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執事ルークス×悪役令息
夢のスローライフに向けて
しおりを挟む(遂に…遂に……!!!たどり着いたんだァー!!!)
ー村の外側で畑を耕す老人!
ー世間話をする奥様方!そして周りを走る小さな子供たち!
ー皇都の100分の1ぐらいの規模の露店売り!!
ここが…夢にまで見た長閑な田舎暮らしの完全体だぁー!!!
うぉおおおっっっ…!!!と村の広場のど真ん中で叫びたくなる衝動を心の内に留めながら、ジェノヴィはキョロキョロと村を見回している。
野菜を運んでいる男性が、ジェノヴィとルークスに声をかける。
「アンタら、随分と洒落た服を着ているが…都から来たのかい?ここは観光するところなんざな~んもないよ?」
ーいえ!俺たちはここに永住しにきたので!レッツスローライフ!ビバパラダイス!!
と、心の中でカーニバル全開なのを顔に出さないようにして(そもそもそんな顔したら避けられる一択間違いなしだろう)、男性に返答をする。
「ああいえ、俺たちはこちらに移住を希望しておりまして…トゥルクではいくつか空き家があると聞いたのですが、どの空き家を買い取れば移住ができますか?」
18年間で培ってきた貴族スマイルで、穏やかに話し出すジェノヴィ。
男性は、「あっはっは!」と笑いだした。
「こんな田舎村に物好きな人達だねえ!空き家に関してなら、あそこの村役場で受付できるよ。」
男性が指さす先には、屋根下の辺りに大きく『トゥルク村役場』と書かれた看板が掲げられている。少々、木枠に苔がついている。
「ご親切に…ありがとうございます。」
「いやいや、こちらこそ。ようこそトゥルクへ。」
……
「こちらに移住したいのですが。」
村役場の中は、ギィと入口の木の扉が少し軋む音が響いただけで、とても静かな空間であった。
ジェノヴィとルークスは、村役場の受付カウンターに少し身体を乗り上げて「どなたかいませんか?」と声をかけた。
すると、カツン、カツン…と小さく杖が床に突く音がすると同時に、少し年老いた男性がカウンター後ろの部屋から出てきた
「おや、移住希望者の方ですか。何年振りかに見ましたねえ。しかもこんなに若い方がおふたりも。」
少しよろけていた様子の男性に、ルークスが手を貸すと「ありがとう。」と穏やかに微笑んだ。
「私は村役場の長、トドラと申します。ようこそ、トゥルク村へ…。すみませんねぇ、年々足を悪くしてるもので、座らせてもらっても宜しいかな?」
「どうぞ。むしろ足が悪い中ここまで来させてしまい、申し訳ございません。」
「いやいや、お仕事ですから…さ、向かいの席へどうぞ。ところで、移住…ですか。どのような土地をお探しで?あまり御二方が気に入る土地があるかは分かりませんが…」
トドラは、手持ちで持っているトゥルク村の地図と、空きになっている土地を示した文書をテーブルに広げる。
「見たところ、あなた方は貴族の方ですかな?であれば、この土地が…」
「あの!できれば、トゥルク村の空き家を買い取りたくて…」
「空き家ですか?新しく土地を買って家を建てるわけではないんで?」
「はい!空き家を買い取ってそこに移住したいのです!」
ジェノヴィが瞳を煌めかせながら、フンフンと希望を顕にしながらのめり出している。
トドラがポカンとした目でジェノヴィを見た。
それもそのはずだ。
ジェノヴィとルークスの出で立ちは、服装こそ貴族時代の上等なものとは違う庶民の服そのものであったが、辺境の村トゥルクの者たちからすればかなり格式高い物に見えただろう。
トドラの視点では、ジェノヴィたちはどこぞの貴族か、そこそこ名のある商人の一族かなにかに見えた事だろう。
となれば、元からあるボロボロの空き家ではなく、新しく土地を買って新しく別荘等を建てにきたのだろうと推測されたに違いない。
ふーむ、と少し唸りながらトドラは1軒の空き家の資料を提示した。
「では、こちらの家は如何でしょうか。」
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