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幸せの場所
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一週間程入院して悠は退院した。まだ、捻挫した足は痛むが日常生活に支障は無い。
「なんで早く知らせてくれなかったの!」
退院当日母も来てくれた。樹也が心配すると思い退院する当日まで教えなかった事で大分怒られた。
「大丈夫だよ、お母さん。大した事無かったんだから」
「そ、それでもね、母親としてはもっと早く知らせてほしかったわ」
「・・・ごめんなさい」
今日は英の所で悠の快気祝いをする予定だ。
「それより早く行こうよ」
妹の優花は英のマンションに行くのを楽しみにしているようだ。
英と西脇の車に乗り込みマンションを目指す。
「うわぁ、素敵なお部屋」
優花の瞳はキラキラと、辺りを見渡す。最上階は英と西脇達の二部屋しかないからかなり広い作りになってる。
「悠お兄ちゃんの部屋はどこ?」
妹は遠慮がない。悠は英の部屋の隣のこじんまりした部屋に案内する。英の部屋にすればこじんまりだが、八畳はゆうにある。
「家具少な」
「優花!」
母も、特に樹也はドギマギしながら部屋に入ると、思い切り部屋の空気を吸い込み。
(悠君の香りがする……)
すでに変態の域だ。
母はタンスの上に置かれた位牌に気がつくと、手を合わせた。母にとっては両親と祖父母の位牌だ。樹也と優花も母に習って手を合わせた。
「ありがとう……」
「こっちこそありがとう」
「お寿司とオードブルが届いたよ!」
嬉しそうな光の声が響いた。悠達は部屋を出てダイニングルームに向かう。
広く大きなダイニングテーブルには所狭しと出前の品が並んでいる。
「凄い量ですね」
「美味しそう!」
「早く食べたい!」
英を先頭に皆んな食卓に着く。
「悠、挨拶を……」
「え、俺が……では、簡単に……この度は俺の快気祝いをこんなに盛大に開いてくれているありがとうございます」
「良かったね、悠君」
「はい」
「では乾杯しよう」
英の掛け声で乾杯する。
「あまり飲むなよ。酒に弱いんだから」
「はい。ほどほどにします」
「悠君、お酒弱いの?」
「お母さんは凄く強いのに」
「え? そうなの?」
「もう嫌だわ。そんなに強くありません」
和気あいあいと祝いの席は盛り上がって行く。
ピンポーン
「あ、僕が出る」
誰かが訪れた事を知らせる音に、樹也が立ち上がった。
「いらっしゃい……」
「!」
顔を見合わせてお互いの顔がしかめっ面になる。
「なんで君が居るんだ」
「兄の快気祝いなんで。貴方こそなんで」
「僕も快気祝いに」
そう言うと大きな花束を取り出してみせる。樹也を押しのけ麗央は部屋の中に入った。
悠の近くにきて大きな花束を手渡す。
「退院おめでとう」
「あ、ありがとうございます」
花束を手渡された悠が花を生けるために席を離れた隙に、麗央は英に囁いた。
「逮捕されたそうですよ」
「・・・そうか」
花を生けた花瓶を持ってそれを居間のテーブル置くとそこが華やかに色めく。
「うわぁ、素敵!」
女性の母と優花がそれを見て感激する。女性と言う者は花が好きなのだ。
「お名前は何と言うのですか?」
優花が麗央に名前を訪ねた。
「西園寺麗央と申します」
麗央は優花と母に名刺を手渡した。
「まあ、ホストクラブの店長なんですね」
「私知ってる。ここって有名だもん」
「来店してくれると嬉しいです」
「妹はまだ中学生だよ」
樹也の言葉は無視して、空いてる隣の席に腰掛けた。
「英さんのお友達って皆んな美形なんですね。悠お兄ちゃんが羨ましいなあ……」
「お褒めに預かり恐縮です」
「麗央さんは何飲みますか。私、注ぎます」
「ハハハ……。今日は車で来て居るので……烏龍茶を頂きます」
優花が麗央のグラスに烏龍茶を注ぐ。
「写真撮っても良いですか。友達にこんな美形と撮った事自慢したいので……」
「では、一緒に撮りましょう」
麗央はサービス精神旺盛だ。麗央に夢中な母と妹に樹也は面白くない。
楽しい時間が過ぎるのは早い。デザートも終わり、母と共に悠はカップと皿を洗う。
「お母さん、手伝ってくれてありがとうございます」
「ううん。悠こそ、主役なのに後片付けなんて……」
「何時もの事なので」
そう言うと嬉しそうに笑った。
妹の優花は写メを撮るのに忙しそうだ。麗央が終わったら次は英に西脇達と撮りまくって居る。
「若い子には敵わないわね」
「フフフ。楽しそうで良かった」
ひと段落着くといとまする時間なのだが、離れ難いのか優花がごねりだす。
「ああん、もっとお話ししたいのに」
「もう、遅いんだからダメよ、優花」
「………」
母の言葉に口を尖らせて部屋を出る。英がそんな優花を見て麗央に優花達を送って行く様頼んだ。
「ええー、僕がですか」
「お前は酒を飲んでいないからな。頼むぞ」
「きゃー、本当ですか? 麗央さん、お願いします!」
「う、うん、まあ、優花ちゃんが良いのなら……」
「お願いします! 早く行きましょう」
テンションの高い優花に腕を取られて、麗央はエレベーターに乗り込むとさっさと降りて行ってしまった。
「全く優花ときたら……」
「お母さん。今日は来てくれてありがとう」
「もう、可愛い息子の退院と快気祝いなんだから、当たり前でしょう」
「うん」
「それより悠……」
「ん?」
母が悠の耳元でそっと聞いて来た。
「あなた、英さんの事好きなの?」
「・・・へ?」
母の言ってる事が理解出来ず、思わず母の顔を見た。
「なんかな、そんな感じが……」
「な、な、何言って、何言ってるの。俺も英さんも男だよ」
「そうだけど……。ほら、樹也もそんな感じでしょ。まあ、お母さんとしては幸せならどっちでも良いのだけどね」
「・・・・」
固まる悠の肩を優しく叩くと、エレベーターに乗り込んで居る樹也に呼ばれて母もエレベーターに急いで乗り込むと、英達に会釈して、固まってる悠にヒラヒラと手を振ると、エレベーターのドアは閉まった。「
(好き……英さんを……好き?)
母の言葉が悠の頭の中でグルグル巡っている。
「なに、ボンヤリしているんだ」
「え?」
英に肩を叩かれて、悠は現実に戻った。
「ほら、戻るぞ」
「は、はい」
「じゃあね、悠君、おやすみ」
「お、おやすみなさい……」
光と西脇は隣のドアを開けて二人で入って行く。
(英さんと二人きり………)
母の言葉のせいで何か意識してしまう。
「悠、入らないのか」
「は、はーい、今行きます」
そんなことは無いと打ち消し、悠は英がドアを開けて待っている部屋に入っていく。
「なんで早く知らせてくれなかったの!」
退院当日母も来てくれた。樹也が心配すると思い退院する当日まで教えなかった事で大分怒られた。
「大丈夫だよ、お母さん。大した事無かったんだから」
「そ、それでもね、母親としてはもっと早く知らせてほしかったわ」
「・・・ごめんなさい」
今日は英の所で悠の快気祝いをする予定だ。
「それより早く行こうよ」
妹の優花は英のマンションに行くのを楽しみにしているようだ。
英と西脇の車に乗り込みマンションを目指す。
「うわぁ、素敵なお部屋」
優花の瞳はキラキラと、辺りを見渡す。最上階は英と西脇達の二部屋しかないからかなり広い作りになってる。
「悠お兄ちゃんの部屋はどこ?」
妹は遠慮がない。悠は英の部屋の隣のこじんまりした部屋に案内する。英の部屋にすればこじんまりだが、八畳はゆうにある。
「家具少な」
「優花!」
母も、特に樹也はドギマギしながら部屋に入ると、思い切り部屋の空気を吸い込み。
(悠君の香りがする……)
すでに変態の域だ。
母はタンスの上に置かれた位牌に気がつくと、手を合わせた。母にとっては両親と祖父母の位牌だ。樹也と優花も母に習って手を合わせた。
「ありがとう……」
「こっちこそありがとう」
「お寿司とオードブルが届いたよ!」
嬉しそうな光の声が響いた。悠達は部屋を出てダイニングルームに向かう。
広く大きなダイニングテーブルには所狭しと出前の品が並んでいる。
「凄い量ですね」
「美味しそう!」
「早く食べたい!」
英を先頭に皆んな食卓に着く。
「悠、挨拶を……」
「え、俺が……では、簡単に……この度は俺の快気祝いをこんなに盛大に開いてくれているありがとうございます」
「良かったね、悠君」
「はい」
「では乾杯しよう」
英の掛け声で乾杯する。
「あまり飲むなよ。酒に弱いんだから」
「はい。ほどほどにします」
「悠君、お酒弱いの?」
「お母さんは凄く強いのに」
「え? そうなの?」
「もう嫌だわ。そんなに強くありません」
和気あいあいと祝いの席は盛り上がって行く。
ピンポーン
「あ、僕が出る」
誰かが訪れた事を知らせる音に、樹也が立ち上がった。
「いらっしゃい……」
「!」
顔を見合わせてお互いの顔がしかめっ面になる。
「なんで君が居るんだ」
「兄の快気祝いなんで。貴方こそなんで」
「僕も快気祝いに」
そう言うと大きな花束を取り出してみせる。樹也を押しのけ麗央は部屋の中に入った。
悠の近くにきて大きな花束を手渡す。
「退院おめでとう」
「あ、ありがとうございます」
花束を手渡された悠が花を生けるために席を離れた隙に、麗央は英に囁いた。
「逮捕されたそうですよ」
「・・・そうか」
花を生けた花瓶を持ってそれを居間のテーブル置くとそこが華やかに色めく。
「うわぁ、素敵!」
女性の母と優花がそれを見て感激する。女性と言う者は花が好きなのだ。
「お名前は何と言うのですか?」
優花が麗央に名前を訪ねた。
「西園寺麗央と申します」
麗央は優花と母に名刺を手渡した。
「まあ、ホストクラブの店長なんですね」
「私知ってる。ここって有名だもん」
「来店してくれると嬉しいです」
「妹はまだ中学生だよ」
樹也の言葉は無視して、空いてる隣の席に腰掛けた。
「英さんのお友達って皆んな美形なんですね。悠お兄ちゃんが羨ましいなあ……」
「お褒めに預かり恐縮です」
「麗央さんは何飲みますか。私、注ぎます」
「ハハハ……。今日は車で来て居るので……烏龍茶を頂きます」
優花が麗央のグラスに烏龍茶を注ぐ。
「写真撮っても良いですか。友達にこんな美形と撮った事自慢したいので……」
「では、一緒に撮りましょう」
麗央はサービス精神旺盛だ。麗央に夢中な母と妹に樹也は面白くない。
楽しい時間が過ぎるのは早い。デザートも終わり、母と共に悠はカップと皿を洗う。
「お母さん、手伝ってくれてありがとうございます」
「ううん。悠こそ、主役なのに後片付けなんて……」
「何時もの事なので」
そう言うと嬉しそうに笑った。
妹の優花は写メを撮るのに忙しそうだ。麗央が終わったら次は英に西脇達と撮りまくって居る。
「若い子には敵わないわね」
「フフフ。楽しそうで良かった」
ひと段落着くといとまする時間なのだが、離れ難いのか優花がごねりだす。
「ああん、もっとお話ししたいのに」
「もう、遅いんだからダメよ、優花」
「………」
母の言葉に口を尖らせて部屋を出る。英がそんな優花を見て麗央に優花達を送って行く様頼んだ。
「ええー、僕がですか」
「お前は酒を飲んでいないからな。頼むぞ」
「きゃー、本当ですか? 麗央さん、お願いします!」
「う、うん、まあ、優花ちゃんが良いのなら……」
「お願いします! 早く行きましょう」
テンションの高い優花に腕を取られて、麗央はエレベーターに乗り込むとさっさと降りて行ってしまった。
「全く優花ときたら……」
「お母さん。今日は来てくれてありがとう」
「もう、可愛い息子の退院と快気祝いなんだから、当たり前でしょう」
「うん」
「それより悠……」
「ん?」
母が悠の耳元でそっと聞いて来た。
「あなた、英さんの事好きなの?」
「・・・へ?」
母の言ってる事が理解出来ず、思わず母の顔を見た。
「なんかな、そんな感じが……」
「な、な、何言って、何言ってるの。俺も英さんも男だよ」
「そうだけど……。ほら、樹也もそんな感じでしょ。まあ、お母さんとしては幸せならどっちでも良いのだけどね」
「・・・・」
固まる悠の肩を優しく叩くと、エレベーターに乗り込んで居る樹也に呼ばれて母もエレベーターに急いで乗り込むと、英達に会釈して、固まってる悠にヒラヒラと手を振ると、エレベーターのドアは閉まった。「
(好き……英さんを……好き?)
母の言葉が悠の頭の中でグルグル巡っている。
「なに、ボンヤリしているんだ」
「え?」
英に肩を叩かれて、悠は現実に戻った。
「ほら、戻るぞ」
「は、はい」
「じゃあね、悠君、おやすみ」
「お、おやすみなさい……」
光と西脇は隣のドアを開けて二人で入って行く。
(英さんと二人きり………)
母の言葉のせいで何か意識してしまう。
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