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幸せの場所
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「う~ん、もうお腹いっぱい。ご馳走様、悠君。とても美味しかったぁ~」
「食材が良かったからですよ」
悠も今まだあげた天ぷらの中で一番美味しかったと感じた。 何しろ高級食材の伊勢海老なんて初めて食べたのだ。
「悠君は料理上手だね」
「一般的なものしか出来ません。フランス料理とかイタリアンとか言われたらお手上げです」
「ん~~そうなの」
光は西脇が買ってきたデザートを頬張ってる。生クリームを頬に付けて食べる姿はまるで子供の様だ。その様子を横で見守る視線は熱い。二人がどういう関係か詮索はすまい。
「明日は洋服を買いに行こう」
突然英が言った。
「えっ?」
「お前、着替えそんなに持ってないだろう」
たしかにシャツは三枚、上着は高校の入学祝いに買って貰ったジャケットが一枚だけだが、不自由だと思った事は無い。
「安物はやっぱまずいですかね」
「センスの問題だ。俺の趣味じゃない」
「へっ?」
それきり英はパソコンとにらめっこを始めてしまった。
「洋服買いに行くの? 僕も一緒に行って選んであげる」
「先輩は動物柄とか、アニメキャラクター物しか選ばないじゃないですか」
「可愛いんだもん。良いじゃないか」
「断る」
英が画面から目を離さずきっぱりと言い切る。
「むっ! でも、ついてくもんね!」
(ハハハ・・・でも光さんには似合いそうだな)
風呂を出て悠はベッドに転がった。食事している時からどんな寝心地だろうと、確かめたくて仕方なかった。
(ああ~、手触りも、ベッドの弾力も丁度良い)
英のセンスはとても良いのだろうと感じた。
「・・・・・」
悠はあっという間に眠りに落ちた。
「ふぁあ~、よく寝た……」
こんなにスッキリ目覚めたのは初めてだった。
朝食を作り始めて間もなく慌ただしく光が入って来た。
「ねぇねぇ、今朝は何?」
「アジ焼いてます。あと卵焼きと大根の味噌汁です」
「あっ、サラダの中に芋の天ぷらの細かくしたもの入ってる!」
「甘くて美味しいですよ」
いい終わらぬうちにもう試食してる。
「早く食べて買い物行こう。奨君まだ寝てるの?」
「さあ………」
悠は光が着ているセーターを見た。可愛い猫柄だ。でも、不自然な違和感がない。
(年相応? いや精神年齢相応)
西脇も混ざって朝食をとっていると、眠そうに英が起きてきた。悠はすぐさまパンを焼く。
濃いめのコーヒーにパンが英の定番だ。
一行は西脇の車に乗り込む。運転してる西脇に光はちょっかいを仕掛ける。くすぐったり、話して前を向いてない事も。
「お前らだけ怪我するのは良いが、俺たちを巻き込むな。巻き込んだら……分かってるな」
脅しとも取れる英の言葉に二人は黙る。
(わぁー、鶴の一声)
大型百貨店に入って行く。英の事だからお気に入りのブランド店に行くかと思ったのに以外。
洋品店が数多く入っている階に行くと、真っ先に光が悠の手を引いた。
「悠君、ここここ」
「あ、ああ、はい……」
図柄は動物系、アニメの可愛いキャラクター物が多い。
「どう、これ?」
手にしたのは可愛い猫柄だった。
「却下」
英は一言言うと先に進んで行く。
「この店はノーブランドだが、品質は良い。デザインも若者に受けが良い」
そう言ってシャツを悠に合わせる。
「うん、良いじゃないか」
英は店員に何か言う。次は上着、コートにジャケットにズボン。英は悠の意見は聞かず、自分の選んだものを悠に合わせるだけだ。悠はただマネキンの様に立っているだけ。
あった言う間に荷物は大きな紙袋三つになり、それを西脇と光に持たす。
「ええーー、荷物持ち?」
光は文句を言うが、英は無視して、次は靴屋に向かう。
「サイズは?」
「あ、に、二十六です」
二十六のサイズの靴を何点か悠に履かせてみる。
「どうだ、履き心地は」
「はい。凄くフィットして履きやすいです」
「そうか」
靴も種類別に何足か購入する。
(こんな必要なのかな?)
いつも一足しか持ってなかった悠には考えられない事だった。
(都会に住むって大変なんだな……)
買い物が終わると食事に行く。行ったことも無い高級レストランだ。思わず辺りを見回してしまう。お上りさん丸出しだ。
「おい、遅れるなよ」
「こっちこっち」
光と西脇が奥で手招いている。どうやら個室の様だ。
今までで見たことも無いような分厚いステーキを食べた。柔らかくて美味しかった。酒も出ている。当然勧められる。
「軽いお酒だから飲んで見なよ」
「えっ、ええ・・・」
実は悠はお酒に弱い。軽く一杯飲んだだけでも酔いつぶれてしまうのだ。だから、固辞していたのだが、目の前のグラスに注がれてしまい、一口ならと飲んでしまった。甘く飲みやすい。と、思ったのが運の尽きだった。一口飲んだ途端に全身がカッと熱くなった。
(ええ~~、ヤバイ、目が、目が………)
そう思った時は目が回ってフラフラだ。
「やだぁ、悠君、弱すぎ」
光がケラケラと笑った。その顔は真っ赤だ。
「おいおい、先輩も弱いんだから……。ほら、もうお終い」
「やっだぁー、もう少し飲む!」
弱いくせにお酒が好きなのも困りものだ。案の定、光も酔いつぶれてしまった。
「あああ~、これは、抱いて帰ることになりそうだな」
「そうだな」
光は「もっとお酒・・・ムニャ……」と、寝言を言ってる。悠に至っては完全に爆睡だ。
西脇は光を、英は悠を抱いて車に戻った。後ろの座席で並んで酔いつぶれている二人を見てポツンと西脇は言った。
「なんか兄弟みたいだな」
「そうだな」
英は考えていた。何故自分は恋人でもなんでもない悠に対して親身になっているのか。
(目が離せない・・・)
そうだ。気になって目が離せないからだ。何故、気になるのか、それはまだ分からない。
西脇の運転する車は快調に滑り出す。
「食材が良かったからですよ」
悠も今まだあげた天ぷらの中で一番美味しかったと感じた。 何しろ高級食材の伊勢海老なんて初めて食べたのだ。
「悠君は料理上手だね」
「一般的なものしか出来ません。フランス料理とかイタリアンとか言われたらお手上げです」
「ん~~そうなの」
光は西脇が買ってきたデザートを頬張ってる。生クリームを頬に付けて食べる姿はまるで子供の様だ。その様子を横で見守る視線は熱い。二人がどういう関係か詮索はすまい。
「明日は洋服を買いに行こう」
突然英が言った。
「えっ?」
「お前、着替えそんなに持ってないだろう」
たしかにシャツは三枚、上着は高校の入学祝いに買って貰ったジャケットが一枚だけだが、不自由だと思った事は無い。
「安物はやっぱまずいですかね」
「センスの問題だ。俺の趣味じゃない」
「へっ?」
それきり英はパソコンとにらめっこを始めてしまった。
「洋服買いに行くの? 僕も一緒に行って選んであげる」
「先輩は動物柄とか、アニメキャラクター物しか選ばないじゃないですか」
「可愛いんだもん。良いじゃないか」
「断る」
英が画面から目を離さずきっぱりと言い切る。
「むっ! でも、ついてくもんね!」
(ハハハ・・・でも光さんには似合いそうだな)
風呂を出て悠はベッドに転がった。食事している時からどんな寝心地だろうと、確かめたくて仕方なかった。
(ああ~、手触りも、ベッドの弾力も丁度良い)
英のセンスはとても良いのだろうと感じた。
「・・・・・」
悠はあっという間に眠りに落ちた。
「ふぁあ~、よく寝た……」
こんなにスッキリ目覚めたのは初めてだった。
朝食を作り始めて間もなく慌ただしく光が入って来た。
「ねぇねぇ、今朝は何?」
「アジ焼いてます。あと卵焼きと大根の味噌汁です」
「あっ、サラダの中に芋の天ぷらの細かくしたもの入ってる!」
「甘くて美味しいですよ」
いい終わらぬうちにもう試食してる。
「早く食べて買い物行こう。奨君まだ寝てるの?」
「さあ………」
悠は光が着ているセーターを見た。可愛い猫柄だ。でも、不自然な違和感がない。
(年相応? いや精神年齢相応)
西脇も混ざって朝食をとっていると、眠そうに英が起きてきた。悠はすぐさまパンを焼く。
濃いめのコーヒーにパンが英の定番だ。
一行は西脇の車に乗り込む。運転してる西脇に光はちょっかいを仕掛ける。くすぐったり、話して前を向いてない事も。
「お前らだけ怪我するのは良いが、俺たちを巻き込むな。巻き込んだら……分かってるな」
脅しとも取れる英の言葉に二人は黙る。
(わぁー、鶴の一声)
大型百貨店に入って行く。英の事だからお気に入りのブランド店に行くかと思ったのに以外。
洋品店が数多く入っている階に行くと、真っ先に光が悠の手を引いた。
「悠君、ここここ」
「あ、ああ、はい……」
図柄は動物系、アニメの可愛いキャラクター物が多い。
「どう、これ?」
手にしたのは可愛い猫柄だった。
「却下」
英は一言言うと先に進んで行く。
「この店はノーブランドだが、品質は良い。デザインも若者に受けが良い」
そう言ってシャツを悠に合わせる。
「うん、良いじゃないか」
英は店員に何か言う。次は上着、コートにジャケットにズボン。英は悠の意見は聞かず、自分の選んだものを悠に合わせるだけだ。悠はただマネキンの様に立っているだけ。
あった言う間に荷物は大きな紙袋三つになり、それを西脇と光に持たす。
「ええーー、荷物持ち?」
光は文句を言うが、英は無視して、次は靴屋に向かう。
「サイズは?」
「あ、に、二十六です」
二十六のサイズの靴を何点か悠に履かせてみる。
「どうだ、履き心地は」
「はい。凄くフィットして履きやすいです」
「そうか」
靴も種類別に何足か購入する。
(こんな必要なのかな?)
いつも一足しか持ってなかった悠には考えられない事だった。
(都会に住むって大変なんだな……)
買い物が終わると食事に行く。行ったことも無い高級レストランだ。思わず辺りを見回してしまう。お上りさん丸出しだ。
「おい、遅れるなよ」
「こっちこっち」
光と西脇が奥で手招いている。どうやら個室の様だ。
今までで見たことも無いような分厚いステーキを食べた。柔らかくて美味しかった。酒も出ている。当然勧められる。
「軽いお酒だから飲んで見なよ」
「えっ、ええ・・・」
実は悠はお酒に弱い。軽く一杯飲んだだけでも酔いつぶれてしまうのだ。だから、固辞していたのだが、目の前のグラスに注がれてしまい、一口ならと飲んでしまった。甘く飲みやすい。と、思ったのが運の尽きだった。一口飲んだ途端に全身がカッと熱くなった。
(ええ~~、ヤバイ、目が、目が………)
そう思った時は目が回ってフラフラだ。
「やだぁ、悠君、弱すぎ」
光がケラケラと笑った。その顔は真っ赤だ。
「おいおい、先輩も弱いんだから……。ほら、もうお終い」
「やっだぁー、もう少し飲む!」
弱いくせにお酒が好きなのも困りものだ。案の定、光も酔いつぶれてしまった。
「あああ~、これは、抱いて帰ることになりそうだな」
「そうだな」
光は「もっとお酒・・・ムニャ……」と、寝言を言ってる。悠に至っては完全に爆睡だ。
西脇は光を、英は悠を抱いて車に戻った。後ろの座席で並んで酔いつぶれている二人を見てポツンと西脇は言った。
「なんか兄弟みたいだな」
「そうだな」
英は考えていた。何故自分は恋人でもなんでもない悠に対して親身になっているのか。
(目が離せない・・・)
そうだ。気になって目が離せないからだ。何故、気になるのか、それはまだ分からない。
西脇の運転する車は快調に滑り出す。
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