17 / 17
エピローグ
しおりを挟む 温かい風が柔らかく吹き抜ける、深い緑色をした木々たちが揺れ『ザーザー』と音を立てる。鳥たちの鳴き声が妙に心を落ち着かせる。私は西福寺の縁側に腰を下ろし、少し薄めのお茶を飲んでいる。私の目には、小さな車のおもちゃを手に走り回る男の子と、その後ろを心配そうに見守りついていく、初老の女性の姿が微笑ましく映った。
男の子は『海斗』まだ4歳になったばかり、頭がよくおとなしい性格で、人見知りをする甘えん坊・・。この子が裕也の子供・・私の宝物、私の天使、生きる支え・・。その後ろを追うのが思織さん、私の母。
その光景は、とても尊く美しい・・。
今日は裕也の5回忌・・。もうあれから5年の年月が経つなんて信じられない・・。時の流れは無情で、愛おしい人はもう戻らない。でも、今もまだ裕也は生きていて・・あの笑顔で・・そんな夢を見ることがある・・。切なくて痛くて悲しい時は、海斗を抱きしめて眠っている。不思議と海斗からは裕也の匂いがするから・・。
あれからも色んな事があったけど、母や早希に助けられ、大倉先生の支援もあって何とかやってこられた。航太と春音、ふたりの子供たちとも、定期的に会うことが許されている。時が経つと共に、浩司の気持ちの変化もあって、少しだけ穏やかに話しが出来るようになった。そして何より裕也に支えられている。裕也が残してくれたもの・・それは経済的なことだけじゃなく、母との再会という、お金では決して買えないもの・・それと数多くの思い出たち・・。
私の人生で裕也と過ごした時間は、そう長くない。ほんの一瞬、短い時間・・。でもこの時間はかけがえのない時間。私がこの先70、80歳まで生きたとしても、この時間は永遠に宝物であり続けるだろう『人は忘れる生き物』色んなことを忘れて生きていく、なのに何故、裕也との思い出だけは、忘れようとしても忘れられなかったのだろう・・。今は絶対、忘れたくない思い出・・。
私が心の扉を開けてしまったことで、家族を裏切り傷つけた。もう出口がない・・そうわかっていたのに、足を踏み入れた・・。そして私は、みだらで薄汚い女になった。でも後悔はない。例えこの恋が許されない恋だとしても・・。
これから先、私はこの罪を背負い、償いの道を歩き続ける・・それが罰を受けるということだと思うから。
私は海斗の手を引き、ゆっくりとゆっくりと西福寺を後にした。
この恋をして、裕也の愛に触れ、人が人をこんなにも、深く深く愛せることを知った。それはまさに『深愛』この温かく切ない、言葉を超越した気持ち・・それは、真心の中にこそ宿るもの。
青空の下、太陽の光が私たち親子を包んだ時、ふと後ろを振りむいた。お寺に続く一本道・・そこには裕也が立っていて、手を振ってくれている。まるで生きているように・・いつもの笑顔で・・。
耳をすませば聞こえる裕也の声が・・『香織』・・
「裕ちゃんありがとうね・・」
いつまでもあなたとの思い出を胸に生きていきます。
「また海斗を連れて会いに来るからね」
もう私の目に涙はない・・。
男の子は『海斗』まだ4歳になったばかり、頭がよくおとなしい性格で、人見知りをする甘えん坊・・。この子が裕也の子供・・私の宝物、私の天使、生きる支え・・。その後ろを追うのが思織さん、私の母。
その光景は、とても尊く美しい・・。
今日は裕也の5回忌・・。もうあれから5年の年月が経つなんて信じられない・・。時の流れは無情で、愛おしい人はもう戻らない。でも、今もまだ裕也は生きていて・・あの笑顔で・・そんな夢を見ることがある・・。切なくて痛くて悲しい時は、海斗を抱きしめて眠っている。不思議と海斗からは裕也の匂いがするから・・。
あれからも色んな事があったけど、母や早希に助けられ、大倉先生の支援もあって何とかやってこられた。航太と春音、ふたりの子供たちとも、定期的に会うことが許されている。時が経つと共に、浩司の気持ちの変化もあって、少しだけ穏やかに話しが出来るようになった。そして何より裕也に支えられている。裕也が残してくれたもの・・それは経済的なことだけじゃなく、母との再会という、お金では決して買えないもの・・それと数多くの思い出たち・・。
私の人生で裕也と過ごした時間は、そう長くない。ほんの一瞬、短い時間・・。でもこの時間はかけがえのない時間。私がこの先70、80歳まで生きたとしても、この時間は永遠に宝物であり続けるだろう『人は忘れる生き物』色んなことを忘れて生きていく、なのに何故、裕也との思い出だけは、忘れようとしても忘れられなかったのだろう・・。今は絶対、忘れたくない思い出・・。
私が心の扉を開けてしまったことで、家族を裏切り傷つけた。もう出口がない・・そうわかっていたのに、足を踏み入れた・・。そして私は、みだらで薄汚い女になった。でも後悔はない。例えこの恋が許されない恋だとしても・・。
これから先、私はこの罪を背負い、償いの道を歩き続ける・・それが罰を受けるということだと思うから。
私は海斗の手を引き、ゆっくりとゆっくりと西福寺を後にした。
この恋をして、裕也の愛に触れ、人が人をこんなにも、深く深く愛せることを知った。それはまさに『深愛』この温かく切ない、言葉を超越した気持ち・・それは、真心の中にこそ宿るもの。
青空の下、太陽の光が私たち親子を包んだ時、ふと後ろを振りむいた。お寺に続く一本道・・そこには裕也が立っていて、手を振ってくれている。まるで生きているように・・いつもの笑顔で・・。
耳をすませば聞こえる裕也の声が・・『香織』・・
「裕ちゃんありがとうね・・」
いつまでもあなたとの思い出を胸に生きていきます。
「また海斗を連れて会いに来るからね」
もう私の目に涙はない・・。
0
お気に入りに追加
9
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
優しい愛に包まれて~イケメンとの同居生活はドキドキの連続です~
けいこ
恋愛
人生に疲れ、自暴自棄になり、私はいろんなことから逃げていた。
してはいけないことをしてしまった自分を恥ながらも、この関係を断ち切れないままでいた。
そんな私に、ひょんなことから同居生活を始めた個性的なイケメン男子達が、それぞれに甘く優しく、大人の女の恋心をくすぐるような言葉をかけてくる…
ピアノが得意で大企業の御曹司、山崎祥太君、24歳。
有名大学に通い医師を目指してる、神田文都君、23歳。
美大生で画家志望の、望月颯君、21歳。
真っ直ぐで素直なみんなとの関わりの中で、ひどく冷め切った心が、ゆっくり溶けていくのがわかった。
家族、同居の女子達ともいろいろあって、大きく揺れ動く気持ちに戸惑いを隠せない。
こんな私でもやり直せるの?
幸せを願っても…いいの?
動き出す私の未来には、いったい何が待ち受けているの?
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

前世と今世の幸せ
夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】
幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。
しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。
皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。
そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。
この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。
「今世は幸せになりたい」と
※小説家になろう様にも投稿しています
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる