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初めて出会った場所
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明くる朝、私はいつもの時間に目が覚めた。いつもの習慣はいつの間にか身につてしまっている。でもいつもと違うことがある。となりに裕也がいる。まるで子供のように眠っている。私の体はまだ昨日の熱く激しく抱きしめ合った余韻を残していた。裕也を起こさないように、そっとベッドを抜け出しキッチンに向かう。『何か朝ごはんをつくってあげたい』そう思って冷蔵庫などを開けるがろくなものがない・・。隠すように病院の薬袋が大量にあるのには驚いた!
「裕也は普段どんな生活をしてるんだろう??」
心配になったが何もできず、仕方なくコーヒーだけを作り寝室へと戻った。ベッドに入ると・・
「おはよう。早いんだね」
裕也が言う
「ごめん・・起こしちゃった!?」
「ううん・・」
裕也が私を抱きしめる。不思議なぐらい落ち着いた・・こんなに安らかな気持ちになったことはない・・。そっと胸に耳をあてると裕也の心臓の音が聞こえる・・優しく強く・・『ドクッドクッ』その音は私のすべてを優しく包み込んでくれた。
「何してんの?」
「裕ちゃんの心臓の音聞いてるの・・」
今度は裕也が私の胸に耳をあてた・・
「俺達、生きてるね・・」
「うん」
すると突然、
「今からさ、あの町に行こうか?」
裕也が言った
「あの町?・・」
「うん。俺たちの地元」
「いいけど・・」
「よし、じゃあ行こう!」
昔から突発的な行動が多かったが、変わってないなぁって関心させられた。
「香織は地元にはよく行くの?」
「最近は全然行ってないよ。お姉ちゃんもこっちに遊びに来るし、あっちに用がないからね。裕ちゃんは?」
「俺はたまに行くよ。長老の墓参りとかでね・・」
「えっ長老、亡くなったんだ・・私、知らなかった・・」
「もう10年近くになるよ。87歳だったからね・・俺の母さんも、俺が23歳の時に死んじゃったんだ・・だから、生きてる間に弁護士になった姿を見せてやれなかったんだ」
「そうなんだ・・」
私は裕也のお母さんが亡くなったことを風の噂で聞いて知っていた。
「香織のお父さんは元気なの?」
「お父ちゃんは5年前に亡くなったよ」
「そうかぁ」
「みんな死んじゃったんだね・・」
悲しみがこみ上げ頬を涙が伝う・・。
「ほらぁまた泣く~笑」
私が涙もろいのは今に始まったことではない。
「悲しくて・・」
「悲しくなんてないよ。こうして俺達が心の中や記憶の中で覚えてるでしょ。体は死んでも、俺達の中で魂は生きてるんだよ! そして、あっちの世界で仏様になって俺達を見守ってくれてるんだよ! だから泣かないで」
そっと私の涙を、裕也が指で拭ってくれた。
「また目が腫れるよ笑・・さぁ元気出して行こう」
二人は、裕也の車で地元へと向かった。その車内では映画やドラマ、音楽の話しで盛り上がった。私が昔プレゼントしたCDは車のHDDに録音されていた。それがたまらなく嬉しかった。
「うわぁ~懐かしいねぇ」
そうこの町で生まれ育ったんだ。こんな形で帰って来たことが感慨深い。
「高校とか行ってみようか?」
「うん。いいね!」
毎日、そう毎日通った高校、私の人生の中で一番輝いていた時、がむしゃらになれた時を過ごした場所。そこはまるで時間の流れが無いように存在をした。
「毎日、一緒に通学したねぇ」
「そうだね。俺たち真面目だったからね」
「今は夏休みなんだ・・こんな時間に部活やってんじゃん」
「あっほんとだね」
「野球部かぁ・・」
私はいたずらな表情をして見せて裕也の顔を覗きこんだ。ギクッとした顔を裕也が見せる。
「何だよ?・・」
「前田先輩、殴ったんだよね笑」
「余計なこと思い出さないでいいんだよ」
そうあれは高校1年生の時、私は野球部のマネジャーに誘われた。学校の廊下で前田先輩にその話しを聞かされているところを、早希に目撃されていたのだ。それを淳史と早希が裕也に伝えた。それも私が告白されていたと・・それを聞いた裕也は若さもあってか激高して、野球部が練習中のグランドに行き、こともあろうことか、突然、前田先輩に殴りかかったのだ。それはそれは大変な騒ぎになった。女子に人気があり、男子にも一目おかれる存在の前田先輩を、1年生がグランドでしかもみんなの目の前で突然殴ったのだから・・私が早希に
「香織! 香織! 大変!!」
「何!? 何!? どうしたの??」
「裕也が大変!!」
早希に腕をつかまれて走って職員室へと急いだ。私は裕也が怪我でもしたのかと焦った。職員室の前は生徒たちで溢れ返り、先生の怒号でまるで暴動でも起きたかのようだった。なんとか他の人を押しのけ職員室の中を覗くと、制服も破れ、先生たちともみ合う裕也が見えた。何が起きたかわからない。早希に私は聞いた
「一体、何が起きたの?」
事件のいきさつを聞き、誤解だと説明したかったが私は無力で何もできない。先生たちに押しのかされ、遠くから見守ることしかできなかった。『退学になるかも』なんてことまで話しが出て不安になった。裕也がおばちゃんと二人で家に帰ってきたのは、もう夜8時を回っていた。私と早希、淳史も心配で自分の家に帰ることができず、裕也の家の前で待っていたのだ。
「裕ちゃん、大丈夫?」
私は裕也の姿が見えるなり走り出していた。すこし疲れた表情だけど、先程の見たことのない形相とは一変し、いつもの裕也が照れ笑いを浮かべていた。
「ごめん・・待っててくれたの?」
「裕也!」
早希も淳史も心配気に声を掛けた。
「裕也、ごめん! 私、勘違いして」
早希は自分が原因を作った張本人だからと責任を感じていたのだ。
「すまん! 裕也」
淳史も謝ることしかできない。
「いや! 俺が一番悪いよ。勘違いしちゃってさ笑これ見てよ笑」
裕也は照れ笑いを浮かべながら、殴られた頬を見せた。
「学校とか大丈夫なの?」
私が聞いた。
「うん。前田先輩が庇ってくれた。怒らせた俺が悪いって・・あの人すごい人だよ」
みんなそれを聞いてどれだけ安堵したことか・・。裕也の思いがけない一面を見せつけられた出来事だった。でも、その熱い気持ちが私には嬉しかった。
「クールな顔して、ヤキモチやきなんだよね」
「もうやめろって! でもあれ以降、学校ではちょっとした有名カップルになれたんだからいいじゃん」
確かにそうだった。人の噂話しはすごくて、私を『ロミオ&ジュリエット』のヒロインのように扱ったり『裕也と前田先輩を二股かけてた』なんて言われたりした。
「前田先輩、今ではこの町の市会議員らしいよ」
「えっほんと?」
「淳史が言ってたから間違いないよ」
「そう言えば、淳史は今何やってるの?」
「あいつは作り酒屋を継いで、社長になってるよ」
「えっすごいじゃん! 実家継いだんだね・・よく会うの?」
「1年に1回ぐらいのペースで会ってるよ。長老が亡くなってからは、淳史の会社の法律顧問なってるからね」
「そうなんだ」
「今では4人の父親になってるよ」
「えっあの淳史が!」
「驚きだよね」
今も仲良く友人関係にありホッとした。
「早希は? 元気にしてるのかな?」
「早希は元気だよ! 色々あって離婚して、今ではシングルマザー。9歳の男の子がいるんだよ!」
そういって早希の写メを見せた。
「おぉマジで! これが早希? おばさんだね笑」
「もうそういうこと言わないの!」
裕也は昔からひと言多いタイプだ。でも、たしかに20年前はギャルメイクでイケイケだった早希が、普通の格好をしていると違和感もあり、そのギャップがそう言わせたのかもしれない。
「早希もお母さんかぁ・・よく会うの?」
「結構ね、家も近くだからよく会うよ。一番の親友かもしれないね」
「そっかぁ・・みんな元気で良かったよ」
そう言う裕也が少し淋しく見えた・・。二人は車で町を巡った。みんなで行ったカラオケボックス、裕也の家、私の家・・もう私の家以外は残っていなかった。時間の流れが少し残酷に感じた。
「この町こんなに小さかったんだね」
私がポツリ言う。
「そうだね。あの頃はこの町がすべてだったのに・・」
車は国道を走る。懐かしい風に包まれながら・・窓を開けるとあの頃のにおいがするような気がした。メインストリートの少し離れた場所・・二人の目が留まった・・。
「ここも潰れたんだね・・」
裕也が悲しそうに言った。
「本当だね・・」
ここは、二人が初めて出会った場所。どこの町にもあるレンタルビデオ店。この場所を見て二人はその瞬間を思い出していた。
「裕也は普段どんな生活をしてるんだろう??」
心配になったが何もできず、仕方なくコーヒーだけを作り寝室へと戻った。ベッドに入ると・・
「おはよう。早いんだね」
裕也が言う
「ごめん・・起こしちゃった!?」
「ううん・・」
裕也が私を抱きしめる。不思議なぐらい落ち着いた・・こんなに安らかな気持ちになったことはない・・。そっと胸に耳をあてると裕也の心臓の音が聞こえる・・優しく強く・・『ドクッドクッ』その音は私のすべてを優しく包み込んでくれた。
「何してんの?」
「裕ちゃんの心臓の音聞いてるの・・」
今度は裕也が私の胸に耳をあてた・・
「俺達、生きてるね・・」
「うん」
すると突然、
「今からさ、あの町に行こうか?」
裕也が言った
「あの町?・・」
「うん。俺たちの地元」
「いいけど・・」
「よし、じゃあ行こう!」
昔から突発的な行動が多かったが、変わってないなぁって関心させられた。
「香織は地元にはよく行くの?」
「最近は全然行ってないよ。お姉ちゃんもこっちに遊びに来るし、あっちに用がないからね。裕ちゃんは?」
「俺はたまに行くよ。長老の墓参りとかでね・・」
「えっ長老、亡くなったんだ・・私、知らなかった・・」
「もう10年近くになるよ。87歳だったからね・・俺の母さんも、俺が23歳の時に死んじゃったんだ・・だから、生きてる間に弁護士になった姿を見せてやれなかったんだ」
「そうなんだ・・」
私は裕也のお母さんが亡くなったことを風の噂で聞いて知っていた。
「香織のお父さんは元気なの?」
「お父ちゃんは5年前に亡くなったよ」
「そうかぁ」
「みんな死んじゃったんだね・・」
悲しみがこみ上げ頬を涙が伝う・・。
「ほらぁまた泣く~笑」
私が涙もろいのは今に始まったことではない。
「悲しくて・・」
「悲しくなんてないよ。こうして俺達が心の中や記憶の中で覚えてるでしょ。体は死んでも、俺達の中で魂は生きてるんだよ! そして、あっちの世界で仏様になって俺達を見守ってくれてるんだよ! だから泣かないで」
そっと私の涙を、裕也が指で拭ってくれた。
「また目が腫れるよ笑・・さぁ元気出して行こう」
二人は、裕也の車で地元へと向かった。その車内では映画やドラマ、音楽の話しで盛り上がった。私が昔プレゼントしたCDは車のHDDに録音されていた。それがたまらなく嬉しかった。
「うわぁ~懐かしいねぇ」
そうこの町で生まれ育ったんだ。こんな形で帰って来たことが感慨深い。
「高校とか行ってみようか?」
「うん。いいね!」
毎日、そう毎日通った高校、私の人生の中で一番輝いていた時、がむしゃらになれた時を過ごした場所。そこはまるで時間の流れが無いように存在をした。
「毎日、一緒に通学したねぇ」
「そうだね。俺たち真面目だったからね」
「今は夏休みなんだ・・こんな時間に部活やってんじゃん」
「あっほんとだね」
「野球部かぁ・・」
私はいたずらな表情をして見せて裕也の顔を覗きこんだ。ギクッとした顔を裕也が見せる。
「何だよ?・・」
「前田先輩、殴ったんだよね笑」
「余計なこと思い出さないでいいんだよ」
そうあれは高校1年生の時、私は野球部のマネジャーに誘われた。学校の廊下で前田先輩にその話しを聞かされているところを、早希に目撃されていたのだ。それを淳史と早希が裕也に伝えた。それも私が告白されていたと・・それを聞いた裕也は若さもあってか激高して、野球部が練習中のグランドに行き、こともあろうことか、突然、前田先輩に殴りかかったのだ。それはそれは大変な騒ぎになった。女子に人気があり、男子にも一目おかれる存在の前田先輩を、1年生がグランドでしかもみんなの目の前で突然殴ったのだから・・私が早希に
「香織! 香織! 大変!!」
「何!? 何!? どうしたの??」
「裕也が大変!!」
早希に腕をつかまれて走って職員室へと急いだ。私は裕也が怪我でもしたのかと焦った。職員室の前は生徒たちで溢れ返り、先生の怒号でまるで暴動でも起きたかのようだった。なんとか他の人を押しのけ職員室の中を覗くと、制服も破れ、先生たちともみ合う裕也が見えた。何が起きたかわからない。早希に私は聞いた
「一体、何が起きたの?」
事件のいきさつを聞き、誤解だと説明したかったが私は無力で何もできない。先生たちに押しのかされ、遠くから見守ることしかできなかった。『退学になるかも』なんてことまで話しが出て不安になった。裕也がおばちゃんと二人で家に帰ってきたのは、もう夜8時を回っていた。私と早希、淳史も心配で自分の家に帰ることができず、裕也の家の前で待っていたのだ。
「裕ちゃん、大丈夫?」
私は裕也の姿が見えるなり走り出していた。すこし疲れた表情だけど、先程の見たことのない形相とは一変し、いつもの裕也が照れ笑いを浮かべていた。
「ごめん・・待っててくれたの?」
「裕也!」
早希も淳史も心配気に声を掛けた。
「裕也、ごめん! 私、勘違いして」
早希は自分が原因を作った張本人だからと責任を感じていたのだ。
「すまん! 裕也」
淳史も謝ることしかできない。
「いや! 俺が一番悪いよ。勘違いしちゃってさ笑これ見てよ笑」
裕也は照れ笑いを浮かべながら、殴られた頬を見せた。
「学校とか大丈夫なの?」
私が聞いた。
「うん。前田先輩が庇ってくれた。怒らせた俺が悪いって・・あの人すごい人だよ」
みんなそれを聞いてどれだけ安堵したことか・・。裕也の思いがけない一面を見せつけられた出来事だった。でも、その熱い気持ちが私には嬉しかった。
「クールな顔して、ヤキモチやきなんだよね」
「もうやめろって! でもあれ以降、学校ではちょっとした有名カップルになれたんだからいいじゃん」
確かにそうだった。人の噂話しはすごくて、私を『ロミオ&ジュリエット』のヒロインのように扱ったり『裕也と前田先輩を二股かけてた』なんて言われたりした。
「前田先輩、今ではこの町の市会議員らしいよ」
「えっほんと?」
「淳史が言ってたから間違いないよ」
「そう言えば、淳史は今何やってるの?」
「あいつは作り酒屋を継いで、社長になってるよ」
「えっすごいじゃん! 実家継いだんだね・・よく会うの?」
「1年に1回ぐらいのペースで会ってるよ。長老が亡くなってからは、淳史の会社の法律顧問なってるからね」
「そうなんだ」
「今では4人の父親になってるよ」
「えっあの淳史が!」
「驚きだよね」
今も仲良く友人関係にありホッとした。
「早希は? 元気にしてるのかな?」
「早希は元気だよ! 色々あって離婚して、今ではシングルマザー。9歳の男の子がいるんだよ!」
そういって早希の写メを見せた。
「おぉマジで! これが早希? おばさんだね笑」
「もうそういうこと言わないの!」
裕也は昔からひと言多いタイプだ。でも、たしかに20年前はギャルメイクでイケイケだった早希が、普通の格好をしていると違和感もあり、そのギャップがそう言わせたのかもしれない。
「早希もお母さんかぁ・・よく会うの?」
「結構ね、家も近くだからよく会うよ。一番の親友かもしれないね」
「そっかぁ・・みんな元気で良かったよ」
そう言う裕也が少し淋しく見えた・・。二人は車で町を巡った。みんなで行ったカラオケボックス、裕也の家、私の家・・もう私の家以外は残っていなかった。時間の流れが少し残酷に感じた。
「この町こんなに小さかったんだね」
私がポツリ言う。
「そうだね。あの頃はこの町がすべてだったのに・・」
車は国道を走る。懐かしい風に包まれながら・・窓を開けるとあの頃のにおいがするような気がした。メインストリートの少し離れた場所・・二人の目が留まった・・。
「ここも潰れたんだね・・」
裕也が悲しそうに言った。
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