27 / 30
幸せの場所
しおりを挟む
帰りが夜になってしまった。悠はただいまと声を掛けながら部屋に入る。部屋は明るく、英がコーヒーを飲みながら本を読んでいる。
(もしかしたら待っててくれた)
「ただいま帰りました」
「お帰り、悠。無事すんだようだな」
「はい。家族全員でお参りも出来ました。あと、新しいお位牌も出来上がりました」
「黒檀か」
「はい。爺ちゃんが憧れていたんで、できて良かったです」
「そうか。頑張ったな」
「へへへ」
頭を撫でられるととても嬉しい。
「今日はお酒じゃ無いんですね」
「お前が帰ってくるのに酔って出迎えられないからな」
そんな他愛も無い言葉も嬉しい。英の手が悠の身体に回され優しく抱きしめられた。
「あ………」
英の胸元に顔が押し当てられると、英の甘い体臭がほのかに悠の鼻をくすぐる。
(どうしよう……ドキドキが止まらない)
そう思っていると顔を上げられキスされる。口を開けられ舌を吸われる。頭がクラクラする。顔が上気するのが分かる。唇が離れる時、安堵と同時に物足りなさを覚えるのは何故なのか。
「風呂に入って今夜はゆっくり寝ると良い」
「・・・はい」
温もりが、匂いが、離れて行く。
「ふわぁ………」
風呂に浸かりながら悠は自分の尻に手を伸ばして触った。
「お尻って……」
女性と違って男には男性器を迎え入れる場所が無い。
「光さん達もしてるのかな」
恋人同士なら相手の身体に触りたい、キスしたい、そして最後はセックスしたいのは自然の摂理だ。
「英さんは俺で満足してるのかな?」
考えすぎて長湯になってしまった。慌てて出てのぼせた身体に冷たい水が気持ちいい。
それでもベッドに入っても中々寝付く事はできなかった。
「わー、柿だ!」
「お土産に沢山もらったので」
納骨が終わったあと、また友達から果物や干物などを沢山貰ったのだ。
「柿って美味しいけど皮剥くの難しいよね」
そうだ。柿は滑り易いので慎重に剥かないと指を切る。今、食卓には二人きりだ。そこで悠は光に尋ねてみる。
「あ、あの、光さん……」
「ん?」
「ちょっと聞きにくいのですが、その、光さんと西脇さんはどの位の頻度で、その、セ、セ……」
「セ?」
「セックスしてるんですか」
「・・・ゲホッ」
食べていた柿を吐き出し、むせる。
「だ、大丈夫ですか」
慌てて悠は光の背中をさする。
「き、急に変なこと聞くから……」
「ごめんなさい。男同士ってどの程度するのかわからないから……」
落ち着いた光は悠を見つめた。
「そうだよね。悠君は経験無いからね」
「はぁ、どうしたものかサッパリなんで……」
光は困った顔の悠の耳元に囁く。
「僕達は週三、四回かな」
「そ、そんなに?」
「付き合い始めた頃は毎日だった」
「・・・・」
「奨君は絶倫だから大変かも」
「絶倫?」
「ンフフ……」
悠から見ての英はとても絶倫とは思えない。いつもソフトで優しく、無理強いはしない。
(絶倫……セックス……しないと捨てられる?)
悠の頭の中ではネガティブで暗い考えしか浮かんだこない。
(は、早くどうにかしないと……)
麗央との約束の日がとても長く感じられた。
「時間より早くないか?」
約束の日。居ても立っても居られず、約束の時間より一時間半も早く『ダンディライオン』に着いてしまった。
麗央は悠とおまけの樹也が予定よりも早く来たのを見て美しい顔を歪めた。
「すみません。早かったですよね」
「・・・今日はお店休みなんだ」
「月に二回は店内のメンテナンスをするんだ。汚れとか、欠けたところとか、割れた食器の補充とかね。早めに処理しておかないと傷や汚れは大きくなるからな」
「素晴らしい考えですね」
いつもの麗央とは思えない考えだ。
「英さんの教えだよ。ちゃんとしとかないと敦がうるさいんでね」
「・・・あつし?」
「初めましてマネージャーの石田です」
奥からトレイにお茶とカップを持って背の高い男性が現れた。
(か、格好いい)
思わず樹也の心が揺れた。ポッと頬を染めた樹也の顔を麗央は見逃さない。
テーブルにトレイを置く。
「お茶にしませんか」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
樹也と悠は同時にお礼を言う。
「おいしいです」
「敦は飲み物には凝る奴なんだよ」
「いつもは二人でメンテナンスを?」
「店長は言わないと直ぐサボるんで」
「うるさい!」
そんな二人の様子を見て樹也は尋ねた。
「お二人は仲良いですね。恋人同士とか……」
「そう見えますか?」
あくまで敦の物言いは丁寧だ。
「弟だ」
「えっ?」
麗央の言葉に樹也と悠は交互に二人の顔を見比べる。麗央は女と見間違える様な美男子、敦はキリッとした好男子。似てる様な似てない様な……。
「あっ、でも名字が……」
さっき『石田』と敦は名乗った。
「じゃあ、西園寺では無く石田……。名前の麗央も?」
「うるさいな。源氏名だよ」
麗央はイラッとして答えた。
「でも、西園寺さんにはピッタリのなまえですよね」
悠は西園寺でも石田でも麗央は麗央だと思うのだった。
お茶を飲み終えると早速本日の本題に入る。
「えーと、男同士のセックスの悩みだっけ?」
「悩みと言うか……男同士がその……セ、セックス出来ることも最近知ったので……」
悠は恥ずかしげに下を向かながら顔を赤らめた。
「と言う事はまだしてない……って事で良いのかな」
「・・・は、はい」
「僕なんか告白したその日にベッドインしてたけどな」
「そ、そうなんですか?」
「お前と悠君を一緒にするな!」
樹也は椅子から立ち上がって抗議する。
「兄さん、話を逸らさないで。悠さんは真剣なのですから」
「・・・英さんは君のどこが気に入ったのかな?」
「兄さん!」
弟に嗜められ、麗央はプイとそっぽを向いたが、仕方ないなと話し始めた。
「まず男は女性と違って受け入れる器官は異なる」
「はい。お尻だと聞きました」
教えた樹也が頬を赤らめる。
「そう。お尻の………」
話しが進んでいくたびに悠は、「ええーー!」「本当ですか?」「マジに○✖︎□▽」とか、驚愕の声を上げ続けた。
「うるさいな!いちいち声を上げるな!」
「す、すみません……あまりにも信じられない話しばかりで……」
(何でこんな奴が英さんは良いんだ?)
「英さんは気まぐれだから、嫌われないようにね。まあ、セックス出来ない奴には既に飽きてきているかも……」
「兄さん!」
「お前なぁ!」
ちょっと皮肉を言って鬱憤を晴らそうと思ったのに、弟と樹也から突っ込みが入る。
「はいはい。あとはお前次第だから……」
「ありがとうございます。大変ためになりました」
悠は立ち上がり麗央に頭を下げた。
「・・・こんなんで良ければいつでもどうぞ」
「はい。困ったらまた相談に来ます」
(おいおい、社交辞令だっつうの。勘弁してくれよ)
立ち去る二人を敦は見送ったあと、ポツリと言った。
「素直な子ですね」
「素直? 世間知らずなだけだろう」
「そんな世間ズレしてない所がボスは気に入ったのでしょうね」
「・・・どうせ俺は世間ズレしてるよ」
敦は幼い兄妹を養う為に兄がしてきたことは知ってる。でもそれは自分達を養う為であって、敦達は感謝している。
「僕は兄さんがどうであれ尊敬してます」
「・・・そりゃどうも……」
「さあ、メンテ早くおわしちゃいましょう」
弟に言われ麗央も気持ちを切り替えた。
「はぁ………」
悠は数えきれない程のため息をまた一つ吐いた。
「悠君、キャベツ切りすぎじゃない?」
「えっ?」
光に言われるまだキャベツ一つ刻み続けていた。
「あっ、やばい」
「どうしたの? 今日の悠君変だよ。どこか具合悪い?」
「あ、いいえ、すみません、ボーッとしちゃって」
「そう……」
光はいくつかのボールに山盛りになった野菜を見つめた。レタスに茄子にトマト。
悠は先日麗央から聞いた話を処理しきれないでいた。
(俺からアプローチした方が良いのかな。でも、どうやって……はぁぁぁ……)
麗央の話しでは男はそんなに我慢出来るものではないと。いつまでもお預けしていると浮気されるぞ、浮気なら良いが心変わりするかもと、驚かせられた。
(そうだよな。英さんはもてるからな……)
英に言いよってくるのは星の数程いると光達からも聞いた事があった。
(よ、よし、今夜こそ……)
そう思って毎回毎回決心して五日余りが過ぎていた。
食後、光達が自分達の部屋に戻り、英も仕事がひと段落したのかパソコンを畳み立ち上がった。
「お、お風呂ですか」
「ああ。一緒入るか」
「あ、そ、それは……」
冗談だとは分かっている。笑いながら浴室に向かう英に勇気を振り絞って後ろから声をかけた。
「あ、あ、あの、あと、あとで……」
「ん?」
「あと、あとで英さんの寝室にい、い、行っても」
悠が言えるのはそこまでだった。肩で大きく息をしていると、ポンと肩を叩かれた。
「待ってる」
「は、はい」
笑顔を向けられて、悠は英が浴室の中に消えて行くと、ヘナヘナとその場に座り込んだしまった。
(い、言えた……言っちゃた……どうしよう!)
これで英の寝室に行かない訳には行かなくなった。
(す、するのか、セックスーーー?)
悠は部屋の戻ると位牌に手を合わせた。
(爺ちゃん、婆ちゃん、どうか、どうか…)
しばらくして英が浴室から出て部屋に戻る気配があった。悠はそっとドアを開けると今英が出て来た浴室に駆け込む。大きく深呼吸をすると今までいた英の匂いがする様な気がした。
いつもより丁寧に身体を洗う。特に麗央に言われたお尻のすぼみは。そこに指を這わせながらおもった。
(本当にこんな場所に……入るのか)
考えすぎるのは良くない。そう思っ湯船を出たが、いつもの習慣で湯を抜き洗う。
はっと気がついた時は一時間はすぎていた。髪を乾かし急いで英の部屋のドアをノックする。
「どうぞ」
「お、お邪魔します」
そっとドアを開けて中を覗き込む。照明は消されているがベッドサイドのランプが、英の顔を浮き上がらせている。どうやら本を読んでいた様だ。
オズオズと中へ入ると、英が自分の隣をポンと叩いた。そこは来いと言う事らしい。
「し、失礼します」
恐縮しながら英の隣に入る。フワァと英の体臭が悠の鼻腔をくすぐる。
英は読んでいた本を閉じると、その手を悠の肩に回して来た。
「緊張してるのか?」
「は、はい、少し……」
本当は物凄く緊張感しているのだが、何故かそんな言葉が出て来てしまった。
「悠……」
顔を横に向けられると、英の顔が近づいて来た。
(あ……)
甘いキスだ。口を開けられ英の舌が優しく悠の口腔内をいたぶる。舌を捕らえられ絡み合う。
キスは好きだと悠は思った。英の唇が甘く、舌を吸われるのも心地よい。
「・・・あ……」
英の手がパジャマの上から悠の乳首を摘んだ。微かな痛みと共に感じた事のない疼きが全身に走った。英の唇は悠の口を離れ、顎から首筋へ、更に下へと這っていく。
パジャマのボタンが外され、露わになった胸の赤い突起物を触る。
「や、やだぁ……気持ちいい……」
初めての感覚に悠の思考が停止する。
「お、俺も……」
悠も英のシルクのパジャマのボタンを外すと逞しく胸に付いてる乳首を舐めた。
(ちょっとしょっぱい……)
お互いのパジャマの浮気を脱ぎ捨て裸で抱き合う。
「あ、ああ………」
英の手は今度は下半身に伸びて来た。大事な所を触られる。
(どうしよう……気持ち……良い……)
ペニスを直に触られ、自然に勃起する。
「お、俺も……」
悠も手を伸ばして英のペニスを触る。
(あ……熱い……)
ドクンドクンと心臓が付いてるかの様に、熱さと鼓動を感じた。
「あっ、あっ、ああ………」
英の手で擦られ、悠は絶頂を迎えようとしていた。
「英さん、英さん……いく…いくぅ……」
悠は英のての中で達した。他人の手で達したのは初めての経験だった。申し訳なさを感じながら、英の胸の中で大きく喘いでいた。
「悠……」
(そうだ。英さんはまだなんだ……)
悠は再び英のペニスに手を伸ばした。
(えっ?)
手を伸ばし触ったが、直ぐに手を引っ込める。
(お、大きい……)
確認する為に悠は英のペニスに目をやった。
「‼︎」
自分のモノとは違う!色も形も!その変身したペニスに悠は恐怖を覚えた。
今にも襲い掛かろうと英のペニスは鎌首をもたげている大蛇の様子だ。
「悠……」
英に押し倒され、パジャマのズボンも脱がされ、英の長い指は悠のお尻の窄みに触った。
「あ……」
長い指が少し窄みに入って来た。確認する様に何度も抜き差しを繰り返す。
「悠……良いか?」
そう確認され、悠は思わず叫んでいた。
「だ、駄目ぇーーー! ダメです!」
恐怖から悠は英の頬を叩いてた。
「悠?」
何故叩かれたのか分からない英は、暴れる悠を抑えようと悠の身体に手を伸ばした時、今度は足蹴りを腹部に食らう。
「うっ……」
流石に痛かったのか、少し後ろによろける。その隙に悠は裸のままベッドを飛び降りる。
「ご、ごめんなさい! や、やっぱり、こ、怖いです! ごめんなさーい○◁×◇!」
そう叫ぶと部屋から出ていった。
バタンと閉じるドアの音を英は呆然と聞いていた。
(もしかしたら待っててくれた)
「ただいま帰りました」
「お帰り、悠。無事すんだようだな」
「はい。家族全員でお参りも出来ました。あと、新しいお位牌も出来上がりました」
「黒檀か」
「はい。爺ちゃんが憧れていたんで、できて良かったです」
「そうか。頑張ったな」
「へへへ」
頭を撫でられるととても嬉しい。
「今日はお酒じゃ無いんですね」
「お前が帰ってくるのに酔って出迎えられないからな」
そんな他愛も無い言葉も嬉しい。英の手が悠の身体に回され優しく抱きしめられた。
「あ………」
英の胸元に顔が押し当てられると、英の甘い体臭がほのかに悠の鼻をくすぐる。
(どうしよう……ドキドキが止まらない)
そう思っていると顔を上げられキスされる。口を開けられ舌を吸われる。頭がクラクラする。顔が上気するのが分かる。唇が離れる時、安堵と同時に物足りなさを覚えるのは何故なのか。
「風呂に入って今夜はゆっくり寝ると良い」
「・・・はい」
温もりが、匂いが、離れて行く。
「ふわぁ………」
風呂に浸かりながら悠は自分の尻に手を伸ばして触った。
「お尻って……」
女性と違って男には男性器を迎え入れる場所が無い。
「光さん達もしてるのかな」
恋人同士なら相手の身体に触りたい、キスしたい、そして最後はセックスしたいのは自然の摂理だ。
「英さんは俺で満足してるのかな?」
考えすぎて長湯になってしまった。慌てて出てのぼせた身体に冷たい水が気持ちいい。
それでもベッドに入っても中々寝付く事はできなかった。
「わー、柿だ!」
「お土産に沢山もらったので」
納骨が終わったあと、また友達から果物や干物などを沢山貰ったのだ。
「柿って美味しいけど皮剥くの難しいよね」
そうだ。柿は滑り易いので慎重に剥かないと指を切る。今、食卓には二人きりだ。そこで悠は光に尋ねてみる。
「あ、あの、光さん……」
「ん?」
「ちょっと聞きにくいのですが、その、光さんと西脇さんはどの位の頻度で、その、セ、セ……」
「セ?」
「セックスしてるんですか」
「・・・ゲホッ」
食べていた柿を吐き出し、むせる。
「だ、大丈夫ですか」
慌てて悠は光の背中をさする。
「き、急に変なこと聞くから……」
「ごめんなさい。男同士ってどの程度するのかわからないから……」
落ち着いた光は悠を見つめた。
「そうだよね。悠君は経験無いからね」
「はぁ、どうしたものかサッパリなんで……」
光は困った顔の悠の耳元に囁く。
「僕達は週三、四回かな」
「そ、そんなに?」
「付き合い始めた頃は毎日だった」
「・・・・」
「奨君は絶倫だから大変かも」
「絶倫?」
「ンフフ……」
悠から見ての英はとても絶倫とは思えない。いつもソフトで優しく、無理強いはしない。
(絶倫……セックス……しないと捨てられる?)
悠の頭の中ではネガティブで暗い考えしか浮かんだこない。
(は、早くどうにかしないと……)
麗央との約束の日がとても長く感じられた。
「時間より早くないか?」
約束の日。居ても立っても居られず、約束の時間より一時間半も早く『ダンディライオン』に着いてしまった。
麗央は悠とおまけの樹也が予定よりも早く来たのを見て美しい顔を歪めた。
「すみません。早かったですよね」
「・・・今日はお店休みなんだ」
「月に二回は店内のメンテナンスをするんだ。汚れとか、欠けたところとか、割れた食器の補充とかね。早めに処理しておかないと傷や汚れは大きくなるからな」
「素晴らしい考えですね」
いつもの麗央とは思えない考えだ。
「英さんの教えだよ。ちゃんとしとかないと敦がうるさいんでね」
「・・・あつし?」
「初めましてマネージャーの石田です」
奥からトレイにお茶とカップを持って背の高い男性が現れた。
(か、格好いい)
思わず樹也の心が揺れた。ポッと頬を染めた樹也の顔を麗央は見逃さない。
テーブルにトレイを置く。
「お茶にしませんか」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
樹也と悠は同時にお礼を言う。
「おいしいです」
「敦は飲み物には凝る奴なんだよ」
「いつもは二人でメンテナンスを?」
「店長は言わないと直ぐサボるんで」
「うるさい!」
そんな二人の様子を見て樹也は尋ねた。
「お二人は仲良いですね。恋人同士とか……」
「そう見えますか?」
あくまで敦の物言いは丁寧だ。
「弟だ」
「えっ?」
麗央の言葉に樹也と悠は交互に二人の顔を見比べる。麗央は女と見間違える様な美男子、敦はキリッとした好男子。似てる様な似てない様な……。
「あっ、でも名字が……」
さっき『石田』と敦は名乗った。
「じゃあ、西園寺では無く石田……。名前の麗央も?」
「うるさいな。源氏名だよ」
麗央はイラッとして答えた。
「でも、西園寺さんにはピッタリのなまえですよね」
悠は西園寺でも石田でも麗央は麗央だと思うのだった。
お茶を飲み終えると早速本日の本題に入る。
「えーと、男同士のセックスの悩みだっけ?」
「悩みと言うか……男同士がその……セ、セックス出来ることも最近知ったので……」
悠は恥ずかしげに下を向かながら顔を赤らめた。
「と言う事はまだしてない……って事で良いのかな」
「・・・は、はい」
「僕なんか告白したその日にベッドインしてたけどな」
「そ、そうなんですか?」
「お前と悠君を一緒にするな!」
樹也は椅子から立ち上がって抗議する。
「兄さん、話を逸らさないで。悠さんは真剣なのですから」
「・・・英さんは君のどこが気に入ったのかな?」
「兄さん!」
弟に嗜められ、麗央はプイとそっぽを向いたが、仕方ないなと話し始めた。
「まず男は女性と違って受け入れる器官は異なる」
「はい。お尻だと聞きました」
教えた樹也が頬を赤らめる。
「そう。お尻の………」
話しが進んでいくたびに悠は、「ええーー!」「本当ですか?」「マジに○✖︎□▽」とか、驚愕の声を上げ続けた。
「うるさいな!いちいち声を上げるな!」
「す、すみません……あまりにも信じられない話しばかりで……」
(何でこんな奴が英さんは良いんだ?)
「英さんは気まぐれだから、嫌われないようにね。まあ、セックス出来ない奴には既に飽きてきているかも……」
「兄さん!」
「お前なぁ!」
ちょっと皮肉を言って鬱憤を晴らそうと思ったのに、弟と樹也から突っ込みが入る。
「はいはい。あとはお前次第だから……」
「ありがとうございます。大変ためになりました」
悠は立ち上がり麗央に頭を下げた。
「・・・こんなんで良ければいつでもどうぞ」
「はい。困ったらまた相談に来ます」
(おいおい、社交辞令だっつうの。勘弁してくれよ)
立ち去る二人を敦は見送ったあと、ポツリと言った。
「素直な子ですね」
「素直? 世間知らずなだけだろう」
「そんな世間ズレしてない所がボスは気に入ったのでしょうね」
「・・・どうせ俺は世間ズレしてるよ」
敦は幼い兄妹を養う為に兄がしてきたことは知ってる。でもそれは自分達を養う為であって、敦達は感謝している。
「僕は兄さんがどうであれ尊敬してます」
「・・・そりゃどうも……」
「さあ、メンテ早くおわしちゃいましょう」
弟に言われ麗央も気持ちを切り替えた。
「はぁ………」
悠は数えきれない程のため息をまた一つ吐いた。
「悠君、キャベツ切りすぎじゃない?」
「えっ?」
光に言われるまだキャベツ一つ刻み続けていた。
「あっ、やばい」
「どうしたの? 今日の悠君変だよ。どこか具合悪い?」
「あ、いいえ、すみません、ボーッとしちゃって」
「そう……」
光はいくつかのボールに山盛りになった野菜を見つめた。レタスに茄子にトマト。
悠は先日麗央から聞いた話を処理しきれないでいた。
(俺からアプローチした方が良いのかな。でも、どうやって……はぁぁぁ……)
麗央の話しでは男はそんなに我慢出来るものではないと。いつまでもお預けしていると浮気されるぞ、浮気なら良いが心変わりするかもと、驚かせられた。
(そうだよな。英さんはもてるからな……)
英に言いよってくるのは星の数程いると光達からも聞いた事があった。
(よ、よし、今夜こそ……)
そう思って毎回毎回決心して五日余りが過ぎていた。
食後、光達が自分達の部屋に戻り、英も仕事がひと段落したのかパソコンを畳み立ち上がった。
「お、お風呂ですか」
「ああ。一緒入るか」
「あ、そ、それは……」
冗談だとは分かっている。笑いながら浴室に向かう英に勇気を振り絞って後ろから声をかけた。
「あ、あ、あの、あと、あとで……」
「ん?」
「あと、あとで英さんの寝室にい、い、行っても」
悠が言えるのはそこまでだった。肩で大きく息をしていると、ポンと肩を叩かれた。
「待ってる」
「は、はい」
笑顔を向けられて、悠は英が浴室の中に消えて行くと、ヘナヘナとその場に座り込んだしまった。
(い、言えた……言っちゃた……どうしよう!)
これで英の寝室に行かない訳には行かなくなった。
(す、するのか、セックスーーー?)
悠は部屋の戻ると位牌に手を合わせた。
(爺ちゃん、婆ちゃん、どうか、どうか…)
しばらくして英が浴室から出て部屋に戻る気配があった。悠はそっとドアを開けると今英が出て来た浴室に駆け込む。大きく深呼吸をすると今までいた英の匂いがする様な気がした。
いつもより丁寧に身体を洗う。特に麗央に言われたお尻のすぼみは。そこに指を這わせながらおもった。
(本当にこんな場所に……入るのか)
考えすぎるのは良くない。そう思っ湯船を出たが、いつもの習慣で湯を抜き洗う。
はっと気がついた時は一時間はすぎていた。髪を乾かし急いで英の部屋のドアをノックする。
「どうぞ」
「お、お邪魔します」
そっとドアを開けて中を覗き込む。照明は消されているがベッドサイドのランプが、英の顔を浮き上がらせている。どうやら本を読んでいた様だ。
オズオズと中へ入ると、英が自分の隣をポンと叩いた。そこは来いと言う事らしい。
「し、失礼します」
恐縮しながら英の隣に入る。フワァと英の体臭が悠の鼻腔をくすぐる。
英は読んでいた本を閉じると、その手を悠の肩に回して来た。
「緊張してるのか?」
「は、はい、少し……」
本当は物凄く緊張感しているのだが、何故かそんな言葉が出て来てしまった。
「悠……」
顔を横に向けられると、英の顔が近づいて来た。
(あ……)
甘いキスだ。口を開けられ英の舌が優しく悠の口腔内をいたぶる。舌を捕らえられ絡み合う。
キスは好きだと悠は思った。英の唇が甘く、舌を吸われるのも心地よい。
「・・・あ……」
英の手がパジャマの上から悠の乳首を摘んだ。微かな痛みと共に感じた事のない疼きが全身に走った。英の唇は悠の口を離れ、顎から首筋へ、更に下へと這っていく。
パジャマのボタンが外され、露わになった胸の赤い突起物を触る。
「や、やだぁ……気持ちいい……」
初めての感覚に悠の思考が停止する。
「お、俺も……」
悠も英のシルクのパジャマのボタンを外すと逞しく胸に付いてる乳首を舐めた。
(ちょっとしょっぱい……)
お互いのパジャマの浮気を脱ぎ捨て裸で抱き合う。
「あ、ああ………」
英の手は今度は下半身に伸びて来た。大事な所を触られる。
(どうしよう……気持ち……良い……)
ペニスを直に触られ、自然に勃起する。
「お、俺も……」
悠も手を伸ばして英のペニスを触る。
(あ……熱い……)
ドクンドクンと心臓が付いてるかの様に、熱さと鼓動を感じた。
「あっ、あっ、ああ………」
英の手で擦られ、悠は絶頂を迎えようとしていた。
「英さん、英さん……いく…いくぅ……」
悠は英のての中で達した。他人の手で達したのは初めての経験だった。申し訳なさを感じながら、英の胸の中で大きく喘いでいた。
「悠……」
(そうだ。英さんはまだなんだ……)
悠は再び英のペニスに手を伸ばした。
(えっ?)
手を伸ばし触ったが、直ぐに手を引っ込める。
(お、大きい……)
確認する為に悠は英のペニスに目をやった。
「‼︎」
自分のモノとは違う!色も形も!その変身したペニスに悠は恐怖を覚えた。
今にも襲い掛かろうと英のペニスは鎌首をもたげている大蛇の様子だ。
「悠……」
英に押し倒され、パジャマのズボンも脱がされ、英の長い指は悠のお尻の窄みに触った。
「あ……」
長い指が少し窄みに入って来た。確認する様に何度も抜き差しを繰り返す。
「悠……良いか?」
そう確認され、悠は思わず叫んでいた。
「だ、駄目ぇーーー! ダメです!」
恐怖から悠は英の頬を叩いてた。
「悠?」
何故叩かれたのか分からない英は、暴れる悠を抑えようと悠の身体に手を伸ばした時、今度は足蹴りを腹部に食らう。
「うっ……」
流石に痛かったのか、少し後ろによろける。その隙に悠は裸のままベッドを飛び降りる。
「ご、ごめんなさい! や、やっぱり、こ、怖いです! ごめんなさーい○◁×◇!」
そう叫ぶと部屋から出ていった。
バタンと閉じるドアの音を英は呆然と聞いていた。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…
まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。
5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。
相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。
一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。
唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。
それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。
そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。
そこへ社会人となっていた澄と再会する。
果たして5年越しの恋は、動き出すのか?
表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。


今夜のご飯も一緒に食べよう~ある日突然やってきたヒゲの熊男はまさかのスパダリでした~
松本尚生
BL
瞬は失恋して職と住み処を失い、小さなワンルームから弁当屋のバイトに通っている。
ある日瞬が帰ると、「誠~~~!」と背後からヒゲの熊男が襲いかかる。「誠って誰!?」上がりこんだ熊は大量の食材を持っていた。瞬は困り果てながら調理する。瞬が「『誠さん』って恋人?」と尋ねると、彼はふふっと笑って瞬を抱きしめ――。
恋なんてコリゴリの瞬と、正体不明のスパダリ熊男=伸幸のお部屋グルメの顛末。
伸幸の持ちこむ謎の食材と、それらをテキパキとさばいていく瞬のかけ合いもお楽しみください。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。
六日の菖蒲
あこ
BL
突然一方的に別れを告げられた紫はその後、理由を目の当たりにする。
落ち込んで行く紫を見ていた萌葱は、図らずも自分と向き合う事になった。
▷ 王道?全寮制学園ものっぽい学園が舞台です。
▷ 同室の紫と萌葱を中心にその脇でアンチ王道な展開ですが、アンチの影は薄め(のはず)
▷ 身代わりにされてた受けが幸せになるまで、が目標。
▷ 見た目不良な萌葱は不良ではありません。見た目だけ。そして世話焼き(紫限定)です。
▷ 紫はのほほん健気な普通顔です。でも雰囲気補正でちょっと可愛く見えます。
▷ 章や作品タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではいただいたリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる