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4月
6 生徒会室
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特別棟に位置し、生徒会の寮を通り過ぎながら長い廊下を歩いていくと大きな扉が現れる。
今、僕は昨日言われた通り生徒会室の前にいる。何度も来たことはあるがこの厳格な雰囲気にドキドキする。
コンコンとノックをし重たい扉を開いた。室内は洋風な会議室のようだ。一人一人の作業机があり、中央に共有スペースとしてソファとテーブルが置いてある。そして隣の部屋にはキッチンと仮眠室なるものがある。いかんせん学園の運営をしているので仕事が多く、ここで寝泊まりもできる。寮まで歩ける距離だが仕事中に寝落ちしてしまうこともあるらしい。こわいこわい。
「来たか。」
「お待ちしてましたよ。」
昨日会った机に向かっていた顔をこちらに向け出迎えてくれた。
「頼ちゃん~!」
「わ!会計様!」
前方から腰に抱きつかれた。ひょいと顔を上げ色素の薄い茶色の目に見つめられる。
「おい、離れろ。」
「やなこった!会長の言うことなんか聞くかよ!」
「このクソガキ!」
「1個しか歳変わらないでしょ!」
ギャーギャーと騒ぎはじめる2人。その間に挟まる僕。あれ、何しに来たんだっけ。
「ちょっといいかげんに……」
「「あ~!頼せんぱーい!」」
2つの高い似たような声が二重奏のように重なって聞こえた。
「頼先輩が猛獣とチャラ男に挟まれてる!」
「助け出そう!」
先程現れた2人が西園寺と会計様をポカポカ叩く。
「おい、やめろ!横川こいつらをどうにかしろ!」
「無理だよ会長~俺も叩かれてるよ~いたいいたい」
そんな2人を押しのけて抱きついてきた陸様と禄様。本当は役職で呼びたいけど2人いるからお名前でお呼びしている。
「「頼先輩奪還作戦大成功~!」」
してやったりとクスクスと笑う姿がかわいい。
「ふわぁ……うる…さい…よ」
騒ぎすぎたからかソファにいた黒い塊が動く。黒い塊こと書記様だ。
「頼…おはよう……」
「おはようございます!」
「なぜ頼にだけ挨拶するんだ。まずは俺だろ。」
「そういう所ですよ、はぁ。」
西園寺と副会長様が夫婦漫才のようなやり取りをする姿はテンポがよくて面白い。
「あの、西園寺、僕はなんのために呼ばれたの?」
場を切り替えるために本題を聞く。この空間で会長のことを西園寺と呼ぶのは僕しかいない。この呼び方は昔からで僕が親衛隊に入ってからも幼なじみたっての希望により続けている。
「あぁ、5月のはじめに新入生歓迎会があるだろう。事前準備のために明日から俺は数日学園を空けるから、その間のことを任せる。なるべく生徒会の奴らと一緒にいろ。」
「会長は過保護ですね。」
「頼ちゃんは会長の窓口みたいなものだからね~」
「分かった!窓口頑張るよ!」
「変なことを教えるな…」
生徒会は仲が良いなぁ。僕の噂を聞いて近づいてくる生徒がいるから、それを心配してくれてるのかな?やさしさが心に染みる。
「仕事も一段落しましたし、休憩にしませんか?」
「「いいね!」」
「お菓子……用意……する」
「では紅茶を淹れますね」
用が済んだらすぐ戻る予定だったが、せっかくなのでここで休憩することにした。
「ごめんなさい、食べ物持ってくればよかったですよね」
「いえ、頼が来てくれるだけでうれしいですよ」
「そうだよ~。というか、会長がいなくなるからもっと頼ちゃんと話せるね~」
「会長…いないから…仕事………増える……」
「た、たしかに……!」
会計様がガーンと効果音がなりそうな落ち込んだ表情をした。
「「仕事やりたくな~い」」
「一般生徒でも扱えるものがあったらお手伝いしますよ!」
「いいんですよ、横川と陸と禄はいつもまじめに仕事してないんですから。そのツケが回ってきたのです。」
「「うわ~ん、きびしい~」」
「副会長様はまるでお母さんみたいですね!」
「お、お母さん?」
しまった、つい思ったことを口に出してしまった。
「ええと、見守ってくれて、導いてくれる感じがお母さんみたいだなぁと。すみません!」
「お母さん……」
悲しそうに俯いてしまったので慌てて弁解した。
「あはは、最高だな!」
「ぶはっ頼ちゃん……お母さんって!」
「横川……」
「ちょ、笑ったの俺だけじゃないよ!会長もでしょ!」
副会長様が会計様を睨みつける。鋭い視線にガタガタと体を震わす会計様。書記様もふふっと笑っている。
「もう、外が暗くなってきたので帰りますね。」
そう言って逃げるように席を立った。
「送っていくから少し待ってろ。」
「え~会長ずるい~」
「あなたは仕事をサボりたいだけでしょう。」
「仕事……しなきゃ……だめ」
「やだ~!」
「ふふふ、また来ますね。お仕事頑張ってください!」
遅い時間なのにまだ仕事をするなんて本当に大変そうだ。今度はお土産でも持っていこう。
生徒会の皆さまに見送られ、寮まで西園寺に送ってもらった。
「ここまででいいよ。」
「まだ部屋まで遠いじゃないか。」
「うん、でも龍二先輩とあんまり会いたくないでしょ。」
「う、たしかにな。じゃあ戻る前に1つ言いたいことがあるんだが」
「なに?」
「明日から数日学園を空けると言ったな。実は新入生歓迎会の準備ではなく、転校生のことで用事で外に行かなければならなくてな。」
「そうなんだ。」
なんでなのかは聞かない方がいいのかな?ここで言うってことは、生徒会の皆さまにも秘密ってことだよね。
「あと、転校生が来たら絶対に近づくな。絶対だ。」
「?分かったよ。」
西園寺が凄い剣幕で言う。迫力があるなぁ。
「では、しっかり食べてしっかり寝るんだぞ。」
「は~い、また明日!」
結局なぜ近づくなと言ったのか聞けなかった。知ってる人が転校してくるのだろうか。その時点では王道転校生なのかどうかは頼には分からなかった。
今、僕は昨日言われた通り生徒会室の前にいる。何度も来たことはあるがこの厳格な雰囲気にドキドキする。
コンコンとノックをし重たい扉を開いた。室内は洋風な会議室のようだ。一人一人の作業机があり、中央に共有スペースとしてソファとテーブルが置いてある。そして隣の部屋にはキッチンと仮眠室なるものがある。いかんせん学園の運営をしているので仕事が多く、ここで寝泊まりもできる。寮まで歩ける距離だが仕事中に寝落ちしてしまうこともあるらしい。こわいこわい。
「来たか。」
「お待ちしてましたよ。」
昨日会った机に向かっていた顔をこちらに向け出迎えてくれた。
「頼ちゃん~!」
「わ!会計様!」
前方から腰に抱きつかれた。ひょいと顔を上げ色素の薄い茶色の目に見つめられる。
「おい、離れろ。」
「やなこった!会長の言うことなんか聞くかよ!」
「このクソガキ!」
「1個しか歳変わらないでしょ!」
ギャーギャーと騒ぎはじめる2人。その間に挟まる僕。あれ、何しに来たんだっけ。
「ちょっといいかげんに……」
「「あ~!頼せんぱーい!」」
2つの高い似たような声が二重奏のように重なって聞こえた。
「頼先輩が猛獣とチャラ男に挟まれてる!」
「助け出そう!」
先程現れた2人が西園寺と会計様をポカポカ叩く。
「おい、やめろ!横川こいつらをどうにかしろ!」
「無理だよ会長~俺も叩かれてるよ~いたいいたい」
そんな2人を押しのけて抱きついてきた陸様と禄様。本当は役職で呼びたいけど2人いるからお名前でお呼びしている。
「「頼先輩奪還作戦大成功~!」」
してやったりとクスクスと笑う姿がかわいい。
「ふわぁ……うる…さい…よ」
騒ぎすぎたからかソファにいた黒い塊が動く。黒い塊こと書記様だ。
「頼…おはよう……」
「おはようございます!」
「なぜ頼にだけ挨拶するんだ。まずは俺だろ。」
「そういう所ですよ、はぁ。」
西園寺と副会長様が夫婦漫才のようなやり取りをする姿はテンポがよくて面白い。
「あの、西園寺、僕はなんのために呼ばれたの?」
場を切り替えるために本題を聞く。この空間で会長のことを西園寺と呼ぶのは僕しかいない。この呼び方は昔からで僕が親衛隊に入ってからも幼なじみたっての希望により続けている。
「あぁ、5月のはじめに新入生歓迎会があるだろう。事前準備のために明日から俺は数日学園を空けるから、その間のことを任せる。なるべく生徒会の奴らと一緒にいろ。」
「会長は過保護ですね。」
「頼ちゃんは会長の窓口みたいなものだからね~」
「分かった!窓口頑張るよ!」
「変なことを教えるな…」
生徒会は仲が良いなぁ。僕の噂を聞いて近づいてくる生徒がいるから、それを心配してくれてるのかな?やさしさが心に染みる。
「仕事も一段落しましたし、休憩にしませんか?」
「「いいね!」」
「お菓子……用意……する」
「では紅茶を淹れますね」
用が済んだらすぐ戻る予定だったが、せっかくなのでここで休憩することにした。
「ごめんなさい、食べ物持ってくればよかったですよね」
「いえ、頼が来てくれるだけでうれしいですよ」
「そうだよ~。というか、会長がいなくなるからもっと頼ちゃんと話せるね~」
「会長…いないから…仕事………増える……」
「た、たしかに……!」
会計様がガーンと効果音がなりそうな落ち込んだ表情をした。
「「仕事やりたくな~い」」
「一般生徒でも扱えるものがあったらお手伝いしますよ!」
「いいんですよ、横川と陸と禄はいつもまじめに仕事してないんですから。そのツケが回ってきたのです。」
「「うわ~ん、きびしい~」」
「副会長様はまるでお母さんみたいですね!」
「お、お母さん?」
しまった、つい思ったことを口に出してしまった。
「ええと、見守ってくれて、導いてくれる感じがお母さんみたいだなぁと。すみません!」
「お母さん……」
悲しそうに俯いてしまったので慌てて弁解した。
「あはは、最高だな!」
「ぶはっ頼ちゃん……お母さんって!」
「横川……」
「ちょ、笑ったの俺だけじゃないよ!会長もでしょ!」
副会長様が会計様を睨みつける。鋭い視線にガタガタと体を震わす会計様。書記様もふふっと笑っている。
「もう、外が暗くなってきたので帰りますね。」
そう言って逃げるように席を立った。
「送っていくから少し待ってろ。」
「え~会長ずるい~」
「あなたは仕事をサボりたいだけでしょう。」
「仕事……しなきゃ……だめ」
「やだ~!」
「ふふふ、また来ますね。お仕事頑張ってください!」
遅い時間なのにまだ仕事をするなんて本当に大変そうだ。今度はお土産でも持っていこう。
生徒会の皆さまに見送られ、寮まで西園寺に送ってもらった。
「ここまででいいよ。」
「まだ部屋まで遠いじゃないか。」
「うん、でも龍二先輩とあんまり会いたくないでしょ。」
「う、たしかにな。じゃあ戻る前に1つ言いたいことがあるんだが」
「なに?」
「明日から数日学園を空けると言ったな。実は新入生歓迎会の準備ではなく、転校生のことで用事で外に行かなければならなくてな。」
「そうなんだ。」
なんでなのかは聞かない方がいいのかな?ここで言うってことは、生徒会の皆さまにも秘密ってことだよね。
「あと、転校生が来たら絶対に近づくな。絶対だ。」
「?分かったよ。」
西園寺が凄い剣幕で言う。迫力があるなぁ。
「では、しっかり食べてしっかり寝るんだぞ。」
「は~い、また明日!」
結局なぜ近づくなと言ったのか聞けなかった。知ってる人が転校してくるのだろうか。その時点では王道転校生なのかどうかは頼には分からなかった。
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