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第31話 遠足⑦

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 現時点で集まっている皆にレオ兄から演説を行う。

「皆、既に勘づいている者もいるかもしれないが、僕たちは危機に瀕している。更には街までも危機に瀕していると言ってもいいだろう。ゴブリンの大群がすぐそこまで迫ってきている。その数およそ5000!」

 集まっている生徒がざわついた。それも無理はない。今まで相手にしていた数は精々5~6のゴブリンの集団だ。それが、大群になって押し寄せてくるのだ。

「だが、俺は屈しない。同じく、ユーリ、ガイトスも屈しないと誓ってくれた。去る者は追わない。だが、これだけは覚えておいてほしい。俺たち王族は国民を見捨てない。決して屈しない。逃げはしない。俺はここにいる皆が集まれば苦しい戦いでも勝てると確信している。だってここにいる者は! 選ばれしものだから! だからどうか俺たちに! この国に! その力を貸してくれないか? 俺たちには君たちの力が必要だ! もう一度言う! ゴブリンの大群がここに迫ってきている! それでもひるまずに英雄にならんとするものはいるか? 僕はいると信じてる。必ず俺たちを助けてくれると。その勇気のあるものは俺たちについてこい! 必ず勝負に導いてやる!」

 その場が一瞬の静寂に包まれる。少しあって、一人の生徒が雄叫びをあげた。それに呼応するかのように続々と声が上がる!

「「「「「うぉぉぉぉ!!! アレクシオール王国に栄光あれ! レオルグ様に栄光あれ!」」」」」

 これで士気は上々だ。80まで上昇した。あとはゴブリンたちを待つのみだ。



 徐々に僕の領地に大群が押し寄せてきた。もう視認できる段階にまで敵が到達している。ここが味方の強化の頃合いか。

「ここにいる皆! いまから俺のスキルを発動する。味方を強化するものだ。いつもと体の感覚が違うだろうから、できるだけ慣らしてくれ!」

 初めての能力の使用だ。正直どうなるのかは分からない。でも、ワクワクしている部分もある。

「【味方強化】」

 僕を中心にしてこの場にいる全ての者へ放物線上に光が伸びていく。何とも幻想的な情景だ。

「お、おい! なんだ。この感覚は! 自分の体じゃねぇみたいだ!」

「なんだか力が湧いてくる。な、なんだ。この感覚は!」

「おい! ユーリ。この能力はやばいぞ。力が湧き出てくる。まるで全盛期のころに戻ったかのようだ」

「その認識で合ってますよ、ガイトス先生。どうやら全盛期の力を一時的に使用できるものらしいです。」

「おいおい! そりゃえぐいぞ? 正直戦争に革命が起きる」

「でも、この能力は必要なレベルまで士気を上げる必要があるので、軍全体に使用するのは難しそうです。」

「そうかぁ。レオルグはどうだ!?」

「やばいぞ! ユーリ! 最高だ! 今なら父上と張り合えるかもしれない!」

「がんばりましょう!」

「おう!」

 少し離れたところには、驚いたような顔をしている皆がいる。エルドやエレン、トールにセシリア、ミルトだ。こんなことに巻き込んだのは僕のせいだから謝らないとね。

「皆!」

「おう! ユーリ! 凄いな! お前のスキル!」

「ありがとう! エレン。でも、こんなことに巻き込んじゃってごめんね」

「気にするこたぁねぇよ。俺たちもこの戦いを経て成長できるんだ。元々の目的は経験を積むことだろ?」

「ハハハッ。確かにそうだね。ありがとう、トール」

「怪我したら私がみんなを治してあげるからね!」

「頼むね。セシリア」

 セシリアもフンスッといった状態で戦意に満ちあふれてる。

「ユーリ様は気にしなくていいんですよ。俺はただついていくだけです」

「あぁ、頼むぞ。エルド」

「僕も頑張るから!」

「ミルトまで。みんなありがとう! 僕たちは他の皆を勢いづけるためにレオ兄たちと共に先陣をきることになる」

 皆がいてくれてよかった。本当に良かった。

「セシリアは後方支援を頼む。光魔法持ちは貴重だ! 頼むよ」

「分かった。無理しないでね。」

「ああ。ミルトは相手の指揮官に矢を当てていってほしい。ゴブリン軍は指揮系統を潰せば瓦解するからな」

「分かった。任せてよ」

「他のみんなは僕についてきてくれ。レオ兄たちと共に敵を蹴散らして首を獲る。短期決戦で終わらせなければ勝機はない」

「「「了解」」」

 これで準備は整った。あとは待つだけだ。

 レオ兄から号令がかかる。

「魔法使いは一つに固まってくれ。後衛のものも後衛で固まること。近接攻撃ができるものは俺たちについてきてくれ。後方の指揮はアリスが頼む!」

「分かったわ。死なないでよ! レオ!」

「あぁ」

「では、もうすぐ接敵する。今回は短期決戦だ。俺たちができるだけ早く向こうの首をあげる。もう少しで騎士団も来るはずだ。それまで何とか持ちこたえてくれ。守ってほしいことは一つ。死なないこと。いいな?」

 全員が頷く。最後は気持ちの問題だ。

「それでは俺たちの進撃を始めようか」

 ――戦いが始まる。
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