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ルクシオ皇子×悪役令息

微笑み

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ーえ?俺、宿のベッドで寝てたよね???何ここ?どこここ?

混乱するジェノヴィだが、ルクシオは特に気にせず、ジェノヴィの頬に手をそっ、と添える
微かにジェノヴィの黒髪にルクシオの指が触れて、びくりと肩を震わせた。

「ジェノヴィ、驚いてるね。……でも、ジェノヴィが呟いていた名前が誰かを聞きたいな。……誰?『ルークス』って。……教えてくれる?」

薄く微笑むルクシオの瞳は、シルバーに近い灰色だが、どこはかとなく濁りを帯びているように見えた。
普段、式典式等で兄のレイフォードの隣に立つ姿は、一切微笑みを見せない、冷静さを具現化したかのような彼であったが、そんな面影は感じられなかった。
むしろ、その微笑む姿に、ジェノヴィはゾクリと鳥肌が立った。

「ルークスは、お、私の……従者でございます……ルクシオ皇子……」

少し俯きげにそう言うと、「そう」と一言だけ呟くルクシオ皇子。

ー何だろう、この状態は。全く検討がつかないぞ?

「あの、ルクシオ皇子ー」

ジェノヴィが話しかけると、にっこりと効果音がしそうなくらいにジェノヴィに近づいて微笑む。こんな笑顔を学園の女生徒や街ゆく婦女子たちに向けられたとしたら、たちまち恋に落ちてしまうだろう。……そんな笑顔だ。

「学園でも思ったけど、その他人行儀なのやめにしようよ。……そうだなあ、昔みたいに『イオ』って呼んで欲しいな。」

ー『イオ』?……皇子の愛称……?え、ルクシオって名前と全く繋がりがないんだけど?

「イ、……イオ……です、か?」

とりあえず口に出してみたが、全く分からずといった顔になるジェノヴィ。
ルクシオは、ふぅとため息をひとつ吐く。

「あ、もしかして覚えてない?……昔、君の家来ていただろう?……雪の日に雪狼に襲われたあの日……覚えていない?」


ジェノヴィは「ハッ」と息を飲んだ。


「イオ、ルク……、もしかして、『イオルク』……です、か?」


目を見開いてルクシオを見つめる。
『イオルク』と呼ばれたルクシオは、パアッ、と花開くように瞳を輝かせながら、ガバッとジェノヴィを抱きしめた。

「ああっ、ジェノッ……嬉しい……僕の名前を呼んでくれた……!そして思い出してくれた……嬉しいよジェノ……!そう、そうだよジェノ……」



ルクシオは、抱きしめながらちゅっ、とジェノヴィの額に口付けをすると、ジェノヴィをベッドに押し倒して、上から覆い被さり耳元で囁いた。

「君が6歳の時に、しばらく世話になっていた『イオルク』は僕さ。【約束】をちゃんと、果たしに……ね……」




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