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第三章
開放宣言 3
しおりを挟む「さぁて、オヒメサマの具合はどんなかなー?」
「ひっ、やめ…!」
「ユルユルやったらゲンメツだなー」
「いいのか、アレは使わなくて」
「いーでしょ、だって春人のだよ?」
好き勝手言いながら、四つん這いに押さえつけた綾の後ろの穴に指を這わす。
誰にも触られたことのないそこは何とも言えぬ気持ち悪さを伝えて、綾は強く力を込めた。ぎゅう、抵抗するそこに、彼らは一瞬手を止める。
「あれ、コイツ処女じゃね?」
「えっ、嘘やんだって」
「全然慣れとらん」
つんつん、入り口をつついて入り込もうとしても全く歓迎してくれないそこに、彼らは顔を見合わせた。
「りょうちゃん処女かぁ」
「メンドクセェ…」
「そーいうのは春人がやっといてくれないとねぇ。まぁいいや」
肩にかけられていた圧力が退いて、茶髪の童顔が眼前に来る。
少しも笑っていない瞳でにっこり微笑んで、彼は首を傾げた。
「気持ちいーのと痛いの、どっちがいい?」
「え…」
「気持ちいーのがよければお薬あげる。特別に選ばせたげるから、選びなよ」
「いっ、嫌だっ…!どっちも、そんなの、」
「先輩には、敬語だよ?」
ぐい、無理に顔を引き寄せられ、首が痛い。
先輩だったのか、と脳の片隅でどうでもいい新たな情報を処理して、綾はぐるりと頭を回転させた。
「ねぇ、どっち?」
「あっ…ぅ、ッ…」
「早く答えなきゃ、痛いのになるけど」
「や、嫌で、すっ…!」
「じゃー、気持ちいーの?」
「っ…!」
こく、綾は頷いた。
再度、彼はにっこり笑って、友人たちに何かを投げた。
きっと薬だ。媚薬の類の。
--どんなものか分からないけど、きっとチャンスだ。今が、きっと逃げるチャンス。
仰向けになって、身体を開かされる。
遠慮など欠片もなく綾の奥を暴こうとしてくる三人分の腕。
りっくん、と呼ばれたスポーツマン風の彼が綾の身体に錠剤を差し入れた時、安心したのか拘束の力がわずかばかり弱まったのを感じた。
「ぅわっ…!」
「ちょ、りょうちゃん!」
二度目、スポーツマンの腕を強く蹴り飛ばし、童顔の腕を振りほどく。もう一人を押しのけ、綾は日の当たる場所まで飛び出した。
逃げる、その他のことは考えず、とにかく第三棟へ走り込む。
後ろからまた大きな舌打ちが聞こえたような気がした。
このまま、どこへ?とにかく服を整えよう。安全じゃない、まだ。追ってくるかも。違う人に遭遇するかも。早く、早くみんなのところへ。
「あっ…!」
「ユウくん!」
無意識的に、足が向いていた教員室の前に知った影を見つけた。
神様みたいな安堵感を覚えて、綾はぶつかるように走り込む。
実際、和也は腕を広げて、さほど身長の変わらない綾を受け止めてくれた。
「あいつか、また!性懲りもなく」
「ちが、違うんです。知らない人が…俺、必死で逃げて」
「知らない人?一体何が…」
「わかりません…!開放宣言とか、何か言ってて、俺…ッ、ぁ…」
身体の奥で何かがはじけるような感覚がして、全身から力が抜けた。
急激に体温が上昇している。
熱い。目が滲む。じわじわと、堪らないような熱が疼く。
慌てて、和也はそばにあった背の低い棚に綾を預けた。
「大丈夫か?」
「すみませ…、俺、そういえば薬を…」
はぁ、はぁ、短く息を吐く。
「…わかった。少し待ってくれ」
ガタガタ震えながらシャツの襟をかき集め、上がってくる熱をなんとか押し止めようとした。
和也が優しい手つきで服を整えてくれる。
眼鏡越しに見えるまつ毛が、あぁ、意外と長いんだ、なんて。
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