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5月
13 解決
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「……何をしている」
抑えるように言ったが、怒りが漏れ出ているようだ。
「ナニって見た通りだよ、俺が無理やり頼ちゃんを襲ってたの。」
「ちが、」
狼の言葉を違う、と否定しようと声を出そうとするが狼の手が前に出され阻止された。なんでそんな事言うんだよ!勘違いされること言わないで!
頼の赤くなった頬、乱れたワイシャツ、剥がされたスラックス、全てが狼の発言を助長した。
「頼から離れろ。」
「イヤだね。そもそも来るのが遅いんだよ。守る気あんの?」
「お前に言われる筋合いはない。」
「う~ん、また邪魔されちゃったなぁ。ねぇ、また話そうね。頼ちゃん♡」
そう言うと以前と同じように窓から逃げていった。最後までブレないなぁ……。
「頼!」
「西園寺……。」
支えが無くなり倒れそうなところを西園寺に抱きかかえられる。寒くてカタカタと震えてしまう。
「さっき、狼が言ってたのは違うんだ。そこに倒れてる人が千尋くんを襲おうとしてて、それで、」
「あぁ、分かっている。とりあえず体を拭いて、服を着ろ。……間に合わなくてすまなかった。」
「ううん、大丈夫。西園寺も忙しいって分かってるし。」
「……すまない。」
西園寺は申し訳なさそうにしているが、ここに来てもらえただけでありがたい。
「そういえばここにはどうして来たの?」
「それは…歩がここに呼ばれたと聞いて、先に俺が来たんだ。」
「そうだったんだ。」
歩……まさにこの騒乱の渦中の人である。その人がここに来ていたらどうなってただろうか。漫画みたいにみんなを倒した?それとも被害にあってしまう?人となりを知らないからなんとも言えない。
「ねぇ、僕転校生と話がしたい。」
「だめだ。」
「なんで?」
「それは……お、俺があいつに惚れてて、まだ口説いてる途中だからだ!」
えー!!たしかに骨抜きにされてるとは聞いていたけど、実際に聞くと衝撃的だなぁ。みんな聞いたらあの生徒会長様が!?ってなるだろうな。
「そうだとしても新入生歓迎会が終わったら会っていいって言ったじゃん!」
「いや、言ってない。」
たしかに新入生歓迎会まで生徒会室に近づくなって言ってたけど転校生に会わせるとは言ってないかも!ゴリ押しで何とかならないかな?
「会いたい!」
「だめだ。」
「う~!じゃあ西園寺から転校生に言っておいて!気をつけてって!」
「…あぁ、分かった。」
「あと、生徒会の皆様にも、好きなら護ってあげて!っていうのと、今こんな騒ぎになってるのは自分たちの所為だって分かってる?って!」
「すまない、分かった。しっかり言って聞かせる。そろそろここを出よう。保健室に向かうからな。」
「うん。ってうわ!」
まさか西園寺は僕をいわゆるお姫様抱っこというものだ。恥ずかしい!
「このまま廊下を歩くっていうの?!」
「そうだ。あぁ、すでに風紀には乾が連絡してあるし、天知は保健室にいると連絡がきているから心配はいらない。」
「ありがとう……ってそうじゃなくてこの体制でってこと!」
「なにか問題があるのか?そもそもお前は歩けないだろう。無体を働かれたんだ。まだつらいか?腰は痛くないか?」
ん?腰?もしかして僕が戦ったと思ってる?たしかにほっぺが怪我してるから勘違いしちゃうかもな~。実際は一方的に殴られただけなんだけど……。
「う~ん、ほっぺは痛いけどそれ以外はあんまりいなくないかな~?」
「そうか、では保健室へ向かう。あまりあばれるなよ。」
西園寺はそう言って歩き出した。第三棟から保健室のある第一棟まで歩くため10分以上はかかってしまう。重いだろうなぁ。下ろしてくれないかな。
保健室のドアの前に着くと下ろしてくれるかと思っていたがそのままドアを開けた。
「鮎川くんと西園寺くんですね。お待ちしてました。」
「頼!」
「すまないがそこのベッドを使わせてもらう。」
「はい。鮎川くん、お身体は大丈夫ですか。私がしっかりケアしますから。ご心配なさらず。」
「は、はい……。」
正直僕はお姫様抱っこされてるところを見られて萎んでいたため前を見れなかったが声を聞く限り保健室には渋谷先生と龍二先輩がいると分かる。
「頼、無事でよかった」
「龍二先輩くるしいです……」
「急に抱きつくやつがあるか!」
ベッドに乗せられた後龍二先輩と目が合うと抱きしめられた。力が強く身動きがとれない。
「西園寺が気をつけていれば!いや、俺ももっと危機感を持っていたら……。」
「すまない。このことはおれの責任だ。」
「誰のせいでもないですよ。というか責任とるのは千尋くんですから!僕は大丈夫ですし。それより紫音先輩は無事ですか?」
「あぁ。今は寝ている。同室の朝日が迎えにくるから大丈夫だ。」
「千尋くんは?」
「寮の自室に戻ってもらった。お前に謝罪をしたいそうだが明日にしてもらった。事情は聞いているが会いたくなかったら俺が代わりに行ってやる。」
「ありがとうございます。でも僕が千尋くんと話をしますね。」
「それと第三棟の見回りのやつらは風紀をやめさせる。なんなら不良とともに退学させるからな。乾も気に入らなかったら俺に言え。風紀で監視するし、退学もさせる。心配はいらない。ゆっくり休め。」
え、やりすぎでは?当然のように言ってのける龍二先輩はちょっとこわい。というか退学?
「あの不良達って退学するんですか?それってもう変えられないんですか?」
「そうだ。本人達が反省して退学すると言っている。」
ここの学園を卒業した者は明るい未来が待っている。その反対に不祥事を起こして退学となったら……。しかし、本人達が希望しているのなら決定事項であろう。
「手当てをしたらそのままここで休むか?」
「いや寮に戻ります。龍二先輩のご飯食べたいので!」
そうか、とにっこり破顔した龍二先輩。さっきの雰囲気がやわらいだようだ。
そして渋谷先生に手当てをしてもらった。
「やはりここで少し休んだらどうですか」
「いえ、私が連れて帰るので大丈夫です。」
「そうですか……では気をつけてくださいね。」
龍二先輩がはいと返事をすると僕を抱き上げた。本日2回目のお姫様抱っこである。なにか失ったような感覚に陥るが気のせい、気のせい。
「西園寺ももう戻れ。」
「言われなくても分かっている。くれぐれも頼を落とすなよ」
「頼と同室じゃないからって突っかかっくるな。嫉妬は見にくいぞ。こっちは頼の胃袋を掴んでるんだ。」
「クソ!」
「えっと~……」
なぜだか言い争いが始まってしまった。早く寮に帰らせて~!
抑えるように言ったが、怒りが漏れ出ているようだ。
「ナニって見た通りだよ、俺が無理やり頼ちゃんを襲ってたの。」
「ちが、」
狼の言葉を違う、と否定しようと声を出そうとするが狼の手が前に出され阻止された。なんでそんな事言うんだよ!勘違いされること言わないで!
頼の赤くなった頬、乱れたワイシャツ、剥がされたスラックス、全てが狼の発言を助長した。
「頼から離れろ。」
「イヤだね。そもそも来るのが遅いんだよ。守る気あんの?」
「お前に言われる筋合いはない。」
「う~ん、また邪魔されちゃったなぁ。ねぇ、また話そうね。頼ちゃん♡」
そう言うと以前と同じように窓から逃げていった。最後までブレないなぁ……。
「頼!」
「西園寺……。」
支えが無くなり倒れそうなところを西園寺に抱きかかえられる。寒くてカタカタと震えてしまう。
「さっき、狼が言ってたのは違うんだ。そこに倒れてる人が千尋くんを襲おうとしてて、それで、」
「あぁ、分かっている。とりあえず体を拭いて、服を着ろ。……間に合わなくてすまなかった。」
「ううん、大丈夫。西園寺も忙しいって分かってるし。」
「……すまない。」
西園寺は申し訳なさそうにしているが、ここに来てもらえただけでありがたい。
「そういえばここにはどうして来たの?」
「それは…歩がここに呼ばれたと聞いて、先に俺が来たんだ。」
「そうだったんだ。」
歩……まさにこの騒乱の渦中の人である。その人がここに来ていたらどうなってただろうか。漫画みたいにみんなを倒した?それとも被害にあってしまう?人となりを知らないからなんとも言えない。
「ねぇ、僕転校生と話がしたい。」
「だめだ。」
「なんで?」
「それは……お、俺があいつに惚れてて、まだ口説いてる途中だからだ!」
えー!!たしかに骨抜きにされてるとは聞いていたけど、実際に聞くと衝撃的だなぁ。みんな聞いたらあの生徒会長様が!?ってなるだろうな。
「そうだとしても新入生歓迎会が終わったら会っていいって言ったじゃん!」
「いや、言ってない。」
たしかに新入生歓迎会まで生徒会室に近づくなって言ってたけど転校生に会わせるとは言ってないかも!ゴリ押しで何とかならないかな?
「会いたい!」
「だめだ。」
「う~!じゃあ西園寺から転校生に言っておいて!気をつけてって!」
「…あぁ、分かった。」
「あと、生徒会の皆様にも、好きなら護ってあげて!っていうのと、今こんな騒ぎになってるのは自分たちの所為だって分かってる?って!」
「すまない、分かった。しっかり言って聞かせる。そろそろここを出よう。保健室に向かうからな。」
「うん。ってうわ!」
まさか西園寺は僕をいわゆるお姫様抱っこというものだ。恥ずかしい!
「このまま廊下を歩くっていうの?!」
「そうだ。あぁ、すでに風紀には乾が連絡してあるし、天知は保健室にいると連絡がきているから心配はいらない。」
「ありがとう……ってそうじゃなくてこの体制でってこと!」
「なにか問題があるのか?そもそもお前は歩けないだろう。無体を働かれたんだ。まだつらいか?腰は痛くないか?」
ん?腰?もしかして僕が戦ったと思ってる?たしかにほっぺが怪我してるから勘違いしちゃうかもな~。実際は一方的に殴られただけなんだけど……。
「う~ん、ほっぺは痛いけどそれ以外はあんまりいなくないかな~?」
「そうか、では保健室へ向かう。あまりあばれるなよ。」
西園寺はそう言って歩き出した。第三棟から保健室のある第一棟まで歩くため10分以上はかかってしまう。重いだろうなぁ。下ろしてくれないかな。
保健室のドアの前に着くと下ろしてくれるかと思っていたがそのままドアを開けた。
「鮎川くんと西園寺くんですね。お待ちしてました。」
「頼!」
「すまないがそこのベッドを使わせてもらう。」
「はい。鮎川くん、お身体は大丈夫ですか。私がしっかりケアしますから。ご心配なさらず。」
「は、はい……。」
正直僕はお姫様抱っこされてるところを見られて萎んでいたため前を見れなかったが声を聞く限り保健室には渋谷先生と龍二先輩がいると分かる。
「頼、無事でよかった」
「龍二先輩くるしいです……」
「急に抱きつくやつがあるか!」
ベッドに乗せられた後龍二先輩と目が合うと抱きしめられた。力が強く身動きがとれない。
「西園寺が気をつけていれば!いや、俺ももっと危機感を持っていたら……。」
「すまない。このことはおれの責任だ。」
「誰のせいでもないですよ。というか責任とるのは千尋くんですから!僕は大丈夫ですし。それより紫音先輩は無事ですか?」
「あぁ。今は寝ている。同室の朝日が迎えにくるから大丈夫だ。」
「千尋くんは?」
「寮の自室に戻ってもらった。お前に謝罪をしたいそうだが明日にしてもらった。事情は聞いているが会いたくなかったら俺が代わりに行ってやる。」
「ありがとうございます。でも僕が千尋くんと話をしますね。」
「それと第三棟の見回りのやつらは風紀をやめさせる。なんなら不良とともに退学させるからな。乾も気に入らなかったら俺に言え。風紀で監視するし、退学もさせる。心配はいらない。ゆっくり休め。」
え、やりすぎでは?当然のように言ってのける龍二先輩はちょっとこわい。というか退学?
「あの不良達って退学するんですか?それってもう変えられないんですか?」
「そうだ。本人達が反省して退学すると言っている。」
ここの学園を卒業した者は明るい未来が待っている。その反対に不祥事を起こして退学となったら……。しかし、本人達が希望しているのなら決定事項であろう。
「手当てをしたらそのままここで休むか?」
「いや寮に戻ります。龍二先輩のご飯食べたいので!」
そうか、とにっこり破顔した龍二先輩。さっきの雰囲気がやわらいだようだ。
そして渋谷先生に手当てをしてもらった。
「やはりここで少し休んだらどうですか」
「いえ、私が連れて帰るので大丈夫です。」
「そうですか……では気をつけてくださいね。」
龍二先輩がはいと返事をすると僕を抱き上げた。本日2回目のお姫様抱っこである。なにか失ったような感覚に陥るが気のせい、気のせい。
「西園寺ももう戻れ。」
「言われなくても分かっている。くれぐれも頼を落とすなよ」
「頼と同室じゃないからって突っかかっくるな。嫉妬は見にくいぞ。こっちは頼の胃袋を掴んでるんだ。」
「クソ!」
「えっと~……」
なぜだか言い争いが始まってしまった。早く寮に帰らせて~!
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