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商都フォレスト編
3-15 食品街?耐毒の指輪(効果大)?
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既に桜たちはかなりの食材を確保していた。
「何か面白い食材はあったか?」
この質問に食いついてきたのは言うまでもない。
「ええ! 日本じゃ見たこともない変わったモノが一杯あったわよ!」
桜と茜が【インベントリ】から買ったものを競って取り出す。紫色したヤバげな果物とか、赤黒い虫の足っぽいのとか……毒が有りそうで怖い。
「茜……それ毒とか有りそうなのだが……」
「鑑定魔法では毒もないし、試食もさせてもらってるから大丈夫よ」
「よくそんな禍々しい色したモノを試食する気になったな……」
「龍馬先輩、私のお薦めはこれです。一口食べてみてください」
綾ちゃんが一口サイズのピンポン玉ぐらいの白いモノを差し出してきた。
「綾ちゃん、これなんだい?」
「ピッグバードという魔獣の茹で卵です」
ピッグってまさか豚の事かな? 豚鳥? 豚は卵なんか産まないよね? さっぱり分からん―――
取り敢えず食べてみたのだが……旨い!
「なにこれ美味しい! ゆで卵だね? 中はちょい半熟で、噛むとトロッとした黄身が出てくるんだね。濃厚でまったりしてて美味しいね」
「でしょ、お肉自体も凄く美味しいそうなので、一杯仕入れました」
なんでもお肉の味は鳥8:豚2って感じの食感らしい。生卵も美味しいらしくて、色々使い道がありそうだと料理部員が話しあっていた。
「そういえば綾ちゃんって料理部現部長だったね。やっぱ桜や茜たちに毒されていたんだね……」
「なに残念そうな目で私を見てるんですか。私は桜先輩や茜先輩ほど変じゃないですよ」
みどりや優たちがあははっと冷やかに笑っているから、綾ちゃんはもう手遅れなのだろう。
「皆、服はもう買ったの?」
まだらしい―――
「私たちは別に着る物がないわけじゃないからね。正直この世界の防寒着って、私が今着てるダウンコートと比べたら……」
全員が温かそうな羽毛系のモノを着ていた。
ダウンコート温かいよね―――
「言ってる事は分かるんだけどね……でも、日本の服は目立つんだよ。美人揃いでいい加減目立ってるのに、恰好で異世界人って判断できると余計に勧誘とかくるでしょ? できるだけ周囲に溶け込むようにするために現地の服にするんだよ」
「確かにさっきみたいに大勢に絡まれるのはもう嫌だわ……そか、この格好で判断されていたのもあるんだね」
「街を出た移動時にはこの格好でも良いけど、せめて街中では目立たない格好にしようよ」
「そうね、解ったわ。もう少し物色したら服屋さんに行ってみるわね」
「うん。でも俺たち異世界人のせいで品薄になってるそうだから、あまり良い物はないかもね」
全寮制だったために、一般の者よりおそらく持ち物は少ない……限られた収納スペースに上手く押し込まないといけないために、皆できるだけ私物は減らしているのだ。
金銭的に余裕のある桜なんか、邪魔にならないように、服はシーズン毎に買い替えるそうだ。
優や綾は桜の服の買い替え時のお下がり品をちゃっかり狙って貰っていたらしい。
桜のお古の服とか……学園でバザーに出したら、男子が高額で買いそうだなと思ってしまった俺の心は病んでいるのか?
「服は後で見に行くわ。一応報告しておくけど、味噌や醤油は探してみたけど今のところ無かったわ。小豆や大豆はあるから作ろうと思えば可能だけど、今有る分が無くなったら、残念だけど味が落ちると思っておいてね」
原材料があるなら、ナビー工房に任せておけばメーカーごとの味まで忠実に再現してくれる。
「米は有ったか? それが一番気になる……」
「ええ、何種類か買ってあるけど、食べてみないと味は分からないわ」
見せてもらったのだが、細長いものややたら丸いものまである。
・ジャポニカ米
・インディカ米
・ジャバニカ米
・古代米
地球で食べられているのは大別すればこの4種類だ。日本はこのうちのジャポニカ米に属し、世界的にも一番旨いと言われている。
「見た感じ古代米が多いのかな?」
「そうね、さっき聞いた話だと……古代米っぽいやつは湿地帯に毎年勝手に自生しているのだそうよ。それを秋に冒険者が刈り取ってくるだけみたい。ジャポニカ米みたいなモノは、品種改良で栽培したモノらしくて、少し値が張るわ」
「多少値が張っても美味しいモノが良いよな……いろいろ食べ比べて、俺たちの口に合うモノを探さないとだな」
「ええ、それと思ってた通り、牛乳や砂糖が高額だしあまり品数も無いわね。砂糖は黒糖っぽいのがあったから取り敢えずあるだけ買っておいたけど、どうしてもえぐみがあるのよね……牛乳は今日の分は完売したらしいから明日朝一でまた買いに来るよう予約してあるわ。一応ヤギと羊のミルクも頼んであるけど、牛と比べると癖があるわよね」
「予約購入か……チーズとかにも使えるから、沢山買っても損はないので任せるよ」
「ええ、私たちの場合腐らないしね。幾らあっても困る事はないわ。龍馬君に頼まれていたカレーの材料だけど、何種類かまだ見つかってないのよね……」
「何がないんだ?」
「ありそうなのにコリアンダーとクミン、ウコンが見当たらないのよ……」
「ああ、それ全部薬師ギルドにあるよ。薬の材料として売られてるみたいだね」
「食材じゃなくて、そっちだったの? 食品街で見つからない筈だわ」
「なんでもクミンは健胃薬や駆風薬、利尿剤に、ウコンは肝機能の増進や二日酔いとかに、コリアンダーは炎症を緩和、体内の毒素を排泄とか気分を落ち着かせるような効能があるそうだよ」
「ふ~ん、そのへんは地球と同じなのね」
「え? そうなの? ウコン以外は香草としてしか知らないや」
「大抵の食材は何らかの副次効果があるわよ。ほら、トマトが良く癌に効くとか言われてるでしょ?」
「リコピンがどうとかテレビでやってたな……生姜とか良く風邪の予防やリュウマチに良いとか言われてるしね」
「薬師ギルドの方も後で行ってみるわね」
「食材に関しては料理部に任せるよ……コリアンダーとか言われても、現物見たことないし、ウコンですら黄色い粉ってぐらいしか知識がない。元の状態がどんなモノかも知らない程度の知識じゃ役に立てないからね」
「あはは、普通はそうよね。私だって全部知ってるわけじゃないわ。一応現物の写真はいろいろ集めてあるけどね」
俺たちが普段目にしている物は、食べられる部分だけに加工されたモノしか知らないのだ。自生している根野菜なんか、7割は土の中にあるため花や葉っぱで判断するしかない。にんにくのようにスーパーで白い外皮に包まれた塊の状態のモノしか知らなければ、自生しているのを見つけたとしてもそう簡単に判別できないだろう。
1時間ほど桜たちと買い食いをしながら食品街を楽しんだ。フィリアと美咲を桜たちに預け、俺は単独で公爵の館に向かった。バグナーさんが上手く交渉をしてくれたのだが、ナビーの予想額よりかなり多い金額が提示されたので、俺も向かうことにしたのだ。
『……マスターがあまり手を借りたくないと言ったので、せめて資金面で困らないように不審がられない程度に上乗せしているのですね。この件は王兄と話し合って決めたようで、マスターに話す気はないようです』
『こっそりこの国から支援されるって事か……なんだかんだで既に面倒掛けてるな』
『……国を守ってもらいたいという打算的ではありますが、悪意はないので素直に頂けば良いのではないでしょうか? サーベルタイガーの毛皮が欲しいというのも事実なのですし、多目に受け取って困る人は誰も居ません』
公爵の館に向かうと、執事がすぐに商談中の部屋に案内してくれた。
「マリウス公爵、相場より高く買ってくれて感謝します」
「なんだ……バグナーに相場を聞いていたのか……」
「いえ、商業ギルドに寄った時に大体の販売予想価格を聞いていたのです。なので、あなたが俺たちの活動資金にと上乗せしてくれたのだろうと判断しました」
適正価格では1億5千万から2億までの範囲になるそうだが、公爵は3億も用意してくれたのだ。
「あはは、ばれているなら隠すこともないな。これからレベル上げをするにしても、武器や防具、回復剤など、いろいろ要りようが沢山あるだろう? 国に貸しを作りたくないというのは理解できるが、資金不足で効率が悪く、やっと邪神に対抗できるレベルになった頃には既に手遅れだったとか……国として万が一があっては困るのだよ」
「おっしゃるとおりですね……でも、やはり貸しは作りたくないので、虎にこれをお付けします」
【インベントリ】から、奴隷商でも使った耐毒の指輪を取り出した。
「これは?」
「耐毒効果(大)が付与されたミスリルリングです。公爵家ならこういった物は喉から手が出るくらい欲しい物だと聞きました」
「効果(大)だと!? それは本当か? レジェンド級の品じゃないか!」
ミスったかな……屋敷が大騒動になった。
鑑識はバグナーもできるのに、屋敷に居る鑑識ができる者を態々呼んで調べていた。
「これがあれば毒による暗殺がなくなる……リョウマ君、言い値で買い取るが、これを幾らで譲ってくれるのかね?」
効果(中)が5千万以上って事だったし、1億ぐらいかな?
『……マスター、耐毒の指輪は元より人気が高く効果(大)にもなれば10億以上です。効果(小)の物なら付与魔法で作製できますが、(中)以上の品はダンジョンドロップでしか出ません。効果(大)にもなると、最下層の毒持ちダンジョンボスクラスでもないとドロップしない超レア品です。ドロップ率も低いため数十年に一度出るか出ないかの物になっています』
「即金で頂けるのなら、虎込みで10億ジェニーで良いですよ」
「リョウマ君、それは安過ぎです! これほど貴重な品なら、オークションに掛ければもっと高く売れます!」
バグナーさんがすぐに止めてきたが、別にそれほど高く売る気はない。今すぐ使える資金が少しあれば、以降はどうにでもできると思っているからだ。
「バグナーさん、正直にいいますと、この品はあと数個持っているのです」
「ですが、それは勇者様が旅をするために必要な物ではないのですか? いくら資金を作るためとはいえ、売って良い物なのですか?」
「勇者パーティーに元から耐毒の指輪は要りません。だってパッシブに耐毒効果(大)を全員持っていますからね。既に所持している効果なので、持ってる意味ないでしょ?」
「エッ? 全員が効果(大)のパッシブ効果持ちなのですか?」
公爵も驚いていたが、それを聞いた公爵が更なる交渉をしてきた。
「リョウマ君! 必要のない物なら、持ってる分全て売ってくれないだろうか! 兄者にも是非買って差し上げたいのだ!」
聞けば公爵も国王も何度か毒による暗殺に遭ったそうだ。今も耐毒のネックレス(中)を身に着けているのだと見せてくれた。
「国王である兄は効果(大)の物を身に着けているが、とても大きな金製の腕輪なのだ……食事時に一番必要なのに、手首に2kgもあるそれを付けたら重くて難儀なんだそうだ……それが不憫でな」
2kg……鉄アレイを持って食事しているようなものだ……確かに不憫だ。
「この指輪は指じゃなくても、身に着けてさえいれば効果があるのに、その腕輪は手首に付けないと効果がないのですか?」
「装備品なのだから、装備しないと効果が出ないのは当然ではないか?」
俺の指輪がネックレス状態にして首に下げても効果があると知って驚いていた。超レア品をバラ撒くようなことはしないつもりだが、王族にとっては切実な事らしいので譲ってあげることにした。王族ならとっくに持っていそうなのに、なぜ保有数が少ないのか? ドロップしても売る冒険者があまりいないのでオークションにも出回らないらしい。冒険者は直結で命に係わるのだ……最下層に行けるほどの冒険者はそれほど金に困ってはいない。売るより自分が身に着けて、我が身を優先するのは当然だよね。
そういう理由で、たまにオークションに出回る品は、上級冒険者が引退した時や、死亡したが家族に冒険者が居なく宝の持ち腐れになるからと、家族が売りに出した時ぐらいしか出回らないそうだ。
結局1個10億ジェニーで公爵に1個、王都に行ってから国王に2個売ってあげる話がつき、領主館を出た。バグナーさんに屋敷を出たその場で報酬を1割渡そうとしたら辞退された。
公爵の手空きを待ったために、実質待ち時間の方が長く、交渉を始めたのは俺に連絡してきた1時間前らしい。結局俺も出張ったし、2時間ほどの交渉で数千万ジェニーも受け取れないという事だ。バグナーさんには今後もいろいろやってもらうつもりなので、500万ジェニーは受け取らせた。
美弥ちゃん先生と菜奈だけ、友人から別にしたので退屈してるだろうと思い、俺はセバスたちの班に合流した。
「何か面白い食材はあったか?」
この質問に食いついてきたのは言うまでもない。
「ええ! 日本じゃ見たこともない変わったモノが一杯あったわよ!」
桜と茜が【インベントリ】から買ったものを競って取り出す。紫色したヤバげな果物とか、赤黒い虫の足っぽいのとか……毒が有りそうで怖い。
「茜……それ毒とか有りそうなのだが……」
「鑑定魔法では毒もないし、試食もさせてもらってるから大丈夫よ」
「よくそんな禍々しい色したモノを試食する気になったな……」
「龍馬先輩、私のお薦めはこれです。一口食べてみてください」
綾ちゃんが一口サイズのピンポン玉ぐらいの白いモノを差し出してきた。
「綾ちゃん、これなんだい?」
「ピッグバードという魔獣の茹で卵です」
ピッグってまさか豚の事かな? 豚鳥? 豚は卵なんか産まないよね? さっぱり分からん―――
取り敢えず食べてみたのだが……旨い!
「なにこれ美味しい! ゆで卵だね? 中はちょい半熟で、噛むとトロッとした黄身が出てくるんだね。濃厚でまったりしてて美味しいね」
「でしょ、お肉自体も凄く美味しいそうなので、一杯仕入れました」
なんでもお肉の味は鳥8:豚2って感じの食感らしい。生卵も美味しいらしくて、色々使い道がありそうだと料理部員が話しあっていた。
「そういえば綾ちゃんって料理部現部長だったね。やっぱ桜や茜たちに毒されていたんだね……」
「なに残念そうな目で私を見てるんですか。私は桜先輩や茜先輩ほど変じゃないですよ」
みどりや優たちがあははっと冷やかに笑っているから、綾ちゃんはもう手遅れなのだろう。
「皆、服はもう買ったの?」
まだらしい―――
「私たちは別に着る物がないわけじゃないからね。正直この世界の防寒着って、私が今着てるダウンコートと比べたら……」
全員が温かそうな羽毛系のモノを着ていた。
ダウンコート温かいよね―――
「言ってる事は分かるんだけどね……でも、日本の服は目立つんだよ。美人揃いでいい加減目立ってるのに、恰好で異世界人って判断できると余計に勧誘とかくるでしょ? できるだけ周囲に溶け込むようにするために現地の服にするんだよ」
「確かにさっきみたいに大勢に絡まれるのはもう嫌だわ……そか、この格好で判断されていたのもあるんだね」
「街を出た移動時にはこの格好でも良いけど、せめて街中では目立たない格好にしようよ」
「そうね、解ったわ。もう少し物色したら服屋さんに行ってみるわね」
「うん。でも俺たち異世界人のせいで品薄になってるそうだから、あまり良い物はないかもね」
全寮制だったために、一般の者よりおそらく持ち物は少ない……限られた収納スペースに上手く押し込まないといけないために、皆できるだけ私物は減らしているのだ。
金銭的に余裕のある桜なんか、邪魔にならないように、服はシーズン毎に買い替えるそうだ。
優や綾は桜の服の買い替え時のお下がり品をちゃっかり狙って貰っていたらしい。
桜のお古の服とか……学園でバザーに出したら、男子が高額で買いそうだなと思ってしまった俺の心は病んでいるのか?
「服は後で見に行くわ。一応報告しておくけど、味噌や醤油は探してみたけど今のところ無かったわ。小豆や大豆はあるから作ろうと思えば可能だけど、今有る分が無くなったら、残念だけど味が落ちると思っておいてね」
原材料があるなら、ナビー工房に任せておけばメーカーごとの味まで忠実に再現してくれる。
「米は有ったか? それが一番気になる……」
「ええ、何種類か買ってあるけど、食べてみないと味は分からないわ」
見せてもらったのだが、細長いものややたら丸いものまである。
・ジャポニカ米
・インディカ米
・ジャバニカ米
・古代米
地球で食べられているのは大別すればこの4種類だ。日本はこのうちのジャポニカ米に属し、世界的にも一番旨いと言われている。
「見た感じ古代米が多いのかな?」
「そうね、さっき聞いた話だと……古代米っぽいやつは湿地帯に毎年勝手に自生しているのだそうよ。それを秋に冒険者が刈り取ってくるだけみたい。ジャポニカ米みたいなモノは、品種改良で栽培したモノらしくて、少し値が張るわ」
「多少値が張っても美味しいモノが良いよな……いろいろ食べ比べて、俺たちの口に合うモノを探さないとだな」
「ええ、それと思ってた通り、牛乳や砂糖が高額だしあまり品数も無いわね。砂糖は黒糖っぽいのがあったから取り敢えずあるだけ買っておいたけど、どうしてもえぐみがあるのよね……牛乳は今日の分は完売したらしいから明日朝一でまた買いに来るよう予約してあるわ。一応ヤギと羊のミルクも頼んであるけど、牛と比べると癖があるわよね」
「予約購入か……チーズとかにも使えるから、沢山買っても損はないので任せるよ」
「ええ、私たちの場合腐らないしね。幾らあっても困る事はないわ。龍馬君に頼まれていたカレーの材料だけど、何種類かまだ見つかってないのよね……」
「何がないんだ?」
「ありそうなのにコリアンダーとクミン、ウコンが見当たらないのよ……」
「ああ、それ全部薬師ギルドにあるよ。薬の材料として売られてるみたいだね」
「食材じゃなくて、そっちだったの? 食品街で見つからない筈だわ」
「なんでもクミンは健胃薬や駆風薬、利尿剤に、ウコンは肝機能の増進や二日酔いとかに、コリアンダーは炎症を緩和、体内の毒素を排泄とか気分を落ち着かせるような効能があるそうだよ」
「ふ~ん、そのへんは地球と同じなのね」
「え? そうなの? ウコン以外は香草としてしか知らないや」
「大抵の食材は何らかの副次効果があるわよ。ほら、トマトが良く癌に効くとか言われてるでしょ?」
「リコピンがどうとかテレビでやってたな……生姜とか良く風邪の予防やリュウマチに良いとか言われてるしね」
「薬師ギルドの方も後で行ってみるわね」
「食材に関しては料理部に任せるよ……コリアンダーとか言われても、現物見たことないし、ウコンですら黄色い粉ってぐらいしか知識がない。元の状態がどんなモノかも知らない程度の知識じゃ役に立てないからね」
「あはは、普通はそうよね。私だって全部知ってるわけじゃないわ。一応現物の写真はいろいろ集めてあるけどね」
俺たちが普段目にしている物は、食べられる部分だけに加工されたモノしか知らないのだ。自生している根野菜なんか、7割は土の中にあるため花や葉っぱで判断するしかない。にんにくのようにスーパーで白い外皮に包まれた塊の状態のモノしか知らなければ、自生しているのを見つけたとしてもそう簡単に判別できないだろう。
1時間ほど桜たちと買い食いをしながら食品街を楽しんだ。フィリアと美咲を桜たちに預け、俺は単独で公爵の館に向かった。バグナーさんが上手く交渉をしてくれたのだが、ナビーの予想額よりかなり多い金額が提示されたので、俺も向かうことにしたのだ。
『……マスターがあまり手を借りたくないと言ったので、せめて資金面で困らないように不審がられない程度に上乗せしているのですね。この件は王兄と話し合って決めたようで、マスターに話す気はないようです』
『こっそりこの国から支援されるって事か……なんだかんだで既に面倒掛けてるな』
『……国を守ってもらいたいという打算的ではありますが、悪意はないので素直に頂けば良いのではないでしょうか? サーベルタイガーの毛皮が欲しいというのも事実なのですし、多目に受け取って困る人は誰も居ません』
公爵の館に向かうと、執事がすぐに商談中の部屋に案内してくれた。
「マリウス公爵、相場より高く買ってくれて感謝します」
「なんだ……バグナーに相場を聞いていたのか……」
「いえ、商業ギルドに寄った時に大体の販売予想価格を聞いていたのです。なので、あなたが俺たちの活動資金にと上乗せしてくれたのだろうと判断しました」
適正価格では1億5千万から2億までの範囲になるそうだが、公爵は3億も用意してくれたのだ。
「あはは、ばれているなら隠すこともないな。これからレベル上げをするにしても、武器や防具、回復剤など、いろいろ要りようが沢山あるだろう? 国に貸しを作りたくないというのは理解できるが、資金不足で効率が悪く、やっと邪神に対抗できるレベルになった頃には既に手遅れだったとか……国として万が一があっては困るのだよ」
「おっしゃるとおりですね……でも、やはり貸しは作りたくないので、虎にこれをお付けします」
【インベントリ】から、奴隷商でも使った耐毒の指輪を取り出した。
「これは?」
「耐毒効果(大)が付与されたミスリルリングです。公爵家ならこういった物は喉から手が出るくらい欲しい物だと聞きました」
「効果(大)だと!? それは本当か? レジェンド級の品じゃないか!」
ミスったかな……屋敷が大騒動になった。
鑑識はバグナーもできるのに、屋敷に居る鑑識ができる者を態々呼んで調べていた。
「これがあれば毒による暗殺がなくなる……リョウマ君、言い値で買い取るが、これを幾らで譲ってくれるのかね?」
効果(中)が5千万以上って事だったし、1億ぐらいかな?
『……マスター、耐毒の指輪は元より人気が高く効果(大)にもなれば10億以上です。効果(小)の物なら付与魔法で作製できますが、(中)以上の品はダンジョンドロップでしか出ません。効果(大)にもなると、最下層の毒持ちダンジョンボスクラスでもないとドロップしない超レア品です。ドロップ率も低いため数十年に一度出るか出ないかの物になっています』
「即金で頂けるのなら、虎込みで10億ジェニーで良いですよ」
「リョウマ君、それは安過ぎです! これほど貴重な品なら、オークションに掛ければもっと高く売れます!」
バグナーさんがすぐに止めてきたが、別にそれほど高く売る気はない。今すぐ使える資金が少しあれば、以降はどうにでもできると思っているからだ。
「バグナーさん、正直にいいますと、この品はあと数個持っているのです」
「ですが、それは勇者様が旅をするために必要な物ではないのですか? いくら資金を作るためとはいえ、売って良い物なのですか?」
「勇者パーティーに元から耐毒の指輪は要りません。だってパッシブに耐毒効果(大)を全員持っていますからね。既に所持している効果なので、持ってる意味ないでしょ?」
「エッ? 全員が効果(大)のパッシブ効果持ちなのですか?」
公爵も驚いていたが、それを聞いた公爵が更なる交渉をしてきた。
「リョウマ君! 必要のない物なら、持ってる分全て売ってくれないだろうか! 兄者にも是非買って差し上げたいのだ!」
聞けば公爵も国王も何度か毒による暗殺に遭ったそうだ。今も耐毒のネックレス(中)を身に着けているのだと見せてくれた。
「国王である兄は効果(大)の物を身に着けているが、とても大きな金製の腕輪なのだ……食事時に一番必要なのに、手首に2kgもあるそれを付けたら重くて難儀なんだそうだ……それが不憫でな」
2kg……鉄アレイを持って食事しているようなものだ……確かに不憫だ。
「この指輪は指じゃなくても、身に着けてさえいれば効果があるのに、その腕輪は手首に付けないと効果がないのですか?」
「装備品なのだから、装備しないと効果が出ないのは当然ではないか?」
俺の指輪がネックレス状態にして首に下げても効果があると知って驚いていた。超レア品をバラ撒くようなことはしないつもりだが、王族にとっては切実な事らしいので譲ってあげることにした。王族ならとっくに持っていそうなのに、なぜ保有数が少ないのか? ドロップしても売る冒険者があまりいないのでオークションにも出回らないらしい。冒険者は直結で命に係わるのだ……最下層に行けるほどの冒険者はそれほど金に困ってはいない。売るより自分が身に着けて、我が身を優先するのは当然だよね。
そういう理由で、たまにオークションに出回る品は、上級冒険者が引退した時や、死亡したが家族に冒険者が居なく宝の持ち腐れになるからと、家族が売りに出した時ぐらいしか出回らないそうだ。
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公爵の手空きを待ったために、実質待ち時間の方が長く、交渉を始めたのは俺に連絡してきた1時間前らしい。結局俺も出張ったし、2時間ほどの交渉で数千万ジェニーも受け取れないという事だ。バグナーさんには今後もいろいろやってもらうつもりなので、500万ジェニーは受け取らせた。
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大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。
が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。
それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。
漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。
生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。
タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。
*カクヨム先行公開
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