170 / 184
商都フォレスト編
3-16 【従属契約】魔法?ゴメン、ハティ?
しおりを挟む
セバスたちの班に合流し、何を買ったのか聞いてみた。
「私服や下着類と執事服やメイド服を人数分購入いたしました」
見たら私服が少ない……使い切るように言ってあったのにどうやら遠慮しているみたいだ。
「セバス、10万ジェニーはきっちり服の購入で使い切るんだ。王都に行ったらまた渡すつもりでいるから遠慮はするな」
「ですが旦那様、勇者としての活動資金が足らなくなっては一大事でございます……余裕ができるまでは極力抑えた方が賢明ではないかと判断致します」
「ああ、そうか……セバスたちを奴隷商から譲り受ける時値切ったから、手持ちがないと思っているのだね? あれは只の交渉術であって、お金を心配する必要はないよ?」
「……サーベルタイガーの売上金を当てにしているのかもしれないですが、勇者様が装備する品となったら、億ぐらいのお金はあっという間に使ってしまいます。ましてパーティー全員分の装備となると何十億も要る事でしょう。奴隷ごときに使っている資金はないはずです」
やはり家宰にするなら、もっとお互いに話し合う必要があるな。
「今さっき公爵様と取引を終えてきて、手持ちは10億ほどある。王都に行ったら国王に耐毒の指輪(効果大)を10億で2つ売る話も付いている。資金で困る事はないのでセバスたちがお金の心配をする必要はないよ。それにセバスに与えた剣は俺が造った物だけど、市場で買える品より遥かに優れている筈だ。防具もそのうち造るつもりなので、メンテ代も含めてそれほど装備品にお金は必要ないと思っている」
「あの武器を旦那様が!? そうでございましたか……余計な心配でした。申し訳ありません」
「いや、むしろ俺たちの事を考えて行動してくれてありがたいくらいだ。でもちゃんと今後の話をまだしていないからね。家宰的な事をやってもらうつもりなので、セバスとマイヤーにはある程度お金の事も含めてうちの内情を教えておこうと思っている。じっくり一度話し合おう」
「「了解いたしました」」
「菜奈、良いの買ったか?」
「う~ん、この世界の生地は素材が良くないのです。特に下着はダメです……」
紐パンやかぼちゃパンツ? ドロワーズって言うのかな? 種類があまり無いようだ。
「下着は俺が作ってあげるよ。生地の素材も良い物もあるんだぞ? 入った店が悪かったのかもな。俺たち異世界人が買い漁ってるらしいから、良いのが残ってなかったのかもしれないね」
不意に誰かが後ろから腰に抱き着いてきた。
「リョウマ様! 似合っていますか?」
「お! チロルはメイド服着てるのか? とっても可愛いぞ」
黒を基調としたシックなクラシックなメイド服だ。
「兄様、全然可愛くないです! チロルにはもっと可愛いのを着せなきゃダメです!」
「ん! これはダメ! 60点!」
うっ……確かに本音を言えば俺的に50点だ。
『……マスター! ナビーにお任せください! もう直ぐ織機も完成形が出来上がりますので!』
うわ~何でテンションこんなに高いの? しかも完成形ってなんだよ!?
『いいけど、俺メイド服にはこだわりあるよ?』
『……勿論承知しています。アキバ系が御所望なのですよね? 勿論チロルには黒を基調としたゴスロリ調に、白フリルをアクセントに使ったミニ丈が宜しいのですよね? セシルにはプラスガーターベルト着用ですよね?』
『お主、分かっておるではないか!』
『……何故悪代官風におっしゃられるのでしょうか……イヤラシイ』
『ウグッ……ナビーに任せるよ』
「チロルのメイド服は俺が作っておくよ」
「兄様が? 裁縫とかした事ありませんよね?」
「そういうスキルを持っているんだ……」
「じゃあ、菜奈の下着も忘れずに作ってくださいね?」
「ん、私のも」
「分かった、菜奈と雅の下着も作っておくよ」
「あれは良い物です! 先生もう一着欲しいな~」
あっ……今、言っちゃまずいよ!
「兄様? もう一着とはどういう事でしょうか? まさか菜奈より先に美弥ちゃん先生に作って差し上げたとかではないですよね?」
「ん、私も貰ってない……」
ほらみろ! 面倒な2人が拗ねはじめたじゃないか。
美弥ちゃんを睨んだら、ごめんねって手を合わせてきた……仕草が可愛かったから許す……。
「実は異世界の糸を使って試作してみたんだよ。カブレたりしないか被験者になってもらったんだ」
「ん? 異世界の糸?」
「蜘蛛と芋虫の糸だよ」
「兄様……虫は嫌です!」
「菜奈……シルクも芋虫なんだぞ? 蚕ぐらい知ってるよな?」
「あ! そうでした……」
「先生は、蜘蛛の糸がお気に入りです。シルク同様滑らかでとても肌触りが良いです」
菜奈の奴……いつもどおりを装っているけど、ソワソワしていて、今晩の事を意識しているのがまるわかりだ。
俺も覚悟を決めたつもりなのだが、どうにも落ち着かない。
幼馴染から兄妹に、兄妹から恋人になろうとしているのだから当然なのかもしれないが……。
そうこうしている間にミーニャたち4班が合流してきた。
「未来たちは、ちゃんとこの世界の服に着替えたんだね? みんな可愛いよ!」
マジで皆、可愛い!
「「「ご主人様、服を買って頂きありがとうございます」」」
「ああ、どういたしまして。王都に行ったらまた10万ジェニーあげるから、可愛い服を着て俺に見せてくれ」
「兄様、エッチな目で見てはいけません!」
「ん、龍馬は少しエッチ」
「龍馬先輩似合っていますか? 変じゃないですか?」
「うん、沙織もとっても可愛いよ」
それ以降は、穂香や美紀や友美の順に同じように答えていく……。
見かねたセバスが助け舟を出してくれた。
「旦那様、家具の購入はどういたしましょう?」
「セバスの執務室に必要な物は全て買っておくといい。追加で1億渡しておくので、セバスに任せる」
「旦那様の執務室の分もわたくしが買い揃えて宜しいのですね?」
「いや、俺の分はまだ必要ない。セバスの買い揃えた品を参考に自主作製しようかと思っている。トレント素材も沢山所持しているので、それで作るつもりだ」
「トレントでございますか? 高級素材ですな……」
「言っておくが、自分の執務室だからとケチるんじゃないぞ? あくまでセバスは勇者様御一行の家宰として恥ずかしくない物を意識して買い揃えるんだ。無駄に贅沢する必要は無いが、くだらない事で二流貴族に舐められたりするのは良い気がしない。それなりに恥ずかしくない物を買い揃えるように」
「承知いたしました……勇者様クランの家宰という大事な職務に、本当にわたくしで宜しいのでしょうか?」
「俺はセバスの事を気に入っている。セバスはその歳でそれだけの体を維持できているんだ。自らを厳しく律する事ができる人じゃなきゃ、その体型を維持できていないだろう。まぁそれだけが理由じゃないけど、俺たちが居ない間の留守を、マイヤーと二人で上手く守ってくれるだろうと期待している」
「お任せください。老体に鞭打ってでも期待にお答えいたします」
「わたくしとて、そこまで言ってくださって期待に応えない訳にはまいりませぬ。残り少ない命ではございますが、夫婦共々精一杯お仕え致します」
この2人、マジ良い買い物をした! こういうのは雰囲気やその時の気分も大事だ!
【魔法創造】
1、【従属契約】
2、・奴隷紋の契約や解除が行える
・【魅了】や【チャーム】などの従属系精神魔法の解除ができる
3、イメージ
4、【魔法創造】発動
「セバス、マイヤー、お前たちを奴隷解放する。俺の信頼に答えてくれ」
【従属契約】魔法を発動し、セバスとマイヤーの首の周りに刺青のように巻き付いている鎖を解除する。
「あなたの首の奴隷紋がなくなっています!」
「マイヤー! お前の鎖も消えている! 旦那様は、従属魔法が使えるのですか!?」
「ああ、これで貴族が訪問してきたとしても、奴隷のくせにとか言って舐められたりはしないだろう」
本来従属魔法は神の認めた者にしか与えられないユニーク魔法なのだが、俺には関係ないようだ。
余程嬉しかったのか人目を気にすることもなく夫婦で抱き合って泣いている……俺に一生仕えると言ってくれたが、奴隷として仕えるのと、従者として仕えるのでは意味合いが違うのだろう。
「みっともない所をお見せしました……ですが旦那様、奴隷解放された私が、この大金を持って逃げるとお考えにならないのですか?」
「セバス、兄様はそれほど甘い人ではないですよ。ちゃんとお考えがあっての事です。逃げる気があるのなら逃げても構いませんが、必ず後悔する事になるでしょう……」
「菜奈様、逃げるなどとんでもございません。奴隷の立場ではできなかった事も解放された事によって可能になります。夫婦共々できうる限りのサポートを致す所存でございます」
他の奴隷たちが、羨ましそうに解放された2人を見ている。悪いが理由もなくそう簡単に解放してあげられない。セバスとマイヤーは、自分で言ってたように、貴族の接客をしないといけない。奴隷だとできない事もあるのだ……なので、勿体ぶって演出しながら解放した。
ナビーに腹黒いとか言われたが、セバスもマイヤーも俺の意図は理解している筈だ。奴隷たちの前で敢えて大仰に解放したのだ……将来は自分たちもという期待が有るのと無いのでは必ず態度が変わってくる。
「そうだ、美弥ちゃん先生。桜たち変態料理部が、この世界の料理が食べたいと言ってきたので、今晩の夕飯は外食にすることにしました。さっき虎の販売契約に行った時に公爵様にお願いしてこの商都で一番の高級店を貸切にしてもらったので、今晩は全員でそこで食べましょう」
「あ、先生もこの世界の料理は興味あります」
「ん、あんまり美味しくなかった……」
「あれ? 雅ちゃんは何時この世界の料理を食べたの?」
「ん……しまった……皆には内緒だった……」
雅は沙織や穂香に捕まって、白状させられていた。
「雅、あの店は基本宿屋だ……今晩食べるところは商都で一番美味しいそうだぞ」
「ん、じゃあ期待しておく」
「予約時間はまだ2時間ほど先だから、それまでは買い物を続けててくれ。美弥ちゃん先生の方でバグナーさんたちに連絡網を回してくれるかな?」
「兄様? バグナーさんたち、宿を引き払っていますよ? 夜になると街は閉門されるのですよね? 宿泊はどうされるのですか?」
「今から馬と馬車は俺がお屋敷に置いてくる。アレクセイとバグナーさんは、ログハウスに泊まってもらうが、他の者はログハウスからお屋敷に転移魔法で帰宅することにする」
「ですが、バグナーさんやレイラさんたちに転移魔法を知られても良いのですか?」
「転移魔法自体既存魔法で有るのだし、問題ないよ。彼らが俺たちを利用しようとするなら今後の関係がなくなるだけだ。別にそれで困る事は特にない」
「ん、流石龍馬。利用しようとするならバッサリ」
「そういうこと。折角凄い魔法を所持しているのに、使わないで不便な思いをする必要はないよね」
「龍馬君、なんて名前のお店に集合させればいいの?」
「『うさうさ亭』って所らしいよ。メイン通りに兎の看板があるからすぐ分かるだろうって言ってた」
「「「キャー! うさ亭だって! やったー!」」」
奴隷たちが騒いでいる……それほど良い店なのかな?
「旦那様、あの店は奴隷の入店は不可の筈です……」
急に奴隷たちがシュンとなった……マジで残念そうだ。
「問題ない。その為の貸切だ。奴隷が行くことも公爵様を通して許可を得ているので大丈夫だ」
再度歓声が上がる。
「龍馬君って、こういうの抜かりなくて信頼できるよね……」
「兄様は凄いのです!」
「ん、龍馬は凄い」
ちょっと照れくさいが、褒められると悪い気はしない。
「さぁ、残りの買い物も終わらせるよ。買い忘れても明日また買い出しに出るから大丈夫だけど、なるべく今日中に買い揃えてね」
あちこち商店を回っていろいろな物を買い漁った。
俺はアレクセイとレイラさんたちとで馬を置きに行くため一度街を出た。
門を出たところで、ホーンラビットを咥えたハティがお座りして待っていた……。
ゴメン、屋敷を出た時見かけなかったのでハティの事忘れてた……お腹空いてるのね? マジ御免?
「私服や下着類と執事服やメイド服を人数分購入いたしました」
見たら私服が少ない……使い切るように言ってあったのにどうやら遠慮しているみたいだ。
「セバス、10万ジェニーはきっちり服の購入で使い切るんだ。王都に行ったらまた渡すつもりでいるから遠慮はするな」
「ですが旦那様、勇者としての活動資金が足らなくなっては一大事でございます……余裕ができるまでは極力抑えた方が賢明ではないかと判断致します」
「ああ、そうか……セバスたちを奴隷商から譲り受ける時値切ったから、手持ちがないと思っているのだね? あれは只の交渉術であって、お金を心配する必要はないよ?」
「……サーベルタイガーの売上金を当てにしているのかもしれないですが、勇者様が装備する品となったら、億ぐらいのお金はあっという間に使ってしまいます。ましてパーティー全員分の装備となると何十億も要る事でしょう。奴隷ごときに使っている資金はないはずです」
やはり家宰にするなら、もっとお互いに話し合う必要があるな。
「今さっき公爵様と取引を終えてきて、手持ちは10億ほどある。王都に行ったら国王に耐毒の指輪(効果大)を10億で2つ売る話も付いている。資金で困る事はないのでセバスたちがお金の心配をする必要はないよ。それにセバスに与えた剣は俺が造った物だけど、市場で買える品より遥かに優れている筈だ。防具もそのうち造るつもりなので、メンテ代も含めてそれほど装備品にお金は必要ないと思っている」
「あの武器を旦那様が!? そうでございましたか……余計な心配でした。申し訳ありません」
「いや、むしろ俺たちの事を考えて行動してくれてありがたいくらいだ。でもちゃんと今後の話をまだしていないからね。家宰的な事をやってもらうつもりなので、セバスとマイヤーにはある程度お金の事も含めてうちの内情を教えておこうと思っている。じっくり一度話し合おう」
「「了解いたしました」」
「菜奈、良いの買ったか?」
「う~ん、この世界の生地は素材が良くないのです。特に下着はダメです……」
紐パンやかぼちゃパンツ? ドロワーズって言うのかな? 種類があまり無いようだ。
「下着は俺が作ってあげるよ。生地の素材も良い物もあるんだぞ? 入った店が悪かったのかもな。俺たち異世界人が買い漁ってるらしいから、良いのが残ってなかったのかもしれないね」
不意に誰かが後ろから腰に抱き着いてきた。
「リョウマ様! 似合っていますか?」
「お! チロルはメイド服着てるのか? とっても可愛いぞ」
黒を基調としたシックなクラシックなメイド服だ。
「兄様、全然可愛くないです! チロルにはもっと可愛いのを着せなきゃダメです!」
「ん! これはダメ! 60点!」
うっ……確かに本音を言えば俺的に50点だ。
『……マスター! ナビーにお任せください! もう直ぐ織機も完成形が出来上がりますので!』
うわ~何でテンションこんなに高いの? しかも完成形ってなんだよ!?
『いいけど、俺メイド服にはこだわりあるよ?』
『……勿論承知しています。アキバ系が御所望なのですよね? 勿論チロルには黒を基調としたゴスロリ調に、白フリルをアクセントに使ったミニ丈が宜しいのですよね? セシルにはプラスガーターベルト着用ですよね?』
『お主、分かっておるではないか!』
『……何故悪代官風におっしゃられるのでしょうか……イヤラシイ』
『ウグッ……ナビーに任せるよ』
「チロルのメイド服は俺が作っておくよ」
「兄様が? 裁縫とかした事ありませんよね?」
「そういうスキルを持っているんだ……」
「じゃあ、菜奈の下着も忘れずに作ってくださいね?」
「ん、私のも」
「分かった、菜奈と雅の下着も作っておくよ」
「あれは良い物です! 先生もう一着欲しいな~」
あっ……今、言っちゃまずいよ!
「兄様? もう一着とはどういう事でしょうか? まさか菜奈より先に美弥ちゃん先生に作って差し上げたとかではないですよね?」
「ん、私も貰ってない……」
ほらみろ! 面倒な2人が拗ねはじめたじゃないか。
美弥ちゃんを睨んだら、ごめんねって手を合わせてきた……仕草が可愛かったから許す……。
「実は異世界の糸を使って試作してみたんだよ。カブレたりしないか被験者になってもらったんだ」
「ん? 異世界の糸?」
「蜘蛛と芋虫の糸だよ」
「兄様……虫は嫌です!」
「菜奈……シルクも芋虫なんだぞ? 蚕ぐらい知ってるよな?」
「あ! そうでした……」
「先生は、蜘蛛の糸がお気に入りです。シルク同様滑らかでとても肌触りが良いです」
菜奈の奴……いつもどおりを装っているけど、ソワソワしていて、今晩の事を意識しているのがまるわかりだ。
俺も覚悟を決めたつもりなのだが、どうにも落ち着かない。
幼馴染から兄妹に、兄妹から恋人になろうとしているのだから当然なのかもしれないが……。
そうこうしている間にミーニャたち4班が合流してきた。
「未来たちは、ちゃんとこの世界の服に着替えたんだね? みんな可愛いよ!」
マジで皆、可愛い!
「「「ご主人様、服を買って頂きありがとうございます」」」
「ああ、どういたしまして。王都に行ったらまた10万ジェニーあげるから、可愛い服を着て俺に見せてくれ」
「兄様、エッチな目で見てはいけません!」
「ん、龍馬は少しエッチ」
「龍馬先輩似合っていますか? 変じゃないですか?」
「うん、沙織もとっても可愛いよ」
それ以降は、穂香や美紀や友美の順に同じように答えていく……。
見かねたセバスが助け舟を出してくれた。
「旦那様、家具の購入はどういたしましょう?」
「セバスの執務室に必要な物は全て買っておくといい。追加で1億渡しておくので、セバスに任せる」
「旦那様の執務室の分もわたくしが買い揃えて宜しいのですね?」
「いや、俺の分はまだ必要ない。セバスの買い揃えた品を参考に自主作製しようかと思っている。トレント素材も沢山所持しているので、それで作るつもりだ」
「トレントでございますか? 高級素材ですな……」
「言っておくが、自分の執務室だからとケチるんじゃないぞ? あくまでセバスは勇者様御一行の家宰として恥ずかしくない物を意識して買い揃えるんだ。無駄に贅沢する必要は無いが、くだらない事で二流貴族に舐められたりするのは良い気がしない。それなりに恥ずかしくない物を買い揃えるように」
「承知いたしました……勇者様クランの家宰という大事な職務に、本当にわたくしで宜しいのでしょうか?」
「俺はセバスの事を気に入っている。セバスはその歳でそれだけの体を維持できているんだ。自らを厳しく律する事ができる人じゃなきゃ、その体型を維持できていないだろう。まぁそれだけが理由じゃないけど、俺たちが居ない間の留守を、マイヤーと二人で上手く守ってくれるだろうと期待している」
「お任せください。老体に鞭打ってでも期待にお答えいたします」
「わたくしとて、そこまで言ってくださって期待に応えない訳にはまいりませぬ。残り少ない命ではございますが、夫婦共々精一杯お仕え致します」
この2人、マジ良い買い物をした! こういうのは雰囲気やその時の気分も大事だ!
【魔法創造】
1、【従属契約】
2、・奴隷紋の契約や解除が行える
・【魅了】や【チャーム】などの従属系精神魔法の解除ができる
3、イメージ
4、【魔法創造】発動
「セバス、マイヤー、お前たちを奴隷解放する。俺の信頼に答えてくれ」
【従属契約】魔法を発動し、セバスとマイヤーの首の周りに刺青のように巻き付いている鎖を解除する。
「あなたの首の奴隷紋がなくなっています!」
「マイヤー! お前の鎖も消えている! 旦那様は、従属魔法が使えるのですか!?」
「ああ、これで貴族が訪問してきたとしても、奴隷のくせにとか言って舐められたりはしないだろう」
本来従属魔法は神の認めた者にしか与えられないユニーク魔法なのだが、俺には関係ないようだ。
余程嬉しかったのか人目を気にすることもなく夫婦で抱き合って泣いている……俺に一生仕えると言ってくれたが、奴隷として仕えるのと、従者として仕えるのでは意味合いが違うのだろう。
「みっともない所をお見せしました……ですが旦那様、奴隷解放された私が、この大金を持って逃げるとお考えにならないのですか?」
「セバス、兄様はそれほど甘い人ではないですよ。ちゃんとお考えがあっての事です。逃げる気があるのなら逃げても構いませんが、必ず後悔する事になるでしょう……」
「菜奈様、逃げるなどとんでもございません。奴隷の立場ではできなかった事も解放された事によって可能になります。夫婦共々できうる限りのサポートを致す所存でございます」
他の奴隷たちが、羨ましそうに解放された2人を見ている。悪いが理由もなくそう簡単に解放してあげられない。セバスとマイヤーは、自分で言ってたように、貴族の接客をしないといけない。奴隷だとできない事もあるのだ……なので、勿体ぶって演出しながら解放した。
ナビーに腹黒いとか言われたが、セバスもマイヤーも俺の意図は理解している筈だ。奴隷たちの前で敢えて大仰に解放したのだ……将来は自分たちもという期待が有るのと無いのでは必ず態度が変わってくる。
「そうだ、美弥ちゃん先生。桜たち変態料理部が、この世界の料理が食べたいと言ってきたので、今晩の夕飯は外食にすることにしました。さっき虎の販売契約に行った時に公爵様にお願いしてこの商都で一番の高級店を貸切にしてもらったので、今晩は全員でそこで食べましょう」
「あ、先生もこの世界の料理は興味あります」
「ん、あんまり美味しくなかった……」
「あれ? 雅ちゃんは何時この世界の料理を食べたの?」
「ん……しまった……皆には内緒だった……」
雅は沙織や穂香に捕まって、白状させられていた。
「雅、あの店は基本宿屋だ……今晩食べるところは商都で一番美味しいそうだぞ」
「ん、じゃあ期待しておく」
「予約時間はまだ2時間ほど先だから、それまでは買い物を続けててくれ。美弥ちゃん先生の方でバグナーさんたちに連絡網を回してくれるかな?」
「兄様? バグナーさんたち、宿を引き払っていますよ? 夜になると街は閉門されるのですよね? 宿泊はどうされるのですか?」
「今から馬と馬車は俺がお屋敷に置いてくる。アレクセイとバグナーさんは、ログハウスに泊まってもらうが、他の者はログハウスからお屋敷に転移魔法で帰宅することにする」
「ですが、バグナーさんやレイラさんたちに転移魔法を知られても良いのですか?」
「転移魔法自体既存魔法で有るのだし、問題ないよ。彼らが俺たちを利用しようとするなら今後の関係がなくなるだけだ。別にそれで困る事は特にない」
「ん、流石龍馬。利用しようとするならバッサリ」
「そういうこと。折角凄い魔法を所持しているのに、使わないで不便な思いをする必要はないよね」
「龍馬君、なんて名前のお店に集合させればいいの?」
「『うさうさ亭』って所らしいよ。メイン通りに兎の看板があるからすぐ分かるだろうって言ってた」
「「「キャー! うさ亭だって! やったー!」」」
奴隷たちが騒いでいる……それほど良い店なのかな?
「旦那様、あの店は奴隷の入店は不可の筈です……」
急に奴隷たちがシュンとなった……マジで残念そうだ。
「問題ない。その為の貸切だ。奴隷が行くことも公爵様を通して許可を得ているので大丈夫だ」
再度歓声が上がる。
「龍馬君って、こういうの抜かりなくて信頼できるよね……」
「兄様は凄いのです!」
「ん、龍馬は凄い」
ちょっと照れくさいが、褒められると悪い気はしない。
「さぁ、残りの買い物も終わらせるよ。買い忘れても明日また買い出しに出るから大丈夫だけど、なるべく今日中に買い揃えてね」
あちこち商店を回っていろいろな物を買い漁った。
俺はアレクセイとレイラさんたちとで馬を置きに行くため一度街を出た。
門を出たところで、ホーンラビットを咥えたハティがお座りして待っていた……。
ゴメン、屋敷を出た時見かけなかったのでハティの事忘れてた……お腹空いてるのね? マジ御免?
10
お気に入りに追加
8,870
あなたにおすすめの小説
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ユウ
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
神様との賭けに勝ったので異世界で無双したいと思います。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。
突然足元に魔法陣が現れる。
そして、気付けば神様が異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
もっとスキルが欲しいと欲をかいた悠斗は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―――
※チートな主人公が異世界無双する話です。小説家になろう、ノベルバの方にも投稿しています。
異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました
ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが……
なろう、カクヨムでも投稿しています。
~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。
破滅の女神
ファンタジー
18歳の誕生日…先月死んだ、おじぃちゃんから1冊の本が届いた。
小さい頃の思い出で1ページ目に『この本は異世界冒険記、あなたの物語です。』と書かれてるだけで後は真っ白だった本だと思い出す。
本の表紙にはドラゴンが描かれており、指輪が付属されていた。
お遊び気分で指輪をはめて本を開くと、そこには2ページ目に短い文章が書き加えられていた。
その文章とは『さぁ、あなたの物語の始まりです。』と…。
次の瞬間、僕は気を失い、異世界冒険の旅が始まったのだった…。
本作品は『カクヨム』で掲載している物を『アルファポリス』用に少しだけ修正した物となります。
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜
自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成!
理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」
これが翔の望んだ力だった。
スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!?
ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる