32 / 43
第32話 遠足⑧
しおりを挟む
森の中から現れたのはゴブリンの大群。一番後ろにはニタニタと醜悪な笑みを浮かべるゴブリンキングの姿が見える。そして、各隊をゴブリンロードが指揮している。
対するこちらは50強。
人数差はあれど、個々の強さはこちらの方が上だ。勝利確率は50%にまで上昇した。五分五分だ。勝機があるとすれば、やはり指揮系統をどれだけ早く壊せるかだな。
「じゃあ行こうか。皆」
「「「「「「おう!」」」」」」
士気は100にまで上昇した。今度は僕自身が強化される番だ。
「【自身強化】」
そう唱えた瞬間、全能感に襲われた。五感がすべて研ぎ澄まされ、体が羽のように軽い。心なしか剣の腕もあがっているような気がする。
「ユーリ。お前カンジ変わってないか?」
「分かります?」
「おう! なんかオーラがででるっつうか、強者の風格が出ているぞ」
「ほんとですか? 僕自身を強化したんです」
「まじか? そんなことも出来るのか?」
「はい!」
「そうなのか。期待してるぞ!」
「はい!」
僕たち近接組、とりわけ僕のグループとレオ兄、ガイトス先生、その他先輩たちが先陣だ。
「とにかく目の前の敵を蹴散らしてくれ。ゴブリン一体一体は弱い。できるだけ速やかにキングの所まで行くぞ!」
「「「「はい!(おう!)」」」」
レオ兄が、一番先頭で、ゴブリンと接敵した。見えない程の剣速でゴブリンを屠っていく。これが【剣聖】の力か。
「俺に続け!」
「「「「おおお!!!!!!!」」」」
「どっせいっ!」
今度はガイトス先生が身長程の大きさのある大剣を薙ぎ払う。目算で10体ほどが胴体とおさらばしていた。これが、冒険者か。
「俺を舐めてもらっちゃ困るぞ!」
かっこいい。素直にそう感じた。
「僕たちもやるぞ!」
「「「おう!」」」
僕の声に応えるは、エレン、エルド、トールだ。
「エレンとトールは右翼を。僕とエルドはレオ兄の支援をする!」
「了解! トール、背中は任せるぞ!」
「ちょい! 待て! ユーリ。任せたぞ」
「ああ! 行ってこい!」
エレンはトールを待たず、敵に突進していった。炎を身に纏うその姿はまるで舞っているかの様だった。追いかけていったトールも的確にエレンの援護をしながら着実に敵を屠っていく。背中を合わせ笑いあうその様は、一枚の絵画の様だった。
「エルド、僕たちも行くぞ!」
「はい! ユーリ様」
レオ兄は既に先を行っていた。レオ兄が通った道は、屍で埋め尽くされていて、道ができていた。襲い掛かってくるものを一呼吸のうちに屠り切り、レオ兄のもとへ向かう。
「レオ兄!」
「ユーリ! 早かったな。お前だいぶ強くなってるじゃないか。エルドもありがとうな」
「僕自身を強化したんだよ。レオ兄の援護をするために来たんだ」
「ユーリ様の居るところが俺の居る場所ですから」
「おう、そうか! なら手伝ってくれ! 目指すは本陣だ!」
「僕たちがその道を切り開きます! レオ兄は体力を温存していてください!」
「助かる。俺を連れて行ってくれ! ユーリ!」
「喜んで!」
今の僕なら何でもできるような気がした。それこそ、レオ兄と張り合えるとまで。僕とエルドで敵を屠っていく。まるでバターを切っているかのようにゴブリンを殺せる。
遠目にミルトの姿が見えた。的確にロードを狙って殲滅していっているようだ。ミルトの手にかかれば、たとえロードであったとしても矢を防ぐのは難しい。速射による同時攻撃は危険だ。
セシリアは他の生徒のことを一生懸命に治療している。まるで聖女のようだ。
このように状況を把握できるまでにゾーンに入っていた。気がつけば、もうゴブリンキングの前まで来ていた。しかし、味方の軍勢も疲弊してきている。
「レオ兄! 着いたよ。ゴブリンキングの前だ」
「ありがとう。ユーリ、エルド。後は他の生徒の援護に出向いてくれ。ここは僕一人で十分だ」
「でも……」
「俺は国王になる男だぞ? こんなところで躓いてどうする? 俺を信じてくれ!」
「死なないでよ。レオ兄」
「ああ、ユーリもな」
きっとレオ兄ならやり遂げてくれるだろう。レオ兄にかかればゴブリンキングなど塵に等しい。レオ兄はこんなところで終わる人間じゃない。
ここまでわずか20分ほどの出来事だ。
ゴブリン軍およそ3500が残り、味方軍は軽傷のみ。
驚異的なスピードで数が減っていた。それはひとえにユーリの強化のおかげであった。ユーリがいなければこの戦は負けていただろう。
――現在の勝利確率は60%
決着はすぐそこまで近づいている。
対するこちらは50強。
人数差はあれど、個々の強さはこちらの方が上だ。勝利確率は50%にまで上昇した。五分五分だ。勝機があるとすれば、やはり指揮系統をどれだけ早く壊せるかだな。
「じゃあ行こうか。皆」
「「「「「「おう!」」」」」」
士気は100にまで上昇した。今度は僕自身が強化される番だ。
「【自身強化】」
そう唱えた瞬間、全能感に襲われた。五感がすべて研ぎ澄まされ、体が羽のように軽い。心なしか剣の腕もあがっているような気がする。
「ユーリ。お前カンジ変わってないか?」
「分かります?」
「おう! なんかオーラがででるっつうか、強者の風格が出ているぞ」
「ほんとですか? 僕自身を強化したんです」
「まじか? そんなことも出来るのか?」
「はい!」
「そうなのか。期待してるぞ!」
「はい!」
僕たち近接組、とりわけ僕のグループとレオ兄、ガイトス先生、その他先輩たちが先陣だ。
「とにかく目の前の敵を蹴散らしてくれ。ゴブリン一体一体は弱い。できるだけ速やかにキングの所まで行くぞ!」
「「「「はい!(おう!)」」」」
レオ兄が、一番先頭で、ゴブリンと接敵した。見えない程の剣速でゴブリンを屠っていく。これが【剣聖】の力か。
「俺に続け!」
「「「「おおお!!!!!!!」」」」
「どっせいっ!」
今度はガイトス先生が身長程の大きさのある大剣を薙ぎ払う。目算で10体ほどが胴体とおさらばしていた。これが、冒険者か。
「俺を舐めてもらっちゃ困るぞ!」
かっこいい。素直にそう感じた。
「僕たちもやるぞ!」
「「「おう!」」」
僕の声に応えるは、エレン、エルド、トールだ。
「エレンとトールは右翼を。僕とエルドはレオ兄の支援をする!」
「了解! トール、背中は任せるぞ!」
「ちょい! 待て! ユーリ。任せたぞ」
「ああ! 行ってこい!」
エレンはトールを待たず、敵に突進していった。炎を身に纏うその姿はまるで舞っているかの様だった。追いかけていったトールも的確にエレンの援護をしながら着実に敵を屠っていく。背中を合わせ笑いあうその様は、一枚の絵画の様だった。
「エルド、僕たちも行くぞ!」
「はい! ユーリ様」
レオ兄は既に先を行っていた。レオ兄が通った道は、屍で埋め尽くされていて、道ができていた。襲い掛かってくるものを一呼吸のうちに屠り切り、レオ兄のもとへ向かう。
「レオ兄!」
「ユーリ! 早かったな。お前だいぶ強くなってるじゃないか。エルドもありがとうな」
「僕自身を強化したんだよ。レオ兄の援護をするために来たんだ」
「ユーリ様の居るところが俺の居る場所ですから」
「おう、そうか! なら手伝ってくれ! 目指すは本陣だ!」
「僕たちがその道を切り開きます! レオ兄は体力を温存していてください!」
「助かる。俺を連れて行ってくれ! ユーリ!」
「喜んで!」
今の僕なら何でもできるような気がした。それこそ、レオ兄と張り合えるとまで。僕とエルドで敵を屠っていく。まるでバターを切っているかのようにゴブリンを殺せる。
遠目にミルトの姿が見えた。的確にロードを狙って殲滅していっているようだ。ミルトの手にかかれば、たとえロードであったとしても矢を防ぐのは難しい。速射による同時攻撃は危険だ。
セシリアは他の生徒のことを一生懸命に治療している。まるで聖女のようだ。
このように状況を把握できるまでにゾーンに入っていた。気がつけば、もうゴブリンキングの前まで来ていた。しかし、味方の軍勢も疲弊してきている。
「レオ兄! 着いたよ。ゴブリンキングの前だ」
「ありがとう。ユーリ、エルド。後は他の生徒の援護に出向いてくれ。ここは僕一人で十分だ」
「でも……」
「俺は国王になる男だぞ? こんなところで躓いてどうする? 俺を信じてくれ!」
「死なないでよ。レオ兄」
「ああ、ユーリもな」
きっとレオ兄ならやり遂げてくれるだろう。レオ兄にかかればゴブリンキングなど塵に等しい。レオ兄はこんなところで終わる人間じゃない。
ここまでわずか20分ほどの出来事だ。
ゴブリン軍およそ3500が残り、味方軍は軽傷のみ。
驚異的なスピードで数が減っていた。それはひとえにユーリの強化のおかげであった。ユーリがいなければこの戦は負けていただろう。
――現在の勝利確率は60%
決着はすぐそこまで近づいている。
1
お気に入りに追加
818
あなたにおすすめの小説
転生領主の領地開拓 -現代の日本の知識は最強でした。-
俺は俺だ
ファンタジー
今年二十歳を迎えた信楽彩生《しんらくかやせ》は突如死んでしまった。
彼は初めての就職にドキドキし過ぎて、横断歩道が赤なことに気がつかず横断歩道を渡ってしまった。
そんな彼を可哀想に思ったのか、創造神は彩生をアルマタナの世界へと転生させた。
彼は、第二の人生を楽しむと心に決めてアルマタナの世界へと旅だった。
※横読み推奨 コメントは読ませてもらっていますが、基本返信はしません。(間が空くと、読めないことがあり、返信が遅れてしまうため。)
異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました
ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが……
なろう、カクヨムでも投稿しています。
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
ある化学者転生 記憶を駆使した錬成品は、規格外の良品です
黄舞
ファンタジー
祝書籍化ヾ(●´∇`●)ノ
3月25日発売日です!!
「嫌なら辞めろ。ただし、お前みたいな無能を使ってくれるところなんて他にない」
何回聞いたか分からないその言葉を聞いた俺の心は、ある日ポッキリ折れてしまった。
「分かりました。辞めます」
そう言って文字通り育ててもらった最大手ギルドを辞めた俺に、突然前世の記憶が襲う。
前世の俺は異世界で化学者《ケミスト》と呼ばれていた。
「なるほど。俺の独自の錬成方法は、無意識に前世の記憶を使っていたのか」
通常とは異なる手法で、普通の錬金術師《アルケミスト》では到底及ばぬ技能を身に付けていた俺。
さらに鮮明となった知識を駆使して様々な規格外の良品を作り上げていく。
ついでに『ホワイト』なギルドの経営者となり、これまで虐げられた鬱憤を晴らすことを決めた。
これはある化学者が錬金術師に転生して、前世の知識を使い絶品を作り出し、その高待遇から様々な優秀なメンバーが集うギルドを成り上がらせるお話。
お気に入り5000です!!
ありがとうございますヾ(●´∇`●)ノ
よろしければお気に入り登録お願いします!!
他のサイトでも掲載しています
※2月末にアルファポリスオンリーになります
2章まで完結済みです
3章からは不定期更新になります。
引き続きよろしくお願いします。
転生王子の異世界無双
海凪
ファンタジー
幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。
特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……
魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!
それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!
攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?
伽羅
ファンタジー
転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。
このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。
自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。
そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。
このまま下町でスローライフを送れるのか?
スキル【アイテムコピー】を駆使して金貨のお風呂に入りたい
兎屋亀吉
ファンタジー
異世界転生にあたって、神様から提示されたスキルは4つ。1.【剣術】2.【火魔法】3.【アイテムボックス】4.【アイテムコピー】。これらのスキルの中から、選ぶことのできるスキルは一つだけ。さて、僕は何を選ぶべきか。タイトルで答え出てた。
【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-
ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!!
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。
しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。
え、鑑定サーチてなに?
ストレージで収納防御て?
お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。
スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。
※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。
またカクヨム様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる