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商都フォレスト編

3-12 希望職?武器配布?

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 昼食も終え、これから各自買い物に行ってもらうのだが、その前に確認する事がある。

「さっきも言ったが、今はD班の仕事はあまりない。掃除、洗濯、食器洗いなどの家事全般は魔道具で行うからなのだけど、それでは君たちは食客になってしまう」

「奴隷なのにそれでは本末転倒ですな……」
「うん、セバスのいう通りだ」

「龍馬君……人材的に必要ないのだったら全員解放してあげたら? さっきここに来るまででも、体力的に不安な人もいたよね? 足手纏いになるぐらいなら解放して自由にしてあげたらいいんじゃない?」

「桜の言い分も理解できるけど、俺的にそれは納得できないんだ……」
「どうして?」

「兄様は弁護士の恭子さんから受けた教えの影響が強いのです。彼女の教えの中に『人を使うにはそれ相応の対価が要る』というものがあります。それと同時に『対価を得たならそれ相応に返さないといけない』という事も言っていました。かくいう恭子さんもそれを実践して、兄様に結構な額の保険金を最大限に入るようにしてくれた分の対価はきっちり徴収していました」

「え~と? 結局どういうこと?」

「彼女たちは既に対価を得ているんだよ……だから受けた分の対価を支払わないといけない。色々あったようだけど、最終的に俺にその権利が回ってきたって事だ。アルヴィナやルフィーナは被害者なので、解放してあげても良いけど……それも厳密にいえば正しくない。本来誘拐されて売られてしまった時点で彼女たちは終身奴隷なんだよ。誰かが対価を払わない限りその身が解放される事はない。被害者づらする前に、何故そういう状況に今陥っているか考えないといけない」

「う~~ん、言ってる事は理解できたけど……ちょっと可哀想じゃない? 結局働いて返すまで解放しないって事でしょ?」

「ちょっといい?」

 ここで話を聞いてたレイラさんが話しかけてきた。

「レイラさん? どうしました?」
「うん。ちょっとそこの綺麗な御嬢さんの話を聞いててイラッときたから……」

「エッ!? 私? 龍馬君の方じゃなくて?……」

「どうしてリョウマ君なのよ……そこの奴隷たちは盗賊から彼に助けられたの。当然権利は助けた彼に移るわ。ミタムラとかいう大きな人たちにも権利はあるのだけど、その辺はパーティ内の事だからどう配分するかはあなたたちが決める事よ。でも、莫大な価値のあるこの奴隷たちを無償で解放とか……あなたおかしいわ。あの人数の盗賊相手に立ち回って、命懸けで得た権利なのよ? 人材として要らないなら、その対価に換えるのが常識よ。正直可哀想だから引き取るとか、とんだ甘ちゃんだとリョウマ君の事を思っていたけど……それ以上の人がいるなんて思ってもいなかったわ。冒険者を舐めないで……無償で命を懸けるとか絶対やっちゃダメな事よ」

「でも……」
「桜、この世界では甘さはあまりない……だからと言ってそれに倣う事もないけどね。なので、俺ルールでやらせてもらう。元からベルは1年、リリーは5年だったね? 2人はその後どうするつもりだった?」

「私は1年後に別の町で何か仕事を探そうと思っていました。お父さんが村には帰ってくるなって……」
「私もそうです……村長には帰ってこなくていいよって……」

「性奴隷として売っておいて、もう帰ってくるなとか酷いな……」

「あ! 違うのです! 村長やベルのお父様も私たちの事を心配して村に帰るなと言ってくれたのです」
「ん? ああ、そういうことか。性奴隷として売られた娘が帰ってきても、村の者の目は冷たいって事かな?」

「「はい……」」

「以前、村に帰ってきた女の人は、村の男からいつも性的な暴言を受けて結局村を出て行きました」

「『何人もとやったんだろ? ちょっとぐらい触ってもいいだろ?』とか『幾らで抱かせてくれるんだ?』とかいろいろ酷い事を言われていたそうです。女性たちからも軽蔑視され、そういう目で見られているので結婚もできず、結局居心地が悪く村から出るしかないようです」

「成程ね……一応ベルは1年、リリーは最長で5年、それ以外は俺たちが邪神を倒すまでは居てもらうけど、その後は解放してあげるつもりでいる。邪神討伐が終えるまでは、うちの情報が漏れると困るので居てもらうけどね」

「ご主人様……私、1年経った後もここに居たいです!」
「あ! ベル自分だけズルい! ご主人様、私もここで働きたいです!」

「それって……ひょっとしてご飯目当て?」
「「……はい。だってお腹いっぱい食べれるし……お風呂も毎日入れるし……お布団もスッゴクふわふわ……」」

「それに髪と尻尾が凄くツヤツヤでサラサラなのです!」

 他の者たちもウンウンと首を縦に振っている。この世界の女子もやっぱ髪とか拘るんだな。

「うちのは回復剤が入ってるオリジナルなんだよ……だから凄くサラサラでツヤツヤになるんだ」

「「「リョウマ君! あの……その……ずうずうしいのは承知で言うけど、私たちもお風呂に―――」」」

 うちの女子を見回した後、レイラさんたちがお風呂に入りたいとお願いしてきた。

「桜、茜、食事の人数が多少増えても良いか?」
「「ええ、問題ないわ」」

「じゃあ、この際ここに拠点を移すか……バグナーさんもレイラさんたちも今日明日はここで泊って良いです。アレクセイも1階で泊まるといい。D班用の部屋が足らなければ、3階の一般居室を使うといい」

「「「リョウマ君、ありがとう!」」」
「「了解しました」」

「話が逸れたけど、俺が聞きたかったのはD班の仕事についてだ。セバスとマイヤーは決まっているけど、他はまだ決まっていない……なにかやりたいことはあるか?」

「旦那様……あまりにも抽象的すぎて、それでは彼女たちもどうしていいか分からないでしょう……」

「う~ん……さっきも言ったけど屋敷内の仕事はあまりないんだよ。なので、うちの居残りメンバーの手伝いをしてもらおうかと思っている。具体的にはスイーツショップや飲食店のホール担当や、食材などの調達員として冒険者なんかをやってもらいたい。アレクセイは冒険者を希望した者の指導育成と護衛かな。屋敷周りの警護や御者的な事もやってもらう。裏庭で家庭菜園もしたいから、ベルとリリーは畑仕事もお願いしたいかな」

「「畑仕事ならお任せください。でも、冒険者もイイかも……」」

「ご主人様! 私は冒険者を希望します! あまり、家事は得意じゃないです……」
「ミーニャは元々冒険者一家だったしね。うん、じゃあ冒険者で良いよ。初心者の指導をしてくれるかな」



 他の者にもとりあえずで決めてもらった。

 ・セバス    執事長
 ・マイヤー   侍女長(兼務でマナー教師)
 ・クレア    侍女(雑用係兼貴族用のマナー教師)
 ・チロル    侍女(クレアの手伝い)
 ・アレクセイ  御者、警護、冒険者指導
 ・セシル    ホールスタッフ、調理見習い
 ・エリス    ホールスタッフ、調理見習い
 ・リリー    庭師、家庭菜園担当、冒険者見習い
 ・ベル     庭師、家庭菜園担当、冒険者見習い
 ・ミーニャ   冒険者
 ・アルヴィナ  冒険者
 ・ルフィーナ  冒険者


「とりあえず仮だけど、王都に着いたらそんな感じで動いてもらう。でも、全員接客ができるようにマイヤーから指導は受けてもらうよ」

「旦那様、貴族が宿泊した際に、彼女たちはお手付きになる可能性があります……その場合どういたせばよろしいでしょう?」

 知らなかったが、上位貴族の侍女はどこかのご令嬢が礼儀作法の見習いにきている場合が多く、貴族が宿泊した際に手出しは禁止という暗黙のルールがあるようだ。

 侍女に手出ししないかわりに、奴隷や下女はお好きにどうぞという意味合いがあって、うちの可愛すぎる娘たちは貴族を泊めるとお手付きにされる可能性が高いらしい。

「そんなルールがあるんだ……じゃあ、うちに貴族を泊めることはなしかな」
「ですが、勇者という立場を考えますとそうもいかないかと……邪神討伐を見事達成した際には、各国がこぞって爵位を授与してくると考えます……」

「うわ、面倒そう……要は爵位を与えて国に縛ろうとするんだね?」
「奥様のおっしゃるとおりです」

「ん、人に指図されるのは嫌……龍馬が国を創ればいい」
「え~、嫌だよ……建国はちょっと面倒だ」

「兄様、内政チートも『もしもフォルダ』に入ってますよね?」
「あ、やるなら私も少し内政チートできるように情報は集めてるよ。上下水や区画整理の方法なんかもあるし、やるなら協力するよ?」

「「「桜先輩、流石です!」」」
「ん、この街臭いから嫌……」

 確かに雅のいう通り、街全体がアンモニア臭で吐き気がしそうだ。下手に【身体強化】や【嗅覚強化】がある分、俺たちにはきつい。貴族街はかなりマシだが、一般居住区はかなり臭う……ハティなんか匂いが強烈過ぎて耳と尻尾が項垂れているほどだ。

「バグナーさん、王都も同じように臭いますか?」
「ええ、そうですね……王都の方が建国してから古い分、下水処理が上手くいってないので匂いはきついです。貴族街はこの街より遥かに清潔ですが、スラムの方は酷いものです」


 便処理が悪いと、高確率で赤痢やコレラなどの感染症や食中毒が蔓延する。井戸を利用するから、どうしてもネズミやGを介して飲み水に菌が入ってしまうからだ。

「内政チートの話は保留にしよう。どちらにしろ邪神討伐が先だ。レベル上げも急務だし、建国するにしてもお金が要る」

「そうね……邪神討伐後にまた話し合いましょ」
「龍馬君、私はどうすればいいの?」

 そういえば、柴崎先輩と大影先輩の希望はまだ聞いてなかった。

「お2人はどうしたいです?」

「私はA班希望で、あなたに付いていきたいかな」
「私も付いていきたい気はあるけど……差があり過ぎるから迷惑よね?」

 柴崎先輩はA班希望で、大影先輩は冒険者希望か……。

「友美は暫くB班で様子見かな。美紀は待機組で暫く冒険者としてレベル上げをしてもらうね。友美の身体能力はおそらく美咲の次ぐらいに高スペックだろうし、美紀もバレー部のキャプテンを任されるほどのスペックがあるんだろうから、レベル上げには極力参加してもらうね」

「「ええ、その時はお願い」」

「大体の目途はついたから、これから必要なものを何グループかに分かれて買いに行くね。セバスにはこの剣を帯剣しててもらう。アレクセイは冒険者装備一式を渡すから、そこの部屋で着替えてきて」

「これ高純度のミスリルソードじゃないか!」
「この犬! また殴られたいの?」

 アレクセイは敬語を忘れてレイラさんにまた怒られている。セバスの注意よりレイラさんの方が早かったな……。

『……セバスはマスターの刀に魅入ってて、それどころじゃないようですよ』

「まさか……これは、ブラックメタル製? なんて美しい……」

 ミスリルソードで喜んでいたアレクセイだが、セバスの刀を見てそっちを欲しそうにしている。
 セバスの刀の個人認証登録を済ませておく。

 レイラさんや柴崎先輩、獣人の娘たちからも欲しそうな視線を感じるが、分相応でないので却下だ。

「アレクセイじゃ、あれはまだ持つのに相応しくないな」
「うっ……精進します」

「ミーニャたちは一度戦闘を見てから正規の武器を渡すことにするよ。希望の武器とかも後で聞くから、今はこの既製品の鋼の剣で我慢してね」

「「「はい」」」



 街に戻り、バグナーさん以外は冒険者ギルドに向かった。
 買い物や神殿の前にまずはギルド登録だよね。
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