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哀しみの散花
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「ハァ、アア、ハァン、アアーーー!」
「ハァ、凄い・・・アナベル、ハァ、ハァ」
王はアナベルの身体を貪る。繋がって場所が淫猥にグチョグチョと濡れた音をたてている。
「イク、イクぞ!」
王は大きく腰をひねり、アナベルの膣奥に激しく迸った。
「あああーーー!」
アナベルも快感に身を震わせた。攻められれば身体は反応する。身の奥に王の迸りを感じながら、快感に溺れた自分を心の中で責めていた。
(私はやはり淫売だ・・・ラウールさん)
心の中でラウールに謝りながら、それでも王に身を委ねる。それが、娘のアンナをラウールの元に戻す条件だったから。
「アウッ!」
いきなり乳房を鷲掴みにされた。
「何を考えている。私に集中しろ!」
「は、はい・・・」
今、放ったばかりなのに、すでに力をもたげ始めている。そのいきり立った雄芯をアナベルの襞がヤワヤワと締め付けていく。
「まったくお前の身体は卑猥だな。底なし沼の様にグイグイ引っ張られる」
「そ、そんな事・・・」
「見ろ。今も私のモノを美味そうに締め付けて来るではないか。まだ物足りなそうだな」
「アウ、あああーー、ふ、深いですーー!」
「それはこちらの台詞だ」
王はこれでもかとアナベルを攻め立てる。激しい抽送にアナベルも腰をひねり、応戦する。
「ハヒ、ハヒィーーー、い、良いーーー!」
アナベルは馬乗りになり、王の雄芯を奥深く咥えたまま、上下に激しく腰を揺らし続ける。
王は下からアナベルの乳房を掴んだ。その痛みさえ今は心地よいと感じてしまうアナベルだった。
何戦かの後、アナベルは疲れた身体を投げ出し、眠りに落ちていった。
そこへギエルが食事などが入ったトレイを運んで来た。
「今日は朝からぶっ通しですが、大丈夫ですか」
「心配ない。王妃は帝国の父から娘の誕生日を祝いたいと招待状が来たからと、朝早くにサージルに向かっていないからな」
「ほう、ローラ王女の」
「何が王女だ。私には何の関係もない娘だ。それより持ってきたか?」
「はい。これですか」
ギエルは塗り薬の入った 小瓶を取り出した。
「それは何ですか?」
「以前、カールがアナベルに使ってた媚薬だ」
「媚薬? 今更ですか」
「思い出したんだ。妃嬪館でアナベルを抱いた時、アナベルはカールの媚薬を塗られて自我を無くしていた。激しい性欲でここをひくつかせていた事をな」
王はアナベルの女陰に手をやり、だらしなく広がった太腿を撫で、自分の放った精液で濡れている秘部に目をやる。
王は媚薬をすくい取ると、アナベルの秘部に擦り込んだ。ピクンとアナベルの身体が反応する。
(何だろう・・・? 身体が熱い・・・)
アナベルは目覚めると、身体の異常に気がついた。
身体が火照って、そして異常に興奮している。
(ほ、欲しい・・・ここに・・欲しい・・・)
アナベルは自分で自分の股間を慰める。
(どうしよう・・・指、指じゃ、足らない)
股間をまさぐり、もう片方の手で乳房を揉み、乳首を摘む。
(あ、あああーー・・・)
「アナベル、どうした、欲しいのかい」
「あ、ああ、あ、ラウールさん」
「そうだ。ラウールだ」
(今だけはラウールでも良いか)
アナベルは強制される事無く、王の下半身に手を伸ばし、王の雄芯をさらけ出すと、まだ力を持たないそれを自ら口中に含んだ。
(欲しい、欲しい、これを挿れて欲しい)
「ング、ンググ、アウウ・・・」
「アナベル・・・強引だな、フフ、フフフ」
美味しそうに舐め、チュウチュウと吸うその姿は男を喜ばす娼婦そのものだ。
チャポンと大きくなったモノを王はアナベルの口から取り出すと、アナベルを仰向けにし、濡れそぼって男を待ちわびて妖しく蠢いてい女陰に突き立てた。
「あああーーーー、い、いいーーー!」
滑らかに王を受け入れ、膣奥の襞が王の芯をきつく締め上げる。
「くっ、なんて締め付けだ。アナベル、素晴らしい身体だ」
「ああーーん・・・あっ、あん、もっと、もっとぉぉーー!」
アナベルの欲求は果てしない。王は笑いながらアナベルの欲求に応える。
ラウールは城内をトーマを連れて歩いていた。もちろん、アナベルを救うために。
「お、おい、許可も無しに城に入るな!」
背後からギエルが怒りで顔を赤くしながら追いかけてくる。
「おい、何処へ行く気だ!」
人気のない、今は閉ざされた塔の方向へ迷う事無く歩いて行く。突き当たった階段を下へ降りて行くと、壁と一番下を蹴飛ばすと、ぽっかり空いて穴に手を入れ鎖を引っ張った。
「!!」
ギエルの顔色が変わる。
天井が開き、ハシゴが降りてきた。迷う事無くラウールはハシゴを登って行く。
(な、なんで、秘密の部屋の場所が・・・)
慌ててギエルもその後を追う。
「お、おい、待て!」
ラウールはドアの前に来ると、戸惑う事無くドアを開けた。
「ん? ギエル、食事にはまだ早い・・・」
王は身支度を済ませ、椅子に座っていた。ギエルが来たかと思い振り向くと、そこにいるはずのないラウールの姿を認め、驚きを隠せない。
「何故、お前が・・・!」
「妻を取り戻しに来た」
「妻? 妻とはあれか」
王は笑いを堪えベッドの上のアナベルを指さした。ベッドの上では王との激しいセックスを終えた後も、アナベルの欲求は止まらない。そんなアナベルに王は媚薬を塗りつけた張り型を与えた。その張り型をアナベルは自ら秘部に押し当て出し入れを繰り返している。
「とんだ淫乱だ。あれがお前の妻か、クフフフ」
「アナベル!」
ラウールはアナベルに向かって叫んだ。
「あ、アウ、ア、アア、ラ、ラウールさん、ラウールさん、好き、アア、アン、ああ・・・」
目は焦点が合ってない、息遣いも荒く、ヨダレを垂らし、張り型で陰部を攻めるのはやめない。
(薬を使ったか・・・)
アナベルに近づこうとするのを王が阻む。
「アナベルは渡さない。私の子を産むことの出来る女の子だからな」
「薬漬けにしてか? ふざけるな!」
王を押しのけて近づこうとすると、王は剣を抜きラウールの行く手を遮る。
「渡さない。王の命令だ、下がれ!」
「・・・お前は人間なのか」
「ハハハ、私はこの国の王だ!」
「・・・マクシミリアム!」
「?・・・な、に?」
突然王は自分の名前を呼ばれてうろたえる。
ラウールは顔に巻いていた布を取り除く。
「!・・・ウゲェ!」
王の顔が驚愕と恐怖で歪む。
「に、に・・・グレアム・・・兄さん?」
十年以上・・・いや、正確に言えば十七年前に殺したはずの兄の顔がそこにあった。
「死んだと思ったか。生憎と生き残った」
「ひ、ひぃ、ひ……」
顔は似ていない。似ているとすればその赤い髪だろう。
「十七年前、お前に毒を盛られ、館に火を放たれた。死んでもいいと思ってた、そんなに王になりたいのなら、そんなに俺が邪魔だと思うのなら、死んでもいいと・・・」
「・・・なら、なんで生きてる?」
「助けられた。俺の世話係だったトーマに」
ラウールは剣を物ともせずに近寄って行く。
「アナベルを返してくれ。そうすれば何も望まない。俺の願いは家族で平穏に生きていく事だけだ」
「・・・」
何も答えない王の横を通りアナベルに近付く。
「・・・・・るか」
「何?」
「そんな言葉信じられるか!」
王は持っていた剣の切っ先をラウールの脇腹に突き立てた。
「うっ・・・!」
「もう一度死ねぇぇーー!」
引き抜き、再度ラウールに刃を振るう。だが、それをラウールは痛みを堪えて避けると、剣で応戦する。
「マクシミリアム……」
「この国の王はこの私だ。下がれ、亡霊め!」
二人の剣が交差し、カチンとぶつかり合ったところから火花が散る。
「ギエル!」
「ふぁ、ふぁい!」
「アナベルを連れて逃げろ!」
「えっ?」
ギエルはアナベルを見た。男二人が戦っているにも関わらず、アナベルは自分の股間を慰める手は止まらない。
「わかりました」
ギエルはアナベルに当て身を打って気絶させると、背に担ぎ降りて行く。
「待て!」
アナベルを背負ったギエルを追うとするが王が阻み、ラウールに向かってランプを投げつけた。油が飛び散り、カーテンやベッドなどの布に引火する。
瞬く間に燃え広がる炎。
「ここでもう一度死ね!」
「くっ!」
激しい攻防。燃え広がる熱い部屋の中、二人の剣が鋭く交差する。
「くっ!」
王の剣先がラウールの皮膚を切り裂く。ガクリと膝をつくラウールに向かって剣を振りかぶる。
「ハハハ、最後だ、ラウール!」
それを見たラウールは素早く剣を王の腹部に突き立てた。
「!」
刺された事が信じられないのか、一歩二歩と後ずさる。炎の勢いが増し、熱さに耐えきれず、周りの壁が崩れ始めて行く。
ラウールは傷口を抑え、ハシゴに脚を掛け、弟に手を伸ばした。
「マクシミリアム!」
だが王はその言葉を無視し、燃え盛る炎の中に身を投じた。
「マクシミリアムーー!」
ガラガラと塔の壁が音を立てて崩れる。
ラウールは下へ降り立つ。中から火の粉が舞い落ちてくる。ここが、炎に包まれるのも時間の問題だ。傷口を抑え、アナベルを連れ去ったギエルを追うべく歩き始めた。しばらく歩いて行くとトーマが走って来るのが見えた。
「ボス!」
「トーマ・・・アナベルは・・・?」
「大丈夫です。保護しました。ボス、手当を……」
「あ、ああ・・・」
ギエルはアナベルを背負って逃げた。それを追ってトーマも後を追った。
「クッソー、どこへ逃げればいいんだ」
よそ見をしていたギエルは誰かとぶつかった。
「どこ見てる!」
アナベルを床に落とし、慌てて背負うとして、背中を掴まれた。
「アナベル、アナベル、アナベルだーー!」
「! カール!」
アナベルに近寄ろうとするカールを押しのけて、再び背負うとするギエルにカールは刃物を突き立てた。「!」
「アナベルは僕のものだ。ずーっと探してた。奪おうとする奴は誰であろうと許さない!」
崩れ落ちるギエルを尻目に、アナベルを抱き上げた。
「アナベル・・・僕の・・・」
抱いて歩き出すカールの後ろから、ギエルがヨタヨタと立ち上がった。
「ゆ、ゆ、許さない・・・カール・・・」
カールが落としたナイフを拾い上げ、今度はギエルがカールを背後から刺した。
「ギャッ!」
カールはアナベルを抱いたままその場に崩れ落ちた。
「はぁ、はぁ、ば、馬鹿め・・・」
血だらけの刃物を握りしめてギエルは事切れた。
(何とおぞましい・・・)
トーマはアナベルを救い出すとその場を離れた。アナベルに執着した者の哀れな末路だった。
「ボス、早くこの場を去りましょう。火が拡大してます」
「そうだな・・・」
駆けつけてきたラウールや手下の助けを借りて城を脱出する。火の手は更に拡大しつつある。
ラウールは心の中で思った。
(こんな忌まわし城なんで燃えおちてしまえばいい)
「ハァ、凄い・・・アナベル、ハァ、ハァ」
王はアナベルの身体を貪る。繋がって場所が淫猥にグチョグチョと濡れた音をたてている。
「イク、イクぞ!」
王は大きく腰をひねり、アナベルの膣奥に激しく迸った。
「あああーーー!」
アナベルも快感に身を震わせた。攻められれば身体は反応する。身の奥に王の迸りを感じながら、快感に溺れた自分を心の中で責めていた。
(私はやはり淫売だ・・・ラウールさん)
心の中でラウールに謝りながら、それでも王に身を委ねる。それが、娘のアンナをラウールの元に戻す条件だったから。
「アウッ!」
いきなり乳房を鷲掴みにされた。
「何を考えている。私に集中しろ!」
「は、はい・・・」
今、放ったばかりなのに、すでに力をもたげ始めている。そのいきり立った雄芯をアナベルの襞がヤワヤワと締め付けていく。
「まったくお前の身体は卑猥だな。底なし沼の様にグイグイ引っ張られる」
「そ、そんな事・・・」
「見ろ。今も私のモノを美味そうに締め付けて来るではないか。まだ物足りなそうだな」
「アウ、あああーー、ふ、深いですーー!」
「それはこちらの台詞だ」
王はこれでもかとアナベルを攻め立てる。激しい抽送にアナベルも腰をひねり、応戦する。
「ハヒ、ハヒィーーー、い、良いーーー!」
アナベルは馬乗りになり、王の雄芯を奥深く咥えたまま、上下に激しく腰を揺らし続ける。
王は下からアナベルの乳房を掴んだ。その痛みさえ今は心地よいと感じてしまうアナベルだった。
何戦かの後、アナベルは疲れた身体を投げ出し、眠りに落ちていった。
そこへギエルが食事などが入ったトレイを運んで来た。
「今日は朝からぶっ通しですが、大丈夫ですか」
「心配ない。王妃は帝国の父から娘の誕生日を祝いたいと招待状が来たからと、朝早くにサージルに向かっていないからな」
「ほう、ローラ王女の」
「何が王女だ。私には何の関係もない娘だ。それより持ってきたか?」
「はい。これですか」
ギエルは塗り薬の入った 小瓶を取り出した。
「それは何ですか?」
「以前、カールがアナベルに使ってた媚薬だ」
「媚薬? 今更ですか」
「思い出したんだ。妃嬪館でアナベルを抱いた時、アナベルはカールの媚薬を塗られて自我を無くしていた。激しい性欲でここをひくつかせていた事をな」
王はアナベルの女陰に手をやり、だらしなく広がった太腿を撫で、自分の放った精液で濡れている秘部に目をやる。
王は媚薬をすくい取ると、アナベルの秘部に擦り込んだ。ピクンとアナベルの身体が反応する。
(何だろう・・・? 身体が熱い・・・)
アナベルは目覚めると、身体の異常に気がついた。
身体が火照って、そして異常に興奮している。
(ほ、欲しい・・・ここに・・欲しい・・・)
アナベルは自分で自分の股間を慰める。
(どうしよう・・・指、指じゃ、足らない)
股間をまさぐり、もう片方の手で乳房を揉み、乳首を摘む。
(あ、あああーー・・・)
「アナベル、どうした、欲しいのかい」
「あ、ああ、あ、ラウールさん」
「そうだ。ラウールだ」
(今だけはラウールでも良いか)
アナベルは強制される事無く、王の下半身に手を伸ばし、王の雄芯をさらけ出すと、まだ力を持たないそれを自ら口中に含んだ。
(欲しい、欲しい、これを挿れて欲しい)
「ング、ンググ、アウウ・・・」
「アナベル・・・強引だな、フフ、フフフ」
美味しそうに舐め、チュウチュウと吸うその姿は男を喜ばす娼婦そのものだ。
チャポンと大きくなったモノを王はアナベルの口から取り出すと、アナベルを仰向けにし、濡れそぼって男を待ちわびて妖しく蠢いてい女陰に突き立てた。
「あああーーーー、い、いいーーー!」
滑らかに王を受け入れ、膣奥の襞が王の芯をきつく締め上げる。
「くっ、なんて締め付けだ。アナベル、素晴らしい身体だ」
「ああーーん・・・あっ、あん、もっと、もっとぉぉーー!」
アナベルの欲求は果てしない。王は笑いながらアナベルの欲求に応える。
ラウールは城内をトーマを連れて歩いていた。もちろん、アナベルを救うために。
「お、おい、許可も無しに城に入るな!」
背後からギエルが怒りで顔を赤くしながら追いかけてくる。
「おい、何処へ行く気だ!」
人気のない、今は閉ざされた塔の方向へ迷う事無く歩いて行く。突き当たった階段を下へ降りて行くと、壁と一番下を蹴飛ばすと、ぽっかり空いて穴に手を入れ鎖を引っ張った。
「!!」
ギエルの顔色が変わる。
天井が開き、ハシゴが降りてきた。迷う事無くラウールはハシゴを登って行く。
(な、なんで、秘密の部屋の場所が・・・)
慌ててギエルもその後を追う。
「お、おい、待て!」
ラウールはドアの前に来ると、戸惑う事無くドアを開けた。
「ん? ギエル、食事にはまだ早い・・・」
王は身支度を済ませ、椅子に座っていた。ギエルが来たかと思い振り向くと、そこにいるはずのないラウールの姿を認め、驚きを隠せない。
「何故、お前が・・・!」
「妻を取り戻しに来た」
「妻? 妻とはあれか」
王は笑いを堪えベッドの上のアナベルを指さした。ベッドの上では王との激しいセックスを終えた後も、アナベルの欲求は止まらない。そんなアナベルに王は媚薬を塗りつけた張り型を与えた。その張り型をアナベルは自ら秘部に押し当て出し入れを繰り返している。
「とんだ淫乱だ。あれがお前の妻か、クフフフ」
「アナベル!」
ラウールはアナベルに向かって叫んだ。
「あ、アウ、ア、アア、ラ、ラウールさん、ラウールさん、好き、アア、アン、ああ・・・」
目は焦点が合ってない、息遣いも荒く、ヨダレを垂らし、張り型で陰部を攻めるのはやめない。
(薬を使ったか・・・)
アナベルに近づこうとするのを王が阻む。
「アナベルは渡さない。私の子を産むことの出来る女の子だからな」
「薬漬けにしてか? ふざけるな!」
王を押しのけて近づこうとすると、王は剣を抜きラウールの行く手を遮る。
「渡さない。王の命令だ、下がれ!」
「・・・お前は人間なのか」
「ハハハ、私はこの国の王だ!」
「・・・マクシミリアム!」
「?・・・な、に?」
突然王は自分の名前を呼ばれてうろたえる。
ラウールは顔に巻いていた布を取り除く。
「!・・・ウゲェ!」
王の顔が驚愕と恐怖で歪む。
「に、に・・・グレアム・・・兄さん?」
十年以上・・・いや、正確に言えば十七年前に殺したはずの兄の顔がそこにあった。
「死んだと思ったか。生憎と生き残った」
「ひ、ひぃ、ひ……」
顔は似ていない。似ているとすればその赤い髪だろう。
「十七年前、お前に毒を盛られ、館に火を放たれた。死んでもいいと思ってた、そんなに王になりたいのなら、そんなに俺が邪魔だと思うのなら、死んでもいいと・・・」
「・・・なら、なんで生きてる?」
「助けられた。俺の世話係だったトーマに」
ラウールは剣を物ともせずに近寄って行く。
「アナベルを返してくれ。そうすれば何も望まない。俺の願いは家族で平穏に生きていく事だけだ」
「・・・」
何も答えない王の横を通りアナベルに近付く。
「・・・・・るか」
「何?」
「そんな言葉信じられるか!」
王は持っていた剣の切っ先をラウールの脇腹に突き立てた。
「うっ・・・!」
「もう一度死ねぇぇーー!」
引き抜き、再度ラウールに刃を振るう。だが、それをラウールは痛みを堪えて避けると、剣で応戦する。
「マクシミリアム……」
「この国の王はこの私だ。下がれ、亡霊め!」
二人の剣が交差し、カチンとぶつかり合ったところから火花が散る。
「ギエル!」
「ふぁ、ふぁい!」
「アナベルを連れて逃げろ!」
「えっ?」
ギエルはアナベルを見た。男二人が戦っているにも関わらず、アナベルは自分の股間を慰める手は止まらない。
「わかりました」
ギエルはアナベルに当て身を打って気絶させると、背に担ぎ降りて行く。
「待て!」
アナベルを背負ったギエルを追うとするが王が阻み、ラウールに向かってランプを投げつけた。油が飛び散り、カーテンやベッドなどの布に引火する。
瞬く間に燃え広がる炎。
「ここでもう一度死ね!」
「くっ!」
激しい攻防。燃え広がる熱い部屋の中、二人の剣が鋭く交差する。
「くっ!」
王の剣先がラウールの皮膚を切り裂く。ガクリと膝をつくラウールに向かって剣を振りかぶる。
「ハハハ、最後だ、ラウール!」
それを見たラウールは素早く剣を王の腹部に突き立てた。
「!」
刺された事が信じられないのか、一歩二歩と後ずさる。炎の勢いが増し、熱さに耐えきれず、周りの壁が崩れ始めて行く。
ラウールは傷口を抑え、ハシゴに脚を掛け、弟に手を伸ばした。
「マクシミリアム!」
だが王はその言葉を無視し、燃え盛る炎の中に身を投じた。
「マクシミリアムーー!」
ガラガラと塔の壁が音を立てて崩れる。
ラウールは下へ降り立つ。中から火の粉が舞い落ちてくる。ここが、炎に包まれるのも時間の問題だ。傷口を抑え、アナベルを連れ去ったギエルを追うべく歩き始めた。しばらく歩いて行くとトーマが走って来るのが見えた。
「ボス!」
「トーマ・・・アナベルは・・・?」
「大丈夫です。保護しました。ボス、手当を……」
「あ、ああ・・・」
ギエルはアナベルを背負って逃げた。それを追ってトーマも後を追った。
「クッソー、どこへ逃げればいいんだ」
よそ見をしていたギエルは誰かとぶつかった。
「どこ見てる!」
アナベルを床に落とし、慌てて背負うとして、背中を掴まれた。
「アナベル、アナベル、アナベルだーー!」
「! カール!」
アナベルに近寄ろうとするカールを押しのけて、再び背負うとするギエルにカールは刃物を突き立てた。「!」
「アナベルは僕のものだ。ずーっと探してた。奪おうとする奴は誰であろうと許さない!」
崩れ落ちるギエルを尻目に、アナベルを抱き上げた。
「アナベル・・・僕の・・・」
抱いて歩き出すカールの後ろから、ギエルがヨタヨタと立ち上がった。
「ゆ、ゆ、許さない・・・カール・・・」
カールが落としたナイフを拾い上げ、今度はギエルがカールを背後から刺した。
「ギャッ!」
カールはアナベルを抱いたままその場に崩れ落ちた。
「はぁ、はぁ、ば、馬鹿め・・・」
血だらけの刃物を握りしめてギエルは事切れた。
(何とおぞましい・・・)
トーマはアナベルを救い出すとその場を離れた。アナベルに執着した者の哀れな末路だった。
「ボス、早くこの場を去りましょう。火が拡大してます」
「そうだな・・・」
駆けつけてきたラウールや手下の助けを借りて城を脱出する。火の手は更に拡大しつつある。
ラウールは心の中で思った。
(こんな忌まわし城なんで燃えおちてしまえばいい)
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