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商都フォレスト編
3-9 冒険者ギルド?商業ギルド?
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セバスたちの紹介やログハウス内の設備等の使い方を教えていたら、あっという間に時間が経ち公爵が訪問してきた。
転移者全員が体育館組の拠点に赴き、冒険者ギルドと商業ギルドの派遣員の話を聞くことにする。派遣員は見目麗しい受付嬢を寄こしてくれたみたいだ。受付嬢なら初期説明は慣れたものだからうってつけだろう。
最初の講習は公爵が手配した役人の話からだ。
この国の刑法や処罰対象になる行為などを簡単に説明してくれる。こちらからの質問も交えて最低限の情報は得られたと思う。皆にはメモをするよう言ってある。言ってもしない者もやっぱり居た。事前に法を犯さないようここまでお膳立てしてあげているのに、メモすらしない奴の尻拭いをしてあげる気はない。
基本は俺たち日本の法律とそう変わらなかった……人道的な行為を欠いたものは大体処罰対象だ。人に暴力を振るって傷つけたり、性的暴行や窃盗なんかも普通に犯罪行為にあたる。だが、いろいろ違う部分もあるのでそこは注意が要りそうだ。相手が剣を抜いた時点で正当防衛が成立し、殺しても過剰防衛とかなく殺人が正当化されてしまうあたりは気を付けないとヤバい事になる。
一番気を付けないといけないのが、王侯貴族に対する不敬罪がある事かな……これには明確な判断基準がないので、気に入らないというだけでいきなり切りかかられる可能性もあるようだ。
「あ、ちょっと皆に言っておくね。この不敬罪だけど、俺たちはこの世界の者じゃないから、不当に貴族が切りかかってきた場合は返り討ちにしていいからね。この国の法では貴族を殺した場合は大罪人として処刑されるみたいだけど、不当に俺たちに危害を加えてきたり、されそうになったら言ってね」
「小鳥遊君に言えば、対処してくれるのですか?」
「プライドや名誉を重んじる貴族は厄介だからね。異世界人は自分たち貴族より下みたいな、変な前例を作られたら嫌だし、そうなってくると他人事じゃないから俺も動いてあげるよ。うちの娘たち、奴隷も含めて皆、可愛すぎるでしょ?……アホ貴族が攫ったりしそうで心配なんだよ」
敢えて公爵がいる前で宣言しておいた……不当に何かされそうになったら迷わず切り殺せと。
ここで予想通り公爵は俺たち勇者パーティーに指導員を付けてあげると言ってきた。
「折角ですが俺のクランの方には必要ないです」
「だが、知らなかったで済まない事もある。事前にそれを回避するためにこの講習を提案してきたのは君の方ではないか? 必要性は解っているのだろう?」
「ええ、なので昨日のうちに奴隷商に赴き、元貴族の終身奴隷を買ってきました。なので、うちのクランには要りません」
「…………」
「フォレスト公爵殿、下手な駆け引きは面倒ですのでぶっちゃけますね。国の鈴は要りません。同行させて俺たちの所持スキルや動向を逐一報告させるつもりなのでしょうが、そういうヤツをクランに受け入れると本気で思っています? 子供と思って少し舐めていませんか?」
「……確かに少し舐めていたようだ……まさか断られるとは思っていなかった……監視の目を躱して昨日のうちに手配しているとはな」
講習を受けるまで外出禁止だと、俺、自ら言ったため、公爵は2名の見張り役しか置いていなかったのだ。その目を盗んでふらっと出て行ったのだから、公爵が把握していないのは当然のことだ。
「小鳥遊君……うちはどうすればいい? うちも監視されるのは嫌だわ……」
「ある程度の監視が付くのは仕方がないですよ……内側から監視されるか、外部から遠目に監視されるかの違いです。指導員として引き入れるなら、今日きてくれている男性ではなく、ギルドが派遣してくれたような女性に替えてもらわないと駄目ですけどね。俺個人の意見としては、数か月は内部に居てもらって色々指導をしてもらった方が良いと思いますよ」
「どうして? 敢えて監視を受け入れろって事? 自分たちはそれが嫌で、奴隷まで買ってきたのでしょ? それに……小鳥遊君、あなた、奴隷とかよく平気で買ってこれたわね……人道的にどうなの?」
高畑先生は奴隷を買ってきた俺を軽蔑した目で見てきた……日本人的な感覚からすれば当たり前かな。
「奴隷制度を忌避するのは解る気もしますが、【奴隷紋】という契約魔法で縛るというメリットがあるのですよ。要は奴隷からは情報が一切漏れないのです。うちは邪神が相手ですので、現在地の情報が外部に漏れるのですら危険です。暗殺者に襲撃されたり、待ち伏せに遭ったりしちゃいますからね。所持スキルの漏洩も危険ですしね」
少し話し合った結果、体育館組の拠点に、女性の法に詳しい者を公爵が手配してくれる事になった。やはりこの国の法に則った行動をする方がトラブル回避ができるだろうと、高畑先生の拠点内に常駐してもらう事にしたのだ。
次の時間は冒険者ギルドだ。
主に冒険者ギルドの役割とギルド加入のメリット、依頼の仕方や受け方の手順、依頼の成功報酬や狩った魔獣などの素材の販売方法など、ある程度基本的な事を教えてくれた。
冒険者にはランクがあり、ランクによって受けられる依頼が違う。
ブロンズ<アイアン<シルバー<ゴールド<ミスリルという風にギルドカードはプレートの色と素材でランク分けされているようだ。この色はお金と同じ価値基準のようだ。
銅より鉄が価値があるのには異世界らしいと思った……錆びる鉄より価値が低いのは、銅は柔らかいから武器や農具には向かないからだ。俺たちの世界では、電線や精密機械によく使われる銅だが、こっちでは需要の高い鉄の方が価値が上になるみたいだ。
ギルドカードの機能も簡単に説明してもらった。文明に反して、このカードは【クリスタルプレート】と連動していて【個人認証】や魔獣の討伐自動記録、更にキャッシュ機能があるのには驚きだ。この世界の住人が開発したものではなく、どうやら神器のようで、神の恩恵の1つらしい。
アイアンランク以上は試験制とか、貴族護衛はシルバー以上とか、細かいルールは沢山あるようだ。
「懸賞首について聞きたいのですが、懸賞金はどこのギルドでも受け取れるのですか?」
「はい。証明できればどこのギルドからでも受け取れます。ですが、ギルドカードに入金が記録されても、訪れたギルドが小さな村の支部とかの場合、あまり高額になると資金不足で受け取れないでしょうね。あまり沢山村に現金を置くと、それ狙いの盗賊が村を襲いかねませんからね。素材に関しても同じことが言えます。高額なものは大きな街での換金をお薦めします」
懸賞首は魔獣だったり犯罪者だったりで、冒険者ギルドだけが扱っているのではないようだ。特に賞金首などは国や街が管理している騎士舎や兵舎などが支払う場合が多いそうで、ギルドは一括で処理できるように手数料を取って、役所との間に入って手間と時間を省いてくれるのだ。
「成程……実は『ひょうたん森』を移動中にサーベルタイガーに襲われてそれを狩ったのですが、この個体には懸賞が懸ってると聞きました。王都とこの商都からの両方から懸賞が出てるそうなのですが、そういう場合は提出した方からしか受け取れないのでしょうか?」
「サーベルタイガーですか? どっちで提出しても確認が取れたら懸っている全ての懸賞金が受け取れます。確か3頭ほどの特徴の有る個体に、近隣の村からも遺族が少しずつ出し合ったお金が上乗せされていたと思います」
俺が狩った以外に、まだ2頭も懸賞付きが居るのか。
「リョウマ君! 売るのは私に任せてもらえるという話だったよね!」
バグナーさん、必死だね。
「提出じゃなく提示して検分が済めば、懸賞金はお支払できますよ。でも、できればサーベルタイガーのようなレア素材はギルドに売ってくれるとお姉さん嬉しいな~」
ギルドの受付嬢さん可愛いいな……バグナーさんより彼女の気を引くためにギルドに売りたくなってきた。
『……それではギルドの思惑通りですね……ギルドは適正価格で買い取ってくれますが、このサーベルタイガーは高額商品を日頃から扱うバグナーに任せた方が高値で売れると思います』
とにかく現物を見たいという事なので、皆に場を空けてもらいインベントリから取り出した。
「エッ!? ウソ! これって『街道の耳無しタイガー』じゃないですか!」
受付嬢の叫びで、公爵と商業ギルドの受付嬢が慌てだした。懸賞付きの中でも、こいつは別格扱いのようだ。
「あの! このサーベルタイガーを是非商業ギルドにお売りください! どこよりも高く売って見せます!」
「ちょっと待て! この虎は我が公爵家が買い取ろう!」
うわ~、ちょっとした獲得バトルが始まった。
どうやら公爵様は、甥っ子の結婚式の贈り物として、どうしてもこいつが欲しいようだ。殆んど傷みのない完全な毛皮はこれまで無かったようで、金に糸目はつけないと言ってきた。
「実はバグナーさんに王都でオークションに出してもらう話が付いています。公爵様もそれに参加されてはどうですか?」
「例の年始のオークションだな? 実はそれで何か見繕うつもりだったのだ。よし、こいつに絞って競り落とすことにしよう。それにしても、流石は勇者様……何人も我が領内の騎士や商人が襲われ、何年も苦渋を味わったこいつを意図も簡単に退治してくださるとは……」
「あ、そいつ狩ったの、勇者じゃなくてこの仔ね。俺の従魔のハティちゃん」
「ミャン!」
「「「エッ?」」」
暫く信じてもらえなかった……子供だが王種に進化している白王狼だと教えたら、皆、驚いていた。
少し休憩をはさんで、商業ギルドの説明を受ける。こちらの受付嬢も冒険者ギルドに負けないくらい可愛い……流石看板娘。
ギルドに入る事によって回避できるトラブルや、税の徴収の手間を減らせるメリットなど、冒険者ギルドより難しい話だった。
「さっきの商品特許権ですが、何点か申請したい品があるのですが宜しいですか?」
「どういった物でしょう? 既に登録済みの品だったという場合が多いので、現物を預かり査定する時間が必要になります。査定に出すのにも手数料がかかりますし、登録するのにも手数料が要るので、利益がなさそうな品なら控えた方が良い物も結構ありますよ? 勇者様ご一行はこの世界にどういった品があるのかまだよく分かっていないですよね? 暫くこの世界で暮らして慣れてからの方が宜しくないでしょうか?」
やんわりと注意してくれる……思いつきで作って登録にくる者も多いのだろう。既存する物や利益が出ない品を登録しても手数料を払った分損するだけだしね。
「ご忠告は有難いのですが、女神様が既存物かどうか教えてくれますので問題ないですよ」
実際【クリーン】を付与した魔道具はあるが、トイレに使うという贅沢な物はない。
「あの……冒険者や貴族が欲しがる【クリーン】の付与が付いた魔道具をトイレに使用とか有り得ないです……そんなお馬鹿なな使い方、王族でもしませんよ……」
商業ギルドの受付嬢にちょっとバカにされてしまった。詳しく聞いたら、付与魔法持ちがレアなうえに、更に聖属性持ちとなると極レア扱いらしい。そういう者はお金になるアクセサリーに付与して、冒険者がダンジョンに潜る際に重宝されるモノを考えるそうだ……【クリーン】をアクセサリーに付与すればお風呂代わりになるので、水場が少ないダンジョンではとても喜ばれるので、高額商品なのだそうだ。武器に付与すれば、聖属性付なのでアンテッドやゴースト系に効果があるので、これも高額商品になる。
俺のようにトイレに使うようなバカはいないらしい……。
「お姉さん! 一度俺が造ったトイレを使ってみてください!」
なんかバカにされて悔しかったので、恥ずかしがる受付嬢のお姉さんに簡易トイレをだして、ちょっと強引に使ってもらった。
「……確かに素晴らしい機能です……でも、一般庶民が買えるモノではないですね。貴族用かな……登録する価値はありそうですので、お預かりしておきますね」
商品価値は認めてくれたようだ……。
どうやら簡単に付与が施せる俺と価値観が違うようで、普通はお金になる武器やアクセサリーに付与するのが常識だそうだ。
可愛い受付嬢にバカにされたままなのは悔しいので、後で【エアコン】付与の空調機と火力調整の効く【ファイア】付与がついた魔道コンロを持って行こう。
いろいろ俺の個人的な質問が入ったので、話が全て終わるのにお昼を回ってしまった。
これで、日本人組は解散だ……あとは各自で自由にこの世界に散ると良い。
昨晩高畑先生に皆がどうする予定なのか聞き取り調査をしてもらっている。
ここに残る者、宿屋に移る者、王都や周辺の村や町に移動する者、いろいろいるようだ。
******************************************************************
お読みくださりありがとうございます。
冒険者ギルドと商業ギルドの中身は、長々とした説明回になりそうだったので端折ってしまいました。
詳細は追々小出しで説明補足したいと思います。
転移者全員が体育館組の拠点に赴き、冒険者ギルドと商業ギルドの派遣員の話を聞くことにする。派遣員は見目麗しい受付嬢を寄こしてくれたみたいだ。受付嬢なら初期説明は慣れたものだからうってつけだろう。
最初の講習は公爵が手配した役人の話からだ。
この国の刑法や処罰対象になる行為などを簡単に説明してくれる。こちらからの質問も交えて最低限の情報は得られたと思う。皆にはメモをするよう言ってある。言ってもしない者もやっぱり居た。事前に法を犯さないようここまでお膳立てしてあげているのに、メモすらしない奴の尻拭いをしてあげる気はない。
基本は俺たち日本の法律とそう変わらなかった……人道的な行為を欠いたものは大体処罰対象だ。人に暴力を振るって傷つけたり、性的暴行や窃盗なんかも普通に犯罪行為にあたる。だが、いろいろ違う部分もあるのでそこは注意が要りそうだ。相手が剣を抜いた時点で正当防衛が成立し、殺しても過剰防衛とかなく殺人が正当化されてしまうあたりは気を付けないとヤバい事になる。
一番気を付けないといけないのが、王侯貴族に対する不敬罪がある事かな……これには明確な判断基準がないので、気に入らないというだけでいきなり切りかかられる可能性もあるようだ。
「あ、ちょっと皆に言っておくね。この不敬罪だけど、俺たちはこの世界の者じゃないから、不当に貴族が切りかかってきた場合は返り討ちにしていいからね。この国の法では貴族を殺した場合は大罪人として処刑されるみたいだけど、不当に俺たちに危害を加えてきたり、されそうになったら言ってね」
「小鳥遊君に言えば、対処してくれるのですか?」
「プライドや名誉を重んじる貴族は厄介だからね。異世界人は自分たち貴族より下みたいな、変な前例を作られたら嫌だし、そうなってくると他人事じゃないから俺も動いてあげるよ。うちの娘たち、奴隷も含めて皆、可愛すぎるでしょ?……アホ貴族が攫ったりしそうで心配なんだよ」
敢えて公爵がいる前で宣言しておいた……不当に何かされそうになったら迷わず切り殺せと。
ここで予想通り公爵は俺たち勇者パーティーに指導員を付けてあげると言ってきた。
「折角ですが俺のクランの方には必要ないです」
「だが、知らなかったで済まない事もある。事前にそれを回避するためにこの講習を提案してきたのは君の方ではないか? 必要性は解っているのだろう?」
「ええ、なので昨日のうちに奴隷商に赴き、元貴族の終身奴隷を買ってきました。なので、うちのクランには要りません」
「…………」
「フォレスト公爵殿、下手な駆け引きは面倒ですのでぶっちゃけますね。国の鈴は要りません。同行させて俺たちの所持スキルや動向を逐一報告させるつもりなのでしょうが、そういうヤツをクランに受け入れると本気で思っています? 子供と思って少し舐めていませんか?」
「……確かに少し舐めていたようだ……まさか断られるとは思っていなかった……監視の目を躱して昨日のうちに手配しているとはな」
講習を受けるまで外出禁止だと、俺、自ら言ったため、公爵は2名の見張り役しか置いていなかったのだ。その目を盗んでふらっと出て行ったのだから、公爵が把握していないのは当然のことだ。
「小鳥遊君……うちはどうすればいい? うちも監視されるのは嫌だわ……」
「ある程度の監視が付くのは仕方がないですよ……内側から監視されるか、外部から遠目に監視されるかの違いです。指導員として引き入れるなら、今日きてくれている男性ではなく、ギルドが派遣してくれたような女性に替えてもらわないと駄目ですけどね。俺個人の意見としては、数か月は内部に居てもらって色々指導をしてもらった方が良いと思いますよ」
「どうして? 敢えて監視を受け入れろって事? 自分たちはそれが嫌で、奴隷まで買ってきたのでしょ? それに……小鳥遊君、あなた、奴隷とかよく平気で買ってこれたわね……人道的にどうなの?」
高畑先生は奴隷を買ってきた俺を軽蔑した目で見てきた……日本人的な感覚からすれば当たり前かな。
「奴隷制度を忌避するのは解る気もしますが、【奴隷紋】という契約魔法で縛るというメリットがあるのですよ。要は奴隷からは情報が一切漏れないのです。うちは邪神が相手ですので、現在地の情報が外部に漏れるのですら危険です。暗殺者に襲撃されたり、待ち伏せに遭ったりしちゃいますからね。所持スキルの漏洩も危険ですしね」
少し話し合った結果、体育館組の拠点に、女性の法に詳しい者を公爵が手配してくれる事になった。やはりこの国の法に則った行動をする方がトラブル回避ができるだろうと、高畑先生の拠点内に常駐してもらう事にしたのだ。
次の時間は冒険者ギルドだ。
主に冒険者ギルドの役割とギルド加入のメリット、依頼の仕方や受け方の手順、依頼の成功報酬や狩った魔獣などの素材の販売方法など、ある程度基本的な事を教えてくれた。
冒険者にはランクがあり、ランクによって受けられる依頼が違う。
ブロンズ<アイアン<シルバー<ゴールド<ミスリルという風にギルドカードはプレートの色と素材でランク分けされているようだ。この色はお金と同じ価値基準のようだ。
銅より鉄が価値があるのには異世界らしいと思った……錆びる鉄より価値が低いのは、銅は柔らかいから武器や農具には向かないからだ。俺たちの世界では、電線や精密機械によく使われる銅だが、こっちでは需要の高い鉄の方が価値が上になるみたいだ。
ギルドカードの機能も簡単に説明してもらった。文明に反して、このカードは【クリスタルプレート】と連動していて【個人認証】や魔獣の討伐自動記録、更にキャッシュ機能があるのには驚きだ。この世界の住人が開発したものではなく、どうやら神器のようで、神の恩恵の1つらしい。
アイアンランク以上は試験制とか、貴族護衛はシルバー以上とか、細かいルールは沢山あるようだ。
「懸賞首について聞きたいのですが、懸賞金はどこのギルドでも受け取れるのですか?」
「はい。証明できればどこのギルドからでも受け取れます。ですが、ギルドカードに入金が記録されても、訪れたギルドが小さな村の支部とかの場合、あまり高額になると資金不足で受け取れないでしょうね。あまり沢山村に現金を置くと、それ狙いの盗賊が村を襲いかねませんからね。素材に関しても同じことが言えます。高額なものは大きな街での換金をお薦めします」
懸賞首は魔獣だったり犯罪者だったりで、冒険者ギルドだけが扱っているのではないようだ。特に賞金首などは国や街が管理している騎士舎や兵舎などが支払う場合が多いそうで、ギルドは一括で処理できるように手数料を取って、役所との間に入って手間と時間を省いてくれるのだ。
「成程……実は『ひょうたん森』を移動中にサーベルタイガーに襲われてそれを狩ったのですが、この個体には懸賞が懸ってると聞きました。王都とこの商都からの両方から懸賞が出てるそうなのですが、そういう場合は提出した方からしか受け取れないのでしょうか?」
「サーベルタイガーですか? どっちで提出しても確認が取れたら懸っている全ての懸賞金が受け取れます。確か3頭ほどの特徴の有る個体に、近隣の村からも遺族が少しずつ出し合ったお金が上乗せされていたと思います」
俺が狩った以外に、まだ2頭も懸賞付きが居るのか。
「リョウマ君! 売るのは私に任せてもらえるという話だったよね!」
バグナーさん、必死だね。
「提出じゃなく提示して検分が済めば、懸賞金はお支払できますよ。でも、できればサーベルタイガーのようなレア素材はギルドに売ってくれるとお姉さん嬉しいな~」
ギルドの受付嬢さん可愛いいな……バグナーさんより彼女の気を引くためにギルドに売りたくなってきた。
『……それではギルドの思惑通りですね……ギルドは適正価格で買い取ってくれますが、このサーベルタイガーは高額商品を日頃から扱うバグナーに任せた方が高値で売れると思います』
とにかく現物を見たいという事なので、皆に場を空けてもらいインベントリから取り出した。
「エッ!? ウソ! これって『街道の耳無しタイガー』じゃないですか!」
受付嬢の叫びで、公爵と商業ギルドの受付嬢が慌てだした。懸賞付きの中でも、こいつは別格扱いのようだ。
「あの! このサーベルタイガーを是非商業ギルドにお売りください! どこよりも高く売って見せます!」
「ちょっと待て! この虎は我が公爵家が買い取ろう!」
うわ~、ちょっとした獲得バトルが始まった。
どうやら公爵様は、甥っ子の結婚式の贈り物として、どうしてもこいつが欲しいようだ。殆んど傷みのない完全な毛皮はこれまで無かったようで、金に糸目はつけないと言ってきた。
「実はバグナーさんに王都でオークションに出してもらう話が付いています。公爵様もそれに参加されてはどうですか?」
「例の年始のオークションだな? 実はそれで何か見繕うつもりだったのだ。よし、こいつに絞って競り落とすことにしよう。それにしても、流石は勇者様……何人も我が領内の騎士や商人が襲われ、何年も苦渋を味わったこいつを意図も簡単に退治してくださるとは……」
「あ、そいつ狩ったの、勇者じゃなくてこの仔ね。俺の従魔のハティちゃん」
「ミャン!」
「「「エッ?」」」
暫く信じてもらえなかった……子供だが王種に進化している白王狼だと教えたら、皆、驚いていた。
少し休憩をはさんで、商業ギルドの説明を受ける。こちらの受付嬢も冒険者ギルドに負けないくらい可愛い……流石看板娘。
ギルドに入る事によって回避できるトラブルや、税の徴収の手間を減らせるメリットなど、冒険者ギルドより難しい話だった。
「さっきの商品特許権ですが、何点か申請したい品があるのですが宜しいですか?」
「どういった物でしょう? 既に登録済みの品だったという場合が多いので、現物を預かり査定する時間が必要になります。査定に出すのにも手数料がかかりますし、登録するのにも手数料が要るので、利益がなさそうな品なら控えた方が良い物も結構ありますよ? 勇者様ご一行はこの世界にどういった品があるのかまだよく分かっていないですよね? 暫くこの世界で暮らして慣れてからの方が宜しくないでしょうか?」
やんわりと注意してくれる……思いつきで作って登録にくる者も多いのだろう。既存する物や利益が出ない品を登録しても手数料を払った分損するだけだしね。
「ご忠告は有難いのですが、女神様が既存物かどうか教えてくれますので問題ないですよ」
実際【クリーン】を付与した魔道具はあるが、トイレに使うという贅沢な物はない。
「あの……冒険者や貴族が欲しがる【クリーン】の付与が付いた魔道具をトイレに使用とか有り得ないです……そんなお馬鹿なな使い方、王族でもしませんよ……」
商業ギルドの受付嬢にちょっとバカにされてしまった。詳しく聞いたら、付与魔法持ちがレアなうえに、更に聖属性持ちとなると極レア扱いらしい。そういう者はお金になるアクセサリーに付与して、冒険者がダンジョンに潜る際に重宝されるモノを考えるそうだ……【クリーン】をアクセサリーに付与すればお風呂代わりになるので、水場が少ないダンジョンではとても喜ばれるので、高額商品なのだそうだ。武器に付与すれば、聖属性付なのでアンテッドやゴースト系に効果があるので、これも高額商品になる。
俺のようにトイレに使うようなバカはいないらしい……。
「お姉さん! 一度俺が造ったトイレを使ってみてください!」
なんかバカにされて悔しかったので、恥ずかしがる受付嬢のお姉さんに簡易トイレをだして、ちょっと強引に使ってもらった。
「……確かに素晴らしい機能です……でも、一般庶民が買えるモノではないですね。貴族用かな……登録する価値はありそうですので、お預かりしておきますね」
商品価値は認めてくれたようだ……。
どうやら簡単に付与が施せる俺と価値観が違うようで、普通はお金になる武器やアクセサリーに付与するのが常識だそうだ。
可愛い受付嬢にバカにされたままなのは悔しいので、後で【エアコン】付与の空調機と火力調整の効く【ファイア】付与がついた魔道コンロを持って行こう。
いろいろ俺の個人的な質問が入ったので、話が全て終わるのにお昼を回ってしまった。
これで、日本人組は解散だ……あとは各自で自由にこの世界に散ると良い。
昨晩高畑先生に皆がどうする予定なのか聞き取り調査をしてもらっている。
ここに残る者、宿屋に移る者、王都や周辺の村や町に移動する者、いろいろいるようだ。
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お読みくださりありがとうございます。
冒険者ギルドと商業ギルドの中身は、長々とした説明回になりそうだったので端折ってしまいました。
詳細は追々小出しで説明補足したいと思います。
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雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
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