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【第1章】旅男娼の幕開け
崩壊するクラン②(イディオ視点)
しおりを挟む「くそっ、くそっ、クソぉ!!!なんで俺が……俺がこんな最低ランクのクエストをやらなくちゃいけないんだ!!」
雑草の生い茂る森の中、俺の身に起きた理不尽な状況に納得ができなかった。
『Fランク降格事件』に『大量脱退』…
ーなんたる事だ!本来であればSランククランの俺になんたる仕打ち、許せるはずがない。
俺は、1枚の紙を取り出す。
『メゾウルフ討伐※成体5匹討伐希望』
あの後、俺はとりあえず自分が受けられる依頼を探して、掲示板に張り出されていた依頼用紙を発見した。
メゾウルフは狼系のモンスターだが、大きさとしてはやや大型犬程度だ、わけも無い。
以前、Sランクの依頼を受けた時に道中で出会ったことがあるが、一撃で5匹は軽く倒せた相手だ。つまりは雑魚中の雑魚!
薬草採取や配達など、雑務依頼がメインのFランクでは、貴重な討伐依頼であり1番難易度が高いとされているが、俺からすればなんて事ない。
ー俺をバカにしてるとしか思えない!!
理不尽に苛まれた俺は、目的のメゾウルフを見つけた。こいつら、俺の心情なんか知らないで呑気に昼寝こいてやがる。
ーちょうど5匹、しかも1箇所に集まってやがる!めちゃくちゃラッキーじゃねえか!
いつも通り剣を構えて、一気にかけ出す。
メゾウルフたちもそれに気づいたのか、手足を踏ん張って、こちらを睨みつけている。
だが、俺にはそんなの関係ない、ただこいつらを一気に吹き飛ばすビジョンだけしか見えない。
ーこれでいつも5匹同時に吹き飛ばしたんだ!今回の依頼…余裕で100匹は討伐して一気にSランクまで戻ってやる!…そしたらあのクソ生意気な受付に文句なんぞ言えなくしてやる!!
「くたばれぇ!!!!」
睨みつけるメゾウルフの頭目掛けて剣を振り下ろす、がー
ガキンッッ!!
メゾウルフの頭目掛けて振り下ろした剣は勢いよく弾かれて、ザスッ、という草原に擦れ突き刺さる音がやけに響き渡った。
「……はっ???」
俺があっけに取られて固まっていると、その隙にメゾウルフがドスッ!と勢いよく鳩尾に突撃する。
「グッッ……!?!ヴォェッ……!!」
あまりの激痛と同時に、鳩尾にめり込んだメゾウルフの頭部に腹部が押し上げられて、わき起こる吐き気に立っていられなくなり、膝を崩して地面に顔からダイブして気絶してしまった。
………………
「困りますよ!ちゃんと成体のメゾウルフ5体で納品してくれないと!」
冒険者ギルドの受付の男の声が店の中に響き渡る。
メゾウルフの突進で気絶させられた後、目が覚めた俺は、再度森の中をフラフラしながらも散策し、依頼のメゾウルフ5体を見つけて、なんとか退治することが出来た。
最初に見つけたメゾウルフよりも小柄ではあったものの、とりあえず納品する事にした。
「な、なんで……ちゃんと5体で取ってきただろ!」
「いいですか?このメゾウルフはまだ幼体なんです。成体のメゾウルフと比べて小柄だし、なにより毛色も薄めです。……まあ、たまに新人の冒険者がやらかす事がよくあるので慣れてますけど」
ーし、新人の冒険者……扱い!?!?
Sランクのこの俺を……どこまでコケにするつもりだこの男は!!
ワナワナと震える俺に、呆れた目をしてくる無礼な受付男は、ため息混じりに話し出す。
「幼体のメゾウルフを討伐すると、成体のメゾウルフが凶暴化するのでやめてくれって、依頼書の注意書きにも書いてありますよね?それに挿絵もほら。ちゃんと見てくださー」
「もういい!こんなとこ二度と来るか!」
「ああ、ちょっと!?待ってくださいよ!!」
受付男が俺を呼び止めようと声を荒らげるが、知ったことではない。
周りの冒険者が、なにやらヒソヒソと囁きあい、嫌な視線を向けてくる。
ーああ、もう!ほんとに!俺を、俺を俺を俺を!!!
コケにしやがって!!!
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