赤いしらゆり

出会い

向日葵

 背中を蛇が這うような、氷が滑り落ちるような感覚。ゾクリと心臓が縮んだ。しかし目が離せなかった。
｢凄い…。｣
玲香と名乗る人物が公開していた絵は美しかった。平凡なテーマを持った絵でさえ、独特な色の付け方と静かに強烈に主張する感情のようなものによって非現実的に見えた。ただぼんやりと絵を描くことで束の間の平穏な心を手に入れようとしている自分とは大きく違っている。何かを必死に主張し、忘れないでと叫んでいるようだった。
 私は一目で心を奪われた。なぜこんな絵を描く人が私の絵を気に入ってくれたのだろう。不可解にすら感じた。
『玲香さんも絵を描くんでしたら、ぜひ一緒に描きたいです！
 通話しながら一緒に作業とかしません？』
ドクドク高鳴る胸に手を置いた。この人はもっと仲良くならないといけない。なぜかそんな風に感じて、さらに突っ込んだ内容のメッセージを送った。
『私、会話とか苦手分野なんですが…。』
少し控えめで丁寧な人だとは思っていたので、この言葉はある程度は予想出来ていた。
『でも、春宮さんと作業してみたいです。』
続けて来たメッセージについ笑ってしまった。

 きっとこの人も同じ気持ちだ。

 確信を持ってスマホに指を滑らせる。いつなら時間があるだろう、スケジュールの確認もしないと。一人きりの自室で少しの緊張と気分の高揚を感じながら、座っている椅子をくるくると回転させて、考える。

 次の絵は明るい向日葵の絵を描こう。
 夏の暑い空気と、近付く積乱雲。そこに太陽に向かって背伸びする向日葵と、その下で影の中からひっそり顔を出す少女。表情はどこか憂いを帯びているが、少女の目はキラキラと輝く。様々な色が混ざり過ぎて、黒く輝く吸い込まれるような瞳―――。
 なんとなくそんなイメージを描いて、私は鼻歌を歌った。