴族の乗る大型馬車はもっと横に大きいかもしれない。ちなみにこの大型バスは幅2.5m、長さ12mで最大級のモノだ。街道の道幅は4、5mは有るので十分だ。すれ違いに困った時は、こっちは【インベントリ】に入れれば消し去る事ができるので問題ない。
ミッション車なのに運転できるのかって?
人形たちが工房内で練習してくれたので、俺の熟練度も上がっているのだ。
街道を大型バスで爆走した! ヒャッハー状態だ! むっちゃ楽しい!
***************************************************
お読みくださりありがとうございます。
4章突入です。
セバスへのスキルコピーは迷いましたが、忠誠心を上げるのと拠点防衛の要になりそうなので、最低限に与えておきました。意外とセバスに文字数を使ってしまった……おかげで山本先生の話がカットw
後日『色々あった』の部分は何があったのかいずれ話します……皆さまの予想通りですけどね。
バス移動は学園編当初から予定していたものです……美弥ちゃんの車の話がつい先出ししてしまったのですw
おかげでこっちのインパクトが薄くなってしまったので、ちょろっとしか触れませんでした。
10
お気に入りに追加
8,870
あなたにおすすめの小説
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

異世界に飛ばされたら守護霊として八百万の神々も何故か付いてきた。
いけお
ファンタジー
仕事からの帰宅途中に突如足元に出来た穴に落ちて目が覚めるとそこは異世界でした。
元の世界に戻れないと言うので諦めて細々と身の丈に合った生活をして過ごそうと思っていたのに心配性な方々が守護霊として付いてきた所為で静かな暮らしになりそうもありません。
登場してくる神の性格などでツッコミや苦情等出るかと思いますが、こんな神様達が居たっていいじゃないかと大目に見てください。
追記 小説家になろう ツギクル でも投稿しております。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。
破滅の女神
ファンタジー
18歳の誕生日…先月死んだ、おじぃちゃんから1冊の本が届いた。
小さい頃の思い出で1ページ目に『この本は異世界冒険記、あなたの物語です。』と書かれてるだけで後は真っ白だった本だと思い出す。
本の表紙にはドラゴンが描かれており、指輪が付属されていた。
お遊び気分で指輪をはめて本を開くと、そこには2ページ目に短い文章が書き加えられていた。
その文章とは『さぁ、あなたの物語の始まりです。』と…。
次の瞬間、僕は気を失い、異世界冒険の旅が始まったのだった…。
本作品は『カクヨム』で掲載している物を『アルファポリス』用に少しだけ修正した物となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる