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最高のもっふもふを目指して!

もふもふLv1&憎むべき敵

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 私はある物を見つけてある作戦を思案していた。

「これを使えば町に居座る事ができるかもしれない……」

 だが、慎重に考える必要もあった。
 この町にもソレがあるかが不明なものの、ないとは言い切れない。
 私の前世の人間知識がその危険性を教えてくる。

 それは保健所問題だった。

「保健所は野良犬等を保護してくれる半面、貰い手が付かない保護した動物をあんな事やそんな事してしまうらしい……」

 保護して貰えるのは願ったりだが、あんな事やそんな事は勘弁したい。
 私は狼なわけだし、貰い手を捜す時に『狼どうですか?』等と言って紹介されて『よし!うちで飼おう!』なんてなる訳がない。
 狼と比べたらまだ昨日のバカ犬の方が貰い手が付くだろう。

 つまり、私は保健所の魔の手にだけは捕まる訳にはいかないわけだ。

「だが、この作戦は定番と言える必殺技だと思うし。狼でも無害に見せられる所は魅力的。……と思う」

 私が見つけたものとは、蓋のない木箱だった。
 そして、私が考え付いた作戦とは町中で木箱の中に座り、『クーン、クーン』と鳴いて情に訴える作戦だった。

 作戦名は『誰かこの子を3食昼寝付きとブラッシング+αで、大事に。甘やかして。拾ってあげてください!』作戦だ。

「うん。うまくいけば素晴らしい生活が私を待っている!」

 夢が膨らみ、私は危険性を感じつつ木箱作戦を実行する事に決めたのだった。



「そろーり、そろーり……」

 私は作戦の実行を決めて、木箱を頭からかぶりコソコソと町中に初めての潜入した。
 昨日の男の子は私を普通の犬と誤解したようだが、私は狼だ。
 子供はともかく、大人の人間相手だとモロバレする可能性もあるため、慎重に進む事にしたのだ。

 狼とバレれば危ないからと銃で射殺されるか、捕まえられて檻に入れられ保健所行きな可能性が頭をよぎった。

「だが、大丈夫。木箱の中で座り、クーンクーン鳴いておけば誰も私が狼と思うまい。バレたとしても危険等と言う奴はいるまいて……。か、完璧。ふふふふふ……」

 私は人通りの多い噴水のある広場から少しだけ離れた位置にあった物陰にスタンバイした。
 本来であれば人通りが多く目に付きやすい中心にスタンバイしたいが、そんな事をすれば私の完璧な作戦が自作自演だとモロバレしてしまう。
 誰にも気が付かれる事無くスタンバイ出来なければならない為に、この位置となった。

 よし、最終確認だ。トイレは済ませてきたし、子蟹で腹を満たしてきた。

「問題はなっ……」

 その時だ、お尻のあたりに何かぷすっと入ってくる感触がした。
 思わず叫びそうになるのをグッと堪える事が出来たのは奇跡と言えた。
 その何かは前後し、容赦なくぐりぐりとお尻を刺激してくる。

「あ、あふっ……」

 思わずおかしな声が出そうになったが何とか押さえ、何が起きたかを察した私は迷う事無く逃げる事を選択した。

「あ!怪しい箱が逃げたぞ!!」
「追え!追えー!俺達で町の平和を守るんだー!!」
「「おーーー!!」」

 私のお尻をぐりぐりしていたのは町の子供達だ。
 子供達は不自然に移動する木箱を見つけ、私の後ろ側の木箱の隙間から木の棒を突っ込んでいた。
 そして迷惑な事に、逃げる木箱を追いかけてやっつけるという遊びに変化してしてしまったようだった。

 まるで、私を追い掛け回して遊んでいた兄弟達のようだ。

「しかし、いきなりお尻に木の棒を突っ込むとか、この町の子供のマナーはどうかしてる!」

 これは仕方ない事だというのは私だって理解していた。
 なんせ子供達の目線では、木箱の中に何かいる程度しか分かっていなかったのだから。
 僅かな隙間しかなく中から外を見る私はともかく、外から見ていた子供達が中を把握する事は難しい。

 分かってはいるが、いきなりお尻に棒で刺されたら文句も言いたくなるってもんだろう?

「あの箱どこ行った!?」
「あっちの角を曲がったらしいよ!!」
「思ったよりも動き早い!手分けして包囲するように追い詰めるんだ!!」
「「おーーー!!」」

 木箱を被っていたとしても私は狼。
 足の速さで子供に負けるはずは無く、余裕の圧勝。
 しかし、子供達はリーダー格の子供を筆頭にした人海戦術を駆使し、私の逃げ場と行き先を絞ってくる。

 初めての町で土地勘の働かない私は徐々に逃げ場を無くされて行った。

「最悪、木箱を捨てて強引に子供の間をすり抜ける事もできる。が、出来れば見つからないようにして、後日にでも『誰かこの子を3食昼寝付きとブラッシング+αで、大事に。甘やかして。拾ってあげてください!』作戦を行いたい……」

 無害アピールも出来ないままに狼が町中で目撃されたとなれば、町中警戒ムード突入まったなしだろう。
 そう考えていた私は、できれば見つからないようにしたかったのだ。
 だが、そうは問屋が卸さない。

 徐々に狭めれていく逃げ道、それと聞こえてくる私を探す子供達の声……。

「というか、最初子供が4人くらいだったのに、10人くらいに増えてない?」

 私は焦っていた。
 逃げ道もだが、今の自分の現在地までよく分からなくなり始めていたからだ。
 こうなれば仕方ない。迷わず私は町からの脱出を諦めて、子供達から見つからないようにやり過ごす手段を考え出した。

 私は近くにあった家の庭に迷わず木箱ごと入り込み、物陰でじっとし息を潜めた。

「くそー!あの箱どこ行った!?」
「そっちに行ったんじゃないのか?」
「いや見てない」
「じゃぁ、あっちの小道にでも行ったんじゃね?」
「でもあっちって行き止まりじゃぁ?」
「とにかく確認しにいくぞー!!」
「「おーーー!!」」

 やんちゃ盛りの子供軍団が見当違いの方へ向かって走り出した。
 いくらやんちゃ盛りとはいえ、他人の家の庭に突撃したりは流石にしないようだった。
 単に、私がそこまでの知能を備えてないと思われてるだけかもだが。

 なんにせよ、私の計算どおり!野生の中で身に付けた、私の気配の消し方の勝利である!!

「あとは、子供達が落ち着いた頃に町を抜け出して、明日また作戦の再チャ……」

 パカッ。

 蓋を開けるといいますか、箱を開けると言うべきかそんな擬音が聞こえた気がした。
 さらに、急に視界が広くなり明るくなった事で眩しさを感じた私は固まる。

 背後から何者かの気配とその視線を感じながら。

「じーーー」

 私は恐る恐る後ろを振り向く。
 その視線の正体は物静かそうで、見た目10歳前後の女の子だった。
 薄紫色の髪に緑色の服を着ていて、兎耳と尻尾のついたヘアバンドを付けていた。

 目が合った私は、下手に怖がられたり騒がれたりしないかドキドキだ。

「じーーー」

 とりあえずだ、犬っぽく振舞おうと思った私は腹を見せて横になり、尻尾をオーバーアクションで振りまくった。
 犬っぽくしたつもりだが、流石にここまで高速で尻尾は振らないかもしれないと思いつつも、やってしまった以上これでいくしかない。
 女の子は害は無いと判断したのか手を伸ばしてきた。

 人間の体温は基本的に犬猫より低い、そして狼は犬よりも高い。
 だからだろう、冷たくは無いもののややひんやりとした感触が私のお腹に触れた。

「あったかい」

 逆に女の子の方はあったかいと感じたようだ。
 ややひんやりと言ったが、悪い気はしなかった。
 私はちょっとくすぐったくもあったが、心地よさすら感じていた。

 だが、その女の子の手もすぐ私から離れた。

「……」

 撫でるのをやめて無言になった女の子を見て、私は体を起こした。
 なぜか、私を撫でていた手をただ無言で見ていた。
 女の子はその後、手を軽く叩いて嫌な顔をして私から距離をとっていく。

 女の子は私が狼だった事に気がついたとか、私が嫌いになったとかそういう訳じゃない。……いや、それを見て嫌いになったのかもしれないけども。

「ん……?」

 私は女の子が手を叩いた時に落ちた黒い粒のようなものに目を向けた。
 普段ならただの小石だろう程度に気にしないのだが、この時ばかりはこの黒い粒が気になった。
 気のせいかもしれないが、なぜかその黒い粒が動いたような気がしたからだ。

 もう察した人もいるだろう。
 女の子を不快にさせ、私がなぜか気になった黒い粒。その元凶は、丸々と太ったダニだった。

 私はやっちまったという気分だった。
 ダニの中には厄介な病原菌を持っていたりして、人がそのダニが持つ病原菌よって体調を崩したり、中には死んでしまうケースもあるのだ。
 私は再度女の子に目を向けようとすると、すでにそこに姿は無く家の窓から私をゴミを見る目で見ていた。

「ちっくしょーーー!!!!」

 私は木の箱を被り町の外を目指して全力で走った。
 私は間違っていた……。
 まず、私がすべきは子供と仲良くなる事でも、『誰かこの子を3食昼寝付きとブラッシング+αで、大事に。甘やかして。拾ってあげてください!』作戦を実行する事でもなかったのだ。

 犬猫の憎むべき敵!ノミ&ダニを退治する事だったのだ!!

「ノミダニを一掃してから出直してやるーーーー!!」

 私の3食昼寝付きドリームへの道はまだまだ先のようだった。

「あの箱みつけたぞーーー!」
「やっつけろー!」
「「おー!!」」
「しつこい!!」
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